タイトル:暗中模索マスター:神宮寺 飛鳥

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/12/26 21:05

●オープニング本文


「ようこそ、リギルケンタウルス級宇宙輸送艦『ベネトナシュ』へ。私が艦長のコジマ少佐です。よろしく、クドウ君」
 温厚な笑顔と共に差し出された右手。シン・クドウは少々戸惑いながらその手を取った。
 宇宙要塞カンパネラに停泊するベネトナシュ艦内、ブリッジに案内されたシンは、実は自分が何故呼ばれたのかすら把握していなかった。
 人類が宇宙へ戦力を送るようになって間も無く、シンもまた宇宙へと上がっていた。といっても具体的に上がってどうするのかは聞いておらず、本当にわけがわからないまま案内されてここに立って居るわけだ。
「いやぁ、こんな所までご足労頂いてしまって‥‥いやぁ、ご苦労様です、うん」
「は‥‥」
「まあまあ、楽にして下さい。いきなり本題ですが、クドウ君にはこれから我々と共に月に向かって貰います」
「月へ、でありますか?」
 また唐突な話である。無表情ながらにきょとんとするシン。
「クドウ君はOF第二隊が壊滅状態になってから、所属が中ぶらりんになったままでしたね?」
 かつて宇宙への偵察部隊の一人として集められ、作戦に参加したシン。
 作戦からの生還者は僅かであり、部隊は事実上壊滅。彼は続く低軌道衛星攻略戦に参加。その後もUPC軍が宇宙へ上がる動きのゴタゴタの最中で右往左往していたのだ。
「一応、各地で宇宙軍を発足させようという動きはありますが、現状ではまだ宇宙で軍を展開出来る程準備が進んでいません。ついこの間宇宙へ出られるようになったばかりですから、当然と言えば当然ですけどねぇ」
 コジマ少佐の話を黙って聞くシン。表情は全く動いていない。
「そこで、クドウ君は一時的に我がベネトナシュの所属として預かる事になりました」
「は‥‥」
「正直な所、今後どのような形で宇宙での戦力を構築していくのかはまだ見通しが立っていませんが、クドウ君のように宇宙戦の経験を積んだ兵士を余らせておくのも勿体無いですし、まあうちで使おうじゃないかと」
 実際はそんな単純な話でもないのだが、それを一から説明しても仕方が無いというコジマの判断である。尤も、シンはどちらでも良さそうだが。
「ちなみに、ベネトナシュに積んでいるKVは君の天一機のみです」
「‥‥自分の機体のみ、でありますか? 他の戦力は‥‥」
「先に言った通り、宇宙でのUPC軍はまだ足並みが揃っていません。そこで我がベネトナシュはULTの傭兵を支援し、彼らの助力を得て『間に合わせ』を行なう艦なのですね」
「つまり、手の足りない戦場へ向かい、傭兵と共に行動する艦であると」
「いやぁ、流石クドウ君。物分りがいいですねぇ」
 つまりUPC軍としてのKV乗りはシン一人だけ、という事である。が、別にシンはどうでもいいのか、何の反応も示さなかった。
「今回我々は月の偵察部隊を援護する任務に着きます。偵察隊が月の調査を行う間、我々はその周辺宙域に待機し、襲撃があった場合これを撃退するわけですね」
「了解しました」
「まあ、ざっと見た感じ月周辺にバグアの大部隊がいるようには見えませんから、それほど危険な任務にはならないと思うんですよねぇ」
「は‥‥」
 会話が全く弾まない。そんな微妙に重苦しい空気を散らしたのは第三者の登場であった。
「何か他に言いたい事はないんですか? 色々と口を挟む余地はあったと思いますが」
 扉が開き、ブリッジに入ってくる金髪の女性。シンとコジマの間に立ち、握手を求める。
「初めまして、クドウ軍曹。私はウルスラ・ホワイト少尉です。この艦で管制官をしています」
「自分はただの兵士です。命令に不服を述べられる立場にはありませんので」
 握手をしながら答えるシン。ウルスラは口元に手を当て、苦笑を浮かべる。
「あー。クドウ君、彼女は実質私よりも凄くてね。私は階級ばかり少佐で艦長なんてやってますが、いざとなったら彼女が艦を仕切りますから」
「は‥‥?」
「そろそろこの艦の事情が見えて来ませんか? 冴えない艦長、冴えないクルー。ところがホワイト君はこんなに若くて美人で、なんというかこう、生まれ育ちが違うような感じでしょう?」
「は、はあ」
「この艦は彼女の父上が無理矢理引っ張り出して来た‥‥」
 と、そこでウルスラの咳払いが入る。コジマは帽子を目深に被り、黙り込んでしまった。
「私も士官としてコジマ少佐の下で勉強させて貰っている立場なんです。行く行くは彼のような立派な艦長になるのが目的ですね」
 コジマは何も言わずに背を向け遠くを見ている。何と無く二人の関係性を把握し、シンは頷いた。
「ところでシン、何か気付かない?」
 急にフランクに話しかけられ顔を上げるシン。
「何か‥‥でありますか?」
「私の名前。ウルスラ・ホワイト」
 背後で手を組んだまま思案するシン。暫く考え込んでいたが、結局答えは出なかった。
「そうですか‥‥意外と鈍感なのですね、軍曹」
「は‥‥申し訳ありません」
「答え合わせは後にしましょうか。傭兵が集まり次第、ベネトナシュは月へ出航します。コジマ少佐、彼に艦内を案内してきますね」
「ええ、はい。クドウ君、頑張ってください」
 ひらひらと片手を振るコジマ。こうしてシンはウルスラに続きブリッジを後にするのであった。

