●リプレイ本文
●スライム掃討作戦
「う、ぅん‥‥はぁ‥‥」
部屋に到着して最初に目に付いたのは、うねうねと動く粘体に捕らわれて身動きの取れそうに無さそうなリアナの姿(右半身がほとんど半裸状態で、申し訳無さそうな程度に白衣の一部が彼女の大切な部分を隠している)であった。その状況を何とかしようと必死に動いていたのか、どことなく顔を赤くしながら吐息を漏らしている。
「と、とりあえず女の人を先に助けないと!! おね〜〜さ〜〜ん!!」
「‥‥少し、いや無茶苦茶な不安を伴うが‥‥救助のほうはあいつらに任せるか。こちらは他を叩く、行くぞ常木!!」
「わ〜か〜ったよ〜、ジュナスく〜ん♪ が〜んば〜るぞ〜♪」
何の迷いも無く半裸の女性に突撃していく知り合い(リル・ミュー(
gc6434))の姿を見て、思わず抜けそうになる力をぐっと堪えたジュナス・フォリッド(
gc5583)は、後ろに控えていた常木 明(
gc6409)に声をかける。今回が初任務と言うだけあって、少しは緊張を‥‥まったく感じさせないその様子は将来大物になるかもしれない。‥‥あくまで『かも』だが。
「ふむ、こう周りを気にしないといけない状況だとスライムも厄介な敵になりますね」
「ファンタジーなら、スライムは取り込まれた人の無事を祈りながら燃やすのが定石なのだが‥‥」
「いえいえ、そんな物騒な事は出来ませんよ、シン様」
かなり物騒な事を呟くシン・サギヤ(
gb7742)に対して、やんわりと話しかけるヨハン・クルーゲ(
gc3635)。かなり色々な物が散在していたり、細かな材料や木材が多い部屋の中で火でもつけようものなら、必要なのは能力者ではなく消防車だ。
「とにかく俺達は周辺のスライムを片付ける。さっさと倒してさっさと帰るぞ」
「そうですね。ではとりあえず、こちらからお相手しましょうか」
そう言った後にすぐ近くにいたスライムに目掛けてヨハンが筒状の機械剣を振ると、じゅわっと音が鳴り、切った部分が徐々に溶けていく。どうやら熱や知覚系にはとても弱かったようだった。しかしスライムもただではやられないと、ぶんぶんと触手を振り回し始める。
「ふん‥‥俺の安穏なる日々のためにさっさと殺されるがいい」
しかしその様子を冷静に見ていたシンは、振り回す触手に一定の隙がある事を発見した。そしてその隙を目掛けて天剣を目にも止まらない速さで突き、見事あっさりと一匹目のスライムを駆逐した。
「あちき達も負けてられないにゃー。それじゃージュナスくーん、いっくじぇー♪」
「あぁ、無理はするなよ。援護は俺に任せろ」
少し離れた場所にいた常木とジュナスは、どうやら挟み撃ちを狙いながら攻撃を仕掛けていくようだった。常木がノコギリアックスで牽制している隙に、上手くジュナスが背後から天剣を振り下ろす‥‥何度か繰り返すうちに少し大きめであった2体目のスライムが崩れ落ちる。
「や〜った〜じぇ〜♪ あちき達のか〜ち〜♪」
「あぁ、上手い連携だったな常木‥‥って、ど、どどどうしたんだその姿!?」
「ほえ? ど〜したのかにゃ〜?」
喜びのあまり思いっきり抱きついた常木の服は、所々に穴が空いており傷一つ無いすべらかな肌がむき出しになっていた。どうやら牽制している内に少しだけ触れてしまったみたいだが、まったく上手いことに豊かな乳房の近くや真っ白な臀部といった部分が脱げていたのだ。それに気付かないまま無邪気に飛び掛ったのだからジュナスもたまらない。
「と、とにかくこれを着ておくんだ!! 後でちゃんと着替えるんだぞ!?」
「は〜い〜。‥‥ふにゃ〜、ジュナスくんの匂いがするよ〜♪」
「ふふ、若いっていいですね〜。さて、次はどこでしょうか」
「‥‥‥興味ないな」
白衣をぼふっと被って無邪気に笑っている常木を、横目に見ながら慌てているジュナス。そんな彼らの姿を見ながらにこにこと微笑んでいるヨハンとシン(こっちはあくまで無表情だったが)は、早速次のターゲットを探し始めるのであった。
●救出作戦開始
「さて、私達は向こうに見える彼女を早く助け‥‥」
「お姉さ〜〜ん!! 今から俺が助けに行きますからね〜〜!!」
辰巳 空(
ga4698)が彼女の元に向かおうと足を踏み出した瞬間には、すでにリルが10歩は前に進んでいた所だった。その迅速さは正に疾風のごとく‥‥速度が上がったのは彼女の姿を見た瞬間だったのは言うまでも無い。
「ちょ、ちょっとリルさん〜!? 一人で走っちゃ危ないよ〜!?」
