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■オープニング本文 水着美女が集う海水浴場と銘打って宣伝し、むくつけき男達ばかりが集まり悲惨な有様となった海岸が存在する。 それですめば笑い話になったかもしれないが、残念ながらそれで終わってはくれなかった。 くらげの大量発生と貧魚の襲来が重なってしまったのだ。 詐欺寸前の宣伝文句につられた荒くれどもとその引率(中戸採蔵(iz0233))が結果的に活躍したことで、軽傷者は数十人に達したものの奇跡的に死者も重傷者もいなかった。 さて、ここからが依頼の話になるのだが、今回お願いしたいことは2つある。 1つはアヤカシの駆除。 海水浴場に大量発生したくらげのせいで、攻撃どころか視認すら難しい状況になっている。 貧魚は開拓者にとってみれば雑魚以下の存在かもしれないが、現地の足場は不安定でくらげも邪魔だ。開拓者が振り回しても壊れない掃除道具等が貸し出されるので有効に活用し、被害を出さずに仕事を完遂してほしい。 もう1つは、当てが外れてやけ酒を飲んで騒いでいる男達十数人の排除だ。 見た目ほど凶暴ではなく、せいぜい野次を飛ばして騒ぐことしかしないとはいえ、このままではアヤカシを倒しても客足が遠のいてしまう。 喧嘩程度ならしても構わない。なんとか海岸から立ち去らせてほしい。 |
■参加者一覧
ファムニス・ピサレット(ib5896)
10歳・女・巫
クレア・エルスハイマー(ib6652)
21歳・女・魔
八条 高菜(ib7059)
35歳・女・シ
エルレーン(ib7455)
18歳・女・志
カルフ(ib9316)
23歳・女・魔
雁久良 霧依(ib9706)
23歳・女・魔 |
■リプレイ本文 ●仕事です 「絶望の息吹」 詠唱の締めの言葉を高らかに唱えると、恐るべき威力を秘めた吹雪が海面に吹きつけた。 クレア・エルスハイマー(ib6652)は吹雪の起点である霊杖「カドゥケウス」を保持しながら、海面近くで漂うクラゲ達を注意深く観察していく。 「さすがは大自然、というべきでしょうね」 ブリザーストームの効果範囲のくらげは全滅し、細かく粉砕された状態で海面を漂っている。だが、同じくブリザーストームの叩きつけられた海にほとんど変化はない。 「精進あるのみ、ですわね」 海が凍らなかったことを少しだけ残念に思いながら、クレアは波打ち際をゆっくりと移動していく。 「け、怪我人の方は集まってくださいー」 クレアの後方では、ファムニス・ピサレット(ib5896)が緊張で精神的に追い込まれつつもなんとか声を張り上げていた。 「お待ちしておりました」 「づぅ…。幾らでも払うから治療を」 「み、巫女様ですか」 海岸周辺から救いの手を求める者達が集まってくる。 手当されぬまま放置されていた切り傷や、明らかに骨を折っている者の姿を確認したとき、ファムニスの中の優先順位が切り替わる。 「全員を癒すだけの準備はしてきました。押さないで、走らないで、治療が終わってもしばらくそのままで待機してください」 そこにいるのは引っ込み思案な少女ではない。 若くはあっても技術と覚悟を兼ね備えた一人前の癒し手だ。 「はい、いきますよ」 怪我人達の心を軽くするために精一杯の笑顔を浮かべながら、癒しの力を秘めた淡い光を開放する。 変色していた患部がみるみる回復していき、完治に気づいた元怪我人達が歓声をあげる。 「みなさん、その場を動かないでください。まだ怪我をされている方が残っているんですから」 優しくも厳しい声で叱りながら、ファムニスは元患者達を確認していく。 開拓者なら閃癒でまとめて直した後は放置していても自身でなんとかしてしまうだろうが、志体もなく怪我慣れしていない一般人はそうはいかない。