タイトル:大いなる作業・・・2 マスター:優すけ

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/02/06 06:52

●オープニング本文


「さて〜、お店も再開した事ですし‥‥そろそろ次の材料を探しに行きましょうか〜♪」
「って、再開した直後にいきなり店を留守にする気なの!?」
 相変わらずのほほんとした空気を見せるリアナの言葉に、いつものツッコミを入れるマリー‥‥とまあ普段どおりの生活が始まった二人だったが、どうやらリアナは去年から先延ばしにしていた『エリキシル』を作る為の材料探しを再開する事にしたようである。
「‥‥また以前みたいに危ない所に行くんじゃ無いでしょうね‥‥?」
「うふふ、今度は『比較的』安全な場所にあるみたいですわ♪ え〜と‥‥確かこの本に載っていたはずなんですけど‥‥」
「‥‥時間がかかりそうだから、その間に買い物行って来るわ‥‥」
 ごそごそと本の山の中へ頭を潜り込ませているリアナの姿を見ながら、深くため息を吐きながら店を後にするマリーだった‥‥



「ふぅ‥‥まあ後先考えるような性格だったらこんなに苦労したりしてないんだけど‥‥でもやっぱり疲れるわ」
 手の中の食材が入った袋をガサガサさせながら街の中を歩いているマリー。そんな彼女が歩いていると、道路の端に気にかかる人影が路地の中へ入っていく姿が見えた。片方は明らかに最近のバカ者といった風体のチャラ男、そして片方は‥‥
「た、頼むからそれ以上銃を突きつけないでくれ〜〜!!」
「う〜ん、最近この辺りには危険なハチが多くて困るねぇ〜。今さっきも君の頭の上に降りる所だったよ」
「今は冬だっつ〜の!! それにどんな撃ち方をしたら俺の周囲ばっかりぎゃ〜〜!!」

     『ズギュ〜〜〜ン!!!!』

「全く危ないハチだ。早く君が吐いてくれない事にはますますハチが暴れてしまうかもしれない」
「だから俺は知らないっつってんだろ〜〜!? こんな事してただで済むとギャン!?」

     『ズギュズギュ〜〜〜〜〜ン!!!!』

「ふぅ‥‥全く、この程度で気絶するとは最近の若者はだらしが無い。まあゆとり教育が生み出した産物と言ってしまえばそれまで‥‥」
「あんたの生み出す産物が一番の社会の弊害よ!!」
 思いっきり振り下ろしたマリーのハリセンによって、トレンチコートの男は地に沈む事になった‥‥




「なるほど〜、それでここまでお連れしたのですか〜。やっぱりマリーは面倒見が良いですわね〜♪」
「‥‥その言葉、あんた以外が言えば嫌味にしか聞こえないわよね‥‥」
「〜〜〜?」
 買ってきた食材で作ったグラタンをフォークで突きながら深く項垂れるマリーの姿に、頭の上に?マークをつけて不思議がっているリアナ。どうやら彼なりの『取調べ』だったらしいが‥‥どう見てもただの脅迫にしか見えない。いくら車上荒しの犯人を見つける為とは言え、目に止まった気に入らない人物を片っ端から締め上げるのは‥‥
「ふむ、ところでそろそろこの状態をどうにかしてくれると有難いのだが」
「もうあんな事をしないって約束出来るなら離したげるわ」
「分かった。約束しよう。次からはもっと穏便なやり方で相手を拷問して‥‥」
「その時点でダメに決まってるでしょ!!」
 がばっとマリーが振り向いた先の柱には、何重ものヒモでぐるぐる巻きに縛り付けられたトレンチコートの男が座らされていた。彼が気絶している間にこうしたのだが、全く動揺する様子は無い。
「全く‥‥君もうら若い女性なのだ。相手を縛る時にはしっかりと了承を取ってからでないと、『そういう趣味』を持っていると取られかねない」
「だ、誰がどんな趣味を持ってるって言うのよ!? 私はそんなアブノーマルな趣味はこれっぽっちも‥‥!!」
「あの〜、そろそろ本題に入りませんか〜? こうしていると時間だけがドンドン過ぎていってしまいます〜」


