タイトル:ライブラ評価試験αマスター:神宮寺 飛鳥

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/10/15 17:07

●オープニング本文


「イリス君、評価試験の件だけど――うおぅっ!?」
 書類を片手に研究室へ入った室長が見た物、それは何度見ても慣れないイリスの奇行であった。
 思えば確かに彼女はもう何日も寝ていなかった。特に以前のテストからは心配に成程ぶっ続けで仕事に従事していた。
 その結果、イリスは現在顔をデスクの上に置いたクッションにうずめ、頭の上にうさぎを乗せるという異様な状態に辿り着いていた。
「いや、そうはならないんじゃないかな‥‥」
 小声でつっこみを入れつつ男はイリスの肩を揺さぶる。少女の頭の上に鎮座していたうさぎがずるずるとデスクに落ち、イリスはがばっと勢い良く顔を上げた。
「うぁう‥‥っ! ね、寝てしまった‥‥じゅる」
「だ、大丈夫かイリス君? いくらなんでもここ数日の追い込みは身体を壊すと思うのだが‥‥」
「いえ、もう大体終わった所です。だから寝てたんですけど‥‥」
 柔らかそうなクッションについてしまった涎を白衣の袖でごしごしと拭いながらイリスは答える。目の下にクマを作った少女は立ち上がり、身体をぐっと伸ばした。
「評価試験用のプレゼンは万全です。皆でここまで漕ぎ着けたんですから‥‥。こればかりは意地でも正式採用させてみせます」
 一見ぐったりした様子に見える少女、しかしその瞳は燃えていた。これまでの経験が彼女を大きく変え、成長させたのだろう。
 ひたむきに仕事に従事する彼女の姿は徐々に研究室内部でも評価され始めていた。性格が丸くなったというのが最大の要因だが、少なくとも彼女は以前よりうまくやっていた。
 ULT、UPCにて提供予定の戦闘シミュレーター、通称『ライブラ』――。その開発もいよいよ佳境を迎えようとしていた。
 幾度の能力者とのテストを経て、いよいよその真価が問われる時がやって来たのだ。このプレゼンはイリスにとって特別な意味を持っている。
 『ライブラ』の成功は科学者として彼女の悲願であり、これまでの歩みの集大成である。絶対に失敗する事は出来ないのだ。
「大した自信だね。まあ、君は本当に一生懸命やっていたから‥‥だからこそ、かな?」
「ええ。失敗なんて考えていません。確実にねじ込みます」
「それは実に結構‥‥。それで、評価試験の日程と会場、それからプレゼンについてだけど‥‥」
「大体聞いています。ULT側でテスターを募集して、通常のプレゼンの後実際にシミュレーションを行うんですよね?」
「ああ、うん。その予定だったんだけど‥‥やっぱりテスターはこっちで募集してくれって連絡があったんだ。こちらとしてもテスターを選べるのはありがた――どうした?」
 室長の言葉にイリスは目を真ん丸くしていた。それからデスクの上のクッションを手に取り、それを顔に押し付ける。
「‥‥? イ、イリス君?」
「別に喜んでいませんから後はわかりますね?」
「いやわかんないけど‥‥とりあえずテスターの募集に関しても君に一任したい。テストに関しては君が最も精通しているしね」
 何故かその場でじたばたし始めるイリスにやや引く室長。少女はクッションを椅子の上に戻し、そこに腰掛けた。
「そういえばその‥‥姉さんは、何か言っていましたか?」
「いや、特に何も聞いてないな。見に来るのかい?」
「――いえ、そういうわけでは‥‥。多分、来ないと思います。忙しい人‥‥ですから」
 先ほどまでとは打って変わって憂鬱な表情でイリスは呟いた。
 晴れの舞台だからと、姉には連絡をしておいた。返信のないメールを待つのも、鳴らない電話を見つめるのも、もう慣れっこだ。
「では忙しくなってきたのでこれで失礼します」
「あ、ああ? あまり頑張りすぎるなよ」
 男の言葉に少女は足を止め振り返る。無邪気な笑顔を浮かべ、困ったように。
「――冗談でしょう? 今はとても楽しいんです。とても‥‥楽しいんですよ」
 白衣を翻し小柄な少女は去っていく。その背中は以前より少しだけ大きく見えた気がした。