ファムニスは時間の許す範囲で問題のないことを確認してから、新たに集まった怪我人第二陣に対し閃癒を発動する。 「ま、待ってください。まだ危ないですから」 治療が終わると、ファムニスから威厳が消えて、興奮した元怪我人達をその間にとどめることが難しくなってくる。 「はい止まって止まって。まだアヤカシの掃討が終わってないんだ。自分から無意味な危険に近づくお馬鹿さんには拳骨をプレゼントしちゃうよ」 エルレーン(ib7455)はわざと大げさな動きで拳を固め、暖かな息を吐きかける。 女性的な美しさを保ちつつ鍛え抜かれた体を彩るのは、濃厚な色香を感じさせるマゼンタの水着だ。 トップスが三角の形をしている扇情的なツーピースなのだが、凛とした態度を貫くエルレーンが身にまとうことで、海水での活動のための華やかな仕事着のようにも見えていた。 「ファムニスさん、もし良ければアヤカシがいないか調べてもらえないかな」 真面目な声で要請しつつ、元怪我人からは見えない角度でいたずらっぽくウィンクする。 「はい、ええと…。そこと、あそこの方向にいますっ」 ファムニスは周囲に気づかせるようにして結界を展開し、アヤカシの脅威を示すために声を張り上げて指さしていく。 「クラゲの掃除とアヤカシの排除は僕達が責任をもって行う! 皆の仕事は無事に日常に戻ることだよ」 明るく微笑むエルレーンに魅了された元怪我人達は、それ以上騒ぐことはせずに海から離れていくのだった。 ●獲物と捕食者達 雁久良霧依(ib9706)。 雄大な双球は支えもなしに細身の体にとどまっている。 その先端を覆うのは小さな三角形の布だけだ。 隠されていない部分の肌は瑞々しく張り詰め、にも関わらず触れるとすばらしく柔らかそうだ。当然のことながら染みなど一つもない。 豊かな胸から細い腰、形の良い腰へと続く体の線は理想的過ぎて、情熱をもてあます青年の夢が現実に現れたようにさえ見えた。 八条高菜(ib7059)。 霧依と見比べると丸みや柔らかさを強く感じる者が多いだろう。もっともそれは太っていることを意味しない。 肩や尻のむっちりとした肉付きは母性を感じさせ、同時に強烈な情欲をかき立てる。 硬質な印象のある霧依と比べると、美術的な観点からすれば体の線はわずかではあるが崩れているのかもしれない。だがその崩れは上質かつ強烈な色香につながり、海岸にいる男女の視線を、正確には開拓者を除くすべての男女の視線を釘付けにしていた。 この2人の登場に気づいたとき、それまで品悪く騒いでいた破落戸じみた男達は美貌と色香に気圧されて黙り込んでしまう。 「はぁい♪ 私達と向こうでいいことして遊ばない?」 霧依の挑発的な視線に、ある者は跪きそうになり、またある者は生唾を飲み込んで白い肌を凝視する。 「向こうでいいことして遊ばない?」 2本の幅広のひもで構成される水着のみで体を隠した人妻シノビが優しくささやく。特に胸を強調している訳でもないのに、腕をを動かしただけで胸が押し上げられていた。 「へへっ。なら有り難くお願いしようか」 ふてぶてしさのにじみ出る声を出しながら、中戸採蔵(iz0233)が野郎共の中から抜け出し美女2に近づく。 それまで完全に気圧されてしまっていた男達は、小悪党が大悪党を見る目を採蔵に向けていた。 が、美女2人の側から見ると、採蔵の顔は極限の恐怖で引きつっている。 「うふふふふ、こんないい女に捕まえられてラッキーですねえ♪」 誘っているときにも品を失わない動きで、高菜の腕が採蔵を絡め取る。 採蔵はあまりに美味そうな美肉に目を血走らせながら、目の前の美女達だけに聞こえる小声で提案する。 「後ろの連中は私の責任で退かせますんで、なんとかここは御勘弁願えませんか」 採蔵は初心ではないし善人でもない。据え膳は躊躇なく頂戴するし、証拠を絶対に残さない場面なら悪事にだって手を染める。 