●参加者一覧

地堂球基(ga1094
25歳・♂・ER
流 星之丞(ga1928
17歳・♂・GP
威龍(ga3859
24歳・♂・PN
赤崎羽矢子(gb2140
28歳・♀・PN
鹿内 靖(gb9110
33歳・♂・SN
海原環(gc3865
25歳・♀・JG
久川 千夏(gc7374
18歳・♀・HD
クローカ・ルイシコフ(gc7747
16歳・♂・ER

●リプレイ本文

●出航
「思えば漸く月に手が届く処まで来たんだよなあ‥‥」
 ベネトナシュ船内。窓の向こうを眺め、地堂球基(ga1094)は感慨深く呟いた。
 幼い頃から憧れてきた星の海に彼は今立って居る。宇宙に出る事が夢のまた夢だった頃からすれば、驚異的な前進だ。
「戦場も徐々に宇宙へと移行しつつあるのかな?」
 球基の隣に立ち、窓に手を着き笑う威龍(ga3859)。流 星之丞(ga1928)はマフラーに手をやり、静かに呟く。
「この間の大規模は地上機で上がりましたが‥‥宇宙機体では初めてになるから、気を付けなくちゃな」
「私も準備が間に合えば良かったのですが」
 腕を組み、小さく息を吐く久川 千夏(gc7374)。そんな彼女に鹿内 靖(gb9110)は苦笑を浮かべる。
「装備に関しては、有り物で何とか遣り繰りするしかありませんからね」
「ええ‥‥しかし、『スレイヤー』は大気圏内最強を謳った機体です。場所がどこでも、相応の力を発揮してくれると思います」
 千夏の言葉に頷く靖。それにしても、千夏には気になる事があった。
「何もかも準備万端とは行かないだろうけど、艦載機が1機のみってどういう事よ」
 ジト目で溜息を一つ。この輸送艦ベネトナシュには、シンのKVしか積んでいない‥‥その事実を聞いた時には驚いた物だ。
「輸送艦だから武装を持たないってのは百歩譲って納得出来ても‥‥軍がする事とは思えないわね」
「――ごめんなさいね、頼り無い船で」
 近づいてくる輸送艦のクルー。ウルスラは苦笑を浮かべ、千夏の前に立つ。
「でも、これ以上KVを積むと、貴方達傭兵のKVを乗せるスペースが無くなってしまうの。この艦は貴女達の運用に特化しているから、クドウ軍曹の機体で手一杯なのよね」
 笑顔で握手を求めるウルスラ。千夏はそれに応じ手を握る。
「ウルスラ・ホワイト少尉です。宇宙に慣れていない半端な軍人より、貴女達傭兵の方が実力は上だと思っています。皆さんの活躍、期待していますね」
「全力は尽くします。ここまで来て駄目でした‥‥なんて、いい笑い者ですから」
 そんな二人の様子を眺めるクローカ・ルイシコフ(gc7747)。どうにも驚いた様子でウルスラを見つめている。
「ふむふむ‥‥クローカ、気付いた?」
「そりゃあ、顔もそっくりだし」
 クローカの肩をポンと叩く赤崎羽矢子(gb2140)。ニヤニヤと悪戯な笑みを浮かべている。
「軍曹気付いてないみたいね。帰って来てから、少尉の口から教えて貰った方がいいよ」
「何がいいの?」
「それは‥‥面白さが」
 呆れた様子で溜息を漏らすクローカ。一方、海原環(gc3865)はシンに突然抱きついていた。
「やぁやぁ、君がシン・クドウ君かい! 私は海原環と言うしがない傭兵さ。タマって呼んでねっ!」
 無表情で停止しているシン。環は腕を組み、顔を覗きこむ。
「私もシンって呼んで良い?」
「ダ‥‥」
「ダメって言っても呼んじゃう! 私を月まで連れてって‥‥って感じ?」
 擦り寄る環。威龍はシンに歩み寄り、握手を求めた。
「あー、忙しそうな所悪いな。俺は威龍‥‥軍曹殿、しばらくは同じ釜の飯を食う事になるんだ。宜しく頼むな」
「ああ、こちらこそ」
 握手を交わす二人。クローカは歩み寄り、シンに声をかける。
「そうそう、ファフォ曹長は元気にしてる?」
「ああ‥‥病院内を、逆立ちでウロウロしていた」
 遠い目を浮かべるシン。クローカは隣に並び、同じく星の海に思いを馳せるのであった。

