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■オープニング本文 キラキラと、風に舞う雪はまるで花のようで。 白無垢を着た花嫁の如く美しい山は、神聖な輝きを放つ。 アヤカシを寄せつけない、山そのものが神聖な気を放つこの場所に、1つ人に忘れられたものがある‥‥。 ●去る者 山道も、獣道も見えない山を、雪を分けて進む男がいる。 大振りの荷物を背負い、白い息を切らせて歩く男は額の汗を拭うと歩くことに専念していた足を止めた。 「あと少し」 前方に薄らと建物らしきものが見える。 男は目を細めてそれを眺めると、再び足を動かした。 ザクザクと雪の踏む音が響く。 そして歩くその目に建物の姿が完全に入ると、男は背負っていた荷物を背負い直した。 今にも崩れそうな古ぼけた寺。戸はおろか、壁にさえも隙間を作り、風が吹く度に寒そうな音が吹くその建物を眺める。 「春を迎えるまで持つのかねえ」 苦笑しながら社の中に足を踏み入れる。 外観同様に中は古く、雪の重みで屋根の軋む音がする。 その音を聞きながら、男は中を見回した。 「爺さん、来てやったぞ」 薄日が差し込む中、仏像の前に腰を据える人物がいた。 「何だ、居るじゃないか。返事くらいしてくれよ」 そう言って荷物を下し近付いて行く。 座禅を組んだまま身動き1つしないその人物は、この寺を長年守って来た住職だ。 「ほら、この前言ってた修繕道具持って来たぞ。春が来たら修理するんだろ?」 ドサリと置かれた荷物は、音からも想像できる通りかなりな重さがありそうだ。 しかしその音にさえ老人は振り向かない。 「爺さん?」 不思議に思った男が老人の肩に触れたとき、その体が床に倒れた。 穏やかな表情で目を閉ざした老人を見て男の目が見開かれる。 「‥‥爺さん」 男はその場に膝を着くと老人の身をそっと起こしたのだった。 ●残された者 開拓ギルドの受付で、考え込むように腕を組んだ役人が1人。 その前には、必死の形相で中の役人に詰め寄る男がいる。 「お願いします。これは亡くなった爺さんの最後の願いなんです!」 頭が膝につきそうなほど深く頭を下げる男に、役人は唸り声を零す。 「しかし、なあ‥‥」 役人は頭を下げる男と、依頼の内容を記した文を交互に見て息を吐いた。 依頼の内容は寺の修繕。可能ならば、ささやかでも良いので宴を開き賑やかな寺の姿を死者に見せてあげて欲しい。と言うものだった。 「こういうものは近くの村や、寺の参拝客にでも頼めば良かろう」 「‥‥出来ればそうしてる」 頭を上げた男の顔が苦渋に満ちている。 「寺はここ数年、俺しか参拝していない。皆、近くに出来た新しい寺に行っているからな」 それを聞いて役人はなるほどと頷いた。 男から聞いた話によれば、寺は雪深い山頂にあるという。女、子供は勿論、年配の者はこの季節は近付くことすらできないらしい。しかも山頂への道自体、もともと険しいらしいのだ。 「開拓者なら、足腰だって強いしこの季節でも登れるだろ?」 「‥‥そうだな。開拓者なら可能だろう」 チラリと役人の目が上がる。 必死に訴えかける男の顔を見やり、その目が依頼の文に落ちた。 「わかった、この依頼受けよう。‥‥ところでお前さん、その住職とはどのような関係‥‥ん?」 文から顔をあげた役人の目が瞬かれる。 先ほどまでいたはずの男の姿が無い。 代わりに、男が立っていた場所には水たまりと獣毛が残り、側には布袋が置かれていた。 その中には、ほんの僅かだが支度金としての銭が入っていたとか。 |
