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■オープニング本文 「征四郎君、例の話聞いた?」 開拓者ギルドに、依頼の報告書を提出しにやって来ていた天元・征四郎は、突如掛けられた声に目を向けた。 そこにいたのは、書類を持って笑顔で手を振る山本だ。 「例の話‥‥何の事だ?」 「今話題になってる話と言えば、アレだよアレ」 山本はそう言うと、ギルドに張り出された『告知』を指差した。 「あのゼロさんが、神楽の都で祝言をあげるんで、その参列のお誘いを出してるって話」 確かに征四郎も、その告知は目にしたし、嫌というほど聞きもした。 だが、征四郎からすれば「そうなのか」程度の話。特に何かするべき事でもない。 しかし、山本は言う。 「君とゼロさん、仲が良いだろ? だから何かするのかなってさ」 「‥‥何?」 今、聞きヤ違えでなければ、仲が良いと言っただろうか。 確かに、ゼロとは一緒に闘いに赴いた事があるし、昨日今日知り合った仲でもない。 だが、仲が良いかと聞かれると、首を傾げてしまう。 「何、何もしない訳? あ、もしかして、お祝用意する時間がなかった‥‥とかなのかな? だったら、良い情報があるよ」 言って、山本は持っている書類を開きだした。 そして一枚の紙を差し出す。 「神楽の都から少し行った所に、恋愛成就のお社様があるんだよ。そこに、家庭円満のお守りがあるって話でさ。買いに行ってみたらどうだろう?」 家庭円満のお守り‥‥確かに、これから結婚する者にとって良い贈り物になるだろう。 しかし―― 「‥‥自分で、行けば良いだろう」 征四郎はため息交じりに呟き、頭を振った。 そうして歩きだそうとしたところで、彼の足が止まった。 ギルドの一角に見えた見覚えのある人物、職員と親しげに話すその人物は――ゼロだ。 参列の事に関して話しているのだろうか、楽しげに、気恥しげに話す姿に、征四郎の目が眇められる。 「‥‥祝言か」 口にして、くるりと振り返った。 「――買ってくる」 「へ?」 「紅葉を見に行くついでだ‥‥多少の寄り道は、問題ない」 突然の言葉に山本は目を瞬いた。 先ほどまで興味すらなさそうだったにもかかわらず、いきなり態度を変えたのは何故だろう。 だが、その答えは直ぐに出た。 ギルドを後にするゼロの姿が目に入ったのだ。 「なるほど。素直じゃないなあ‥‥」 そう呟いた山本に、征四郎の冷えた視線が突き刺さった。 |
■参加者一覧
柚乃(ia0638)
17歳・女・巫
有栖川 那由多(ia0923)
23歳・男・陰
天宮 蓮華(ia0992)
20歳・女・巫
水月(ia2566)
10歳・女・吟
フィリー・N・ヴァラハ(ib0445)
24歳・女・騎
朱華(ib1944)
19歳・男・志
常磐(ib3792)
12歳・男・陰
浄巌(ib4173)
29歳・男・吟 |
■リプレイ本文 「めでたきことよの、祝言を、あの童が挙げるとは‥‥いやはや思いも寄らぬことにあるまいぞ」 謡うように言葉を紡ぐ浄巌(ib4173)は、笠越しにお守りを買い求める征四郎を見た。 お守りであれば、支給品で補うことが出来ると言うのに、何故わざわざ買いに行くのか‥‥。 「ヒトは神や信仰に縋る生き物よ」 不思議でならない、けれど面白くもある――そう含んで笑みを零す。 「凄いな‥‥周りが真っ赤だ‥‥」 常磐(ib3792)は社を囲う紅葉を見上げ、感心したように呟いた。 その目は青を染める深紅を見つめている。 