●参加者一覧

神撫(gb0167
27歳・♂・AA
レベッカ・マーエン(gb4204
15歳・♀・ER
月城 紗夜(gb6417
19歳・♀・HD
望月 美汐(gb6693
23歳・♀・HD
黒瀬 レオ(gb9668
20歳・♂・AA
張 天莉(gc3344
20歳・♂・GD
和泉 恭也(gc3978
16歳・♂・GD
牧野・和輝(gc4042
26歳・♂・JG

●リプレイ本文

●成果と結果
 能力者達は無人のコロッセオへと足を踏み入れた。架空の世界の中、依頼人の少女は到着を待っていたかのように彼らへと歩み寄る。
「イリス、おまえ達の完成させた『ライブラ』、見せてもらうのダー」
「レベッカ。今回も宜しくお願いします」
 微かに微笑を浮かべ、イリスは駆け寄る。レベッカ・マーエン(gb4204)は腕を組みじっとイリスを見やり、人差し指を立てて言った。
「一つだけ。説明は最後まで明瞭に、でなければ正しく伝わらない事が多々あるからな」
 テストは前回で終了――そう聞いていた。神撫(gb0167)もレベッカと同意なのか、何も言わず苦笑を浮かべていた。
「い、いえ‥‥そのはずだったのですが、急に予定が変わってですね‥‥」
「デモンストレーションなら、いつも通りやれば良さそうかな?」
 助け舟をのような神撫の言葉にイリスはこくりと頷く。そこへ張 天莉(gc3344)が歩み寄る。
「こんにちはイリスさん! 今日はよろしくお願いします♪」
 評価試験に役立つように頑張りますよ〜と続ける天莉。イリスはそれに向かい合い、無言でぺこりと頭を下げた。人見知り、なのだろうか。
「きちんとご飯は食べてますか?」
 挨拶も早々に和泉 恭也(gc3978)はイリスにそんな質問をする。あまり食べているとは言えないイリスは無言で目を逸らした。
「――頭を撫でさせていただいてかまいませんか?」
「な、何故急に!?」
 きりっとした様子で恭也はイリスを見下ろす。少女に故郷の妹の姿を重ねる彼だったが、少女はちょこちょこと逃げて行ってしまった。
「いよいよですね。大丈夫ですよ、積み重ねた物は裏切りませんから♪」
 撫でる時はこうするんだと言わんばかりに望月 美汐(gb6693)は問答無用でイリスを撫で回す。恭也は少し羨ましそうな様子だ。
 そうしていよいよ戦闘開始が迫り、向かいの陣地に敵勢力が出現する。整列するその姿を見やり月城 紗夜(gb6417)は言う。
「タロットから名前を付けたのか?」
 質問にイリスはこくりと頷く。紗夜はタロットの事を思い返し、片目を瞑って微笑んだ。
「名乗るとしたら塔、タワーでいいんだが」
 紗夜が独り言を呟いた頃、黒瀬 レオ(gb9668)は騎士達を眺めていた。
「これがイリスちゃんの集大成‥‥ライブラ、ね」
 自分達の布陣はまるでチェスのようだ。少女を見やり、幻想の天秤へと想いを馳せる。
 彼女が賭ける物がなんであれ、全力で応じる事――それがレオなりの礼儀なのだ。そしてそれが良い評価にも繋がっていくだろう。
「では、評価試験を開始します。衆目に晒された戦場です。どうぞ存分なる闊歩を」
 冗談交じりのイリスの言葉に牧野・和輝(gc4042)はこれまでの事を思い返していた。どちらにせよやる事は変わらない。彼女に声をかけずとも。

