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■オープニング本文 「許せないのよ‥‥」 ジルベリアのとある遊郭。 女主人は愛しの人妖の頭を撫ぜて、格子窓の外を見つめる。 長い睫に彩られた青い瞳の先には、河を隔て、数ある遊郭の中でも最近群を抜いて羽振りのいい露甘楼。 露甘楼はこの遊郭街において1,2を争う歴史ある女主人の遊郭とは比べ物にならぬほど歴史も浅く、芸妓も娼妓も大した事のない娘達ばかり。 特に娼妓の数は少なく、主に芸妓のみの娘達が多いのも女主人の苛立ちの原因だった。 色を売るわけでもなく、芸のみで良い旦那様がつき、つい先日などはジルベリアでは珍しい大量のもふらをつれた上客まで訪れ、一時この遊郭街を賑わした。 「あんな、色もろくろく売れない小娘どもに‥‥!」 女主人は赤い唇をきつくかみ締める。 手元の人妖が不思議そうに見上げてくる。 先日の事だ。 いつもご贔屓にしてもらっている上客がここ最近、女の元を訪れなかった。 何かあったのではと案じつつも、特に何もせぬまま日々を過ごしていたのだが‥‥。 「あれは、間違いなく露甘楼の娘だったわ‥‥」 その上客が、露甘楼の芸妓と思しき娘達と楽しげに歩いているのをこの窓から見てしまったのだ。 露甘楼はこのジルベリアで天儀とジルベリアの衣装を混ぜたような少し変わった衣装を好んで娘達に着せている。 だから、顔など知らずとも直ぐにそれだと知れたのだ。 この人妖 ―― マリエールを自分に与えてくれたのも、一介の娼妓にしか過ぎなかった自分を女主人という立場に変えてくれたのも、全てあの上客が自分を贔屓にしてくれたからこそ。 「ねえ? 許せることではないわよ、ね‥‥?」 女主人は露甘楼を見つめ、再度呟く。 許せなかったら、どうするのか。 それは‥‥。 「あんまりなんだよ!」 露甘楼で芸妓の朽黄は余りの出来事に叫ばずにはいられなかった。 「朽黄、そう声を荒げるものではないわ。幸い、娘達は皆無事だったのだし‥‥」 目に涙を浮かべる勢いで怒れる朽黄を、露甘楼女主人・カナリアはやんわりと宥める。 けれど他の芸妓や娼妓、使用人達もこの事態には不安を感じずにはいられなかった。 「これ‥‥誰がやったの‥‥」 ばらばらに散らばった衣類 ―― 文字通り、引裂かれてばらばらになって撒かれている衣類を一つ手に取り、一見幼女にしか見えない遊女も冷たい光を瞳に灯す。 恐らく、夜間に行われたのだろう。 露甘楼の大量の衣装がこのように引裂かれ、別館の旅館と遊郭をつなぐ渡り廊下に撒かれていたのだ。 夜間とはいえ、遊郭。 それなりに人目はあったし、多少は人の出入りもあったはずなのだが、昼に比べてその数は少ない。 誰一人気づけなかった。 「犯人探しは後でもいいけどさぁ、今日これどうするよ? これじゃ店開けれねーよなぁ」 少し口調の悪い芸妓も頭をかきながら溜息。 衣類は捨てるだけなら直ぐにできるが、ここ露甘楼の衣類は少し変わっているのだ。 店売りの品で直ぐ用意できるものではない。 出来るだけ修復できるものは修復し、専用の工房にも連絡を入れなければならない。 「そうね、少し人手を集めましょうか」 犯人探しは直ぐにできずとも、衣類をどうにかしないことには店を開けられない。 「それなら、頼りになる人たちを知っているんだよ」 カナリアの言葉に、目の涙をぬぐって朽黄はにこっと微笑む。 そう、困ったときは、あの場所なのです。 |
■参加者一覧
村雨 紫狼(ia9073)
27歳・男・サ
レヴェリー・ルナクロス(ia9985)
20歳・女・騎
エルディン・バウアー(ib0066)
28歳・男・魔
