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■オープニング本文 夏だ! 海だ! 水着だ! 水着だあああああ!!(大切なことだから二回言いました) 夏といえば海水浴! とは少し違うが、とある砂浜では今闘いが幕開けようとしていた‥‥! 「いくぞ‥‥! 斬撃符!!」 ズザッッ!! 巻き起こった真空の刃が襲い掛かる!! ‥‥コートに。 符と共に放たれた白いボールを受け止めようと人が集まるが、カマイタチによって弾き飛ばされた。 「う、うわぁああああっっ!!」 ぎゅるるっとボールは回転し、側で成り行きを見守っていた審判が点数が入ったことを笛を吹いて告げた。 そう、夏といえばビーチバレー。しかもこの場で行われているのはただのビーチバレーではない、特別な志体を持つもの達が、特別な必殺技を使って闘う超開拓ビーチバレーなのだ! 第三十五回、サマー天儀グランプリ。 この夏で最も熱くそして強いビーチバレーを決める大会だ。 ――その会場。 ドシャァッ!! 強く砂浜に打ち付けられる者がいた。横を受け取りそこなったボールがはねていく。 「おほほほほ! ツワモノが集まると聞いてきましたがこの程度とは見損ないましたわ、ねぇお姉さま!」 「おほほほほ! まったくですわね、我が妹よ! この大会の優勝もいただいていきましてよ!!」 頭の横や後ろにぐるんぐるんの縦巻き金髪ロールを作った姉妹が砂浜で高笑いをしていた。 「さすが蝶々姉妹ですわ」 「お美しい技ですわ」 と後ろで褒め称えている彼女達は同じチームの仲間らしい。 「ふ‥‥この闘い、まったく予想ができないものになりそうだ」 くく、と砂浜の様子を意味ありげに含み笑いしながら男が見ていた。 サングラスをつけて目元を隠しているこの男――ただの観客である。 ※このシナリオはミッドナイトサマーシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません |
■参加者一覧
天津疾也(ia0019)
20歳・男・志
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
設楽 万理(ia5443)
22歳・女・弓
霧隠 孤影(ia9099)
15歳・女・シ
月見里 神楽(ib3178)
12歳・女・泰 |
■リプレイ本文 太陽がじりじりと白い砂浜に照りつける。 夏といえば海。海といえば水着。大事なことだから何度でも言います。 もちろんビーチバレーだって忘れてはいけない。 「フフフ、我々もビーチバレー大会荒らしと呼ばれてきたけど今回は特に潰しがいのありそうな相手ね」 設楽 万理(ia5443)が浜辺に集まった猛者共を眺めながら含み笑った。 「夏の海の風物詩の一つよね〜」 葛切 カズラ(ia0725)が万理に同意するようにのほほんと呟いた。 彼女の今年の水着は白のティアドロップビキニだ。雫型の小さな布地が必要最低限の場所しか隠していない。 「そうだね、でも水着も夏の風物詩の一つじゃない?」 相槌をうちながらカズラの背後から二本の手がにゅっと迫ってきた。掴むのはカズラの二つのバレーボール、いや豊満なバスト。 犯人は薄紫のモノキニタイプの水着を着た水鏡 絵梨乃(ia0191)だ。 「ちょっとぉ、こんなところで、あんっ!」 「こんなところにボールを隠し持つなんてルール違反だぁっ! 身体検査をしてやるっ」 「ボールじゃないって、見ればっ、わかるでしょおっ! やっ、ら、らめぇっ!」 絵梨乃の手がカズラの乳の上で妖しげに蠢く。周りにいる男性観客達がおぉっとどよめき、これからの展開に期待の眼差しを投げてきた。 「むう、なんや女性陣だらけの中で一人だけ男っちゅうのも少し居心地悪いが、水着姿で揺れるのを満喫するかいな」 あまり熟視してはいけないと知りつつも、天津疾也(ia0019)は扇情的な二人の様子に鼻の下を伸ばしてしまう。 「神楽さん、神楽さん。疾也さんには気をつけるです。さっき僕達の水着姿をねっとりじっとり満喫すると言ってましたです」 「うにぃ、動物絵日記をつけるんですか?」 