●結束と決闘
 試験が始まった。チャリオットは嘶き、その槍を掲げて走り出す。それに呼応するようにレオと神撫も移動を開始した。
 任せておけと言わんばかりに客席へ移動したイリスへ親指をぐっと立てる神撫。爽やかな笑顔にイリスは困ったようにサムズアップを返した。
「一気に突っ走るよ、レオさん」
 前進する二人の視線の先、向かってきていたチャリオットが減速し、途中で行ったのはハーミットの回収であった。
 騎馬は弓の騎士を背に乗せ向かってくる。ハーミットが放つ矢、それを前に出た神撫が受け、足を止めずに突き進む。
 続けてチャリオットが巨大な槍から一撃を放つ。インフェルノでそれを受け止め、側面に回りこみ神撫は全力の一撃を放った。
 レベッカの強化も受けた斧は重い。紋章の紅い輝きを纏った攻撃は騎馬の体に深々と突き刺さる。鎧を砕きその足を止め、挙動を停止させる。そこへ時間差で潜り込んだレオが追撃を放つ。
「ごめんね、キミはちょっと邪魔なんだ」
 一閃――文字通りの速攻であった。雄叫びを上げ倒れる騎馬へと刃を突き刺し、レオは引き抜いた刃を構えなおす。
「――さよなら、ナイトさん。さ、次だ」
 二人がチャリオットに速攻を仕掛けていた頃、美汐はジャスティスと刃を交えていた。
「さぁ8番さん、16番がお相手ですよ!」
 ジャスティスは剣にて攻撃を繰り出してくる。美汐はその攻撃を慎重に受け、天秤の動きに注目していた。
 天秤が傾く。次に放たれた攻撃は淡い光を纏い、美汐に迫る。攻撃を警戒していたお陰で美汐は光の回避に成功した。
 物理と知覚、二つの攻撃手段を持つと判断し、天秤の動きに合わせて防御と回避を変則的に繰り返していく。
 と、そこで唐突に司祭の持つ天秤が壊れた。紗夜のザフィエルによる攻撃だ。
 チャリオットの対処が素早く終了したのでこちらへ向かった紗夜は傾いたままの天秤を見て笑う。
「ただの嫌がらせだ。傾いた天秤は皮肉、天秤が崩れれば正義とも公平とも言えん」
 データでしかない司祭に挑発が通じるとは思えない。だが司祭は振り返り、美汐ではなく紗夜へと剣を振り上げる。仕方なくと言った様子で紗夜は刀を構えた。
 一方、マジシャンは周囲の戦闘を潜り、リーダーである和輝へ迫っていた。しかしその道を塞ぐように天莉と恭也が立ちふさがる。
「ここから先は通行禁止ですよ♪」
「簡単に倒れてあげるつもりはありませんよ」
 笑顔のキャバルリー二名が連携し盾を構える。魔術師の杖から放たれた火炎はその盾に弾かれ、和輝には届かない。
 攻撃が止むと同時に二人が左右に割れ、背後から和輝が矢を放つ。それを受けた魔術師は怯んだのか、僅かに後退し立て直しをはかる。
 万全なお膳立てがされた戦いというのは和輝にとっては珍しい事だ。だがここは一つ、仲間を信じて任せるのも悪くは無い――そう思う。
 予想以上に前に出ていたマジシャンへ強化を施したエネルギーガンを放ち牽制するレベッカ。知覚攻撃のダメージは効果的には見えないが、牽制の効果は大きい。
 火炎を放つマジシャンの派手な攻撃は二人の盾によってリーダーには届かない。他のキメラへは前衛が当たっている。ある意味安定した状況――だが。
「‥‥待て、一体足りないぞ」
 存在を警戒していたレベッカは気づいた。そう――初動でチャリオットに輸送されたハーミットが、気づけば見当たらないのだ。
 戦場の中、少女は周囲を見やる。散漫に見ては気づかない、だが注視すればわかる。ハーミットは戦場の端をこっそりと移動していたのだ。