ラシュディア(ib0112)
23歳・男・騎
御桜 依月(ib1224)
16歳・男・巫
ノクターン(ib2770)
16歳・男・吟
高崎・朱音(ib5430)
10歳・女・砲
セフィール・アズブラウ(ib6196)
16歳・女・砲 |
■リプレイ本文 ●まずは衣装のチェック! 「女の子の衣装をバラバラにだなんて、ヒドいコトする人も居るモンだよねー」 朽黄の依頼で遊郭・露甘楼に集まってくれた開拓者達は八人。 露甘楼の一室に集められた大量の衣装を見て、御桜 依月(ib1224)ははふーっと溜息。 被害の大小はあれ、ことごとくボロボロに引裂かれた衣装の山は、遊郭という場所柄ゆえかそれぞれの遊女の趣味か。 「女の嫉妬って奴だろうが、怖いもんだぜ」 自身は女装を好む男性であるのだがノクターン(ib2770)もその惨状にフンッと腕を組む。 「これのなにが目的か、後で考えます。先ずは使えるように」 綺麗な衣装なのに勿体無い事ですとセフィール・アズブラウ(ib6196)は呟き、香炉前が使っていた十二単をアレンジされた衣装を手に取り、その衣装に香りがあるかどうかを確かめる。 遊女らしく甘やかな、それでいてきつくは無い香りがセフィールの鼻孔をくすぐった。 「我は出来ればこのような所業をした犯人をぜひとも見つけてやりたいものじゃが‥‥ま、仕方ないの。店が開けぬでは困るじゃろうし手を貸すかのぉ」 高崎・朱音(ib5430)黒いネコ耳をふにふにっと動かして、ちょっぴり不服気味。 本当なら衣装直しよりも犯人を捕まえたくてうずうず。 それはやはり猫獣人としての獲物を捕らえる本能だろうか? 「服を切り裂いてばら撒くなんて陰湿なやり口だな‥‥」 以前ここを訪れたことのあるラシュディア(ib0112)は誰にも危害が加えられなかったことを不幸中の幸いだという。 それほど親しい間柄というわけではないのだが ―― 流石に、毎日通ったりはしていないのだ ―― もふら様洗いに来た時に朽黄以外とも話していたから、顔見知りの遊女達が全員無事な事にほっとしたようだ。 「今回も遊びに来たわけじゃないですよ? 緊急事態に困っている女性の方々を助けに参りました」 白い歯、きらんっ☆ ありえないほどの笑顔を振りまいて、エルディン・バウアー(ib0066)は聖書を片手に遊女達の手をとってその甲にキス。 どーみても、遊ぶ気満々に見えるのはキノセイでしょうか。 でも気のせいじゃないよと言いたくなる勢いで、仲間の男性陣の中でもあだるとオーラ満載な村雨 紫狼(ia9073)は「俺の月白たーん!」と叫んで走ってゆく。 「待たせたわね朽黄。家にある物もかき集めて来たわ」 全力で駆けつけてきてくれた為か、それとも遊郭と言う場所柄のせいか。 顔を赤らめたレヴェリー・ルナクロス(ia9985)が両手に一杯の布やリボン、装飾品を抱かかえて部屋に駆け込んできた。 両腕から零れ落ちそうなそれを朽黄はびっくりと受け取ってお礼を言う。 「此処が遊郭‥‥ハッ?! な、何でもないわ」 腕の荷物を降ろした途端、ここがどこだか思い出したのだろう。 レヴェリーは色っぽいお姉様達から目を逸らして更に真っ赤に顔を赤らめた。 ●工房へLet's Go! 「まずは、カナリアさんに聞きたいことがあるんだ」 露甘楼の女主人カナリアに、村雨、熱い視線。 まさか口説くの?! 誰もがそう思ったのだが、村雨は真剣な眼差しでカナリアから衣類の直営工房について尋ねる。 新規の衣装を今頼める状況なのか、以前発注した時の型紙が残っているかどうか。 状況によっては今から改めて新規の工房を探さなければならない。 いつもはふざけた雰囲気なのに、決して仕事は疎かにしないのが彼の流儀なのだろう。 