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■オープニング本文 ●城内にて 「今すぐにでも討伐に出るべきだろう!!」 金髪碧眼の若い男が拳を握り締めて叫ぶ。 「ですが、ご存知のように我が騎士団は演習中でこの城を離れております。城を空にするわけにもいきませぬし‥‥」 恐れながら、と杖をついた白髪の老人が金髪の男に答える。その表情は心底困ったというところだ。 「それに、あの森はごく一部の者しか立入りません。そう急がなくともよいのでは?」 演習より部隊が戻るのはそう遠い話ではないし、アヤカシの被害も限定的なものだ。合理的な計算をするのであれば、ここはおとなしく待てばよいのだろう、が。 「一月も待たず戻ってくるは分かっている!だがその間に領民に被害がないと言い切れるのか!」 そう、割り切るには彼はあまりに優しい男だった。彼の名はガルガイダー。ジルベリアの辺境における小領主といったところだ。 「こうなれば私自ら討って出るまで!!」 ガルガイダーは腰の剣を抜き、言い放つ。手入れの行き届いた剣が日の光を反射する。 「そ、それだけはご勘弁を!!」 老人はガルガイダーにすがり付くような形になりながら懇願する。杖が乾いた音を立てて床を転がる。どうしても、どうしてもそれだけは避けたかったのだ。 「だが、民を守るのが我々の仕事ではないか!」 なおも興奮状態にあるが、老人の懇願によりガルガイダーは剣を鞘に戻す。 「ごもっともです。しかし、ガルガイダー様にもし何かあった場合には‥‥」 そういいながら老人は考える。正直、このままガルガイダーが討伐に向かえば、もしもではなく『何か』は確実に起きるだろう。それだけの確信がある。 思えば、先代領主がまだ健在だった頃、幼きガルガイダーに剣の稽古が必要と家庭教師をつけたことがあった。 その家庭教師は高名な剣の使い手で、よくぞこんな田舎まで来てくれたものだと先代がいたく喜んでいた事が思い出される。しかし、その家庭教師は半年後には既にこの城から姿を消していた。 二度と人に剣を教える事はしないと心を病んで。 余りにガルガイダーの出来が悪すぎて、自分の仕事への情熱と自信を失ってしまったのだ。 成長しても剣の腕については、どうにもならなかった。 というよりもどうしてこんなにダメなのか普通に考えても理解できない。最早超常現象の類かもしれない。 素手の兵士に負けるのは勿論、木の棒を持った少女にすら負けるだろう。もっとも本人がそのような事をする性格ではないので、やってみた事はないが。 基本的にガルガイダーの戦闘技術全般についても褒められた物ではないのだが、剣を持つとなるとそれが『致命的な致命傷状態』となるのだ。しかしそれでも彼は剣にこだわるのだから手に負えない。 「それに、お一人では、あまりに無茶‥‥!そうだ!開拓者を雇うのです!!」 ●ギルドにて 「‥‥ということで、アヤカシを討伐できる開拓者を要請したいのです」 「ガルガイダー様はどうしても、同行すると?」 依頼書を作成しつつ、ギルド職員は懸念事項を一点確認する。 「民を守るという仕事を人任せにはできぬと、開拓者を雇うにあたっての条件でして‥‥」 譲れない条件ということだ。しかし聞けば聞くほどアヤカシ退治よりも面倒なのではないかと思えてくる。 「怪我をされては困ります。ですがアヤカシ相手に突っ込んで大怪我されるよりは‥‥」 と老人は口を濁す。つまり、多少荒っぽくても戦闘に参加させるのを止めて欲しいということですよね? という問いかけに、老人は黙って頷くのだった。 「ガルガイダー様に剣を抜かせてはならないのです。抜くとあの方の身に災いが‥‥」 |