 マントで覆われた部分が半透明になり、よく見ないと首だけが浮いているようにも見える。そして既にマントが不要な距離で弓騎士は得物を構えていた。
「天莉、恭也!」
 声をかけつつレベッカはエネルギーガンを放つ。横槍を食らった騎士はよろけ、その攻撃で存在が露呈した。
 苦し紛れに放った矢は恭也に阻止され、反対に和輝の矢が騎士を貫く。駆け寄りながら天莉は混元傘を開き、その影から飛び出すようにして蹴りを放った。
「攻める時は攻めるのもCAなんですよ♪」
 一方、ジャスティスとの戦いは佳境を迎えていた。天秤を破壊され単調な攻撃しか出来ないこの敵は美汐と紗夜にとって強敵ではない。
 逃れるように強引に前進する司祭へ竜の翼で回り込み、美汐が微笑む。
「駄目ですよ。私と出会った者はみぃ〜んな、躓くんです――なんちゃって」
 竜の咆哮で吹き飛ばされるジャスティス。その行く先には蛍火を構えた紗夜が待っていた。
 飛んでくる勢いを掛け合わせ、刃は司祭を両断する。舞い上がる上半身を背に紗夜は血振りをし刃を翻す。
「脆い物だな、折れた正義など」
 チャリオットを撃破したレオと神撫はそれぞれ交戦中のマジシャンとハーミットへと向かっていた。
「ごめん、待たせたね」
 二人のアタッカーの参戦で一気に形成が逆転、遠距離型の魔術師と隠者は集中攻撃を受けて倒れた。残す所は敵のリーダーのみだ。
「悪いがまだ休めないのダー」
 負傷した仲間へレベッカが練成治療を施す。対峙するテスタメントと呼ばれたEBは両腕に巻きついた鎖を解き、背にしたリングに光を収束させる。
 神撫の指示で四方にばらけ、波状攻撃を仕掛ける傭兵達。EBは左右に腕を突き出し、その掌にリングからの光が流れ込んでいく。
 放たれたのは光の矢であった。大地を焦がしながら飛来する高熱の閃光に神撫とレオが吹き飛ばされる。それぞれ持ち堪えたが、威力は見た目通りのようだ。
「‥‥ビームか。厄介だが――あれはリングが関係しているらしいな」
 やや下がった位置から様子を窺っていた紗夜がリングに注目する。攻撃を放つ前には輝いていたリングが今はくすんだ色に変色していた。
 EBはエネルギーをチャージするようにリングに再び光を収束させる。それをインターバルであると判断し紗夜は走り出した。
 あれがどこまで届くのかは判らないが、直撃すれば和輝が危ないかもしれない。恭也と天莉が背後に控えているが、次を撃たせなければそれが万全――。
 接近する紗夜へテスタメントは鎖を放つ。断ち切ろうと刃を振るうが、逆に剣に鎖が絡み、拮抗されてしまう。
「tes.は制約、あの子の希望を次へと繋ぐ制約となりなさい!」
 同じく武器を鎖に取られた美汐は拳銃「マモン」に持ち替え、攻撃を継続する。同様に紗夜も超機械にて攻撃するが、回転するリングから溢れる光に弾かれてしまう。
 リングの守護を確認し、レベッカは虚実空間を発動する。EBを覆う光に亀裂が入り、硝子が砕けるような音を立てて崩れ去った。
「まずい、もう次が‥‥! レオ、神撫!」
 リングに光が収束し、EBがその指先を和輝達へと向ける。その挙動を阻止するように美汐と紗夜が攻撃、怯んだ隙にレオと神撫が逆方向から攻める。
 二人の刃が炎の煌きと共に同時にテスタメントを切り裂いた。かくして女神は膝を着き、リングは光を失っていく。攻撃は放たれる事無く、戦闘は終了するのであった。