●出撃
『目標宙域に到達。偵察隊の進行上にキメラを探知。出撃し、道を切り開いて』
 コックピットにて各々KVを起動させる傭兵達にウルスラの声が響く。彼方此方に指示を飛ばすウルスラの声に星之丞は少し驚いた様子だ。
「凄い、ほんとに艦を仕切っている‥‥」
「兵法にも敵を知り己を知れば百戦して危うからず、と言うし
な。調査隊の安全確保の為にも全力を尽くす事としようか」
 カタパルトへ移動する威龍。開かれた道の向こうへ目を向ける。
「流、赤崎、先に行くぞ。B班、先行し敵を叩く!」
『了解。進路クリア、発進どうぞ』
 次々に出撃するKV。ベネトナシュが遠ざかり、偵察隊の艦を追い抜き戦場へ向かう。
『既に前線で別部隊が交戦中。援護して月に行かせてあげて』
「調査隊には指一本触れさせはしません! この、勇気の証である黄色いマフラーに賭けて!」
 B班、星之丞が応答。威龍、と三名で急行し、キメラに攻撃を仕掛ける。
 戦闘機形態で敵へ突っ込み、銃撃を仕掛ける威龍と星之丞。一撃離脱の様相で次々に小型キメラを蹴散らして行く。
「二人とも足速いんだから」
 羽矢子は天の装甲を既に一段階パージして来ている。それでも二人の機体の方が移動力は上だ。
 人型に変形し、友軍の艦を守るように陣取ると近づく敵へ銃を向ける羽矢子。
「ほら、さっさと行っちゃって! 彼方此方から来るんだからさ!」
『すまない、援護に感謝する!』
 進行する艦からの通信に銃を掲げる羽矢子。しかしこのエリアに無作為にばら撒かれたキメラは、文字通りどこからでもやって来る。
「こちらA班、こっちは任せてくれ。シン、海原‥‥行くぞ!」
 別のキメラへ向かう球基。無数の小型キメラ目掛け、ミサイルを発射する。
「シン、時間差攻撃で行くよ!」
「了解」
 更に環、シンもミサイルを発射。次々に放出される大量のミサイルはあっという間に小型キメラの群れを薙ぎ払った。
『いい調子ね。偵察隊は予定通り偵察を開始したわ。彼らに続いて前進、月周辺のキメラを撃破して』
 更に移動する傭兵達。そこへ大型のキメラ達が迫る。
「短期決戦に持ち込めば‥‥!」
 戦闘機形態でブーストし、キメラへ急行する千夏。靖、クローカのC班は、千夏をサポートする形で戦闘を進めていく。
 闇を泳ぐキメラの光を交わし、バルカンで攻撃を仕掛ける千夏。はミサイルを発射、人型に変形しライフルを構える。
「一呼吸置く位が‥‥丁度良いさね」
 ミサイルが爆発し、よろけるキメラ。照準を定め、笑みを浮かべる。
「捉えた――!」
 丁寧にキメラを撃ち抜く靖。そのまま千夏を援護しつつ前進する。
「地味だろうが何だろうが、やれる事は全力で‥‥ま、俺の性に合っていますか」
「いいじゃないか。地味でもアイツらを倒すのが僕らの仕事なんだからね」
 靖に並び、ガトリングを放つクローカ。二機は身体を張って友軍を守り、千夏をサポートする。
「お前達の相手は、僕です!」
 ハルバードを掲げる星之丞。眩い光が闇を照らし、キメラ達の視線が集中する。キメラが集まってくると、威龍はG放電装置で迎撃。
「いいぞ、こっちだ!」
