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■オープニング本文 「たかりん、ちょーあいしてるっ」 「僕だってまこりんのこと、ちょーあいしてるよっ」 「たかりんっ」 「まこりんっ」 とある国のとある街のとある長屋の一室に、結婚したばかりの熱々夫婦が住んでいた。 旦那の名前はたかし。新妻の名前はまこと。まことは元々茶屋の看板娘で、大工稼業をしていた旦那がその店に訪れたときにお互いに一目惚れした。これこそが運命の出会いだろう。 朝になれば目覚めの接吻と共にイチャイチャ、旦那が仕事から戻れば出迎えと共に玄関でイチャイチャ。夜は‥‥大人の事情でお察しください。とりあえず夫婦がその部屋に住んで二週間後、一人身であった隣人が夜逃げ同然に引越しをしたとか。 どこからどう見ても幸せ絶好調の新婚夫婦。旦那も新妻もお互いにべた惚れ。旦那には今度大きな貿易商の新しい店を建築する仕事が舞い込んできているし、新妻はとても愛らしい。何の問題もなく未来に期待高まる‥‥誰もがそう思っていた。 旦那本人以外は。 「たかりーんっごはんできたよぉ〜っ!」 新妻が旦那を呼ぶ声がする。いつもなら女神か美の精霊の歌声に等しく聞こえるが、今は地獄からの使者が自分を引きずり込むために来たとしか思えない。 「ご、ごめんまこりん‥‥なんだか風邪っぽいんだ、だから‥‥」 「えぇっ! たかりん風邪なの!? じゃあちゃんと栄養とらなきゃダメだねっ! 大丈夫、最近たかりん元気ないから栄養のあるもの、まこりんがんばっちゃった♪」 ほらほらたかりん、とまことがたかしの背中を押してお茶の間へと誘った。長屋の中は部屋が二室のみ。逃げ場はどこにもない。 お茶の間の真ん中にはちゃぶ台があり、その上には異臭を放つ謎の物体が存在していた。鼻にくるというか既に口の中が苦い。何がどうしてそうなってるのかわからないが、未だぶくぶくと泡立っている。醗酵中だとでもいうのだろうか。原材料はよくわからないが、食物だけで出せるとは思えない鮮やかな青色が「俺達を食うと、死ぬぜ!」と主張していた。 「ま、まこりん、今日のメニューは何かな‥‥?」 「うふっまこりん特製、精力肉じゃがで〜す♪」 肉じゃが、とは何であっただろうか。確かあれはじゃがいもと人参と玉ねぎが肉と一緒に煮含められているものではなかっただろうか。少なくともイチゴやリンゴが乗っているものではなかったはず。頭だけが見えている鯖の頭は肉の代わりだろうか。「こんなものになるために生まれてきたんじゃない」と虚ろな瞳がたかしを見つめてきた。 「残さず食べてね、あ・な・た♪」 ちゅっとまことがたかしの頬に口づけをした。ああ、まこりん、僕のごはんはそれだけでいいんだ、だからそんな、これを食べろだなんて君の口から言わないでくれ‥‥。 死ぬ覚悟をしたたかしは箸をとり、その謎の物体を一欠けら口に放り込んだ。 口内に広がる刺激。苦いとか酸っぱいとか全てを通り越して痛い。飲み込めば、飲み込めばいけるはず、喉元過ぎればってよく言うじゃないか、だが、だが‥‥。 「ごふっ」 「た、たかりーん!?」 たかしはちゃぶ台の上に突っ伏し、意識を失った。 「と、いうわけで、僕は美味しい料理が毎日食べたいんです! できればまこりんを傷つけることなく!」 ギルドの受付に詰め寄るまこと。あれから一週間、食あたりということで医者にかかったが、さすがに原因はわかっているらしい。美味しい料理が食べたいとギルドに駆け込んできた。 「えー‥‥そんなの奥さんに言えばいいじゃないですか。あなたのご飯が美味しくないって」 「そんなこと言ったらまこりん傷ついて泣いちゃうじゃないですか! 