■参加者一覧
無月 幻十郎(ia0102)
26歳・男・サ
柚乃(ia0638)
17歳・女・巫
阿留那(ia1082)
18歳・女・志
九法 慧介(ia2194)
20歳・男・シ
若獅(ia5248)
17歳・女・泰
楊・夏蝶(ia5341)
18歳・女・シ
からす(ia6525)
13歳・女・弓
七ノ森 蛮(ia7801)
23歳・男・泰 |
■リプレイ本文 ●寺を目指して 「おー、結構深いな」 そう言ってザカザカと雪をかきわけて歩く大男が1人。巨大な身体をまるで重機のように動かして進むのは、無月 幻十郎(ia0102)だ。 自らの体を生かして、後続が歩きやすいように道を作っている。そのすぐ後ろでは、出来あがった道を更に歩き易くするために、雪を踏み馴らして歩く七ノ森 蛮(ia7801)の姿があった。 「雪ね‥‥面倒とは思ったけど、いやはや恐れ入った」 感心したように呟きながら、悪天候に備えて用意した道具に数々を思い浮かべて苦笑する。 幸いなことに山は出発前まで吹雪いていたものの、皆が足を踏み入れると途端に顔を変えた。 「山の天気は移ろいやすい。まさにその典型だな」 うんうんと頷きながら、九法 慧介(ia2194)が背負っていた大荷物を背負い直す。荷物の中には依頼で必要な修繕道具や、鍋の具材などがこっそり忍ばせてある。 そんな男性陣の後ろを、険しいながらものんびりと歩くのは個性豊かな女性陣だ。 「良いお天気になって良かったわ」 歩き易くなった山道を進みながら、用意しておいた縄を肩に巻くのは揚・夏蝶(ia5341)だ。 「邪魔だろ、俺が持とうか?」 そう言って手を差し伸べたのは、楊の友人若獅(ia5248)だ。 彼女は防寒をしっかりした上で、結構な大荷物を持って歩いている。その上まだ荷物を増やそうと言うのか。そんな彼女に、阿留那(ia1082)が声をかけた。 「重い物は豪腕な男性にでも任せれば良かったでしょうに」 「いいや、じーさんの願いを叶えるためだ。これっくらい、苦労って程のモンでもねえ」 そう言って笑う若獅に、阿留那は感心したように頷く。 今回の依頼は亡くなった老人の弔いが目的だ。その老人の為にする苦労は苦労ではない。そう簡単に口に出来てしまう若獅は素直で良い子なのだろう。 「若獅ちゃんってば優しいんだから」 「ん、同意です」 楊の言葉にコクリと頷く阿留那。その後方では柚乃(ia0638)とからす(ia6525)が互いに手を取りながら雪道を歩いていた。 「歩き辛くない?」 「問題ない」 柚乃の声にからすが頷く。その声に笑いかけながら、柚乃は足を動かした。 それに習ってからすも歩き出すのだが、ふと彼女の幼い目が周囲の山に向いた。 「良い眺めだ」 雪山を進んでだいぶ経つ。 標高も高くなり、天気も良いことから周囲の山々が良く見えた。 辺り一面真っ白に染まった山。その視界を擽るように時折花風が舞う。 キラキラと輝く雪はまるで花のよう‥‥。 険しい山道を進む開拓者たちは一度足を止めると、その景色を眺めたのだった。 ●修繕・そして弔いの準備 トンテントンテン、賑やかな音が鳴り響く。 屋根の上の雪を下してそこの修繕に当たるのは七ノ森だ。彼は現地にあった材料の一部を拝借して痛みの激しい場所に板を張っている。 「良い音だ。しっかし、これ以上こいつで叩いたら他ん所が壊れたりしてな」 そう言って苦笑しながら寺の全貌を見やる。 話には聞いていたが、思った以上に痛みが激しい。 「それはないでしょうが、確かにこれを全部埋めるのは一苦労ですね」 七ノ森と共に屋根の上に登っていた阿留那が呟く。