●リプレイ本文
●終わりの始まり‥‥?
「ん〜〜‥‥やっぱり森を散歩するのは気持ち良いわね〜‥‥」
「ふふ‥‥天気も良いですし、絶好のピクニック日和ですわ♪」
森の中をにこにこと歩いているマリーとリアナ。
そんな彼女達を追いかける様にカメラを回しているスタッフの近くで、『ぬぅ〜〜!!』っとばかりにメガホンを持って睨みつけている監督。
「そうだ‥‥最初は一般の光景から‥‥ぐふふ♪」
「‥‥果たして、このまま無事に終わるのだろうか」
そう、ここは街の近くの森の中。
いつキメラが現れるか分からないという危険な場所での撮影を強引に強行したのは、たった今深くため息をついたエリク・バルフォア(
gc6648)達のような能力者が控えているからというのもある。
しかし、それを除いても今の監督の目は怪しい‥‥
「マリーにも伝えたが‥‥流石に今回のは危なすぎる」
「ま、これも仕事だしな。今は考えを切り替えていこうぜ?」
手に持った大量の機材を、苦も無く持ち上げて運んでいるのは御剣雷蔵(
gc7125)。
一般人にとっては十分に重い機材も、普段キメラ相手に戦っている彼らにとっては全く平気な事である。
「それに、だからこそ俺達が見張ってるんじゃねえか。もっと気楽にきこうや?」
「あ、ああ‥‥そうだな。今ここで考えていても仕方ない」
御剣の言葉に頷いたエリクは、気を取り直したように周囲の警戒を再開する。
そして、第一シーンが撮り終わった。
「は〜いカット〜!! リアナちゃんも初めてにしては良い感じだよ〜!?」
「あらあら〜、それはありがとうございます〜♪」
「さ〜て、私も急がなくちゃね!!」
ぼんやり微笑んでいるリアナを横目に、マリーは近くの衣装合わせ用テントへ入る。
その中には既に着替えを終えた夢守 ルキア(
gb9436)と、新しいメイクセットを用意しているクレミア・ストレイカー(
gb7450)がいた。
「ふふ、お疲れ様。何だか慣れてる感じだったね〜♪」
「そ、そんな事無いわよ‥‥というか、何だか凄く似合ってるわね‥‥」
マリーがため息をついたのも無理は無い。
一般人レベルでの可愛いクラスであるマリーに対し、『宝●歌劇団』に出てきそうなオーラを漂わせながら男装をしている夢守‥‥
「そ〜んな顔してどうしたの? 私の顔に何かついてる?」
「い、いえ何でも無いわ‥‥あ、それじゃあ私は今からメイクに入るから‥‥」
「ほ〜ら〜、元気が無いぞ〜? さ、気合を入れていこ〜!!」
バンと背中を叩いて外へ出て行く夢守を見て、ほんの少し羨ましく思うマリー‥‥そんな彼女に、衣装を持ったクレミアが近づいてきて‥‥
「‥‥かなりのサイズね‥‥私でも充分に‥‥」
「ん? どうかしたの?」
「‥‥いえ、何でも無いわ。それじゃ、早速衣装を合わせるわよ」
手の中の衣装を持ちながらぶつぶつと呟いていたクレミア‥‥しかし、時間が迫っている。
何やら考え事をしている彼女を見ながら、ひょっこり首を傾げているマリーであった‥‥。
●新たな怪人との出会い
森の中を歩いていた二人だったが、その時マリーはふと周囲を見渡し始める。
「〜? どうかしましたか〜?」
「‥‥いえ、何でも無いわ‥‥」
しかし、彼女の感じた嫌な予感は的中する。
何といきなり目の前に『オオカミ』(注:終夜・無月(
ga3084))がのっそりと現れたのだ。
「あら〜♪ 可愛いイヌさんですね〜‥‥あら〜?」
リアナがのほほんと微笑んだ瞬間、漫画かアニメのような速さでオオカミを近くの茂みの中へ引きずり込むマリー‥‥そして、耳を引っ張りながらヒソヒソ声で怒鳴りつける(?