僕は! まこりんを! 傷つけたくない!!」 あんたそれだと三年後には逃げられてるね、と受付嬢は心の中で嘲笑した。一応お客様なのでそんなことは絶対口に出さないが。 「わかりました。それでは依頼の方を受理しておきますね」 「あっ、ところでこの間ジルベリアから絵師が来ていたから、まこりんの似顔絵を描いてもらったんですよ。見ますか? 見たいですよね?」 まことはいそいそと懐から巻物を取り出そうとした。 「それは‥‥依頼に関係しますか?」 「いえ、しませんよ?」 「‥‥だったら‥‥早く帰れ――ッッ!! こっちは忙しいんじゃぼけ――ッッ!!」 珍しく、受付嬢がキれたのであった。 |
■参加者一覧
向井・智(ia1140)
16歳・女・サ
四方山 連徳(ia1719)
17歳・女・陰
柊 真樹(ia5023)
19歳・女・陰
太刀花(ia6079)
25歳・男・サ
夏 麗華(ia9430)
27歳・女・泰
皇 那由多(ia9742)
23歳・男・陰
ベート・フロスト(ib0032)
20歳・男・騎
マテーリャ・オスキュラ(ib0070)
16歳・男・魔 |
■リプレイ本文 「あ、あの〜まこりん‥‥」 「なぁに、たかりん♪」 沈んだたかしの呼びかけに対し、返事をするまことの声は明るい。 「開拓者の人達が珍しい料理を教えてくれる教室があるんだって。も、もしよかったらまこりん、一緒に料理教室に通ってくれないかな。ぼ、僕一人じゃ寂しくてっ」 「えっ珍しい料理? うん、まこりんもたかりんのためにもっとお料理覚えてみたいなっ!」 さすが破壊、おっと創作料理が大好きなまこりん、食いつく箇所が違った。 「じゃあ、早速材料買いに行かなきゃね!」 ジルベリア風の前掛けを身に付け、まことは新たな死刑宣告をするのだった。 「料理に〜大切なのは〜あ・い・じょ・う! なのよ〜♪」 店に並ぶ野菜達を眺めながら新妻まことは口ずさんでいる。にこにこと微笑んでいる八百屋の親父も、まさか商品が毒へと変貌する候補にあがっているとは思うまい。 「おっ、新婚か? 良いねぇ、美人な嫁さんの手料理。さぞかし美味いんだろうな?」 「そんなっ! たかりんのためならまこりん頑張っちゃう〜‥‥ってあれ?」 まことは改めて自分に話しかけてきた人物をしげしげと眺めた。天儀の人間よりも目鼻立ちのはっきりした彼は、おそらくジルベリア人だろう。実はベート・フロスト(ib0032)本人だが。 「えーと開拓者の人ですか? ‥‥もしかしてたかりんが言ってた料理教室の‥‥」 「おっと。じゃああんたがまことさんか。たかしから聞いてるよ」 「わぁ、ボク達、教室の材料を買いに来たんだよ〜。偶然だね!」 平然と柊 真樹(ia5023)が嘘をつく。こうして偶然を装い、知り合っておこうという魂胆だ。 「本当、偶然ですね! うふふ、たかりんのために頑張って料理覚えちゃいます!」 これだけを聞けばどんな愛妻かと思われるが。さて‥‥。 「うふふ、まこりんたかりんのために頑張っちゃうぞぉ☆」 「まこりん頑張りすぎて怪我しないでねっ! 君の白魚のような手が傷つくとこなんてみたくないよぉ」 「たかりん優しい! まこりんチョーうれしー!」 最初に「まことです、皆さんよろしくおねがいしまーす」という丁寧な挨拶はあったが、その後はイチャイチャうふふの人目も憚らぬ熱々ぶり。既に開拓者達が周りにいるのを忘れているのではないかと疑ってしまう。 会場の方は定食屋を借り切っている。今日一日は誰の邪魔もなく地獄、もとい料理教室を開くことが出来るだろう。 「若いって良いような悪いような、複雑な夫婦でござるねー。