 珍しくリアナが真っ赤になったマリーを制止するという光景が見られたのはともかく、彼をここまで連れてきたのは他でもない。なんとリアナが探している材料の一つ・『エレメントの涙』という宝石を彼が持っているというのだ。
「はぁ‥‥はぁ‥‥それで、条件って何なの‥‥? あんまりな無理難題だったら‥‥」
「勿論君たちに危ない目を合わせるつもりは無いよ。ただ、少しだけ手伝いをしてもらいたいだけなんだ」
「手伝いですか〜? どんな事をすれば良いのでしょうか〜」
 リアナが首を傾げている間にスルンと縄から抜け出る男。マリーが絶句している横で、軽く裾を払いながら言葉を続ける。
「うむ。実は今度街で開かれる『ミスコン』、これに出てもらいたい」
「み、ミスコン〜〜!? どうしてそんなモノに出なくちゃいけないのよ!?」
「うむ、もっともな質問だね。実は‥‥」
 こうして彼が話し始めた内容。それは、このミスコンを通じて裏で暗躍するヤミ組織を徹底的に潰す事にあるという。この組織がまた厄介な存在で、ありとあらゆる行事に介入してくるという迷惑さを誇り、楯突いた存在を闇に消す事など屁とも思っていない連中らしい。
「な〜に、君たちは出来るだけ時間を稼いでくれれば良い。上位に上がればきっと何かしらのアプローチがかかるだろうから、それを逐一報告してくれれば、ね」
「それって、上位に上がる事が前提なのよね? それなら別に私達でなくても上がった人に直接聞けば‥‥」
「いや、いくらダンディーでイケメンな私でも、見ず知らずの参加者にいきなり声をかけると警戒される恐れがあるからね」
 ふっと軽く肩を竦めながら苦笑いしている男を見て、はぁ〜っと何回目かのため息を吐いているマリー。本当なら出たくないのは当然なのだが‥‥
「分かりました〜。ではそれに出れば『エレメントの涙』を貰えるのですね〜?」
「‥‥こうなる流れになる事は分かりきっていたわよ‥‥」
 ほとんど口を付けていなかったグラタンはすっかり冷め切っていて、まるで彼女の心を表しているかのようだった‥‥

●参加者一覧

比良坂 和泉(ga6549
20歳・♂・GD
二条 更紗(gb1862
17歳・♀・HD
ジュナス・フォリッド(gc5583
19歳・♂・SF
蒼 零奈(gc6291
19歳・♀・PN
常木 明(gc6409
21歳・♀・JG
エリク・バルフォア(gc6648
18歳・♂・ER
住吉(gc6879
15歳・♀・ER
エリーゼ・アレクシア(gc8446
14歳・♀・PN

●リプレイ本文

●ミスコン開催
「は〜い♪ 二条 更紗17歳です、よろしくお願いします♪ 見ての通り残念体形ですけど〜、それはそれで需要があると信じてま〜す♪」

「「「「うぉ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」」」」

 ビキニスタイル+ショートデニムでにっこりと微笑む二条 更紗(gb1862)の姿に、盛大に盛り上がる観客達。そう、今は街で行われている『ミスコン』の真っ最中である。『全力で参加』という意気込みの通り、自分の魅力・利点を最大限に生かしたアピールに皆も大盛り上がりであった。
「特技はこの後披露しますので、皆よろしくね〜♪」
「「「「さ〜らさちゃ〜〜〜〜〜ん!!!」」」」
 パチリとウィンクしてキャピッとポーズ。まさに観客の心を知り尽くしたかのような態度に、ますます盛り上がっていく会場のボルテージであった‥‥。