「あ、あんた何勝手に〜〜!!」
「‥‥いや、妙な胸騒ぎがしてな‥‥ここは引き返した方が‥‥」
「許可も無しに出てきたあんたの始末の方がよっぽど悪いわよ!? ‥‥ふぅ、仕方ないわ。あなたは今から私の飼ってる犬だからね?」
「‥‥犬‥‥この俺が、犬‥‥」
そして数分後、どことなくしょんぼりした空気を伴った終夜を引きつれ、リアナに苦しい言い訳を行っているマリー‥‥と、その時!!
「ぐふふ〜〜、カワイコちゃんがそろってるじゃね〜〜か♪ 嬢ちゃん達、オレッちと良〜いことしよ〜ぜ〜☆」
何の前触れも無しに目の前の地面が盛り上がり、何とウザイを百乗にしたようなチャラ男怪人・サウル・リズメリア(
gc1031)が現れたのだ!!
「そ、そんな‥‥今のタイミングでだなんて‥‥!!」
リアナの見ている横では変身出来ないマリーを知ってか知らずか、妙に手をわきわきさせて迫ってくるサウル‥‥それは、まるで演技のようには見えない動きだった(ぇ
「く‥‥終夜だけでは厳しいし、せめて変身出来ればゼロも‥‥!!」
苦悩する彼女を尻目に、じりじりと迫ってくる怪人。
もう、絶体絶命か!? ‥‥と、その時飛び込んでくる一人の凛々しい声が。
「待てお前〜〜!! フロスティアに何するんだ!!」
「あ、あなたは同じクラスの!?」
颯爽と飛び込んできた生徒を見て、思わず大きな声を上げるマリー。
そう、彼は同じクラスの夢守ルキア。どうやら何か用事があってこの森に入っていたようだったが‥‥それが何の用事だったなのかは分からない。
「こんの〜!! 彼女から離れろ〜〜!!」
「グハ!? こ、この俺が一撃を!? しっか〜し‥‥俺をなめるな〜!!」
「う、うわぁ〜〜!!」
「あ〜〜れ〜〜‥‥バタ〜ン〜」
夢守の一撃を受けて思わず怯んだ怪人だったが、それもほんの僅か。
すぐさま放った気合撃の前に、リアナごと飛ばされてしまう夢守!! ‥‥若干リアナの演技がわざとらしかった気もするのはご愛嬌。
「夢守君!! 今は彼女を連れて逃げて頂戴!! 私もすぐ後を追うから!!」
「わ、分かった‥‥フロスティア、お前だけは絶対に守るからな‥‥」
気絶した彼女を、何故かお姫様抱っこで立ち去っていく彼‥‥そして、残ったのは怪人とマリー・終夜コンビのみ。
「ぬっふ〜‥‥最先端ファッションは、ヌーディズム!! 俺の技、避けられるか!?」
「‥‥あの子を傷つけたあなただけは、絶対に許さない!!」
ペロリと舌なめずりする怪人を前にし、一歩も怯まない態度で立ち向かうマリー。
そして‥‥その時がくる!!
「チェ〜ンジプリティ〜‥‥モジュレーション!!」
そして恒例となった変身シーン。衣服が弾け、リボンが全身を‥‥(以下略
「愛と正義の魔法少女・プリティーマリー!! 星に代わって‥‥お仕置きよ!!」
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥
「はいカット〜!! この辺りはいつも通りCGだから、次のシーンでは衣装を着て来てね〜!!」
監督のOKサインが出ると、また周囲がざわざわと騒ぎ出す。
この間に戦い用の仕掛け、機材を準備しなくてはならない。
「さて、また忙しくなるな‥‥さて、そろそろか」
スタッフにタオルを渡していたエリクが、ふと横のテントを見ると‥‥中から色っぽい女幹部の衣装を身に纏ったユキメ・フローズン(