そんな彼の頭を、朱華(ib1944)が撫でた。 「ああ、すっかり秋景色だな‥‥山の色が鮮やかで綺麗なもんだ」 「これは見ごたえあるよな‥‥」 同意して頷く常盤に、朱華も頷く。 そんな2人の傍では、思案気に首を傾げる柚乃(ia0638)の姿があった。 「ゼロさんとは面識あったかな?」 呟いて思い出すが、記憶が確かではないらしいく、首を傾げて視線を泳がすと直ぐに頷きが漏れた。 「‥‥ともかく人生の門出? 目出度きこと良きことだよね。人の幸せ、柚乃も嬉しい」 「結婚ねぇ・・・あたしはいつできるんだろ・・・」 嬉しそうに笑った柚乃の言葉を拾って言うと、フィリー・N・ヴァラハ(ib0445)は僅かに肩を竦めた。 そして直ぐに笑みを零して伸びをする。 「ま、それはおいといてのんびりしよっかね〜」 本日の天気は快晴だ。 澄んだ空に紅葉の赤が綺麗に映えている。 「‥‥あの、はじめまして」 おずっと、征四郎に声を掛けたのは水月(ia2566)だ。 天宮 蓮華(ia0992)の後ろに隠れ、そこから覗くように見ている。 その姿に僅かに頷くと、征四郎は「はじめまして」とだけ言葉を返した。 それに対して水月は、頭を下げて蓮華の後ろに隠れてしまう。 蓮華はと言えば、穏やかな微笑みを征四郎に向けていた。 「ゼロ様の為に家庭円満のお守りを買いに行くだなんて、天元様はお優しい方ですわ」 「‥‥紅葉狩りのついでだ。他意はない」 「ふふっ、紅葉狩りのついでに素敵なお守りが見つかるといいですね?」 微笑んで掛けられる声に小さく咳払いすると、征四郎はお守りに目を戻した。 そこに声が掛かる。 「家庭円満の御守り‥‥か。俺も、一枚噛ませてもらっていい?」 征四郎を覗きこんで、声を掛けてきたのは有栖川 那由多(ia0923)だ。 那由多とゼロは親友だ。 それを事前に聞いていた征四郎は、ふとした疑問を口にする。 「‥‥式には参加しないのか?」 「し、しないよ!」 慌てて口にした那由多の頬が紅くなっている。 本来なら親友の式に参列したい。だが、結婚式に出るという、それだけの事が気恥ずかしくて逃走している最中だったりする。 それを隠すために顔を背けると、ポツリと呟いた。 「大体、ゼロのでれっとした顔なんか見てられるかよ」 大概似たような理由で祝いの言葉も言っていない征四郎には、彼の気持ちがよくわかる。 かと言って同意するつもりもない。 再びお守りに視線を向けて、黙々と選び出す。 そんな彼らを見た柚乃は、ふと首を傾げた。 「恋愛成就のお社様‥‥どんなお守りを買いに来ても、傍から見れば‥‥」 思わず見てしまった征四郎の姿に、視線が泳ぐ。 「‥‥1人でも買いに来たのかな」 そう呟いた柚乃に、傍にいた同行者が苦笑したのはここだけの秘密である。 ●想い色々 お守りの種類は実に豊富だった。 ご利益も然ることながら、色も様々で選ぶのに苦労してしまう。 それは征四郎も例外ではなく、ただ眺めるだけで一向に何を買うか決められない。 「2人の瞳の色に合わせて緑と赤を基調にしてみてはどうだろうか」 征四郎の様子を見かねた朱華は、そう言うと2種類のお守りを示した。 志士としての目標の1人である征四郎に会うのが楽しみだっただけに、こうした姿を見るのは意外だ。 「最終的に決めるのは天元さんの好みで構わないと思うが、相手の瞳の色のお守りを渡すとか‥‥女はそういうの好きだよな?」 そう言いながら隣で同じようにお守りを見ていた柚乃を見る。 