「あらあら〜、何だか随分盛り上がっていますわね〜♪」
「いや、あんたが出たときもかなりだったけどね‥‥」
 舞台袖ではリアナとマリーがぼそぼそと会話をしている。ついさっきまでリアナが水着で参加していたのだが‥‥何と言うか『凄まじく』周囲の目を引いてしまったのだ。
「大体あんた、何でそんな水着持ってきてたのよ? それって確か学生時代のスクール‥‥」

「「「「うぉ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」」」

 マリーが言いかけた言葉を遮るように、またもや盛り上がる会場。その視線の先に立っていたのは、白いビキニにパレオを付けた美少女・エリーゼ・アレクシア(gc8446)であった。
「え、エリーゼ・アレクシア14歳です‥‥。趣味はえ〜っと‥‥ゆっくりすることが好きです‥‥」
 もじもじと胸部分を隠しながら恥ずかしがる銀髪の美少女。14歳と言う割には、何と言うか‥‥結構な美乳である。それをもじもじと腕で押さえてひしゃげている様は、まさにご馳走様というべきであろう(ぇ
「え、ええとその〜‥‥し、失礼します〜〜!!」
 ぺこりと思いっきり頭を下げて、大急ぎで舞台袖へ引っ込んでしまうエリーゼ。しかしその絶妙なタイミングは、男のリビドーを刺激するには十分なお披露目(?)であった。

「‥‥また何て言うか‥‥」
「うふふ、この後は確か‥‥刃霧さんでしたわよね?」
「な、何だか嫌な予感が‥‥」

「「「「「「うぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」」」」」

 観客の大盛り上がりの中出てきた刃霧零奈(gc6291)の姿は‥‥また男のあちこちを大いに刺激する真紅のビキニ姿であった。しかも少し小さめのサイズをあえて選んできた(?)のか、『むにゅん♪』とはみ出ているハミ乳がますます嬉しい(ぁ
「今年二十歳になる刃霧零奈です♪ 趣味は料理で、運動もOK♪ 宜しくお願いします♪」
 ‥‥最早表記するのも難しいくらいの大声。両手を腰の辺りで合わせてお辞儀をした瞬間、会場が揺れたかのような地響きを上げていた。‥‥想いは痛いほどに分かる!!(断言)。
「それじゃ〜後の特技披露までバイバ〜イ〜♪」
 ふりふりと腕(注:一緒に胸も)を振りながら舞台袖へ引き下がっていく刃霧。やはり何と言うか、ここの観客は巨乳好きなのであろう‥‥合掌。

「次は〜‥‥住吉さんでしたわよね〜」
「ええ。‥‥でも、あの子大丈夫なのかしら? こういうイベントに向いてるのかどうか‥‥」
「ふふふ、皆様とても素敵で可愛らしいですわ♪ 私も思わず羨ましく感じでしまいます♪」

         『ガン!!!!』

 いきなり聞こえた声に、大きな音を立てて頭をぶつけるマリー。そう、そのおしとやかな声の主は‥‥『あの』住吉(gc6879)であった。
「あらあら、どうなされたのですか御姉様? まるで歩くエリマキトカゲを見たかのような顔をなされて‥‥」
「‥‥ある意味、その方がショックは少なかったと思うわ‥‥」
「うふふ、変な御姉様ですこと♪」
 猫かぶりモード120%の住吉に、頭痛が止まらない様子のマリー。どうやら彼女は最後までこの調子で押し通すつもりのようである。
「では行ってまいりますわ。どうか見守っていて下さいね♪」
「‥‥いいからさっさと行ってきなさい‥‥」
 項垂れたままひらひらと手を降るマリーを面白そうに見た後、いそいそと舞台へ上がっていく彼女。勿論おしとやかな美少女お嬢様に、観客は大盛り上がりだったのは言うまでも無い‥‥とにかくこうしてミスコンは進行していくのだった。


