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■オープニング本文 「ふぇっ‥‥おか、おかぁちゃぁああん!!」 「うるせぇ、泣くな糞ガキッ! 殺すぞ!」 ひっと小さな悲鳴をあげて子供は黙り込んだ。洞窟の中で三人の男が睨みを利かしていた。どの男の顔にも刀傷があり、真っ当な人生を歩んできたとは思えない風貌だった。 捕らわれている子供は数人、その中の一人は特に身なりがよかった。どうやら金持ちの子供とその友人達をまとめてさらってきたようだ。えぐえぐとすすり泣く少女や仲間を守ろうと男達を睨む少年まで様々だ。 「それにしても大丈夫なんですかねぇ‥‥」 周りを見渡しながら男の中の一人が怯えていた。周囲の壁は人工的に切り崩された四角い石が積み重なっており、松明がなくとも所々にある宝珠が仄かな光を放っていた。そうここは洞窟というより遺跡だった。 「あん? 何びびってんだてめぇ」 男達の中で最も体格がよく偉ぶっているものが反応した。 「だってここ遺跡の中じゃないですか。遺跡の中ってアヤカシがたくさん出るんでしょ?」 「はっはっはそんなことか。ここはなぁ、もう宝珠が掘りつくされたとこなんだよ。だからアヤカシなんざ開拓者の連中が全部倒していっちまってるさ」 「そっか! 兄貴頭いいー!」 「はっはっは、本当のこと言っても仕方ないだろ、はっはっは」 「兄貴、そろそろ身代金を頂きにいく時間じゃないですかい?」 もう一人の子分らしき男が進言してきた。 「ん、そうか? ま、外に出て確かめてもいい頃ではあるな」 男達はその遺跡の部屋に子供を残し石の扉を閉めた。子分の一人が扉につっかえ棒をはめた。中から出られないようにするためだ。 「おい、そこから出るとアヤカシに喰われるかもしんねぇぞ」 「はっはっは、兄貴ってばアヤカシがいないって知ってるのに子供を脅すなんて悪趣味ですねぇ」 「お、おい‥‥」 先に出て待っていた子分の方が遺跡の通路の奥を指差して震えていた。兄貴格の男もそれにつられて後ろを向く。 「はっはっは、わざわざそんなことして脅さなくとも出られやって‥‥ぎゃあああああ!!!!」 「はっはっは、兄貴ってば演技が上手ですよ〜。悪趣味す、ぎ、‥‥」 能天気な子分が一番最後に振り向いたとき。そこにはもっしゃもっしゃと異形の怪物に頭を食われている兄貴がいた。 「あんぎゃあああああああああああ!!!!!!!!」 男の遺跡についての知識がもう少し深ければこんなところに入ろうなどと考えなかっただろう。発掘できる宝珠がなかろうとも遺跡の中にはアヤカシが跋扈しているのだ。だからこそ誰も入らないように入り口を封じていたというのに、男達はそれを壊して侵入した。――自業自得ではあるわけだ。 志体持ちでもない子分が遺跡から出て来られたのは幸運としか言いようがない。子供のために身代金を用意していた商人は子供が遺跡の中に取り残されているのを子分の泣き言の中からなんとか理解した。 「仕方ない、開拓者ギルドに依頼しよう。ギルドなら発掘済みの遺跡ぐらい把握してるだろう」 「ですが子供達は遺跡の部屋の中に閉じ込められているのでしょう? ‥‥全員大人しくしてますかね」 「うーむ‥‥」 育ち盛りの腕白盛りの子供達、大人しくしろなどと口をすっぱくして言っても守らないのに自主的に行うわけがない。 「‥‥早めに行ってもらおう。できるだけ」 |
■参加者一覧
鬼島貫徹(ia0694)
45歳・男・サ