■参加者一覧
天津疾也(ia0019)
20歳・男・志
犬神・彼方(ia0218)
25歳・女・陰
秋桜(ia2482)
17歳・女・シ
コルリス・フェネストラ(ia9657)
19歳・女・弓
風和 律(ib0749)
21歳・女・騎
古廟宮 歌凛(ib1202)
14歳・女・陰
五十君 晴臣(ib1730)
21歳・男・陰
リヴォルヴァー・グラン(ib3125)
27歳・男・泰 |
■リプレイ本文 ●いきなり発動 「これは、こっちで全部始末せんとあかんな‥‥」 天津疾也(ia0019)は地面に倒れているガルガイダーを見下ろすようにして肩をすくめる。敵がいなくてもこの有様。これが交戦中であったら危なっかしくてしようがない。 「出陣っ!」 とガルガイダーは剣を抜き凛々しく掛け声を上げたまでは良かった。 「民の安全を取り戻すぷげらっぁぁ!」 そして、開拓者達が拙いと思った時には虫に驚いた馬が暴れ、ガルガイダーは落馬していた。 「なんつーか‥‥人間、得手不得手もあるだろぉし、剣をぬかなけれぇば、良いやつなんだろうけど‥‥‥‥」 どうにもこうにも事態は深刻だ。この先いかに剣を抜かせないかがぁ肝心かねぇと犬神・彼方(ia0218)は煙管をふかしながら考える。彼の心意義や態度については立派だと思うが、アヤカシ討伐の難易度を上げているのは彼自身というのが何とも言えない。 「何というかアヤカシよりも怖いね」 「剣を抜くと災難が降りかかる。か‥‥こういう人こそ、戦いに向いていないというんだろうな」 五十君 晴臣(ib1730)とリヴォルヴァー・グラン(ib3125)もガルガイダーの扱いに困惑していた。これだけ顕著な事象が起きるというのに本人に自覚がないとは‥。立場故の不幸かもしれないなと 晴臣は思いながらガルガイダーを見つめた。 ここまで誰も教えてこなかったのか、あるいは聞こうとしなかったのか。いずれにせよ誰かが早く言わねばなるまい。とリヴォルヴァーは思うのだった。 「ガルガイダー殿!ガルガイダー殿!」 古来最強のシノビとは全裸であったという伝説に基づくものかは知らないが、水着姿のシノビ、秋桜(ia2482)が倒れたガルガイダーに呼びかける。水着という性質上体の線がはっきりとわかり、そのガルガイダーが目を覚ませば眼福なのだが残念ながらガルガイダーは意識を取り戻さない。 「頭でも打たれてしまったのでしょうか‥‥?」 こくりと首を傾けて目覚めぬガルガイダーをコルリス・フェネストラ(ia9657)は見つめる。それほど酷い落ち方をしたわけではないし、一時的なものとは思うがなかなか目を覚まさないとなると少し心配だ。 「本当はこの剣を返さない方がいいのかもしれないが‥」 風和 律(ib0749)は疾也からガルガイダーが落とした剣を受け取って鞘に戻す。根本的な原因はともかく、剣を抜くなりするとこの様な事になるのが分かっているのだから、ガルガイダーに剣を持たせないのが一番安全な方法だ。 しかしその方法は騎士や領主としての体面を傷つけかねない、あまり見栄えの良くない方法だ。それに剣を取り上げるという行為は礼をも欠くだろうと考え、剣を彼の元へと戻した。 「領主自ら討伐に参加とは‥‥感心じゃが、些か軽率な気もするな」 古廟宮 歌凛(ib1202)は見た目とは違って老人の如き口調で語る。そして『領主』という言葉に『ここで少しでも恩をうっておけばあるいは‥』との思いをはせる。彼女には彼女なりの事情があるのだろう。他にも何やら色々考えているようではある。 「迂闊。落馬とは‥‥」 後頭部を抑えながらガルガイダーが意識を取り戻す。幸い外傷らしきものは特に見当たらない。 