「わあ〜、何かえっちなモンスターだな〜!! 上手く狩れるかな〜〜!!」
慌てて彼を追いかけようと、刃霧零奈(
gc6291)が危険を顧みず、同じように敵の真ん中へ飛び込んでいき、その後ろからあくまでマイペースにうきうきと喜んでる水色のワンピースにリボンカチェーシャを身につけた、まるで可愛らしいお人形のような姿をしたアルテミス(
gc6467)。‥‥ちなみにれっきとした『男』である。
「ふむ‥‥どうやらここでラジエルを使っても平気なようですね。‥‥ならば!!」
「え〜〜〜い、そこをどけ〜〜〜!! お姉〜〜さ〜〜ん!!」
あらかじめ冷静に使用可能な武器を見定めていた辰巳が炎のように光り輝く片手剣でスライムの中心を突くと、スライムはかなり嫌がるように触手を振り回していた。そして上手く開いた隙間を目掛けて、まるで某三代目怪盗のようにぴょ〜んと飛び掛っていくリル。しかしスライムはあくまでスライムらしく、なかなか思うようにリルの剣が響かない。そこへようやく到着した刃霧とアルテミスが、お互いの獲物を使って何とかリアナからスライムを引き剥がそうとするが‥‥時間がかかるにつれ、少しずつ触手の被害が増えていってしまっていた。
「ちょ、ちょっとへんなトコ‥‥ん!? そ、そんな所まで入ってきちゃ‥‥うぐ、んぐ〜!?」
「も、も〜‥‥そんなにボクの身体を‥‥ひゃう!? そ、そこは〜‥‥力が入らないよ〜」
ぬちょぬちょと小さな音をさせながら、ゆっくりと刃霧の豊満な肢体に触手が絡み付いていく。ちょんちょんと口元に当たる触手を振り払おうと必死に首を振るのだが、容赦なく唇の門を開けられ潜り込まれてしまう。そしてアルテミスの少年のような(少年だが)身体にも魔の手が忍び寄り、まるで少女のような細身の腕や太ももにしっかりと半透明な触手が巻きついていた。そんな彼女達の腕や太ももは、まるで粘性のある透明な液体をかけられたかのようにてらてらと光っているのだった。
「‥‥‥‥スライムグッジョブ!!」
「まったく、そんな場合ではないでしょう? とにかく、この隙に片付けますよ!!」
良いものを見させてもらったかのようにビッと親指を立ててウィンクをするリルを横目に、ため息をつきながら辰巳が天剣で彼女達を救い出すようにスライムに突きかかる。彼女達を弄くる事に夢中だったスライムにその攻撃をかわすことは出来ず、あっさりと体が崩れていった。そして何とかリアナ(と仲間二人)を救出することに成功したのだった。
●任務を終えて‥‥
どうやら部屋に大きな被害も出さず、無事に任務を終える事が出来た。一応最後に辰巳がリアナの様子を調べたが、服以外に大きな被害は無さそうである。
「ふむ、どうやら大丈夫そうですね。一応後で精密検査を受けて下さいね」
「はい〜、分かりましたわ〜。ど〜も皆様ありがと〜ございます〜」
「まったくもう‥‥ホントに彼らが来なかったらど〜なっていたことか‥‥」
深々と頭を下げるリアナの横で心配そうに寄り添っているマリー。親友が無事だったことに、心から安堵しているようだった。その様子を眺めていたシンがぽつりと言葉を漏らす。
「ふん、これに懲りたらキメラには二度と近づかないことだ」
「ま〜ま〜、こんなキメラだったら何度でも‥‥いやいや毎回あっても良いくらいだよ!!」
「‥‥お前、それは言い直しているようで内容は変わっていないぞ」
「いや〜こ〜んか〜いは楽しかったじぇ〜♪ また次も誘ってねー♪」
どことなく満面の笑みを浮かべているリルに対して、じと〜とした目で見つめているジュナス。今回の事件において一番喜んでいたのはきっとリルだったに違いない。‥‥もしかするとジュナスも、かもしれないが。その原因でありそうな常木は、まだ彼の白衣を纏ったままである。
「ううぅ‥‥また今回も晒しちゃった‥‥私って一体‥‥」
「う〜ん、ボクは別に面白かったけどな〜。何だか気持ちよかった、かも♪」
「ええとアルテミス様? 確かあなたは男性のはずでは‥‥」
ぶつぶつと顔を真っ赤にしながら俯いている刃霧の横では、同じような被害にあったはずのアルテミスがけろりとしている。果たして彼は本当に男なのか? 深く考え込むヨハンのすぐ横で、壊れた窓から差し込む夕焼けの光が優しく室内を照らしているのであった‥‥
‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥
‥‥
ちなみに、リアナの作っていた薬を巡ってまたひと悶着があるのだが‥‥またそれは別の話である。