そうして新たな板を手にしようとした所でその動きが止まった。 「材料が‥‥」 気付けば屋根の上に上る際に持ってきた板の全てを使い終わっている。そこに豪快な声が響いて来た。 「よう、もう少し材木いるか?」 「もし必要であれば持っていきますよ」 目を向ければ板と斧を手に屋根を見上げる無月と、鉈と材木を手にした九法がいる。彼らは近くの木を伐採して材料に変えたところだ。 「ちょうど、私の板がきれてしまった所でした」 「わかった。無月さん、頼む」 そう言って手を伸ばした七ノ森に、無月は大仰に頷くと手にしていた板を振りかぶった。 「せっかくの木だ。大事に使えよ」 「え!?」 無月以外の3人が目を見開く。 勢い良く放たれた板は、七ノ森の顔面に直撃しそうになりながら、ギリギリの所で阿留那が引き止めた。 「‥‥ご、豪快な人だ」 「まったくです」 ヒヤヒヤと肝の冷える思いをしながら、七ノ森と阿留那が呟く。その下では、新たな板を放とうとする無月がいる。 「無月さん。残りの材料、俺が持っていきますよ」 「ん? そうか?」 そっと板に手を添えた九法に無月が目を瞬く。 こうして新たな板が投げられることだけは免れた。それを目にした七ノ森と阿留那はあからさまにホッと息を吐いたとか、吐かなかったとか。 「ん〜、ここが危なそうね」 楊はそう口にすると、小脇に抱えていた板を壁の隙間に打ち付けた。 トントンと軽やかな音を響かせながら、新しい修復場所を探して目を動かす。その視界に必死に巨木を寺に向ける若獅の姿が目に入った。 「若獅ちゃん、どうしたの?」 「いや、雪の重みで倒れないように添え木でも、と思ってさ」 ニッと笑って木を叩く姿に思わず笑みを返す。 「なら私も手伝うわね。じゃあ、私はこっちを持つから、若獅ちゃんはそっちを持って」 「了解」 そう言って2人で巨木を持ち上げる。女性同士と言ってもやはり開拓者なだけある。力仕事は何のその。2人で持ち上げた木を、狙い通りの場所に添えると2人は満足そうに笑いあった。 そこに賑やかな声が聞こえてくる。 「意外とある」 庭の雪を掻きわけて土を覗きこむのはからすだ。 どうやら修繕を終えてその後の宴の準備に入ろうと言うのだろう。傍には雪の下に隠れていた野菜を採取して抱える、柚乃の姿もある。 「これだけあれば出来そう」 ほわっと笑って野菜を抱きしめる。 しかし量が多いせいかどうにも脇から零れそうで危なっかしい。そこに手が差し伸べられる。 「少し持つよ」 「皆で協力して少しずつ、ね♪」 目を向ければ頼もしい笑みを浮かべる若獅と、優しい笑顔で2人を見つめる楊がいた。 「なら、これも手伝って」 野菜を手渡しながらからすが示したのは、野菜を取る為に掘った雪だ。それを見て2人の首が傾げられる。 「少しお庭を賑やかにしたくて‥‥雪だるまとか雪うさぎでも作ろうかと」 確かにこれだけ雪があれば何かしら作ることはできるだろう。 2人は柚乃の声に頷くと、野菜の採取を手伝いその後、雪での飾りつけに取り掛かったのだった。 ●宴の準備は 積もった雪のせいか、普段以上に静かに感じる山の中、山頂に建つ古い寺に温かな灯りが灯っていた。 「具沢山でお腹いっぱいになるやつ作るぞ!」 石で作った竈を前に、残った木を薪にして火を大きくする若獅が意気込む。その隣では煮立つ鍋の中を覗きこむからすがいた。 「味付けは昆布で決まり」 温かな湯気が上る鍋の中身に、表情が穏やかになる。そこに出汁を乗せた小皿が差し出された。 「はい、お味見お願いね」 幼い目が見上げたのは、楊だ。 