「大丈夫かぁ?」 見た目が何とも無くとも頭を打っている様ではある。もしもの事を案じ、彼方がガルガイダーに声をかける。 「ああ、問題ない。すまなかった。先を急ごう」 ●発動しなくても 「結構広そうな森ですね」 コルリスが見上げる木々は背筋を伸ばしたかのように、真っ直ぐ上へ伸びている。高く枝葉を伸ばした木は鬱蒼というよりも、濃厚という言葉が相応しい様に思える。 細い幹ではあるものの、見た目よりはしっかりしているようでコルリスが触れた木は微動だにする事ない。そんな木が何本も何本も奥へ奥へと続いていく。 そして魔の森という事ではないのだが、アヤカシの気配も幾分感じられる。 「それではそろそろ始めようか」 リヴォルヴァーがガルガイダーに呼びかける。そうだな、とガルガイダーは言って森に足を踏み入れる。 そして出会いは突然。大きな獣の様なものが空より舞い降りる。頭部は鷲。胴は獅子だがその体は馬よりも大きい。またそれに見合った大きな翼をはためかせるそれは━━ 「なんと、グリフォンとは」 正直聞いていたよりもアヤカシが手強い気もするが、だからといって逃げるという気持ちも起きない。リヴォルヴァーは拳を握ってグリフォンと対峙する。 「け、剣が抜けん!」 ガルガイダーが叫ぶ。彼の剣には餅のような物がいつのまにか付いていて、ちょっと抜きづらい状態になっていた。それを見て疾也がほくそえむ。さらにそんな疾也を見て律が呟く。 「まさか、あの時に‥‥」 律は剣を手渡された時の事を思い出す。あの時すでに仕込みを入れていたとは。 「おぉっと手が!」 晴臣は『何故か手が滑って』しまい、あらぬ方向へ呪縛符を放ってしまう。そして、ガルガイダーの手元に絡みつく呪縛符。餅と呪縛符ですでに剣が抜ける様な状態ではないものの、ガルダイダーの災難はそれだけに留まらない。 「ガルガイダー殿、危のうございます!!」 突然、秋桜がガルガイダーを押し倒す様に突き飛ばし、秋桜の小さな体が覆いかぶさるような形で倒れこむ。 「い、息ができん!!」 なんという事か、身丈は低くとも育つべき所は十分に育った部位がガルガイダーを生命の危機へと追い立てようとしていた。それはある意味幸せな死かも知れないが‥‥。 「剣、抜いてないよなぁ?」 彼方は呆れ顔で腕を組む。グリフォンは現れた時こそ驚いたが、いざ蓋を開けてみれば余裕すら感じさせる程。 しかし、ここで問題なのはアヤカシではないだろう。今回ガルガイダーは剣を抜いていない。だが抜かせなくてもこの有様だ。 これから何回戦闘があるか分からないが毎回毎回、こうガルガイダー対策が必要では身が持たない。幸いどんなアヤカシが出たところでこの集まりならばそうそう遅れを取る事はないだろうが、精神的な疲労感が‥‥。 「この中を全部探すとなると骨が折れるわ‥。全員まとまって行動となるとちと効率が悪いんやないか?」 何をするにしたところで効率が悪いという事は稼ぎが悪いという事だ。事を為すにあたってはより良い儲けが出る方を選択するというのが商売人の考え方。二手に分かれれば、効率は倍。三手に分かれれば三倍。いや、安全性を考慮してあまり欲張らずに二手に分かれるあたりが落としどころか、と疾也は計算する。 勿論効率云々だけではなく、分けるにあたっては他にも明確な理由がある。 「‥‥ここは二手に分かれることを、提案させて頂きたい」 律もガルガイダーに一行を分けての探索を提案する。ガルガイダーが剣を抜けば問題発生となるのは出発時の出来事からも確認済み。そんな彼がアヤカシを見つけて突っ込み剣を抜けば、結果はどうなるかは火を見るより明らかだ。 従って彼が剣を抜く様な状況を出来るだけ避ける必要がある。