だが、体力面でも技術面でも圧倒的に上回る相手に挑むのが、主に社会的な意味で自殺行為なことが分かる程度には賢明だった。 「大丈夫ですよ、とぉってもイイコトですから…♪」 声なき悲鳴をあげながら岩陰に連れられていく採蔵を、男達は羨ましげに見送っていた。 「ふふふ。どうしたの黙ってしまって」 男を獣にする艶っぽい視線を向けながら、霧依は胸の谷間からゲーム用のカードを取り出す。 どうやら自作したもののようで、夫、義理の弟、御主人様など、馬鹿な男の欲望を刺激する言葉が書き込まれていた。 「当たった役をするゲームをしましょ。当たりのカードを引いたら、分かるわね♪」 霧依が胸を揺らすと、男達は鼻の下を伸ばしながら、胸の動きにあわせてうなずいた。胸に注意を惹きつけた霧依がカードに細工したことに気づいた者は、誰もいなかった。 ●仕事ですから イルカが通り抜けられるサイズの筒に金属製の網を仕込んだ道具が振るわれると、砕かれたくらげも健在なくらげもまとめて回収される。 「アヤカシが全然いないですね」 カルフ(ib9316)はちょっとだけ物足りなさそうな表情をしながら、一見地味で実際は素晴らしい効率のやり方で海の清掃を続けていく。 「掬っても掬っても流されてきますね」 風に吹かれて流されてくるくらげに目をやり、片手で道具を持ったままアゾットを取り出す。 「でも、貧魚とかのアヤカシがいないのはどうしてでしょう」 考え事をしながらでも強烈な吹雪が発生し、海面に位置するクラゲと本人的には忍び寄ったつもりのアヤカシを吹き飛ばしていく。 アヤカシは瞬く間にただの瘴気にまで分解され、粉微塵に砕かれて消えていった。 「ほほほ。いい感じよ」 艶っぽい声が背後から響いてくる。 嫌な予感がしたカルフが振り向くと、そこでは家具のカードを引かされた男達が霧依に踏まれ、座られ、おもちゃにされていた。真っ赤な顔で目を潤ませる野郎達の顔は、控えめに言っても気持ち悪い。 「アムルリープ」 カルフは男達が特殊性癖に目覚める前に術で意識を奪ってやった。 ●華やかな… 「えいっ! アヤカシしんじゃえッ!」 エルレーンは最後の1匹を海面ごと粉砕し、心眼を用いてアヤカシが全滅したことを確認してから大急ぎで普通の服に着替える。 「どうしました」 クレアが顔を覗き込むと、エルレーンはクレアの胸元を見て暗い表情でため息をつく。大きいのに形が良い胸に、コルセット無しでも十分に細い腰。美貌の銀髪エルフと自らを比べたエルレーンは、心を切り刻む劣等感に耐えるため、苦しい笑顔を浮かべるしかなかった。 なお、エルレーンの内心を聞けば10人中10人までが考えすぎだと言って慰めるか、その美貌とスタイルと若さでコンプレックスを抱くなんて嫌みかあんたはという感じで激怒するだろう。 「ふう」 一仕事終えたファムニスが、ゆっくりと視線を一周させてから満足げに息を吐く。 普段は真剣あるいは気弱げな表情が浮かんでいる整った顔には、乙女にあるまじきに緩んだ表情が浮かんでいた。 「たまりません」 手をわきわきと動かしながら、クレアが風除けに羽織るマントに手を伸ばし一気に剥ぐ。 「はわっ」 マントの下は、布地の小さな上下に分かれた水着であった。同行者の口車で予め着用させられていたのだ。 普段からは考えられないレベルで暴走中のファムニスが、マントを持ったまま満面の笑顔で駆けていく。 「返してくださ〜い!」 クレアが追い、柔らかなふくらみがぽよんぽよんと跳ねる。その光景を、ファムニスは何度も振り返りながらぎらつく目つきで堪能する。 「ほほほ。飛び込んでいらっしゃ〜い」 岩陰から出てきた、異様に艶々とした高菜が大きく手を広げると、ファムニスは満面の笑みを浮かべて母なる双球に飛び込むのであった。 かくして戦いは終わった。 物質的な被害は無し。 精神的な被害は、軽度の女性恐怖症が志体持ち1人に、特殊性癖に開花させられた男達が数名である。 |