イマイチやる気が湧かないのは気のせいでござろうか‥‥」 遠くから惚気にあてられながら四方山 連徳(ia1719)がぼやいた。 「仲良し夫婦なんですねぇ♪ なんだか僕も結婚したくなっちゃうなぁ。まぁ相手がいないんですけどねー」 反対に皇 那由多(ia9742)は、あははと暢気そうに笑った。 「奥さんの味覚は大丈夫なんでしょうか? 新婚生活で浮かれているだけ、だと思いたいですね‥‥」 太刀花(ia6079)も夫婦に聞こえないようにこっそりと囁く。料理教室の生徒と講師として集まっている開拓者達だが、実はまことの破壊料理をどうにかするという目的を持っていた。 曰く毎日美味しい料理が食べたい。 たかしがギルドに持ち込んだ切実な依頼のはずだが。 「ねぇたかりん。まこりんが新しい料理覚えたら、ちゃんと残さず食べてくれる?」 「うんまこりんのお願いだもの! 僕残さず食べるよ!」 目の前で新たな約束が交わされていた。 「えーと、奥さんのご飯って美味しくないんじゃなかったかしら‥‥」 依頼に間違いはなかったのかと夏 麗華(ia9430)が首を傾げた。のほほんとした開拓者もいれば、 「よしっ! 愛の為、人の為! この向井・智、全力でお手伝いしますよー!」 などとめらめらと何かの闘志を燃やしている向井・智(ia1140)もいた。 「美味しいご飯は明日への糧ですから、是非とも解決して差し上げたいのですけれど」 マテーリャ・オスキュラ(ib0070)がフードの下でこっそりと呟いた。何故か嫌な予感がするけど気にしないことにしながら。 「そういえばたかしさんから肉じゃがが得意だと伺いましたが‥‥」 太刀花がその話を切り出したとき、たかしの頬が引きつった。 「そうなんです! この間も感動のあまり気を失ったんですよぉ〜!」 わかります、マズさのあまりですね、などとは誰も突っ込まなかった。 「講師の方の準備も時間がかかるようですし、まことさんの自慢の料理の腕を我々に披露していただけませんか?」 太刀花が指し示す先では智とベートが器具の確認をしている。 「人数分しっかり足りてますよね‥‥」 ひぃ、ふぅ、みぃと鍋の数を数えている智。だが器具の確認より、危惧の備えをしている者もいた。真樹が用意しているのは、笛の目印の胃薬だ。 「えっいいんですか?」 「ぜひ、お願いします」 講師役である麗華が微笑んで納得したのだろう、まことはうきうきと持ってきた籠の中から今宵の生贄となる野菜達を取り出した。 苺、わかめ、ふきのとうに菜の花。肉じゃがの材料に相応しいとはどうしても思えない。 不安になった太刀花はまことに尋ねてみた。 「と、ところでまことさん。料理のさしすせそはご存知ですか?」 「はい! もちろん知ってますよ。えーと、さは‥‥桜!」 なんでそこで花の名前が出てくるんだ。 「しが醤油で、すが酢醤油!」 醤油が出てくるのはそこじゃないし、酢も混ぜ合わせた状態で覚えるな! 「せもちゃんと覚えてますよ♪ 醤油ですよね!」 あってるけど! あってるけど! 既に出てきているじゃないか! 「そは‥‥えーと、そば?」 側で聞いていた連徳が、隣で青ざめている旦那に向かって親指を立てた。 「ぐっどらっく! でござるよ」 幸運を、もしくは成仏してくれの意味を込めてある。 「そんな無責任なぁー! 依頼なんですよ、ちゃんとやってくださいよぉ」 「‥‥もしかしたら手順を見ることで解決法が浮かぶかもしれません」 眼鏡をくいと指で上げながら、太刀花はまことに肉じゃがを作らせることを提案してみた。 ということで。 「今日の肉じゃがは〜春の景色を思い描いてみました!」 なぜ肉じゃがで春の景色を思い描く必要があるのだと、ベートは心の中で叫んだ。