●試験と評価
「皆さん、お疲れ様でした。もうモニタリングは終了しましたから、楽にして下さい」
 駆け寄ってきたイリスの一声に傭兵達は一息。別段緊張していたわけではないが、知らない誰かにずっと見られていると言うのも肩の凝る話だろう。
 近づくイリスにサムズアップする神撫。イリスは少し照れくさそうに同じ仕草を返し、微笑んだ。
「様々なバリエーション、個々の連携、それらを活かす柔軟な思考‥‥。伊達にテストを重ねた訳ではないか。これが『ライブラ』、実に面白い」
「まあ、私が作っているので当然ですが‥‥でも、それも皆さんがいるからです。後はわかりますね?」
 腕を組んで頷くレベッカへイリスは微笑みかける。二人が仲良さそうにしているのを見て恭也は言った。
「‥‥いいものでしょう? 友達って。自分も最近気がついたのですけどね」
 イリスとレベッカは顔を見合わせ、それぞれの反応を見せる。和気藹々とした様子に美汐も交じり、背後からイリスの頭を撫で回した。
 先ほどまでの様子とは打って変わった和やかな様子を眺め、神撫はうんうんと頷いていた。これまでテストを何度も共にして来た彼は最早イリスの保護者のようですらある。
「我々の戦い方をコピーして、使えないか? 限りなく実戦に近づけたい」
 というのは紗夜の提案である。
「格ゲーっぽく。無論、胸揺れはいらん」
 と続けたが、胸揺れという言葉の意味が判らずイリスは小首をかしげ、それから自分の胸をぺたぺたと触って見せた。
「確かに、それは面白いアイデアですね。いつか試してみたいものです」
「あ、それなら私も手伝えると思いますよ♪」
 蹴り技には自信がある天莉は笑顔でイリスに近づいていく。人懐こい天莉の笑顔に対し、イリスはびくびくしながら後退していく。
 そんなイリスの様子を眺め、レオは物思いに耽っていた。テストに何度も参加している彼の目には、イリスが本当に求めている物が見えていたのだろうか。
 『ライブラの完成』というその終わりの向こうにある願い――。少女の夢が叶えられる事を優しく微笑み祈り続ける。
 レベッカの影に隠れるイリスに背を向け、和輝は煙草を手に取った。
 彼女の周りには自分より上手く言葉を伝えられる人がいる。ならばあえて不器用に言葉をかける必要もないだろう‥‥。男は一人、ライターの火に想いを重ねる。
「――こいつは」
 煙草の煙は甘くはなかった。だがとんでもなく、ただひたすらに『苦い』。それがイリスの煙草に対するイメージなのだろうか。
 気づけばイリスは和輝の反応を気にしてレベッカの影からこっそり目を向けていた。気づかないフリをして、紫煙を吐き出す。
「‥‥チッ、やっぱガキだな」
 時の流れが前へ、歩んだ道が確かに彼女の時間を押し進めている。
 ただ苦いだけで美味くもなんとも無い煙。これはこれで酷い代物だが、ある意味イリスの努力の結果なのかもしれない。
「今度の出来はどうですか? 牧野・和輝」
 少女がしてやったりという顔で笑う。和輝はそれに笑い返し、煙草を落として踏み消した。
「まだまだ、だな」
 言葉にせずとも判る事もあるだろう。男は踵を返し、去っていく。少女はその背を見送り傭兵達に頭を下げた。
「今日はありがとうございました。ご縁があれば、また」
 こうしてライブラの評価試験は一旦の幕引きとなった。
 今度の別れは以前とは違う、『次』のある別れ。イリスは楽しげに微笑み、小さく手を振り能力者たちを見送るのであった。