gc6915)が出て来る所だった。
今の彼女はあくまで恥ずかしそうなもじもじ空気を出しているのだが、一旦演技となると‥‥
「‥‥注意だけはしておかないとな‥‥」
「注意、ですか? 一体何をです?」
声をした方向へ振り向くと、そこには既に準備を終えたゼロ・ゴースト(
gb8265)が立っていた。
彼は前回と同じく精霊としての参加である。
「む、ゼロか。そう言えばもうすぐ出番だったな」
「はい。今回は少し監督さんに御願いして、武器の変更を‥‥」
「そうか。‥‥とりあえず、彼女達に怪我だけはさせないでくれ」
ぺこりと頭を下げて去っていくゼロを見ながら、自分もマリーの様子を見に行こうとテントに近づいて‥‥何かが聞こえてきた。
「ちょ、ちょっとクレミアさん!? いきなりどこ触ってるのよ!?」
「あなたって、あどけなくてとても可愛い顔してるのに‥‥どうしてココだけはこんなに立派なの?」
「そ、そんなの知らないわよ!! ‥‥私だって、別になりたくて大きくなったんじゃ‥‥」
「バランスも良いし、形も整っていて‥‥ホント、もっとスキンシップしてみたいわね‥‥」
「ひゃん!? だ、だから今は着替えの時間でしょ‥‥ん‥‥」
「‥‥そっとしておこう」
どこかの番町のような顔で、そっと立ち去るエリクであった。‥‥ちなみに今、御剣はというと‥‥
「おらおらおら〜!! 撮影場には近づかせないぜ〜〜!!」
‥‥本物のオオカミキメラ相手に、撮影顔負けの大立ち回りを繰り広げていた‥‥
●怪人達との戦闘
「いっくぜ〜〜!! まずは下段からのスカート下ろし〜〜!!」
「ちょ、ちょっといきなりセクハラ技!? しかも異様に早い!?」
「‥‥俺でも追いきれん‥‥だと!?」
人型になった終夜ですら、セクハラパワーに目覚めたサウルの動きは捉えられない。
まるでブラックGの如くカサカサと動き回り、的確に背後から抱きしめようと‥‥!!
「‥‥セクハラは、重罪」
「ぬっは〜〜!?」
‥‥したその時、全く気配も無く現れたゼロの爪によって、あっさりとなぎ払われる。
その容赦無い攻撃は、またもや漫画のようにサウルを吹き飛ばし‥‥大木にへばり付かせる。
「そ、その双丘が、い・け・な・い‥‥むぎゅ」
「助かったわ‥‥というか、あんたも許可無しに勝手に‥‥」
「結果が大事‥‥。今は‥‥」
「ああ‥‥どうやら本命がお出ましのようだ」
そ知らぬ顔で銃を爪を構えるゼロと、同じく聖剣を構える終夜を見てマリーも顔を緊張に強張らせる。
三人が振り向いた先には‥‥相変わらずのセクシードレス姿のユキメが風と共にその場に立っていた。
「性懲りも無く、また現れたわね‥‥!!」
「うふふ、あなたにそれが出来るかしら? ‥‥それに、私からのプレゼントも気に入ってくれたみたいだし、ね♪」
「く‥‥!!」
そっと指差したマリーの首には、前回ユキメから付けられたチョーカーが光っている。
あれから何度も外そうと努力したのだが、結局どうやっても外せなかったのだった。
「さっさとあんたを倒して、これも外してやるわよ!!」
「ふふふ‥‥さて、出来るかしら‥‥ね!!」
妖艶な笑みを浮かべて手を振り上げた瞬間、近くの地面からまたまた盛り上がる土の山。
その中から出てきたのは、なんと巨大な虫達であった!!