その傍らには蓮華もおり、2人は顔を見合わせると頷いて見せた。 「ん、瞳の色に合わせては‥‥賛成♪」 「そうですね。新郎新婦さんの瞳の色と同じお守りがあれば最高ですね♪」 にこりと笑う2人を見て、征四郎の目が赤と緑のお守りに向かった。 「依頼等で離れている間も、お互いの瞳の色と同じお守りを身に付けていれば寂しくなさそうです」 蓮華はそう言うと、彼の見ていたお守りを差出す。 ――家庭円満。 そう刺繍された2色のお守りを受け取ると、微かに笑んでそれを購入した。 ちょうど同じ頃。 水月も真剣な顔でお守りを見ていた。 彼女が手にするのは「子宝祈願」のお守りだ。 「‥‥誰かに買ってくのか?」 そう思い問いかけた常盤に、水月がコクコクと頷きを返す。 「ゼロさんに‥‥」 良く聞けば、以前ちょっとした騒動の際に迷惑を掛けてしまったらしい。そのお詫びにと気合を入れて選んだのだとか。 「少し早い気もするけど‥‥気持ちの問題だしな」 そう言う常盤の手にも、幾つかお守りが握られている。 それをじっと見る水月に、彼は眉間に皺を寄せて呟いた。 「俺の分と、姉の分だ‥‥お守って言っても、色々あるんだよな‥‥」 そう言いながらお守りに目を落とす。 色は寒色系、色々迷ったがこれが一番と思った。 そして種類は魔除け。 「朱華。お前はお守りとか破魔矢とか買わないのか?」 誰に――とは口にせず、傍に戻って来た朱華に問う。 その声に瞬くと、彼は手近にあったお守りを手にした。 お守りを購入した征四郎を見届けた、那由多の足が止まった。 「絵馬が売ってる」 そう呟き、少し考えてから絵馬を購入。 そこに記す文字は‥‥ ――親友の行く路に幸せが溢れますように。 (どうか、今までしんどかった分の幸せが、あいつに訪れますように) そう心の中で呟き、絵馬を社の隅に飾った。 そして静かに手を合わせる。 ザァッ‥‥っと、風の強い音がした。 その音に顔を上げると、真っ赤な紅葉が視界を遮っている。 まるで親友を彷彿とさせるその景色に、ふと笑みが零れた。 「‥‥幸せになれよ」 そう囁き、那由多は皆の元に戻って行った。 そこでは未だにお守購入の最中で―― 「ばば様には健康長寿とかよさそう‥‥八曜丸には‥‥」 言って柚乃は相棒のもふらのためにもお守りを選ぶ。 もふらに合うお守りは何だろう。 「ん〜、どれがいいかな‥‥」 迷う柚乃の傍では、蓮華も同じようにお守りを選んでいた。 購入するのは無病息災のお守り。 贈る相手は弟と友達にだ。 フィリーはそんな彼女達の様子を眺めてから、赤く染まる紅葉を見上げた。 訪れる前に、見事な景色が臨めるとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。 その圧巻の風景を見ていた彼女の目が瞬かれる。 「お守か‥‥いつもどれるのかわからないけど。帰ったらあげようかな」 クスリと笑みを零して足を動かした。 遠く離れるジルベリアの家族。 彼らにお土産として送るのも悪くはないだろう。 そして浄巌もまた、皆の例に漏れずお守りを購入していた。 「安産祈願、病気平癒、それと‥‥」 3種類のお守りをそれぞれ2個購入する。 そんな彼をフィリーが不思議そうに見ていたが、彼はその視線に気づくと笠を被る頭を僅かに下げて見せた。 「あ、どうも‥‥」 そう言って頭を下げたフィリーに、今一度頷きを返すと、僧服姿の男はふらりと紅葉の中に消えて行った。 ●紅葉狩り 社の周りに出ている露店は、祭りの出店に比べれば賑わいを欠くものの、種類はそれなりで、訪れる人の目と舌を楽しませている。 