「元々の衣装の型紙を業者がまだお持ちなら、お取り寄せ頂いてそれを元に素敵にアレンジしたいですね」 側にいたエルディンもそう付け加える。 カナリアがいうには、型紙はもともと露甘楼に原紙があり、複製を業者に保管してもらっているとか。 露甘楼で働く遊女達の体型も毎年きちんと測定し、体型に合った衣装を発注しているとかで、最新のデータも保管済み。 それなら話は早く、半玉の少女達が保管部屋から書類と型紙の束をもってくる。 「みんなの分も、できる限りサポートしてあげれたらと思うよ」 どうしても店の看板娘である人気遊女の衣装が先決になってしまうが、衣装を失ってしまったのは5人の遊女だけではない。 型紙を手渡してくれた半玉の少女だって、今はごく普通の着物を着ているということはお気に入りの自分の服を失ってしまった一人に違いない。 フォローしたいと言うラシュディアを見上げてにこっと嬉しそうに微笑んだ。 「今受注受付中かどうかは即答できないか。それなら、一筆書いてくんね? 露甘楼名義の紹介状がありゃ、話が通りやすいだろ」 型紙や体型データは揃っていても、工房が今現在大量の注文を受け付けれるかどうかはカナリアのほうでは不明らしく、現地に行ってみないことには進まない。 村雨の提案でカナリアは紹介状を即座に作成し、レヴェリーと依月、そしてレヴェリーに誘われた朽黄の三人で工房へ。 露甘楼のある遊郭より徒歩で2時間ほど離れた場所にその工房はある。 華やかな遊郭にきょろきょろそわそわしていたレヴェリーも、遊郭を抜けて甘い香りがそろそろ途切れる町並みに差し掛かると、いつもどおりの雰囲気に戻ってゆく。 舗装された色取り取りの石畳を踏みしめながら、三人は雑談しながら工房に向かう。 「私はね、依頼としてではなく友達を助けに来ただけだから」 そう言うレヴェリーの言葉は本物だろう。 急な出費を強いられる露甘楼の為に依頼料の数倍に当たる4万文を寄付しようとしていたのだから。 流石にそんなことをそれこそ友達にさせれないと、朽黄が頑として寄付は断ったのだが。 (んー。つけてくる人とかは、いない感じかな?) 和気藹々と雑談しているように見えて、依月は周囲にそれとなく気を巡らせている。 こんな事件があったのだ。 彼女達を妨害するものが現れてもおかしくはない。 だが幸いそれらしき人影は見当たらない。 工房には無事に辿り着き、紹介状を読んだ工房長は即座に製作に取り掛かることを約束してくれた。 今までの衣装とこれからデザインする衣装、両方とも最短納期で納品されることだろう。 あとは新しいデザインを考えるだけだ。 ―― 塀の上の小さな猫が三人をジッとみつめる。 ●どんなデザインをお好みでしょう? 「広げても良い部屋はありますか、客間ではなく作業部屋で」 裂かれた衣装が置かれていた部屋は狭かったので、セフィールはカナリアに確認を取る。 沢山の衣装を広げれる広い部屋といえば、遊女ではない従業員達の寝室ぐらいしかなく作業部屋もなかったのだが、数日は店を開けないし宴会場を借りることに。 「修復出来そうな物も多そうだね」 裁縫なんてしたことはないけれどと言いながら、ラシュディアは結構器用そう。 セフィールの指示に従いながら返し縫などもこなしてゆく。 いてっと言いながら針で指を刺すのはお約束と言うものだろう。 (この切り口は、数種類ある‥‥?) セフィールは裂かれた衣装を選り分けながら、その切り口もよくよく見ていた。 何によって切られたり裂かれたりしたのか。 それを確認していたのだが、一つは明らかに鋏などの鋭利な刃物で切られている。 どちらかと言うと美しい衣装を切ることに抵抗があったのだろうか? 