からすは楊から小皿を受け取ると、僅かに冷まして口にした。 「ん、美味しい」 「あ、俺も味見したい!」 緩やかに笑ったからすに便乗して若獅も名乗りを上げる。そこにぶつ切りにした鮭を乗せたまな板が差し出された。 「鍋と言えばこれだろ。入れてくれるよな?」 にんまり笑って3人を見比べるのは九法だ。こっそり背負って来た魚を是非とも鍋に混ぜたい。そんな思いで皮むきをしていた延長で包丁を振るった。 「そうね、昆布の出汁と合いそう」 そう言って微笑むと、楊は野菜などと一緒に魚も鍋の中に入れた。 仏像が置かれた広いスペースに並べられた宴の為の食べ物。その傍には複数の酒瓶が置かれている。 そんな酒瓶のすぐ傍に腰を据えるのは無月だ。 「ふぃ〜、寒かったなあ」 両手を擦り合わせて息をかける。 宴の準備に向かった者以外は、日が暮れるギリギリまで作業をしていた。お陰で寺の修繕は終わり、寺の中が来た時とは比べ物にならないほど温かくなっている。 「お疲れ様」 そう言って無月の隣に腰を据えたのは七ノ森だ。彼もまた寒そうに手を擦り合わせている。 2人ともつい先ほどまで修繕詰めを行っていたのだ。雪が積もった場所だけあって寒さも倍増。部屋に入って少し経ったくらいでは寒さが抜けない。 「早く体を暖めたい」 はあっと無月と同様に七ノ森が手に息を吐きかける。と、そこに扉が開く音がした。 目を向ければ柚乃と阿留那が入ってくるのが見える。 「おう、遅かったな」 作業を終えたのはもう少し前だったはず。 何をしていたのかと無月が言外に問うと、その声に阿留那が口を開いた。 「この子の提案で少しだけ作業を延長していました」 すっかり冷え切ってしまった柚乃を座らせながら淡々と答える。その声に七ノ森が首を傾げた。 「提案?」 「お墓の隣に、雪うさぎと雪の灯篭を‥‥」 手を真っ赤にさせて微笑む柚乃に、無月と七ノ森が目を瞬く。 「そりゃあ、手も冷たくなるだろ」 「冷たいけど‥‥大丈夫。それに‥‥楽しい‥‥」 ふんわり笑ってみせる柚乃に2人が感心したように目を瞬く。それに同意するかのように、阿留那は柚乃の頭をぽんっと撫でた。 「良い子ですね」 少し微笑んで囁きかけると、そこに賑やかな声が響いて来た。 どうやら宴の料理が出来たようだ。ガヤガヤと賑やかな声がして、料理を運んでくる姿が見える。 「少し手伝ってきます」 そう言うと、阿留那は柚乃の傍を離れて調理場に向かった。 「いやいや、良く働く」 「本当に」 無月の言葉に七ノ森が頷く。 そんな2人の手には、すでに盃があったとか。 ●宴、そして‥‥ 並べられた数々の料理。 その中央に置かれた鍋は温かな湯気を放ち、寒さで冷えた皆の体を温めてくる。 そんな中で響くのは柚乃が持参した横笛の綺麗な音色だ。 「‥‥楽しい」 曲の合間にぽつりと呟いて微笑む。 そんな彼女の脇には、住職の為に用意された席もあった。 「若獅ちゃん、ワンピと巫女袴とどっちが良い?」 にっこりと笑って楊が問いかける。 その声に面食らったように目を瞬くのは、声を掛けられた若獅だ。 「そう、巫女服に決定ね!」 「い、いや、俺なにも‥‥」 「はーい、こっちに来てね」 そう言って問答無用で若獅の腕を引いて奥に引っ張り込んでゆく。何とも強引だが、微笑ましい光景だ。 それを見送った無月と七ノ森は既に酒を何度となく組み合わせ意気投合している。 「さあ、どんどん飲め!」 「良い飲みっぷりですねぇ」 盃が空になっては新たな酒を注ぎ、無くなっては注ぎを延々と繰り返し、微妙にできあがっている。