いまいち噛みあわない会話をしているのは霧隠 孤影(ia9099)と月見里 神楽(ib3178)だ。孤影の今日の水着は紺色一色のスクール水着だ。ピチピチだ。 「待たんかいっ!? 誰がそんな変態チックなこと言ったんや! それにあんたらは揺れるもんがないやろ、見ても楽しくないわ!」 「とりあえず、今あなたは女性の何割かを敵にまわしたわ」 すっと疾也の背後に万理が立った。その目は笑っていない。特に板というわけではなく、平均的な大きさの万理だが、豊満なカズラや絵梨乃と比べると正直物足りない。 「い、いやそういうわけじゃなくってな? やっぱり胸は形なんやないかと‥‥」 「胸は形。神楽覚えたのです」 「忘れてや!?」 などと疾也に冤罪がつきそうになったその時。 「あら、あなた達も参加者ですのね」 ふいに開拓者、いや選手達に声をかけてくるものがいた。派手な金髪縦巻きが二人、噂の蝶々姉妹だ。後ろには取り巻き兼選手が控えている。 「おっぱいは数ですわ、お姉さま」 「そうね、我が妹よ。あえて言いますわ、カスであると!」 ほほほほ、と高笑いをしながら姉妹とその仲間達は去っていった。 確かに細身の女子が三人、男が一人のこちらが質量で勝っているとは言えない。 「‥‥金網にでも磔にしてあげるわっ」 普段は物腰の柔らかい万理が珍しく闘志を燃やしていた。 「この大会を制するのは我々シノビ☆レシーバーズでござる!」 第一回戦の相手は全員がシノビのチームだ。近距離、中距離が得意なクラスで相手の後衛ごと潰すつもりだ。汚いさすが忍者きたない。 「同じシノビとして負けるわけにはいかないです! いくです、分身の術!」 そんな高度な技をあんな少女が!? シノビ☆レシーバーズの間に動揺が走った。 ぷるぷると震えだす孤影。まるでボケた老人のようだ。よく見たら少しだけぶれて見えるような見えないような。 「ってただ震えとるだけやないかい!」 びしっと疾也の突っ込みが入った。 「必殺、苦無スピン!」 最初にアタック権を得たのはシノビ側だ。複数の苦無が回転しながらボールと共に飛んでくる。狙われたのは孤影。 「はうっ! が、がんばるです!」 だが不意をついた攻撃に孤影はうまく体勢をとれない。 「危ない!」 絵梨乃が体を横にひねりながら一気に跳躍してきた。何本かの苦無が頬を掠めるが裏拳がボールを弾き返した。 「てぃやあっ!」 勢いを持ちながらも敵コートへと打ち返されたボールは目の前のくの一の胴体を掠めていった。 攻撃が当たらなくてよかったでござると安堵するくの一。だが次の瞬間、はらりと一枚の布地が砂浜に落ちた。 それは今まで彼女の胸部を覆っていた水着で。 「え? あ‥‥きゃっ、きゃああ!!」 ござるとしゃべることも忘れ、くの一は胸を押さえながらコートから走り逃げ去った。 「次に脱がされたいのはだぁれ?」 にんまりと絵梨乃は楽しそうに笑った。 第一試合は簡単に終わってしまった。 というのも、絵梨乃と疾也が水着を狙うプレイをしたため退場者が続出したのだ。 相手が女性でも容赦なく水着を粉砕した疾也に、男性観客は尊敬の、そして女性観客は氷の視線を投げてきた。 「なんや複雑な視線が絡み合って痛いわぁ」 中には褌の紐が切れても戦おうとする男、いや漢らしいシノビもいたのだが、海を巡回していた警備員の手によってお縄になった。 観客の女子達が連れて行かれるシノビに「変態!」「死ね!」と辛らつな言葉を投げつける。 「くそっうらやましい!」 観客席にいるサングラスの男が吠えた。 第二試合。 相手は志士と陰陽師の混合チームだ。雑魚なので特に説明することもない。 「アローサーブ!」 万理が弓に似た大型のボール打ち出し機で高く強くボールを打ち上げた。ルール違反? 弓は弓術師にとって体の一部なので問題ありません。 「先手必勝やで!」 疾也の華麗なサイドステップ。動きにあわせて対応しようとしていた相手チームは動揺し、わずかに後ろ足を踏んでしまった。 「俺のこの剣が光って唸る、オマエを倒せと輝き叫ぶ!!」 疾也の叫びと同時に携えている刀が青白く輝き始めた。 高く打ち上げられたボールにあわせるように、疾也も高く飛んだ。 