浄巌はそれらを見るでもなく、笛を奏でながら歩いて行く――と、不意にその足が止まった。 そして先ほど購入したお守りを1つずつ取り出して眺める。 道行く人々は、何が始まるのかと足を止めた。 当の浄巌葉と言えば、そんな周囲の様子など何の気にも留めず、マイペースに符を取りだすと、そこに念を送り始めた。 「絶え行け、枯れ行け、生霊怨霊、混血黒血鮮血喀血」 ブツブツと呟きだされる声に、ある者はさらに興味深く、ある者は怯えて去ってゆく。 そして全ての言葉を紡ぎ終えると、何事もなかったかのようにお守りを懐にしまった。 「友人からの、頼まれものぞ気にするな」 誰にともなく呟き、再び笛を吹いて歩きだす。 その不可思議な動きに、眺めていた人々は、何も言えずに彼の姿を見送ったのだった。 一方、買い物を終えた他の面子は、朱華が陣取ってくれた紅葉の下に茣蓙を敷き、そこに持ち寄った食べ物を広げて紅葉狩りを楽しんでいた。 「折角だし、見るも食べるも紅葉なんて良いんじゃないかなと、思ったんだけど‥‥売ってなかったか」 残念そうに呟き、おにぎりを口に運ぶのは那由多だ。 目の前に置かれた重箱には、だし巻き卵に五目煮、焼き魚と南瓜の羊羹が入っている。 これからは常盤が持って来たものだ。 そしてその隣には、別の弁当も置かれている。 「紅葉饅頭でしたら、私が作ったものでよろしければ」 言って、蓮華が紅葉型のお饅頭を差し出した。 それに那由多の顔がぱぁっと明るくなる。 嬉々として口に運んだ饅頭は売っている饅頭に引けを取らない位に美味い。 「美味い! なあ、これ食った? 美味いよ、もっと食べればもっと背伸びるんじゃないか?」 ニコニコと悪びれた様子もなく声を掛けた先にいたのは、征四郎だ。 黙々と料理を口に運んでいた彼の米神がピクリと揺れた。 「ほら、食べてみなよ」 そう言って口元に持って行かれる饅頭。 これに征四郎の手が止まる。 「有栖川様、無理矢理はいけません。天元様、もしもお嫌いなものがあった場合はご無理をなさらないで下さいませね?」 申し訳なさそうに口にする蓮華に、征四郎は箸を置くと那由多の手から饅頭を受け取った。 そして―― 「――美味い‥‥と思う」 ポツリと零された言葉。 その素直ではない様子に、那由多は密かに親近感を覚えていた。 常盤の重箱の隣に置かれたお弁当は、蓮華と水月が作ったものだ。 「ふわぁ」 水月は自らが手伝ったお弁当と、常盤の重箱を見て目を輝かせている。 そこに蓮華が箸で卵焼きを口元に運んで行くと、水月は迷うことなくそれに食らい付いた。 「〜♪」 心底幸せそうに目を細める姿に、辺りは一気に和やかな雰囲気になる。 そしてゆっくり口の中のものを食べきると、水月はおにぎりを持って征四郎に近付いた。 無言で差し出されたおにぎりに、征四郎の目が瞬かれる。 「‥‥すまない」 そう言って笑みを浮かべると、彼はおにぎりを手にとって口に運んだ。 「食べ物の追加だ」 朱華はそう言って、露店で買ってきた食べ物を置いた。 「綺麗な景色に美味しい飯‥‥まあ、俺の場合は花より団子なわけだが」 そう言いながら、常盤の隣に腰を下ろした。 「露店も色々なんだな‥‥ちょうど紅葉も見頃みたいだし」 「後で見てくると良い。美味そうな店がいっぱいだった」 常盤にそう言いながら、彼の持ち寄った料理を口にする。 「常盤の料理も久しぶりだし、今日はいい日だ」 たらふく食べないと。 