●組織の人間は誰だ?
「むぅ‥‥何だか色々と複雑な気分です」
「‥‥言うな。今は任務を最優先だ。‥‥今は、な」
「エリクさん‥‥お互い、辛いですね‥‥」
 何やら妙に複雑な表情で会場周囲を警戒している比良坂 和泉(ga6549)とエリク・バルフォア(gc6648)。二人とも『色々と』考え事があるらしく、その表情はどこか暗い。
「ほらほら、二人とも思考を戻しなさいな。あの娘たちが離れる訳じゃないんだから」
「え、ええ‥‥それは分かっているのですが‥‥」
「僕は別に意識を飛ばした覚えは無い、が‥‥」
 パンパンと手を叩いて二人の注意を戻す常木 明(gc6409)。彼女は変装の意味も込めて『軽く』普段とは違う格好をしていた。‥‥逆に『ある意味』目だっている気もするが。
「ええと明? その格好は‥‥」
「変装だけど‥‥どうかしたのかな?」
「‥‥いや、別に良いんだけど‥‥」
 恋人であるジュナス・フォリッド(gc5583)が軽く苦笑いをしたのは仕方ない。長い黒髪を三つ編みにし、黒縁の伊達メガネ。そして大人し目のブラウスにロングスカート‥‥まるでどこかの避暑地からやって来たかのような『お嬢様』だったからである。
「ジュナスくん?」
「いやいや、明はその格好も良く似合っているってことだよ」
「??」
「さて‥‥そろそろ特技披露の時間か。確かマリーは、軽い演舞をするとか言っていたな」
「ああ、俺も聞きました。リアナさんはクスリを使ったマジックをするとか」
 首を傾げている常木の横で、軽く会話を挟むエリクと比良坂。中の様子を見てみたいのは山々だが、今はとにかく組織の重要人物を取り押さえる事が先決だ。あのトレンチコートの男から大体の特徴は聞いているので、特に迷う事は無いはずだが‥‥
「‥‥とにかく今は待機ですね。動き始めたら一瞬でしょうし」
「そうだね。‥‥あ、そういえばあの男はどこに行ったのかな?」
 くいっとメガネの位置を直しながら聞いてきた常木の言葉に、大丈夫とばかりに肩を叩いたのはエリクだった。
「‥‥問題ない。あらかじめ釘は刺しておいた」


「全く‥‥最近の若い子達は乱暴で仕方ない」
 ふぅとばかりに両手を振りながら歩いている男。その後ろにあるゴミ箱の中には、粉々になった隠しカメラ・望遠ビデオが放り込まれていたのであった‥‥合掌。


●ミニゲーム、そして上位入賞者は‥‥?
 そして特技披露も無事に終わり、いよいよ最終審査・『ぬるぬる地獄でかけっこ競争☆』が始まった。幸いと言うか何と言うか、入り込んだ6人は全員進むことが出来たが‥‥ある意味落ちていたほうが幸せだったかもしれない‥‥
「ふにゃ〜〜〜ん!? 上手く進めない〜〜!!」
「お、落ち着きましょ〜〜!! とにかく足を目にゆっくりと‥‥はぅ〜〜!?」
 べちゃっと足を滑らせてコースの床に転んでしまった二条を助けようと、エリーゼが手を引っ張るも同じく尻餅をついてしまう彼女。ぬらつく液体を身体一面に塗りこまれたかのような状態に、透けるスクール水着と白ビキニ‥‥もう顔も身体もねとねとであった。
「うにゃ〜ん‥‥上手く立てないです‥‥」
「え、エリーゼ様‥‥このぬるぬる、何だか癖になりそうです‥‥♪」
「さ、更紗さん〜!?」
 段々暑さのせいで顔が火照ってきたのか、ほんのりと頬を桃色に染めた二条がその感触に対して悦に入る。助けに来たエリーゼも上手く立ち上がれないまま彼女の腕の中に滑り込んでしまい、こうして『粘液に塗れた美少女二人組』が爆誕したのであった‥‥合掌。