具体的にはアヤカシとの接触を可能な限り避ける必要があるわけだが、今回の目的はアヤカシの討伐であり、単純に避けて森を抜ければ良いという話ではない。 そこで二手に分かれて片方はひたすらアヤカシを殲滅し、もう片方はガルガイダーを護衛しつつアヤカシとの遭遇を防ぐという作戦となる。無論、ガルガイダーにそれと悟られる事の無いように。 「仮初の形を与える。見聞を報せよ‥‥これを。見つけたら伝えてくれ」 そう言って歌凛はネズミの様な形状のものを律に手渡す。『人魂』は距離や存続時間に限りはあれど、離れた場所の情報を得る事が出来る。ある程度は律らの班の状況を知ることが出来るだろう。 歌凛と同行するは秋桜とリヴォルヴァーそれに、ガルガイダー。この組はできるだけガルガイダーを戦闘から遠ざける事を目的とした『囮班』だ。 「ああ、それではまた後で」 律はネズミの人魂を受け取ると、歌凛とは別の方向へ歩み出す。律と歩調を合わすは疾也、彼方、コルリス、晴臣。この班の目的は囮班より先行してアヤカシを討伐する『先行班』だ。 こうして本格的にアヤカシ討伐は始まるのだった。 ●発動を防ぐために 疾也とコルリスが索敵を行い、見つけたアヤカシを討伐していく。そんな作業の繰り返しが続いていた。 しかし、開拓者達の緊張の糸が途切れる事は無い。 「なんというか、なかなか緊張感があるね」 『呪縛符』をゴブリンスノウに放つ晴臣。二手に分かれたとはいえガルガイダーに気付かれれば加勢にやってこないとも限らない。といか、あの性格だ。喜び勇んで剣を抜いてやってくる事だろう。 故に繰り返しとはいえ『静かな戦闘』を強いられているわけだ。『咆哮』を使えばアヤカシだけでなくガルガイダーまで引き寄せ兼ねない。そういった意味で緊張感には満ちている。 「即効退治、だぁな」 また、『早く』なければならない。先行班がもたついているとガルガイダー達が他のアヤカシと接触してしまうかもしれない。彼らより早く先を行き、露払いをしていかなければならないのだ。 彼方は何とも物騒な槍を操りながらゴブリンスノウらを蹂躙していく。自身の力と陰陽の技術。彼女が通る道はまるで妨げる物などが無いかのように見える。 「せやな、早く片付けなああかん」 静かに、早く。この二点において疾也の『秋水』は最適といえる。その太刀筋の速さは目に留まることなく、ゴブリンスノウは何が起きたかも理解することなく切り捨てられる。疾也が近づいたと思えばすでにアヤカシは倒れていると早業で、実に効率良く片付けていく。 「向こうも無事ならよいのだが‥‥」 目に見える範囲のアヤカシは片付けて、律はガルガイダー達の身を案ずる。何かおかしな事になっていなければ良いのだが。と思っても今はアヤカシを討ち続ける以外に道は無い。とうに人魂は存続時間が過ぎて消えてしまっているし、何処にいるかも分からない。 「次はあちらへ‥‥」 まだ振動を続ける弦を手にコルリスが東の方向を指し示す。どうやらまだ終わりでは無いらしいが、確実に終わりには近づいているはず。そんな事を思いながら開拓者達は次へ向かうのだった。 ●結局発動? 先行班と囮班で分ける作戦は順調だった。つまり、囮班はアヤカシと遭遇する事無く森を探索している様なもの。こうも平和であると討伐が空振りになっているのではと不安になる。 「他の者達もおります故、ご心配なきよう」 と秋桜は近くの木に刺さった矢を指差す。アヤカシの遺体は残らないが、矢や戦いの跡は残っている。という事はもう片方の班が先に片付けてしまったのだろうと。 「ふむ、では方向をすこしずらした方が良いのだろうか」 「いや、それは‥‥」 それはその通りだが、しかしそうするのは拙い。