縫い目に合わせて切られており、こちらは修復もしやすく綺麗な切り口だ。 そして判らないのはもう一種類。 こちらは明らかに獣を思わせる切り口なのだ。 口や爪を使って強引に文字通り引裂いたとしか思えない状態で、修復も難しい。 それと、刃物で切ったに違いないのだが、衣類の所々をパチンぱちんと適当に鋏を入れたような切り口もある。 これは切られた位置によっては修復可能だが、大きく縫い目に沿って裁断されている衣装とはまた明らかに違うようで、同じ人物や獣がこの全ての衣装を切り裂いたとは思えないのだ。 けれどとにかく衣装を出来るだけ修復しなければ始まらない。 小さめの切り口には刺繍を施して縫い目をそのまま飾りとして加工して、大き目の切り口にはレヴェリーの持ち寄ってくれた布や露甘楼にもともとあった在庫の布を大活用させてもらってパッチワーク状に修復。 「とりあえず服をなんとかすればよいのじゃな」 朱音は月白と香炉前のデザインを提案。 自身も天儀ともジルベリアともつかぬ豪華な柄の服を好んでいるせいか、露甘楼の衣装は感覚がつかみやすいようだ。 「白を基調としていたようじゃが、背中のリボンは豪奢でも許されると思うぞぇ?」 実年齢は一体いくつなのだろう? 幼女にしか見えない月白に朱音は明るい桃色の生地に金の刺繍が施された布を合わせてみる。 「ちょーっとまったぁ! 俺のげっぱくたんにはこの衣装だあああぁ!!」 バンっと扉を開け放ち、村雨参上! その手には村雨がデザインしたと思われる衣装一式のイラストと、なぜかハイヒール。 「誰の‥‥月白‥‥?」 月白の眉がピクリと動くが村雨、そんな事を気にするはずもない。 どこの魔法少女ですかと突っ込みたくなるふりふり衣装のミニスカートなデザイン画を誇らしげに月白に突きつけてくる。 「俺の月白たんにはもう、この服で決まりだろ? かんっぺき俺の趣味で‥‥ぶぎゃっ!」 最後まで言えることなく村雨はぶっ倒れた。 その顔には村雨の用意したヒールを履いた月白のおみ足が思いっきりめり込んでいる。 「踏み踏みプレイ‥‥最高DA☆」 幸せそうに村雨、撃沈。 「見事な最後じゃのぅ」 この惨状に朱音は欠片も動じることなくむしろ喜んでいる。 「何やら我に近いものを感じるのぉ?」 と本人が言うように、本当に月白と朱音は似ているのかもしれない。 「月白ちゃん、依月のデザインはどうかな?」 工房から戻ってきた依月が自分のデザインを見せる。 白の和服をベースにシックな黒のレースで彩られ、前を開けて薄紫色のスカートを合わせたそれは、動きやすさとほんのり色っぽさを感じさせる。 もちろん月白の好みだった蝶を思わせる帯は薄紫色でグラデーションがかっており、先にゆくほど黒く染まり要所要所に施された黒のレースとよく合っていた。 「って、月白ちゃん?!」 ぎゅっ。 かなり気に入ったのだろう、無言で月白は依月を抱きしめる。 可愛らしい口調と雰囲気から依月は女の子に見えるがその実男の子。 でもそんなことはきっと気にしないのだろう。 「へえ、こうして形にすると面白いな、露甘楼の服ってのは。折角だ、今後の俺の服の為にもしっかり勉強させてもらうぜ」 その横では、ノクターンが型紙とにらめっこ。 そのデザインは濡羽用。 レヴェリーからもらったアイディアと自分のアイディアをアレンジして、布地は濃い青色系統。 濡羽はもともと色には拘りがなかったのだが、ノクターンが選んだ深い青がいたくお気に入り。 その色で作る服ならどんなデザインでも着こなして見せるぜと笑った。 「歌姫と舞姫ということで、一緒に舞台に立てるように、お二人の衣装に共通点を持たせましょう」 遊女達の悩みを聞いて、もふらの愛を説いて戻ったエルディンは、ローズティアとシャルトレーゼの衣装を提案。 