 よくバラエティー番組であるようなローションを一面にぶちまけられた徒競走コースを、皆が一斉に走り出したのだが、その結果は『色々な意味で』散々なものである。
「ちょ、ちょっと上手く立てないよ〜‥‥何だか水着も透けてくるし、少し恥ずかしいよ〜!!」
「少し待ってて下さいな〜、今助けに向かいます‥‥ひゃう!?」
 上手く起き上がれない刃霧を助けようと、何とかリアナが歩いていくのだが‥‥結果は予想通り。またもや滑る床の餌食になってしまっていた。
「ひゃう!? ちょ、ちょっとリアナさん!? そこを引っ張られるとかなり危ない目になるんだけど!?」
「す、すみませんです〜‥‥元々運動が苦手な私ですので〜、こうして何かに捕まっていないと‥‥」
「にゃ〜〜!? そ、そこはホントに危ないから〜〜!!」
 ぬるつく手を刃霧の肩に置こうとするも、またもや滑って水着の中へインしてしまうリアナ。幸い水着はまだ『大事な部分を』上手く隠しているので問題無いが、その光景は凄まじく淫靡なものであった。
「う、うぅ〜ん‥‥今はまず立ち上がる事から‥‥刃霧さん、先に御願いします〜」
「う、うん、そうだね!! とにかく起き上がって‥‥はにゃん!?」
 先にリアナの肩を使って起き上がろうとした刃霧だったが、その力のベクトルに耐え切れなかったのか二人揃ってべちゃっと倒れこんでしまう‥‥果たして、無事に先へ進めるのだろうか?


「こんのぉ〜‥‥まっけるもんか〜〜!!」
 他の参加者を押しのけつつ、持ち前の根性でじわじわと先へ進んでいくマリー。何回も滑って転んでその身体は全身粘液まみれだが、その表情に曇りは無い。
「こ、ここまで‥‥来て‥‥負けられない‥‥」
「お、御姉様〜〜!! もう少し待って下さいな〜〜!!」

        『ベシャン!!』

 身体の気合が抜けたかのようにまたもや粘つく地面に身体を落としてしまうマリー。まだまだ住吉の猫かぶりモードは解けていないようである。
「だからその喋り方は止めなさいって!! こっちの力が抜けるでしょ!!」
「そ、そう言われましても‥‥今は無理ですわ〜」
 周囲と同じ様に、ワンピース水着を粘液でてらてらと光らせながらこっちに這いずって来る住吉を見ながら深くため息をつくマリー。
「それに〜‥‥さっきB班へ信号を送りましたので、もうすぐ行動を開始するはずです」
「え? 連中あんたに接触してきたの‥‥? ってことは、あんたが‥‥」
 近寄った瞬間に小声で話す住吉に、マリーがふと顔を引き締める。どうやら連中は住吉に何らかの接触をしてきたらしい。
「ふふ、話はまた後でですね〜。とにかく今は〜‥‥御姉様と一緒にゴールする事が先決です♪」
「ちょ、ちょっとどこ触ってるのよ!? いくら滑っているからって、そこは無いでしょ!!」
「あらあら〜、変に動くと怪しまれますわよ御姉様〜♪」
 この状況を生かしてますます接触を試みる住吉。とにかく、どうやら状況が動きそうであった。