「ち‥‥数が多い。ゼロ、手分けして片付けるぞ!!」
「了解‥‥」
終夜とゼロが二手に散り、マリーはその場に残った虫軍団とバトルすることになった。
数は多いものの、体力が少ないのかステッキの一振りで次々となぎ倒されていく‥‥
「この程度の敵で、私を止められるとでも思っているの!?」
「あら、弱い敵にも意味はあるのよ? ‥‥さあ、弾けなさい」
ユキメの言葉と共に、なんとマリー周辺にいた虫達が一斉に自爆したのだ。
そして吹き飛んだ体から飛び散る体液がマリーに降り注ぎ‥‥身体中が粘液塗れになってしまった。
「く、うぅ‥‥これぐらい、で‥‥え!?」
マリーが驚愕に顔を見開いていると、身体を伝い落ちる粘液が‥‥次々と彼女の衣服を溶かしていくではないか。
思わず恥ずかしさに動きが鈍った瞬間、彼女を一瞬でムチで縛り上げるユキメ。
「あらあら、服が溶けちゃったわね‥‥ふふ、色っぽいわ♪」
「ま、またあんたはこういう事を‥‥うぅ!?」
身動きが出来なくなった魔法少女を、またもや恒例の如く弄り始める女幹部。
赤くなった身体には痛々しいほどムチが食い込み、そしてその部分をまるで癒すかのように手を這わせていき‥‥
「ふふ‥‥さぁ、今はこの快感に身を任せなさい‥‥♪」
「だ、誰がそんな‥‥そ、そこはダメ‥‥!!」
「あら、まだ邪魔な布切れが残っちゃってるわね‥‥ふふ、こういうのは‥‥♪」
「そ、それ以上‥‥弄らないで‥‥ん‥‥ぁ‥‥」
「うふふ‥‥ホント、苛め甲斐があるわ♪」
身体に残った粘液を塗りこむように手を動かし、荒い息を吐きながら頬を染めているマリーの目の焦点がずれ始め‥‥何だかいつも以上にねちっこく苛めているユキメだったが、ようやく事態が動き出す。
周囲の敵を掃討した終夜とゼロが戻ってきて、ユキメへ一斉攻撃を開始したのだ。
「ユキメよ!! 主を離せ!!」
「‥‥殲滅」
「全く‥‥無粋な精霊ね」
先ほどまでの甘い雰囲気など微塵も感じさせない不機嫌さでマリーを解放し、二人の攻撃を回避するユキメ。
そして、ドサッと倒れこんだマリー‥‥しかし、その目は決して絶望に負けてはいなかった!!
「何度も何度も弄り回して‥‥ただじゃ返さないわよ!!」
ふら付きながらも立ち上がったマリーは、手のステッキを握りなおして気合を込める。
そう‥‥彼女は今、新たな進化を遂げようとしているのだ!!
「光と闇が合わさる時、そこに生まれる新たなコンチェルト!! 今こそかの者に、大いなる裁きを!! いっけ〜〜!!」
彼女が叫んだ瞬間に現れる、異質の魔方陣。
眩い光と漆黒の闇が複雑に絡まり合い、悪の女幹部に襲い掛かる!!
「こ、この力は、今までのものとは‥‥くぅ、また会いましょう!! プリティーマリー!!」
今までの余裕の表情は一瞬で消え去り、その奔流から逃げ去るように撤退していったユキメ。
残ったのは、マリーと終夜・ゼロのみであった。
「やったの、か‥‥?」
「いえ、きっとまた悪は現れるわ。でも‥‥」
「‥‥そう。戦うのみ」
こうして、新たな力を身に付けたプリティーマリー。
まだまだ悪の野望が潰えたわけでは無いが、何度でも立ち上がり、そしていつか世界に平和を取り戻してくれるだろう!!
戦え!! 僕らのプリティーマリー!! まだ戦いは始まったばかりだ!!
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥
「あー、撮影は無事に終わった‥‥って、なんだこの終わり方?」
「何だか‥‥漫画でよくありそうな感じね」
「‥‥え〜と、何だか打ち切りみたい‥‥?」
キメラとの戦闘を終え、少し服が破けている御剣とクレミアが唖然とその編集作業を見ている。
夢守も苦笑いしながらスポーツドリンクを手渡しているが‥‥監督はあくまで真剣に作業をしている。
「フハハハ!! こうしておけば何時でも再開できるし、ダメなら終わりだ!! 視聴者の顔が見物じゃい〜〜!!」
「‥‥只のやけくそじゃね〜か」
「そだね‥‥ん? 何だか向こうでユキメさんが正座しているような‥‥」
「あ〜、何だかやけに珍しい顔でエリクさんが歩いていってたね〜」
「‥‥仏の顔も三度まで。この言葉の意味は知っているな‥‥?」
「そ、その‥‥心から申し訳ないと思っているんだけ、ど‥‥」
「見てみろ、向こうでリアナに慰められているマリーを。自重という意味をだな‥‥」
「これでも自重した方なのよ‥‥最初は大量の虫を纏わり付かせて‥‥」
「‥‥‥」
少し遠くで監督とサウルがガッシリと握手しているのが見えたが‥‥何を話しているかは内緒にしておこう。合掌。