話に聞いていた肉じゃがは青色をしていたが、今目の前にある肉じゃがは緑と赤が鮮やかな彩色だ。 同じように試食係になった那由多も、口は笑っているが目が笑っていない。あれは巨大なアヤカシを前にしたときの覚悟の目だ。 ちなみにたかしはというと「僕はいつも食べてるから遠慮しておきますね」と嬉しそうに席を譲った。 「どうぞ召し上がれ♪」 「いっ、いただきます♪ ‥‥うわぁ‥‥オイシソウダナァ‥‥」 まことに薦められ、那由多はついに食べる決心をした。死ぬ覚悟というか。恐る恐る箸で掴んだ先から瘴気が漏れているような気がする。そういえばケモノは食べることが出来るけど、アヤカシは消えちゃうから食べることが出来ないなー、今ならその体験が出来そうな気がするぞーっと前向きに考えてみようとする那由多。無理がありすぎる。 ベートは既に口の中に何かを含んでいる。肉じゃが(?)ではない、薬草だ。前もって摂取しておくことで対策しておくつもりらしい。 ぱくっ 二人は同時に肉じゃがを口に含んだ。 甘さと野菜の灰汁が絡み合って苦いというか痛いし飲み込めばどうにかいけると思いきや切られた大きさが人間に優しくないむしろアヤカシに優しいというかなるほどこれがアヤカシを食べる経験か。どんな表現をしたとしてもこの味を表現することは出来ないだろう‥‥とりあえず。 ガタタッッ!! 那由多が前に突っ伏し、ベートの首ががくっと後ろに折れた。すかさず背後に控えていた智がベートを支えたので、椅子ごと引っくり返るということにならずにすんだが。 ――見知らぬ花畑の見知らぬ川を渡ろうとしました、と後に那由多は語る。 「‥‥一朝一夕で治るとはとても思えないでござるけど、まあやらないよりはマシかと思うでござる、むしろ思いたいでござる‥‥」 連徳は遠い目で少し現実逃避してみた。 「では、今から簡単な泰風料理を勉強しようと思います」 にこりと講師役の麗華が微笑んだ。お〜と開拓者達の間から拍手があがる。ちなみに先程試食した二人には真樹の治癒符が飛んだので安心してほしい。だが「体内を‥‥ッ消毒するんだ‥‥ッ!!」とヴォトカを飲んだ那由多は、逆に悪酔いしてしまい、部屋の隅っこで潰れていた。しばらく復活は無理だ。 「まずは青魚の開きを‥‥」 麗華が説明を始めようとしたその時。 「きゃ――ッッ!!」 料理教室の真ん中からまことの悲鳴があがった。何事かと皆の視線が集中する。 「やぁ〜ん! たかりん、お魚さんが解剖されてるよぉ〜! 怖いよぉ〜!」 「大丈夫かい、まこりん!? 僕がいるから怖くないよ!」 まことがたかしに抱きつき、たかしはまことの頭を撫で返していた。 「ぐすっ本当‥‥? まこりんうれしー!」 「すいません、魚の開きはまこりんが怖がるから別のものにしてくれませんか?」 「‥‥わかりました」 依頼主に言われれば仕方ない。というか否定してもダダをこねられる気がした。そしてそれは間違っていない。麗華は落ち込んだ表情でしずしずと退場した。 「あれ‥‥たかしさんが食べた肉じゃがには鯖の頭が入ってたんじゃ‥‥」 マテーリャがぼそりと呟いたが夫婦には聞こえていないようだった‥‥。 「それでは皆で珍しい肉じゃがを作るでござるよ〜」 今度は連徳が皆の前に立ち、そう宣言した。珍しいとは言っているが、ふっつーの肉じゃがを作るつもりだ。どうやらまことは普通の肉じゃがの作り方を忘れてしまっているらしい。他にも味噌汁も作る予定だ。焼魚もする予定であったが、まことが怖がり、調理どころでなくなるかもしれないということで取りやめた。 「まずは白米から炊くでござる。おかずを作るのだから、ご飯もないとだめでござるからな。水は適量で‥‥ってああっ!」 「適量ってこのくらいですか?」 