鬼灯 仄(ia1257)
35歳・男・サ
バロン(ia6062)
45歳・男・弓
からす(ia6525)
13歳・女・弓
クォル・T(ia8800)
25歳・男・シ
櫻吏(ib0655)
25歳・男・シ
涼魅月夜(ib1325)
15歳・女・弓
将門(ib1770)
25歳・男・サ |
■リプレイ本文 「さ、さっき悲鳴が聞こえたけどさ、やっぱり‥‥」 「ああ、アヤカシに喰われたんだろうな」 子供の中で最も体格の大きい少年、太助がきっぱりと言った。途端に「わぁーん、アヤカシ怖いよぅ!」とさっきも母を呼んでいた少年、彦一が泣きはじめた。 「泣くなよ、もっと腹が減るぞ! でもどうしよ。誰か来るまで待つ?」 金持ちの息子と思われる少年、虎丸が太助に尋ねた。 「誰も来なかったら? さっきの奴らは喰われちまっただろ。ここに俺達がいるのを知ってるのは誰もいねぇよ」 「そんなぁ‥‥」 太助の言葉に虎丸はみるみる涙を浮かばせた。 「お前まで泣くなって! ‥‥しかたない、俺達で何とかしようぜ」 「何とかって〜?」 のんびりとした声で少女の梓が問うた。はねっ返りの由紀やひねくれ者の三太もどうするのか不安げだ。 「出るんだよ、ここを」 「これは物品管理だし、これは依頼の記録だし、これは誰かの日記‥‥ちょっと興味があるけど今はそんなことしてる場合じゃないんだからねッ!」 これでもないあれでもないと涼魅月夜(ib1325)が倉庫の棚に頭を突っ込んでぼやいていた。奥に保管されていた巻物や書類が月夜に掴まれては放り投げられ、ぐちゃっと山になっていく。ギルド職員が隣であわあわとうろたえている。 「あ、あのぅ、大事な書類もあるんでもう少し丁寧に‥‥」 「ええい、何を愚図愚図しているッ! 早くせんか!」 まごつくギルド職員に鬼島貫徹(ia0694)が一喝した。赤鬼のような真っ赤な顔で怒鳴られれば鬼迫に慣れていないギルド職員も「ひっ、ご、ごめんなさいっ!」とあたふたと月夜と同じように頭を棚に突っ込んだ。「うぅっ今日は残業かなぁ」という呟きは聞かなかったことにする。 「地図持ってきたら全部終わった後でしたなんてことにならない様に手早く頼むぜ」 貫徹の脳裏に鬼灯 仄(ia1257)が依頼の前に言った言葉が思い出された。 「何事もなく無事に終わっているならそれでいい。だが人命がかかっているのだ、急がねばならぬ。ほら、何をしてるのだ!」 大きな箱を持ち上げながら、貫徹は倉庫の入り口で様子を窺っていた職員達に一喝した。 誰が何のために造ったのかわからない過去の建築物、それが遺跡だ。少なくとも客人を歓迎するために造られたものでないことは中の罠やアヤカシのことを考えればわかる。 そもそも開拓者が『開拓』と名乗る理由には遺跡探索という役割があるからだ。アヤカシや賊と戦えるのも危険な遺跡を探索できる程の力を持っているからに他ならない。 「ここらへんには罠はないようですねぇ」 ぽんぽんと壁や床を叩いていた櫻吏(ib0655)が仲間に告げた。シノビは罠を見つけるのに優れた視覚を持っている。 「アヤカシの方はどうですかい?」 櫻吏の問いに、まぶたを閉じて弓の弦をかき鳴らしていたバロン(ia6062)が顔をあげた。 「さすがは遺跡と言うべきか、あちこちに気配を感じるわい。出来るなら戦闘は避けたいところだが‥‥」 「探索済とは云え遺跡、開拓者として興味深くは御座いますが‥‥六人の御子の命がかかっていますからなぁ」 「子供達が心配じゃ‥‥急ぎ救出せねば。