タイトル:湖畔の散歩には何が‥?マスター:優すけ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/06/15 17:46

●オープニング本文


「‥‥あら、雨が降ってきたのかしら?」
「そうですわね〜。恵みの雨、となれば良いのですけど〜」
 さっきまで少し暗い感じの天候だったのが、今はすっかり雨が降ってきている。
 外をちらっと見ると、慌てて家路へ急ぐ人々が多く見られた。
「そういえば、もうすぐ梅雨のシーズンね‥‥ジメジメするから嫌いなのよ」
「ですわね〜‥‥お客さんもますます来ませんし」
 カウンターでぽ〜っとした顔をしているリアナを見ながら、軽く苦笑いしているマリー。
 こういう時は彼女達の口数もそれほど多くならない‥‥だが、別に嫌な空気では無いので、たまにはこういう静かな空気を楽しんでいる所もあった。



 本当に閑古鳥がフルコーラスだった去年に比べて、今年は随分客数も増えていた。
 勿論そのたゆまぬ(?)努力が実を結んでいるのは確かだろうが、それ以上に能力者達に助けられた事が非常に多い。
 そして、その結果‥‥リアナにとって一つの夢が叶おうとしている。
「‥‥ホント、色々あったわね〜」
「ふふ‥‥きっと、私達同じ事を考えていましたわね♪」
「あら、まだ何とも言ってないのに?」
 不意にクスクスと微笑むリアナにつられて、マリーも同じくクスリと笑ってしまう。
 静かな店内に少し暖かい空気が流れた‥‥と、その時。音量を小さくしていたテレビが流した一つの地域ニュースに、リアナの耳がピクリと動いた。

『‥‥それでは次のニュースです。最近話題になっている『ベルヘール湖』に、色が金色のスライムキメラが現れたそうです。しかし見た者はほとんど無く、ただの見間違いでは無いかという噂です‥‥』

「‥‥あら〜? まだ何も言ってませんのに、どうして店を閉める準備を始めるのですか〜?」
 リアナが不思議そうな顔をしている間にも、てきぱきと閉店準備をしていくマリー‥‥その顔は、もう全てを悟ったような顔である。
「‥‥さて、後は荷造りと連絡だけね。さっさと帰って店を再開するわよ?」
「むぅ〜‥‥何だか雰囲気がイジワルです〜‥‥」
 何だか無言の抗議を受けているような空気を感じ取ったリアナは、ぷく〜っと頬を膨らませて電話を取るのだった‥‥

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
佐倉・咲江(gb1946
15歳・♀・DG
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
エリク・バルフォア(gc6648
18歳・♂・ER
アクア・J・アルビス(gc7588
25歳・♀・ER
佐東 司(gc8959
25歳・♂・HG

●リプレイ本文

●湖畔へ向かう能力者達‥‥
 パチパチと弾ける焚き木の音‥‥そんな深く静まった森の夜、外を警戒しているB班の姿があった。
 今回はあくまで『金色スライム』の『観察』であり、それほど戦いに特化した依頼では無いのだが‥‥
「くっくっくっく‥‥キメラは全て私が殲滅してあげますよ‥‥」
「ほ〜ら、そんな怖い顔しないの。デューク君はそういう一面があるから誤解されやすいんだと思うな」
 まさしく『マッドサイエンティスト』という言葉がそのまま具現化したような能力者・ドクター・ウェスト(ga0241)がニヤニヤ笑っている隣で、軽くため息を付きながらも傍を離れようとしない夢守 ルキア(gb9436)。
 今回は全面的に彼のサポートに回る予定の彼女‥‥そんな夢守は、旅に出る前にリアナに『ある物』を渡していた。
「ま、足止めにはなると思うんだけど‥‥使わなければそれに越したことは無いけどね」
「くくく‥‥全く夢守君は変わった人ですねぇ〜。こんな私に付いてきて何になるというのです‥‥?」
 話を全く聞いていない様子でカロリーバーを齧っているウェスト。
 そんな彼に対し、あくまで自然体な雰囲気で自分の紅茶を飲んでいる夢守は笑いながら言った。
「う〜ん、なんでだろうね〜‥‥ま、とりあえず『そうしたいから』、かな?」
「ひゃひゃ‥‥あなたは本当に興味深い人の一人ですよ‥‥くくく」
 暗黒のマッドサイエンティストに、金髪美少女ストライクフェアリー‥‥変わった組み合わせながら、どこか噛み合っているような雰囲気の二人であった‥‥