「ローズティアにはこのブーケも付けてくれよ」 エルディンのデザインに付属させる形で、ノクターンは小さなブーケを手渡す。 それは名前通りのローズティアドロップブーケ。 本来ブーケは手にもつ物だが、ノクターンが作ったのは手の平ほどの小さなもので、ヴェールに飾るのに丁度良い大きさだった。 色合いもエルディンが選んだクリーム色の布地にほんの少し赤を混ぜた淡いピンクで色合いも申し分ない。 更にエルディンはシャルトレーゼには蔦系の模様、ローズティアには薔薇の花模様で統一感を出させるという。 蔦系の薔薇は数多くあるし、統一感は完璧だろう。 「聖職者の私の心をかき乱してしまいそうな感じで♪」 デザインは素晴らしいのに嬉々として色っぽいセパレートタイプを提案する姿を見ていると、聖職者に見えなくなってくるのが残念。 そしてセフィールはいそいそと香炉前の元を訪れる。 急な来客に香炉前は嫌な顔一つせず香を焚いてお出迎え。 「香炉前様にお伺いしたいことがありまして参りました。露甘楼の一人一人に似合う香はありますか?」 香の香りを楽しみながら、セフィールは尋ねる。 その目的は、それぞれの服に薄く香を炊き込む為。 遊郭と言う場所柄、常に甘い香りが漂ってはいるが、それぞれ似合う香が衣類から香るのは魅力的。 「すでにされていれば意味は無いですが、多少は効果があるかと」 控えめに提案するセフィールに、香炉前は興味深げに頷く。 似合う香がなければ、調合すれば良いだけの事だと。 「きっと、香炉前様の御気に召す衣装を仕上げて参ります」 そう約束するセフィールの中には既に香炉前の衣装デザインが出来上がっていた。 ●犯人探しの手がかりを 露甘楼・深夜。 遊郭ゆえ、明かりはまだまだ灯されているものの、それでも館内の廊下は人通りが大分減ってきていた。 静けさが辺りを支配する。 そんな中、足音を忍ばせて見回る人影がある。 ラシュディアだ。 昼間はずっと裏方に徹し、遊女達の衣装を丁寧に直していた彼だが、遊郭の魔力に逆らえなかったのだろうか? ―― いや、違う。 茶色の瞳は冷静そのもので、色めきたったそれではない。 (大丈夫そうだな。特に不審な所もなさそうだ) ラシュディアは一階から三階まで、遊女達の安全確保の為に見回っていたのだ。 念の為にと、ラシュディアはもう一度館内を見回る。 翌日。 「まさかとは思うけど、ね」 まだ工房から衣装は届いていないが、開拓者達の力もあって何とか店を開けた露甘楼。 その事件を近隣の遊郭に知らせ、協力と警戒を求めたレヴェリーは仮面の中の瞳を曇らす。 自分の所は関係ない、露甘楼のような格の低い遊郭だから狙われるのだと頑なに協力を拒む遊郭が在ったのだ。 「粘着質なストーカーかと思ったけどな、やり口が個人とも思えねー」 月白に踏まれた顔面にでっかいガーゼを貼り付けて、村雨も真顔。 これ程大量の衣装を持ち出せるのは洗濯や補修ぐらい。 村雨が出入り業者の取引の時間帯などをカナリアに聞いてみると、なぜかいつもの業者が二度来て少し揉めたらしい。 そういえばと、遊女の一人がレヴェリーに話しかける。 いつもは別の遊郭のお客様が露甘楼に来て、買い物に付き合って欲しいと言われたと。 「それ、どこの遊郭のお客様?!」 そこまでは判らないけれど、レヴェリーの衣装が魅力的だから自分もそうゆう服を着こなしたいと遊女は笑う。 どうやら服を良く見たくてレヴェリーに話しかけたようだった。 「みんなで、工房に服を取りに行こうか?」 ちょっとだけ眠たそうなラシュディアに連れられて、開拓者達は自分達がデザインした衣装を受け取りに向かうのだった。 |