避けられぬならば最速を尊ぶまで」 バロンが弓に矢を番えた。不意打ちを狙うつもりのようだ。 「ほとほと難儀に御座いますな」 くつくつと櫻吏は笑った。 ヒュンッ!! 罠を探っていたクォル・T(ia8800)の鼻先を矢が飛んでいった。怪我はなかったが、たらりと冷や汗が流れてしまう。 「あ、あはは。ここ矢が飛んでくるから気をつけてね〜」 「きみもな」 容赦のない少女、からす(ia6525)の突っ込みにクォルの胸が少し痛んだ。 「しかし子供達がここを通らないとも限らないしな」 からすは予め用意していた白墨を取り出し「ワナちゅうい、や、がとんでくるよ‥‥と」とかりかり壁に記していった。 「ま、本来なら部屋で大人しく待って、こんなところ来なけりゃいいんだろうが」 仄が通路の先を見通すように目を細めながら呟いた。その瞳には練力が湛えられており、隠れている存在を察知することが出来る。それは子供であってもアヤカシであっても。 「聞いた話だと全員いたずらっ子っていうしね」 やれやれと肩をすくめながらクォルもぼやいた。 仄の眉がぴくりと動いた。 「‥‥何かいるな」 「では万全を期すためにも‥‥」 からすがその手にもった弓をかき鳴らした。 ――ィィィイン 石造りの遺跡の中に僅かな響きが生まれる。音を聞くために集中していたからすがぽつりと言った。 「‥‥残念だね、外れの方みたいだよ」 既にからすは弓に矢を番えていた。不意打ちを狙うようだ。 「大人の都合で子供たちが巻き込まれるのはいたたまれないからね〜」 のんびりとした言葉は手裏剣を構えたクォルのものだ。 「思いっきりいかせてもらうぜ」 チャキッ、鞘から出る刃の音が遺跡に響いた。 身も腸もすべて無くした骨の鎧武者がかたかたと通路の真ん中を往復していた。幾年もの年月をそのように獲物を探しているのだろう。 カッ 乾いた音をたてて鎧武者の骨盤に深々と十字手裏剣が刺さった。 「さみしい人生、いやアヤカシ生でございますなぁ」 最初に攻撃したのは櫻吏だ。 続いて櫻吏の手裏剣が刺さる隣に矢が飛んできた。二撃も受けた骨の塊はかつんと乾いた音を立てて真っ二つに裂けた。支えをなくした鎧武者の上半身と下半身がその場に落ちて砕ける。 「わしらとて死ねば骨になる。屍を利用されんとも限らない話だ」 ヒィイン、と矢を放った反動に震える弓を構えながらバロンが答えた。 「アヤカシの気配はこれ以外にはありましたかい?」 「ああ、奥にまだまだおるぞ」 「それは楽しみでありますなぁ」 櫻吏とバロンが警戒しながらも前に進む。その時。 ゴガンッッ!! 突如二人の背後で轟音が響いた。武器を構えながら振り向いた開拓者の目の前、そこには通路を塞ぐ形で大きな岩が落ちていた。 「これは‥‥どこかで開く仕掛けがあるようだな」 石の表面を撫でながらバロンが呟いた。 「ほぅ、わかりますか」 「ああ。岩の表面が磨いたかのように滑らかだ。恐らく仕掛けを何回か動かしている間に研磨されたのだろうな」 「さすがは遺跡、来た客は簡単に帰さないおつもりで」 櫻吏が振り向き笑う向こう、来客を逃さないアヤカシの目が光っていた。 「燃えるものは何にもないっと‥‥思い切りやってもよろしいですよね?」 にや、と櫻吏が笑った。 「今遺跡の中からおっきな音がしたよッ!?」 地図を手にして急いで遺跡に辿りついた月夜が慌てふためいた。 「落ち着かんかい! 何かあれば笛で知らせる手はずだろうが!」 貫徹の一喝の直後、同じような重い音がゴガンッともう一度響いてきた。 