「梅雨か‥‥出来れば依頼の間は降らないで欲しいもんだがな」
「そうですね‥‥でも、雨をBGMに過ごすと言うのも風流なモノですよ?」
 同じB班の佐東 司(gc8959)がふと呟いていると、それに答えるように終夜・無月(ga3084)がやんわり微笑んでいる。
 終夜は特に決まった班分けがある訳では無いが、今は外の警戒班として佐東の横に立っていた。
「ふむ、終夜さんは雨が好きなのか?」
「いえ、特に特別好きと言う訳ではありませんが‥‥あくまで雰囲気、というか気分的な問題ですよ」
 クスリと笑いながら曲げた指を口元に当てている終夜。
 どこか可愛さを伴うその姿に、少しドキリとしてしまう佐東だが‥‥『彼』は、あくまで『男』である(号泣)。
「それより、佐東さんはまだ二回目の依頼だとか‥‥どうです? 少しは慣れましたか?」
「‥‥いや、なかなか難しい。昔の話をすると長くなってしまうが‥‥とりあえず、俺はあまりドンパチをしたくないってぐらいかな‥‥」
 どこか遠い目をしている新人能力者を、ベテラン能力者はどこか懐かしそうに見守っていたのであった‥‥



「がぅ〜‥‥ダウト!!」
「残念。それは本物だ」
「あらあら〜、また佐倉さんが全部持っていってしまいましたね〜♪」
「何て言うか‥‥無表情でも、どこか顔に出るのよね‥‥」
「むぅ〜、今度佐倉さんの事も研究してみたいですぅ〜」
 外の警戒ムードなど全く知らないかのごとく、テントの中のA班とリアナ・マリーの5人はトランプに興じていた。
 つい先ほど、エリク・バルフォア(gc6648)が出したカードをダウト宣言した佐倉・咲江(gb1946)が、全部泣く泣く引き取った直後であった。
「がぅ‥‥これで3連敗‥‥」
「そ〜んな悲しそうな顔をしないでくださいな〜♪ 今度はきっと勝てますよぉ〜♪」
「が、がぅ‥‥!? く、苦しい‥‥胸‥‥」
 思いっきり佐倉に『むぎゅ〜〜!!』っと抱きついているアクア・J・アルビス(gc7588)がぽわぽわ微笑んでいるのだが‥‥その『ツインメロン』は、佐倉を窒息させるに充分な破壊力を持っていた‥‥。
「ふむ‥‥それにしても、今回は多少気楽かと思ったんだがな」
「まあ気楽と言えば気楽だろうけど‥‥とりあえずいつも通り護衛してくれれば、それで充分だわ」
「だな。‥‥何事も無い事を祈る」
 今までの苦労を色々と思い出したのか、マリーと揃って苦笑いをするエリク‥‥そんな空気を全く感じ取っていないのか、リアナが新たにトランプをシャッフルしている。
「さ〜て、まだまだ時間はたっぷりありますからね〜♪ 今度は佐倉ちゃんが先ですよ〜?」
「がぅ‥‥今度は、勝つ‥‥!!」
「はぅ〜〜♪ 気合を入れた佐倉さん‥‥やっぱり可愛いですぅ〜〜♪」
 アクアが身もだえしながら佐倉に『むぎゅむぎゅ!!』っと『メロン』を押し付けながら‥‥次の勝負が始まったのであった‥‥。