そして剣で相手チームに向かって叩きつける! 目前にいた志士の顔面に強力な一撃を与えた。志士がきゅうと目を回し、審判が退場の笛を鳴らした。頭部が破壊されたわけではない。 「どんどん行きますです、スク水がみんなのゴールです!」 孤影が皆を励ます。それはお前だけだと誰もが心の中で突っ込んだ。 第二試合もこちらの勝利であった。 「僕のスク水神拳は真108式まであるです」 どんな裏だと言いたくなるがどどばーって感じでぐぐぐーんって感じらしい。 決勝戦までは時間がある。わずかな時間ではあるが、開拓者チーム達には休憩が与えられた。 もちろん、万全を期すために大会運営が簡単な応急手当をしてくれた。 神楽は待ち時間の間、蝶々姉妹の試合を見学して分析しようとしていた。 ――だが。 最初はボールが跳んでいく様を面白げに観察していたが、試合中のものには触れないとなるとつまらないことこの上ない。 やがて神楽は日陰に作られた観客席で、すよすよと丸くなってしまった。 「なんや、試合見るんやなかったん? 寝てるんならこれはいらへんな」 片手にイカ焼きを持った疾也が隣に腰掛けた。漂う醤油の匂いにピンと神楽の尻尾が反応する。 「くんくん、イカさんの匂いっ!」 神楽は飛び起き、疾也の持っていたイカ焼きにかぶりついた。 「反応早いなぁ」 「えーと、海だよ、魚だよ、球だよ? 猫には楽園と同じ、海が神楽を呼ぶのさ!」 疾也のからかいの視線に神楽は笑ってごまかした。 決勝戦。ついに彼らはここまでやってきた。 相手は蝶々姉妹だ。縦巻きロールが乱れていないところをみると蝶々チームも楽々と進みあがってきたのだろう。 「白紺つけるぜ!」 スク水的な意味で孤影が薄い胸をはった。 「おほほほ、今までの相手と同じようにずたぼろにしてあげましてよ」 「それはこっちのセリフよ」 蝶々姉妹と万理が視線で火花をバチバチと散らす。 そして――決勝戦開始の笛の音が響いた。 絵梨乃がボールを高く打ち上げる。 「絶破! 昇竜脚!!」 絵梨乃の体が閃光を纏い、光は蒼い龍になった。龍が雷鳴のように鳴くと同時に、空中で半回転していた絵梨乃がボールに鋭い頭突きを放った。 ゴウッ! 「きゃあーっ!」 前を守っていた取り巻きの一人が受け止めようとして吹っ飛んだ。高らかに鳴る審判の笛。戦闘不能とみなされた一人がマネージャー見習いに引きずられながらコートの外に出て行った。 「ボクの技に、惚れるなよ?」 スッと水平に掲げた右手で相手を指差しながら、絵梨乃はくすりと笑った。取り巻きのうちの何人かが頬を染めるが蝶々姉妹に睨まれて慌てて表情を引き締めた。 攻撃はこれだけでは終わらない。 蝶々姉の鋭いアタックが後衛の万理へと襲い掛かった。当たれば致命傷は避けられない――はずだったが今の万理にとっては違う。 カッと万理が眼を見開く。 「うそ、今‥‥万理の体からものすごいオーラがっ‥‥!」 思わず絵梨乃が驚きの解説をする。 無我の境地に目覚めた万理が鋭いアタックを放つ。その精度は千万分の一。相手の防御行動の穴を突き 「I use the moon tears!!」 確実に顔面に高回転のボールを直撃させる! 「お、お姉さま――ッッ!?」 蝶々姉が倒れるがすぐに跳ね起きた。鼻からは血が噴出している。意外と丈夫だ。 「あら、素敵なお化粧ね」 にっこりと万理が笑う。怖い。 「ヴぅぅ〜! よぐもやっでぐれまじだわねっ!」 「お姉さま、鼻血は拭いてくださいまし!」 蝶々姉は慌てて顔を拭った。 「敵討ちでしてよ!」 蝶々妹の強いスマッシュが叩きつけられた。敵討ちというからには狙われているのは万理の顔面だ。 「危ない!」 即座に疾也が横に跳び、万理の前に立ちはだかった。自然と疾也が顔面でボールを受け止めることになり――バシンッ!! 「おおっと疾也くん吹っ飛んだ――ッッ!!」 サングラスの男が叫ぶ。なぜか口調を変えながら。 だが男の言うとおり疾也はコート外へと投げ出され、そのままぴくりとも動かなかった。 「ううっなんてことです! 疾也さんが殺されてしまうなんてです!」 神楽と他の仲間達が怒りに燃え始めた。担架で運ばれている最中の疾也が「し、死んでへん」と呟いていたが聞こえるわけがない。 