そう口にした朱華に、常盤は僅かに目を瞬くと、若干眉間に皺を寄せて苦笑した。 その傍では、フィリーが気に入ったらしい紅葉を眺めている。 「ジルベリアじゃ、冬でも緑の木ばっかりだからね〜」 見事なまでに色づいた紅葉は、ジルベリアでは考えられなかった景色だ。 フィリーは紅葉の浮かべられた茶を口に運びながら、フッと笑みを零した。 「紅葉舞い落ちる場所でお食事会‥‥春の桜とは違った趣があっていいね」 「うん、色付いてていい感じだね〜」 紅葉を浮かべたお茶は柚乃が振舞ったものだ。 それを手にして柚乃の言葉に相槌を打つ。 そして器と外の垢を見比べていると、笛の音が響いてきた。 目を向ければ先ほどまで傍にいた柚乃が笛を吹き、水月が舞いを披露しているのが見える。 風の音と水月が口ずさむ旋律に合わせ奏でられる笛の音、そこに舞う白い舞い手に皆の目が釘付けになる。 「あまり騒いで無ければ良いが‥‥そう、思い戻って来たが‥‥危惧であったか」 何処からともなく戻って来た浄巌が、茣蓙に腰を据えながら舞を見る。 「雅趣の趣はわびさび‥‥尤も、楽しめればそれで良しか‥‥」 「水月様の舞はとっても可憐ですね‥‥いつもはあんなにお可愛らしいのに、今日は紅葉のお姫様みたいですわ」 そう囁いた蓮華の声に、浄巌の笠の中からフッと笑みの零れる音がした。 ●願いは‥‥ 秋の日が傾き始めた頃、一行は帰り支度を始めていた。 そんな中で柚乃と蓮華が何かしている。 「‥‥何をしているんだ?」 「今という時を刻むこの紅葉で、お二人に何かお祝いの品を‥‥」 柚乃はそう言って、2枚の紅葉を掌の様に重ねて目を伏せる。 「同じ時が二度とない、この紅葉もふたつとないもの‥‥」 彼女は新郎新婦に紅葉の栞を贈ろうと考えたのだ。 蓮華もそれと同じらしく、彼女と共に栞を作っている。 「なあ、征四郎は、ゼロの祝言‥‥出席する?」 突如掛けられた声に目を向ければ、バツの悪そうな表情を浮かべた那由多が立っていた。 「御守りを届けるついでにさ、1つ、頼まれてもらえないかな‥‥」 そう言いながら差し出されたのは、真っ白な封筒に紅色のロウ印が施された文だ。 「これ‥‥ゼロに渡してもらえるかな?」 「‥‥渡すくらいは構わない。だが、面と向かって言わなければ伝わらない事もある」 自分のことは棚に上げていう言葉に、那由多は目を瞬き、そして苦笑した。 その上で文を征四郎に託す。 「ごめん、な」 その声に征四郎は「気にするな」とだけ言葉を返し、受け取った文を懐にしまった。 神楽の都へ帰る途中、蓮華の声に征四郎の足が止まった。 「これを、天元様がお守りをゼロ様にお渡しする時に、ご一緒にお願いできますか?」 そう言いながら差し出されたのは、先ほど作っていた紅葉の栞だ。 「『ご結婚おめでとうございます。守り守られ愛し愛され、幸せな未来を歩まれますよう』そう、お伝え頂けますでしょうか」 伺うように掛けられた声に、ふと迷う。 それでも手を伸ばして受け取ると、蓮華は安堵の表情で微笑んだ。 「お願いします。それと‥‥」 まだ何かあるのだろうか。 首を傾げた征四郎の前に差し出されたのは、もふらの刺繍がされた青いお守りだ。 それを見た彼の目が瞬かれる。 「お幸せとご無事とご成長を祈りながら作りました‥‥受け取って頂けますか?」 小首を傾げて見上げる仕草に、目が瞬かれる。 そして今一度手を伸ばして受け取ると、彼の顔が逸らされた。 「‥‥すまない、大事にする」 そう言った彼の耳が紅葉の様に赤く染まっていたのを、蓮華は微笑んで見ていた。 |