 人型に変形し、ライフルで撃ち抜く。威龍は接近して来たキメラの攻撃をかわし、拳を叩き込んだ。
「水中戦同様、人型でも失速せずに戦えるのが宇宙戦の強みだな。俺としても拳で戦う方が――性に合っている!」
 殴ったキメラを掴み、ライフルの引き金を引き撃破。羽矢子はレーザーライフルで大型キメラを撃ち抜き変形、戦闘機形態でキメラへ向かう。
「こりゃ意外と長引きそうね。こっちは練力には余裕があるから、クローカ達から先に行って!」
 ミサイルを放ち小型キメラを焼き払う羽矢子。援護を受け千夏は計器を確認する。
「‥‥そうですね。お言葉に甘えさせて貰います」
 擦れ違い様にバルカンでキメラを撃破、加速しベネトナシュへ戻る千夏。クローカ、靖も変形し千夏を追う。
「それじゃ、お先に」
「直ぐに戻りますから‥‥それまでお願いします」
 あまり長時間戦闘出来ない宇宙戦、傭兵達は班ごとに補給を行なう作戦だ。
「三人分の穴は、俺達で埋めないとな‥‥仕掛けるぞ」
「シン、援護するよ!」
 大量のミサイルを発射する球基。環はスラスターライフルでキメラを撃ち抜き、シンは援護を受け接近、刀でキメラを両断する。
「素晴らしいコンビネーションだね!」
「そうか‥‥?」
 微妙な二人の戦いに苦笑する球基。星之丞は奥歯を噛み締め、槍を手にキメラ達へ急行する。
「メテオ・ブーストオン‥‥! 輝く刃で敵を切り裂け、ナイトハルバード!」
 次々にキメラを両断する星之丞。羽矢子はアサルトライフルを放ちつつ、口笛を吹く。
「かぁっくい〜。けど、こっちの方が早く錬力が着きそうだね。先に戻らせて貰うよ」
 ハンドサインに頷く威龍。B班が後退開始すると、補給を終えたC班が戻ってくる。
「お待たせしました‥‥こちらは引き受けます」
 威龍と擦れ違う靖。戻って来たC班はB班から戦闘を引き継ぐ。
「これはベネトナシュ、忙しいだろうね」
「まあ‥‥大丈夫だろう。上に来る連中だ、あれでもそれなりの人材だと思うぞ」
 環の言葉に頭を掻き応じる球基。武装は搭載していないが、補給能力に関してベネトナシュは優秀だ。彼の言う通り、ハイペースな補給も問題なくこなせるだろう。
 すっかり補給を終えたC班は敵を引きつけ、足止めしつつ戦闘する。千夏が戦闘機形態で突っ込み、靖とクローカは援護しつつ敵を友軍へ近づかせないよう支援する。
「よーしよし、いい子だ‥‥こっちに来い!」
 ミサイルを放ち敵を引き付ける靖。クローカはシャベルでキメラの放つ閃光を弾きつつ、A班に目を向ける。
「そっち、まだ大丈夫? 大分片付いてるし、危ないと思ったら早めに戻ってよね」
「ああ、分っている」
 無表情に返すシン。千夏は思わず苦笑してしまう。
「少なくとも、クドウさんは大丈夫そうね。一か八か‥‥って言葉、嫌いそうな顔してるもの」
「それは‥‥どうかな」
 小さく呟く球基、首を傾げる環。こうして戦闘は補給を何度か繰り返し続けられた。
 大半の敵を傭兵部隊が撃破した為、偵察隊に被害は殆どなかった。元々大した敵が存在していなかった事もあり、偵察は極めて順調に進行する。
 その後も偵察中彼らは交互に補給しつつ周囲の警戒を続け、作戦に貢献するのであった。