彼らの周りには、すでにいくつかの空き瓶も転がっていた。 その近くでは黙々と料理を口に運ぶ、からすと阿留那がいる。 「美味しい‥‥」 「そうですね。このネギの味噌和えが特に美味しい」 「これ、楊さんの手作り味噌」 「手作り味噌。それは美味いはずです」 そう言って、阿留那はふろふき大根にも手を伸ばした。 野菜を中心とした料理はどれも美味しく、無意識に箸が進んでしまう。 そこに先ほど奥に下がった若獅と楊が戻って来た。 「柚乃ちゃん、お邪魔するね。ほら、若獅ちゃんも一緒に」 「えっ、ちょ、俺踊りとか上手くないし‥‥」 若獅の声を聞きながら、にっこり笑って楊が舞いだす。 仕方なく若獅もそれに続いて踊りだした。 始めこそはぎこちなく、それでも少しすると音に合わせて自然と踊り始める。何とも華やかで宴の席にはもってこいの演出だ。 そんな2人の姿を少し離れた場所で眺めていたのは九法だ。彼の手には花札が握られている。 「この中でやる自信はないな‥‥」 呟きながら花札をしまおうとした。 しかし思わず声が返ってくる。 「手品、やるならやった方が良い」 「え?」 「披露するのなら早くした方が良いと思います。そろそろあの辺りが危険ですから」 からすと阿留那が九法の手元を覗きこんで呟いている。その声に彼が視線を向けたのは、酒盛りを続ける無月と七ノ森だ。 「確かに、そろそろ危なそうだな」 そう彼が口にした時、新たな酒の瓶が開けられたのだった。 ――そして。 皆が良い具合に腹が膨れ、盛り上がった頃、七ノ森が酒を手に立ち上がった。 「ちょいと失礼」 「私も行く」 それに着いてからすも歩いて行く。 その姿に皆が顔を見合わせると、全員が寺の外に出た。 しんっと静まり返った寺の周囲には雪だるまや雪うさぎが飾られ、とても賑やかな雰囲気が醸し出されている。 「おー、寒っ」 ぶるっと震えた無月に、阿留那が上着を差し出す。 「お酒の飲み過ぎかと‥‥それにしても、残念でしたね」 「何が?」 「依頼主に会う事が出来なかったので」 少し声を落として呟く阿留那に、他の皆も同様の面持ちで頷く。 そうしている間にも、七ノ森とからすは庭に建てられた住職の墓の前まで来ていた。 「安い酒でわりぃな、爺さん」 そう言って酒を墓に掛ける。 その隣ではからすが同じようにお酒を墓に捧げていた。 「おやすみ。そして良い旅立ちを」 静かに合わせられる手に合わせて、皆も静かに手を合わせる。そこに微かな音が響いて来た。 もふ‥‥もふ、もふ‥‥。 「ん? もふ?」 九法の声に皆が顔をあげる。 そこで目にしたのは何か白いぼんやりとしたものだ。丸くて白くて、雪玉みたいな存在が、森の中に消えてゆく。 「今のって‥‥」 「もふら、さま?」 楊の声に続いて柚乃が目を瞬いて呟く。 「んな訳あるか。酒の飲みすぎで皆、見間違えたんだろう? はっはっはっはっ」 そう言って豪快に笑うのは無月だ。 住職の為に何かをしようとした相手に対して野暮なことは言いたくなかったのだろう。 そこに七ノ森の楽しげな声が響く。 「もふらさまの恩返しってか」 微かに笑う彼に便乗して、阿留那が感心したように息を吐く。その目は白い物体が消えた森の方を見つめている、 「なんと殊勝な心掛けでしょう。感服せざる負えませんね」 そう口にして微笑んだ阿留那。 墓の傍では若獅が静かに手を合わせている。 「‥‥また、会いに来てやるからな」 そう口にした彼女の隣で、からすがふと空を見上げた。 「明日も良い天気」 そう言って微笑んだ声に、他の皆も空を見上げたのだった。 |