●ヤミ組織との戦闘、そして‥‥
「さて、そこを動かないでもらおうか。お前はもう包囲されている」
「んだこらぁ〜〜!? やんのかわれぇ〜〜!?」
「全く‥‥何て言うか、完全にチンピラの台詞そのままですね〜」
 ここは玄関近くのゲート前。エリクと比良坂がある男の前に立ち塞がっていた。相手は幹部候補の内の一人らしいのだが、後を付けている間に向こうに気付かれてしまったのである。
「まあこうなった以上は仕方ない。周囲の捜索はジュナスに常木が向かっている。僕達は、こいつを捕縛するぞ」
「ええ。どうやら他にもいるみたいですし、時間はかけられませんね」
「上等じゃワレ〜〜!! いてまうぞコラ〜〜!!」
 片手にナイフを持って突撃してくる男‥‥確かに発見されたのは偶然だが、いざ戦闘となると歴戦の二人に勝てる一般人などそうそういない。
「‥‥あまり手間をかけさせるな。時間が惜しい」
 エリクがぼそりと呟いた瞬間、ガクリと膝を付く男。どうやら一瞬で覚醒して『子守唄』を歌ったようである。
「流石ですね。それじゃ、とりあえずこいつは縛ってロッカーにでも放り込んでおきます?」
「いや、不意に開けられる可能性もある。今は外の茂みにでも隠しておこう‥‥ん?」
 眠ったままの男を担ぎ上げ、歩き出す二人だったが‥‥エリクが視線を向けた先には、見覚えのある人影が角を曲がっていた。果たしてその人影は‥‥?


 ここは公園近くの駐車場。何やら報告を受けたデブ男がグフフとにやつきながら手の中の写真を眺めている。
「ぬふふふふ‥‥今日のウサギ達は一際旨そうだな‥‥♪」
「組長、今は早く離れましょう。何だか俺達を嗅ぎ回っている連中が‥‥」
『Ready Set!! Hut−Hut!!』
「〜〜〜〜!!??」

      『ドッカ〜〜〜〜ン!!!!!』

 凄まじく大きな音と光。閃光手榴弾を車の中に放り込まれ、一瞬にしてパニックに陥る二人組。その煙の中、飛び込んできたのはジュナスと常木だった。各一人ずつ押さえ込み、その頭に銃を突きつけてそっと耳元で囁く常木。
「ふふ‥‥可哀想な頭の可哀想なお味噌ぶちまけたくなかったら、静かにしてな♪」
「て、てめえら‥‥こんな事をしてタダで済むと‥‥」
「あー、先に言っておくけど、明なら本気でやるから。あんたが下っ端でも幹部でもどちら構わず、ね」
「ちぃ‥‥てめえら素人じゃねえな‥‥ガク」
 デブ男を指揮棒型超機械で黙らせたジュナスが、そっと武器を離して懐に収める。どうやら先ほどの会話を考えると、この男が組長らしい。後で分かった事だが、この男はミスコンを利用して美少女・美女を自分の元へ強引に召し上げていたのだという。
「全く、こういう男はロクな事をしないね」
「まあまあ。さて、片付けるのも片付けたし‥‥俺達も帰ろう」
 肩を叩いていたジュナスが苦笑いしながら、常木と一緒に帰途に付くのだった‥‥




「君達には本当に助かったよ。さて、これは約束の宝石だ」
「うふふ、ありがとうございます〜♪」
「全く‥‥二度とやんないわよ、こんな事」
 車に乗り込んだトレンチコートの男が、窓から腕を伸ばして『エレメントの涙』をリアナに渡す。その後部座席には、組長を含め10人以上の男がぎゅうぎゅうに詰め込まれている。
「君達もご苦労だったね。それじゃ、仕事が残っているのでアデュー」
 ブロロロ〜〜‥‥と音を立てながら走り去っていく車を見ながら、クスリと微笑むリアナ。彼女を見ながらマリーも軽く微笑む。その様子を見ていた比良坂が、また不安そうに呟いた。
「しかし、やけに今回は静かだったような‥‥あの男」
「‥‥問題ない。今度は僕達の勝ちだ」
「‥‥?」
 比良坂が首を傾げている横では、エリクがポケットに入っている『ブツ』の感触を確かめていた。それは、最後に見つけた『人影』が仕掛けていた隠しビデオ(注:女子更衣室向け)だった‥‥合掌。