桶に溜めていた水を、ざばーっと釜の中に注ぎ込みながらまことが尋ねてきた。溢れた水が米粒と共に流れている。 「水はお米と同じ量だよ」 真樹は自分で手本を示しながら、横から教えた。 「でもぉ、水が多い方が膨らんでお得じゃないですかぁ?」 「そこまで飢えてません!」 太刀花が全力で否定した。 「では今度はじゃがいもの皮を剥きましょう。まことさん、包丁は扱えますか?」 マテーリャがまことの方に視線をやると、そこには震える両手で包丁の柄を握りながら青ざめるまことの姿があった。 「か、開拓者の皆さんは刃傷沙汰には慣れているんですよねっ!?」 「慣れていますけど‥‥これからやるのは料理ですからね‥‥?」 不安になりながらも、マテーリャは一応確認してみた。 ‥‥とまあ万事が万事こんな調子ではあったが、開拓者達が随時助言やら突っ込みやらしたので何とかそれらしくなってきた。 「始めは味付けは薄めで調整出来る様に‥‥っと」 「こ、こうですか?」 智の教えにまことがそーっと匙一杯分の醤油を鍋の中に流し込む。 「その調子です! 調味料はあまり使わないで食材の味を引き出すようにするのが、上達への道ですっ!」 何かが物足りないのか、先程使った苺にまことが手を伸ばしたときは。 「苺や林檎は生のままが一番栄養ありますから、できればそのままで。ジルベリアではジャムやお菓子にもしますから、機会があればお教えしますよ」 とマテーリャがやんわりと苺の投入を防いだりした。だが先程までフードを目深に被り、鍋をかきまわしている様はまるで毒薬を生成しているようだったが。 「いいでござるか。まず味見は基本でござる。他人様に出すものなら尚更でござるよ。愛で無理を通しちゃダメでござる」 こんこんと諭す連徳に、真剣に耳を傾けるまこと。 やがて――形は不揃いなれど、色も匂いも食欲をそそられる、肉じゃがと味噌汁が出来た。隣にはほかほかの湯気をたてるご飯も並んでいる。 「こんな感じでしょうか? 初挑戦にしては上手く行ったんじゃないかと思いますが」 マテーリャが瘴気の漂ってきそうな物体を隣に並べようとしたため、真樹がそっと別の部屋へと移動させた。「見た目は悪いかもしれませんが‥‥」などと落ち込んでいたが、謎の要素をメシマズまことに加えるわけにはいかない。 念のため、智がまことの作った肉じゃがを口に含んでみた。 「‥‥おいしいです」 「ほ、ほんとですか!?」 一番先に食いついたのはまことでなく、旦那のたかしの方だった。 「ええ、本当ですよ。たかしさんもどうぞ」 「で、では‥‥!」 こうして旦那たかしは妻まことの美味しい料理を食べることに成功したのであった。 「恋は盲目。結婚後も盲目。大いに結構。けどな。甘やかすばかりが愛情じゃねえぜ? いつか『あの時の飯は酷かった』と笑って言える仲になれよ」 ベートが帰り際にたかしを諭していた。 「はい! まこりんがまたマズ‥‥微妙な料理を作りそうなときは、ちゃんと叱ってみます!」 「そうそうその調子だ。じゃあな」 開拓者達は満面の笑顔で別れを告げた。毎日はだめでもこれから少しずつ料理が上手くなり、きっといい夫妻になれるはず。そんな想いを込めながら両手を振った。 さて、まことの料理であるが。 料理教室の翌日は、不恰好ではあるがそれなりに食べることが出来る料理が出てきたらしい。たかしが感謝の涙と共にギルドにやってきたから間違いない。 だが、料理教室後三日目にして、既に味噌汁の中に苺が浮き始めたとか。たかしが抗議の涙と共にギルドに以下略。 「何が原因ですかねぇ‥‥」 「妻じゃなくて旦那の方だったでござるか、問題は‥‥」 麗華と連徳は顔を見合わせて溜息を吐いた。 |