「そ、そうだね! とりあえずうちたちが来た合図を‥‥」 ごそごそと月夜が懐から呼子笛を取り出した。 ピ――――――ッッ!! 遺跡の中に長い笛の音が一度鳴った。地図を探していた者達が遺跡に来た合図だ。 「ちぇ、鬼島の旦那が来るまでに全部終わらせるつもりだったんだけどな」 仄が苦笑しながら肩をすくめた。先程大きな音が遺跡内のどこかで響いた後、同じような音が仄達の背後で響いた。作動することはクォルが調べてわかっていたがそれより先に子供がいる可能性もあった。だから開拓者達は一歩前に進み、背後をあえて絶たれた。 「このままここに閉じ込められたりしちゃったりして‥‥」 縁起でもないことを呟くクォルの耳に小さな会話が聞こえてきた。 「今のおっきな音と笛ってさ、僕達を探しに来た人のじゃない?」 「俺達をさらった奴らの合図かもしれねぇだろ」 ひそひそとアヤカシに気付かれないように努力していたが、練力によって聴覚を研ぎ澄ませていたクォルには聞き取ることが出来た。 「そこにいるのは誘拐された子達でしょ〜? 自分達は開拓者だよ、助けにきたよ〜」 クォルが声を投げかけるとしん、と子供達は静まってしまった。 「安心していいよ。誘拐犯の仲間じゃない」 同じ子供であるからすの声に安心したのか、今度は「やったー!」とはしゃぐ声が聞こえてきた。 「そんなに自分って怪しいのかなぁ〜‥‥」 「はは、今のは俺が最初に声をかけても同じ反応されたと思うぜ。こっちにからすがいて助かったな」 落ち込むクォルを仄が慰めた。 見つけた子供は全員無事だった。 「うろちょろしてんじゃねぇよ、手間かけさせんな」 ゴツゴツゴツゴツッッ!! 「あたっ」「つー」「いでっ」「ぴぎゃっ」 笛で合図を送ったあと、少年四人の頭に仄の拳骨が落ちた。 「だって助けが来るかどうかわかんなかったし!」 太助と名乗った少年が口を尖らせた。 「文句があるなら遺跡でくたばるような馬鹿な人さらいに捕まった自分の間抜けさを恨むんだな」 などと仄がきぱっと言い切ったとき 「お、ここにおられましたかい」 「ここにおったか!」 と丁字路の向こうから櫻吏と貫徹が姿を現した。 「さて全員そろったようだが‥‥帰りも難儀そうじゃな」 バロンが苦笑した。 「ほらお菓子だよ〜」 月夜の差し出した菓子に子供達は目を輝かせた。我先に取り合うかと思いきや、刀を模した飴を人数分に割ったり、大きな欠片を小さな者に与えたりと子供ならではの優しさが見えた。 「ありがとうおねーちゃん。俺達ずっと何も食べてなくて、だから‥‥」 今まで気を張り詰めてきたのに甘いものを口に入れて緩んでしまったのだろう。太助がほろほろと涙を流し始めた。今まで気丈だった彼が泣き出したことで他の子供も泣き始めた。 「ほ、ほら泣かないでいいんだよっ! もう大丈夫なんだからね!」 慌てて月夜は子供達を宥めた。 「仕方ありやせんねぇ。ほれ、これならどうです?」 櫻吏が彦一を抱き上げた。だが彦一は「わぁ〜んこのお兄ちゃんなんか怖いよーっ!」などと失礼なことを泣き叫んだ。 「ぶっ」 最初に噴出したのは仄、そこから開拓者全員に笑いが広がり子供も「怖くなんかないって!」と笑い始めた。 「まぁ‥‥結果的によかったんですかねぇ」 ぽりぽりと櫻吏は頭をかいた。 「良し、この先はしばらく何も無い。急ぐぞ」 貫徹が地図を見ながら指し示した。先程泣いた子供達はしばらく大人しかったが、今はきゃいきゃいと初めての遺跡に興奮しきっている。 