静まり返る森。そして聞こえてくる剣戟の音。 「そっちか!!」 いざ助太刀と駆け出すガルガイダー。勿論このまま行かせはしないとそれを追いかける開拓者達。 「あっ!ま、まつのじゃ‥‥‥あづっ!?」 歌凛が地表に迫り出していた木の根に足を取られ、転倒する。走っていた分、転び方も大きい。 「大丈夫か?」 リヴォルヴァーが歌凛に手を差し伸べるが、どうやら足を挫いたらしい。 「式は使える。足手まといは嫌じゃ。行ってくれ」 気丈な態度の歌凛ではあるがうまく歩けそうにはない。それを見たリヴォルヴァーがガルガイダーに向かって言う。 「あんたが守ってやってくれ、それが騎士の務めってやつじゃないのか?」 「いや、違うな。男の務めだ」 「や、やめるのじゃ!」 言うが早いが、ガルガイダーは歌凛を横に抱き上げる。俗に言う『お姫様抱っこ』というやつだ。文字通り白馬の王子様(ただし落馬した)がお姫様を抱っこしているわけだが、これは実に恥ずかしい。 歌凛はジタバタと抵抗しようとするが、しっかりと抱きかかえられてはなす術もない。そして、先行班に追いついた時は真っ赤になった顔を裾で隠すだけで抵抗をあきらめていた。 いずれガルガイダーが駆けつけてしまう事は想定していた。が、歌凛を抱きかかえての登場はちょっと予想していなかった。なんで?とも思ったが、ひとまず気にしないでおこうという事にした。 「全体の指揮を、お願いしたい」 律はガルガイダーに一言だけ告げると、アヤカシに斬りかかる。オーラを乗せた剣が硬い防御を打ち破る。 「加勢いたします!」 そう言いながら走り寄った秋桜が苦無を合わせる様に打ち込む。 「手が塞がっているなら、平気かな?」 晴臣の氷柱が舞い、狼の様なアヤカシを串刺にする。その勢いに押されて逃げようとするアヤカシをコルリスの弓が狙いをつける。 「逃がしはしません!」 そして、この矢を最後にアヤカシの反応はなくなった。 ●発動させないで 討伐の労をねぎらうため、城内でささやかながら開拓者達に宴が設けられた。地方の小城とはいえ城には相違なく、美しく盛られた料理や花がテーブルを彩っていた。 「ヨシヲさん‥‥構わないな?」 宴も盛り上がる中、リヴォルヴァーが老人にある事を確認する。それは『抜剣の呪い』についてガルガイダーに告げても良いのかという事。老人は黙って頷き肯定の意を示すと、リヴォルヴァーは重厚感のある声でゆっくりと語りかける。 「貴公の剣についてのことなんだが‥‥」 全てを言う前に、ガルガイダーは手でリヴォルヴァーの言葉を遮る。 「勿論、私とて分かってはいた。この原因が何なのか、罰か呪いか、それとも試練かは私にはわからないがね」 ガルガイダーの口から衝撃的な事実が語られる。 「わかっているなら何故?」 「運命だから、と諦めたくはないんだ。逃げ続ける姿を皆に見せるわけにはいかないだろう?」 「ふむ、これが上に立つ者としての‥」 「そこまで考えておられたとは‥」 歌凛と秋桜は顔を見合わせる。剣の事について知っていたとなると、こちらの演技や何やらも気付かれていたのかもしれない。ちょっと気まずい。というか思い出すとちょっと恥ずかしい事がいくつか‥。 「上に立つ者として先陣に立つって事も立派だけどもう少し‥」 わかっているのならもう少し自重してくれたっていいだろう。 こちらはそのせいで散々苦労しているのだから。と晴臣は少し思った。何も頻繁に抜かなくてもいいでは無いか。 「ああ、そういうのとは別にやっぱり剣があると抜きたくなるもんだ」 わかるだろう?とガルガイダーは笑って鞘を手に取る。 「「「抜かないで!!」」」 広間に声が響く。老人の苦労はまだ尽きそうになかった。 |