●静かな湖畔の周りにて‥‥
 幸いにも晴天に恵まれた湖畔。
 キラキラと輝く水面に、真っ青な空‥‥まさに絶好の散歩(?)日和であった。
「う〜ん‥‥なかなか現れませんわね〜‥‥」
「‥‥もしかしたら、ガセネタの可能性も‥‥」
 湖畔の周辺をちょこちょこと歩き回っているリアナとマリーだが‥‥その周りをしっかりと7人もの能力者が護衛をしている、という光景はなかなかのものだ。
 ‥‥ちなみに、何故か家族連れでバーベキューをしている集団もあったりする。
「がぅ‥‥金色のスライムって、お金で出来てたりとかはしないかな‥‥」
「どうでしょ〜か〜? でも‥‥やっぱり金色のスライムって興味深すぎです〜♪」
 佐倉とアクアが色々と妄想を膨らませている後ろでは、佐東が足を止めて湖畔の水面を眺めていた。
 能力者になる前の過去‥‥ふと昨夜話してしまった事が、少し彼の秘めていた思いを呼び起こしてしまったようである。
「‥‥まだまだ俺も、修行が足りないか‥‥全く」
「おや、どうしましたか? 急に足を止めて?」
 何の前触れも無く寄って来た終夜を見て、佐東がふと顔を向ける。
 寝るとき以外は常に覚醒しているせいか、どうにも彼(彼女?)が女性にしか見えない佐東だが‥‥また話をぶり返す気も無い。
「いや、綺麗な湖畔だと思ってな‥‥こうやってのんびり散歩するのも悪くない」
「ふふ、確かに綺麗ですね。‥‥おや? 何だか向こうで騒ぎが‥‥」
 終夜がふと顔を向けた先には、何やら子供達が走り去っていく姿があった。
 その姿は、どこか慌てている様子が見て取れて‥‥
「あらあら〜? 何だか騒がしくなりそうですねぇ〜」
「がぅ‥‥というか、もう騒がしくなってる‥‥」
 流石リアナに負けず劣らずのおっとり系お姉さんというか‥‥とにかく佐倉ら能力者達は、早速その場所に向かうのであった。


‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥


「ひゃ〜〜ひゃっひゃっ!! さぁ、狩りの時間だね〜!!」
「デューク君? あくまで危害をなすスライムだけだからね?」
「くっくっく‥‥分かっていますよ。あくまで向かってくるスライムだけ、ですよね‥‥」
 感情の起伏が激しいウェストだが‥‥流石に能力者、しっかりと最低限の線は守っている。
 そんな彼をカバーするべく、夢守は襲い掛かってくる水色スライムに目掛けてエネルギーガンを連射。
「とにかく戦わなきゃ戦闘は終わらないからね‥‥いっけ〜!!」
 一体一体の体力はさほど無いらしく、当たっていく端から音を立てて蒸発していくスライム。
 時折触手を伸ばしてくるものの、一般人ならともかく能力者が当たってしまうようなヘマはしない。
「ふむ、とりあえずこの一帯は大丈夫か‥‥リアナ、僕たちが向いていない方向へ歩くな」
 周辺を見張っていたエリクが、しっかりと彼女に釘を刺す。
 彼女は何と言うか‥‥見事に誰も見ていない隙を狙って歩き出すような癖がある。
「全く‥‥ちょ〜っと目を離したらすぐにこれなんだから‥‥」
「ま、元々半分以上が観光目的なんだ。誰か一人でも目を離さなければ大丈夫‥‥の、はず」
 どこか尻すぼみになっていくエリクに、少し苦笑いをしているマリー‥‥とにかく、戦いはそれほど長引くような厄介なものでは無いようであった。
 そうこうしている内に、一般人の避難誘導を終えた佐東と終夜が戻ってきた。
「こっちはもう大丈夫だ‥‥というか、ほとんど楽勝だったみたいだな」
「怪我が無いのが一番ですよ。夢守さん達も‥‥全く大丈夫そうですね」
 終夜達が、途中で言葉が止まったのも無理はない。
 なんせ怪我一つ無いどころか、飛び散ったスライムの残骸すら所々にへばり付かせて帰ってきたくらいなのだから。
「ま、この程度なら大丈夫だね。ほ〜ら、デューク君も無事を報告する!!」
「くっくっく‥‥スライムの攻撃なら知り尽くしてるからね‥‥」
 迷彩服の上に白衣という不思議な格好ではあるが、破れたような箇所も全く無い。
 とりあえず普通のスライム相手に全く問題無いのは、彼の戦闘力の高さを示しているだろう。
「さて、と‥‥そういえばアクアさんは?」
「む、そういえばさっき佐倉と近くを歩いていたような‥‥」
 マリーとエリクがふと周囲を見渡していると、少し離れた場所で何やらしゃがみ込んでいる二人の姿。
 果たして、何か見つけたのだろうか‥‥

‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥


「あらあら〜、何か発見しましたか〜?」
 リアナがちょこちょこと図鑑を持ったまま、しゃがみ込んでいる佐倉とアクアの傍に寄っていくと‥‥にっこ〜っと笑ったアクアが彼女に微笑みかけてきた。
「うふふ〜♪ リアナさんお目当てのスライムさんです〜♪」
「あらあら〜♪ ようやくお会いできましたか〜♪」
「‥‥何なのかしら、このぽわぽわ空間‥‥」
 『Wぽわぽわ攻撃』にマリーが軽く頭を抑えていると、その裾をくいくいっと引っ張る佐倉。
「がぅ‥‥足元、見る‥‥」
「え‥‥?」
 佐倉に促されるまま足元に視線を向けると‥‥なんと、噂の『金色』スライムが池に向かってもにょもにょと動いていたのだった。
 ただ‥‥
「‥‥『金』っていうよりは『黄色』、よね?」
「‥‥しかも、大きさが普通のスライムの半分くらい、か」
 エリクがむぅっと唸ったのも仕方ない。
 確かに珍しい色ではあるが、ニュースで言っていたような『黄金』というような色では無く『少し明るい黄色』と言った方が正しい色彩。
 それに加えて、さっきまで戦っていたようなスライムに比べてずっと大きさが小さい。
「これはこれは‥‥まあ危害は加えない様子ですけど、どうします?」
「ほらデューク君。今回の依頼の目的は?」
「‥‥勿論分かっていますよ〜。今回は見逃してあげます‥‥くくく」
 終夜と夢守に促されて、どこか不機嫌そうな感じながらも渋々引き下がるウェスト。
 それを見て少し緊張していた佐倉とエリクも胸を撫で下ろしたようだ。
「さて、せめて日が暮れないうちに帰り支度をしておくか。周囲の警戒は任せてくれ」
「僕も手伝おう。‥‥アクアは離れる気は無さそうだな」
「〜〜〜〜♪ きいろ〜の〜スライムさ〜ん〜♪」
「う〜ん‥‥生け捕りは、流石に怒られちゃうですね‥‥」
 佐東とエリクが周囲を警戒し始め、リアナとアクアが一緒にじ〜〜〜っと観察‥‥それは、そのスライムが池に戻る1時間の間、ずっと続いたのであった‥‥合掌。