「ピーチクパーチクやかましいわ小童!」 前を歩く貫徹が一喝するが、はしゃぐ子供の熱は抑えきれない。貫徹は「ぐぬぅ」と言ったきり苦虫を噛み潰したような顔になった。 クォルの提案で子供達を挟むように移動しているがなかなか大変だ。例えば横に脇道があったときは 「ねーねー、こっちには行かないの?」 「俺見たい、見てくる!」 などと駆け出そうとした。 「これ、お主ら‥‥今は大人しく付いてこんか。ここは遺跡の中、どこに危険が潜んでおるかわからんぞ」 バロンは走り出した太助と三太の首根っこを慌てて掴んだ。普段は子供好きなバロンだがここは遺跡の中、多少厳しくしても安全は確保せねばと子供達に目を光らせていた。 「地図によると、遺跡の中をおっきなアヤカシがうろついているみたいだよ」 「聞いた親分とやらもそのアヤカシに喰われたのだろう」 月夜の言葉にからすがしみじみと呟く。 「うまく逃げることが出来れば、と思っていたけどそうはいかないみたいだぜ」 仄が難しい顔をしながら眼前の通路を睨んだ。 ずしん、ずしんと響く音が聞こえる。 「背後はどうだ?」 「だめだよ、どうやら後ろからも来てるみたい」 貫徹の問いに弦をかき鳴らしたからすが答えた。子供達の顔が見る間に青ざめていく。 「安心しろ、お前達はわしが身を挺してでも守るわい」 子供達を背後にかばいながらバロンが誓った。 先に姿を見せたのは寸胴な体が重そうな大鬼だった。 カツッ! 瞬時に敵の姿を視認したバロンの矢が、大鬼の額に深々と刺さった。だが大鬼はその攻撃にものともせず、最も前に出ていた貫徹をぎろりと睨んだ。 ゴッ!! 丸太のような太さの腕が貫徹を壁に押さえ込む。 「いったいのぅ‥‥!」 大斧を前に出すことで潰されるのを防いでいるが、頭から赤い血が垂れていた。 「でかい図体で邪魔くせぇな! 紅蓮紅葉!!」 赤い燐光を纏った仄の刀が鬼の体を袈裟切りにした。 そして殿を守っていた開拓者の方は。 「隠れて不意打ちを狙うつもりだろうが‥‥」 ぎり、とからすが何もないはずの壁を狙い済ました。 「バレバレだよ」 からすが矢を放つ。黒い霧に包まれた矢が壁から滲み出るように出現した半固体のアヤカシを貫いた。瘴気に還るが、その瘴気は塵になることなく遺跡の壁に吸い込まれていった。 「うわー、遺跡のアヤカシが復活するってのは本当みたいだねー」 その様子を眺めていたクォルが改めて気付いたかのように言った。 「わざわざそれを待つこともあるまい。さっさとここから出よう」 バロンの提案に皆は頷いた。 遺跡の外では親達が青い顔で我が子の無事を祈っていた。全員命に別状なく姿を見せたとき、親達は子供に走りより抱きついた。それは金持ちの親であれ、普通の親であれ同じ姿だった。 「皆お疲れ。お茶は如何かな?」 子供が無事助かったということもあり、からすが皆に茶を振舞った。茶席を用意したいということを告げたら、息子を助けてくれたお礼にぜひと道具や菓子などは全て金持ちが用意してくれた。 「うーん、やっぱり仕事のあとの一服はおいしいねー」 ほあーと息を吐くクォルの横に太助と虎丸が「おねーちゃん、おねーちゃん」とかけてきた。 「おねーちゃん、あの時お菓子ありがとう。あれって高いだろ? だからこれ、あげる!」 虎丸が差し出したのは武天の呼子笛だ。ギルドが作成した遠くまで聞こえる代物だ。 「父ちゃんにもらったんだけど、おねーちゃんの方が役に立てると思うんだ」 「ありがとう、大事にするね!」 月夜は笛を受け取りにっこり微笑んだ。 |