●帰路
「流石ね、お陰で偵察もスムーズに行ったみたい。お疲れ様、ゆっくり休んで」
 一連の偵察作業が終了し、ベネトナシュに戻った傭兵達。機体を固定し降りると、ウルスラが傭兵達を出迎えた。
「偵察の結果が、平和への一歩に繋がるといいですね」
 頷く星之丞。千夏は口元に手をやり、今日の結果を振り返る。
「確かにキメラはいましたが、有人機とは遭遇しませんでした。キメラの配置も雑で、ただばら撒いてあっただけと言うか」
「今の所、バグアは月をあまり重視していないのかもしれませんね‥‥まだ、断定するのは危険ですが」
 千夏の言葉を補足する靖。月が今どうなっているのか、それはこれから分ってくる事だろう。
「いや〜、それにしても縁ってのは繋がってるんだねー」
「ん? 急にどうした?」
 声を上げた羽矢子に首を傾げる威龍。羽矢子はニヤニヤしながらウルスラの肩を叩く。
「結局軍曹は彼女の事に気付かなかった訳だ」
 腕を組み、首を傾げるシン。ウルスラは咳払い一つ、改まった様子で言った。
「私はウルスラ・ホワイト少尉。OF第二隊に所属していたキアラン・ホワイト少尉の妹よ」
「アホ少尉殿の妹!?」
 本当に意外だったのだろう、目を丸くするシン。クローカはシンに笑いかける。
「良かったじゃないか。彼らの志を継ぐ、それが後に残る者の責任‥‥。あの時救えた筈の命を僕達は救えなかった。今度こそ、出来なかった事を成し遂げるチャンスだ」
 普段の皮肉な笑顔ではなく、どこか寂しげに笑うクローカ。シンは目を瞑り、頷くのであった。
「お前の言う通りだな。今度こそ、だ。頼めるか、ルイシコフ?」
「所属がどこだって、僕達の成すべき事はただ一つ」
 手を取り合い、頷く。
「アイツらをこの星から叩き出す‥‥以上!」
「シンも漸く全面復帰してきたんだ。そこを手伝うのは当然だろ」
 声をかける球基。シンは頷き、彼とも握手を交わすのであった。
 こうして帰還するまで各々自由に時間を潰す為分かれた傭兵達。クローカはウルスラを呼び止めた。
「あれ? 二人でどこ行くんだろ?」
「まあまあ‥‥事情は人それぞれという事で‥‥」
「それもそうですね。私もシンの所に行こーっと」
 走り去る環。靖は苦笑を浮かべ、二人の姿を遠巻きに一瞥、立ち去るのであった。

「ホワイト少尉‥‥まさか再びこう呼びかける事になるなんて」
 クローカが取り出したのはKVの破片。あの日、墜落現場から持ち帰った物だ。
 OF隊と出会い、全てが変わった。散っていった彼らの勇士は、今でも少年の胸に焼き付いている。
「彼は最後まで任務を全うし、仲間を救って殉じた‥‥短い間でも同志として働けたことを誇りに思う」
 欠片を見つめるクローカをウルスラは何も言わずに微笑んで見つめている。
「ホワイト少尉、これを」
 ウルスラへ破片を手渡し、敬礼する。
「彼の魂に、この星の海の瞬きを捧げます。聞いて貰えますか、僕が見た彼の全てを」

 ベネトナシュは闇の中を突き進み、カンパネラへと向かう。今はまだ先の見えない闇の中、明日を目指し歩み始めた者達を乗せて。
 この戦争を終わらせるその時まで、彼らの暗中模索は続く――。