それからの展開は苦戦の一言だ。 姉妹のクラスはサムライのようだ。必殺でなくとも一撃一撃が強い。 「お月見アタック!」 神楽がムーンサルトしながらボールを放った。思わぬ攻撃に相手は足元を崩され転倒してしまう。その隙にボールはコートへと叩き出された。 だが蝶々チームも負けてはいない。地を割る地断レシーブに神楽が巻き込まれそうになるが、絵梨乃が身を挺して庇った。 「必殺! 水着スラッシャー!」 カズラの斬撃符が取り巻きの一人の水着を切り裂いた。蝶々チームはカズラを完全な数合わせ要員だと思い込んでいたものだからその攻撃は不意打ちとなった。 決勝戦に向けて力を温存していたカズラの勝ちだ。 「ん〜〜良い眺め〜〜やっぱり浜辺なら着飾るより脱いでる方が綺麗よ」 ひにゃあっと悲鳴をあげた取り巻きが海の家方面へと逃げ去っていった。これで蝶々チームの数は三人以下となった。 「許せませんわ、ぎたぎたにしてくれますわっ!」 「挑むのはかまわないけど〜水着を脱がされても泣かないでね♪」 絵梨乃の挑発に蝶々姉妹が顔を赤くする。 「誰が泣くものですか! たとえ一糸纏わぬ姿になってもコートに立ち続けますわ!」 蝶々姉妹の言葉にやったーうひょーと男性観客達が歓声をあげた。 アタック権は蝶々チームに移動、蝶々姉が「許せませんわ!」と強く打ち付けてきた。 「にゃんこレシーブ!」 瞬時にボール着地地点へと移動した神楽がボールを空へ打ち上げた。猫にとって球を追いかけるのは得意なことだ。 受け取ったのはカズラ。下腹部に逆五芒星の文様が浮かび、赤い生血が垂れた。 「秩序にして悪なる者よ、我が血肉を糧にその身を顕し、その欲のままに彼の者を暴食せよ!」 突如、晴れていたはずの空が暗雲立ち込める怪しいものに。 「ど、どういうことですの、きゃあっ!?」 蝶々姉の足元に謎の触手が現れた。 「お、お姉さま今お助けします‥‥いやああこっちにも!?」 にゅるんにゅるんと現れた触手が蝶々チームのふくらはぎに、膝に、太ももにまとわりつき、肉感的な臀部を締め付け、質量を自慢していた胸にもまとわりつきはじめた。 「ひ、ひにゃーっ!? こないで、絡みつかないで、吸い付かないで――ッッ!」 最早格好つけることも忘れ、蝶々姉妹達は突然の触手プレイに泣き叫んだ。 「すばらしい、すばらしいぞ開拓者諸君!!」 サングラスの男が涙を流しながら感動していた。 「優勝はッッ開拓者チ――――ィィムッッ!!」 「やったぁ――――ッッ!!」 開拓者達は喜びに皆で抱き合った。途中で退場してしまった疾也もいつの間にか真ん中でもみくちゃにされていた。 「あーんうれしーっ!」 カズラが疾也の後ろから抱き着いて二つの肉球が背中にくっつく。代われ! 「よくやったぞお前達! 俺は最初からお前達を信じていた!」 サングラスの男が皆の背中をばしばしと叩いた。 「あんた無関係やろ」 さり気なく抱き合う仲間に混ざろうとした男は疾也の突っ込みに叩き出された。 「優勝の秘訣はなんでしょうか!」 どこかから現れたレポーターが万理にマイクを突きつけた。 「まあ、球を取りに行くと言うより命(タマ)を獲りに行くゲームってとこね」 浮かれる仲間達に蝶々姉妹達が近づいてきた。 「ふ‥‥まさか私達に勝つとは思いませんでしてよ」 「修行が必要ってことかしら、お姉さま」 触手のせいで混沌とした試合であったが、蝶々姉妹とその仲間達はどこかすがすがしい顔をしていた。正気度が減っているのかもしれない。 「うにっ友情の握手です! 皆で夕日に向かってダッシュするのです」 神楽が姉妹と握手を交わすのをきっかけに、他の仲間達も先程の強敵と硬く握手をした。 「ところであなた、とても魅力的な耳と尻尾ですわよ」 「うにぃ、ありがとなのです」 「えー、優勝チームにはトロフィーと賞金が出ます。そして準優勝チームには賞金はないのですが、副賞品として『もふり権』を与えたいと思います」 「何ですか、それ?」 審判の言葉に神楽は顔にハテナマークを浮かべた。そんな彼女のもとに蝶々姉妹が手をわきわきさせながらにじり寄り‥‥。 「うに――――ッ!?」 終! |