●いつもの宴会光景‥‥
 依頼が終わっていつもの温泉‥‥ではなく、今回の締めは『銀の葉っぱ亭』であった。
「うふふ〜♪ やっぱり見に行って良かったですわ〜♪」
「無事に戻れて何よりというやつだな。ま、飲みな」
 クスクスと笑いながらワインを傾けているリアナを見ながら、どこか機嫌が良さそうな雰囲気のマスター。
 その原因は分からないが‥‥きっと何かがあったのだろう。
「‥‥例の人、もう来なくなったのかしら」
「‥‥さあな。だがまあ、この間の依頼を考えると概ね想像はつく」
 マリーとエリクが少し離れた場所で一緒に向かい合ってビールを飲んでいるのだが‥‥どこか表情が暗い。
 あえて言及はしない二人だが、その男性に同情の念を抑えられない‥‥と思っていた矢先。
「がぅ、美味しそうなのいっぱい食べる‥‥そういえば、マスターのいいことって‥‥前回の依頼絡み?」
「「ちょ、ちょっと(お、おい)!?」」
 思わずマリーとエリクが突っ込みを入れてしまう佐倉の発言。
 あくまで無害そうにパスタを食べていた彼女の無邪気な言葉に、マスターは‥‥そのいかつい顔を『ニヤ〜』っと歪ませて話す。
「おうよ。例のやつをちょっと酒に混ぜてやったら、もう人が変わったみたいに寄らなくなったぜ」
「がぅ‥‥それは良かった‥‥ピッツァお代わり」
「「‥‥‥」」
 どこか苦しそうに胸を押さえているエリクとマリー‥‥二人の気苦労は、こうして終わりを告げた。合掌。



「ふむ‥‥ここの料理はなかなかの美味だな」
「ですよね〜♪ それにマスターさんも人が良いんですよ〜♪」
「そ、そうなのか‥‥一瞬邪悪な気配を感じたのだが」
 カウンター近くのテーブルで食事を取っていた佐東とアクアが、目の前のムニエルに舌鼓を打っていると‥‥奥のキッチンからなんと終夜が出てきた。
「しゅ、終夜さんか‥‥? そんな所で何を‥‥」
「いえ、少し厨房をお借りしまして、追加の料理を少し。では早速仕上げに‥‥それ!!」
 佐東が一瞬驚いた瞬間、終夜の手が『サラサラ〜』という音が聞こえそうなくらいにスムーズに動き始めた。
 盛り付けたパスタにフライパンから調理した具材を載せ、上から軽く粉パセリをかけ‥‥
「う〜ん‥‥やっぱり私が作るのと違います〜。こうして見ていても全くです〜」
「あの手際は、やはり普段から料理に慣れた動きだな。アクアさんも普段から料理をしてみたらどうだ?」
「ですね〜‥‥でも、やっぱり上手くいかないんです〜‥‥」
 そんな会話をしている内に出来上がる終夜の料理。
 ほんわかと立ち上る湯気と香りに、またもや腹の虫が鳴いてしまいそうである。
「では、俺は向こうの方へ持っていってきましょうか‥‥」
「あ、そういえばウェストさんと夢守さんは〜?」
 ふと気付いたようにアクアが声をかけると、周りを見ていた終夜が口を開いた。
「確かウェストさんは早く戻られたようですけど‥‥夢守さんもでしょうか?」
「さあな‥‥どこか複雑そうな雰囲気を持った男だったのは確かだが‥‥」
 ぽつりと呟く佐東の声は、すぐに喧騒の中に消えてしまった‥‥



「全く仕方ないよね〜、デューク君は。せめて一緒にいるだけでも良いのに」
「くっくっく‥‥我輩は次のバグアを倒しに行かなくてはならないですからね〜‥‥」
 既に深く静まった街‥‥聞こえてくるのは虫の音だけという中、食事を遠慮して立ち去ろうとしたウェストを追いかけるように付いてきた夢守の姿があった。
 勿論アルコールも飲めず、普通の食事が難しいウェストにとって今回の宴会は厳しいものだっただろうが‥‥
「またすぐそうやって‥‥ま、良いけどね。とりあえず帰るまでは付いてってあげるから」
「別に頼んではいませんが‥‥では、お好きにどうぞ」
「うん、好きにする」
 二人の過去に何があったのか、それは誰も知らないが‥‥少なくとも並んで歩く後ろ姿は、決して居心地の悪い雰囲気は感じられなかった‥‥合掌。