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■オープニング本文 ●発見 ある日、きこりはいつもの様に山に入った。仕事道具と弁当を持って歩き慣れた道を行く。 そして昨日と同じ様に、日が暮れる前に山を下りるはずだった。 だがその日、彼は日もまだ高いというのに山から村に戻ってきた。まるで大雨に降られた後のようにびしょ濡れになって。しかし、彼が濡れているのは雨の所為ではない。彼自身の汗によるものだ。 息も絶え絶えで必死になって走ってきたのだと一目でわかる彼の姿は、尋常ならざる事態が彼に差し迫っていた事を容易に察せられる。 「ア‥‥アヤカシ‥!アヤカシが出たっ‥‥!!」 息を切らしながら、漸くつぶやいたその言葉は村の仲間達に衝撃をもたらす。 偶然山中でアヤカシの群れを見たきこり。無論アヤカシに行き先を尋ねてみた訳ではない。だが、村から山中のアヤカシの群れを見つけるのは難しくとも、山から見下ろせば麓に村があるのは簡単に見て取れる。 ならば、奴らの行き先は最終的に自然とこの麓の村という事になるだろう。 志体持ちはいなくとも小鬼の一匹、二匹や山のイノシシ程度なら追い払うことも出来ぬことはない。 だが、武装したアヤカシが群れとなって襲ってくれば非力な村人達に抗う力はない。ただ逃げ隠れその災禍が過ぎるのを待つしかないのだ。 そして、こんな事もあろうかと準備に抜かりのなかったこの村はごくごく限られた食料と水の備蓄ではあるが、近隣の洞窟に避難場所を設けていた。 「頼んだぞ。必ずこれを届けるのだ」 長老が一人の若者に手紙と金子が入った袋を一包み託す。見た目以上の重さが若者の手にのしかかる。この手紙は開拓者ギルドへの依頼状。もし仮にこの若者が道中倒れたりすれば残された村人の命も‥‥。 だが、皆の命をたくされた若者はその責の重さに潰れる事なく、袋をしっかりと握ると風の様な速さで走っていった。 ●依頼 「骨、ですか」 村から手紙は無事に開拓者ギルドの受付に届いている。 槍や刀を手に持った動く人骨らしきアヤカシが数体。なかでもそのうちの一体は一回り大きく、簡単な鎧兜まで身に着けているという。おそらくはその鎧兜が群れを指揮しているのだろう。 何分緊急性を要する依頼だ。こうしている間にも村に迫っているかもしれない。詳細を調査する暇はないのだ。 幸い今の時間は開拓者ギルドに多くの人が訪れている。『今から』とお願いしても何人かは承諾してくれるはずだ。 「急ぎの依頼です!!誰か手の空いている人はいませんか!?」 ●山 一方その頃、骨のアヤカシは山を下っていた。 鎧兜を身に纏った骨を先頭に、それより小柄の骨が付き従う様に山中を突き進む。草を踏む音と骨が擦れる乾いた音だけで、そこに話し声はない。沈黙の殺戮者達はただ静かに山を下っていった。 そして、その群れを山奥より見下ろす者がいた。 これもまた、骨。そして同じく物言わぬアヤカシである。 ただし立派な鎧兜はまさに大将の風格であり、体の大きさも先程の群れの中で一番大きかった骨よりもずっと大きい。単純に体の大きさが力の大きさと比例するならばその力は相当のものだろう。余程の膂力がなければ扱う事はできないだろう巨大な斧がただの飾りであれば良いのだが‥‥。 |
■参加者一覧
犬神・彼方(ia0218)
25歳・女・陰
ペケ(ia5365)
18歳・女・シ
雲母(ia6295)
20歳・女・陰
オラース・カノーヴァ(ib0141)
29歳・男・魔
不破 颯(ib0495)
25歳・男・弓
ノルティア(ib0983)
10歳・女・騎
レティシア(ib4475)
13歳・女・吟
オルカ・スパイホップ(ib5783)
15歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●不幸中の幸い 緊急性のある依頼との事で、とりあえず手が空いている者であれば誰でもいい。 質よりも量よりも兎角早さが重要であった。 何せその足で今すぐアヤカシ退治に駆けつけろという事であるから、この際素人に毛が生えた程度の駆け出しでも何でも仕方がないと思っていたくらいだ。 ところがこの依頼人、運が良い。いや、村をアヤカシに襲われているのだから不幸中の幸いという方が適切か。『充分な人手が得られないかもしれない』という受付の懸念をよそに、手を上げた者達の多くは熟練の開拓者であった。 「はいは〜い!!僕手あいてるよ〜♪」 真っ先に元気よく手を上げたマスク姿の小柄な少女、オルカ・スパイホップ(ib5783)。 彼女は熟練者というわけではないが、素人でもない。まずは一人確保と受付は一安心。 「貴方の力にならせていただけませんか?」 「あとは‥‥安全な場所で待っていてくださいね‥‥」 力尽きかけた依頼人に声をかける二人の少女。レティシア(ib4475)もノルティア(ib0983)も華奢で小柄で到底戦場の様な場所が似合う二人ではない。 だが、こう見えても開拓者としての力量は十分に一人前以上。これもまた申し分ない要員と言えるだろう。 「さぁて、ちゃちゃっとぉ骨っ子どもぉを片付けにいこうか!」 ちょっと裏庭の掃除でもするかの様な言い方。 だがまあ事実、犬神・彼方(ia0218)位の力量とあればそれこそただのアヤカシなら『掃いて捨てる』程度の扱いなのかもしれない。そしてその呼びかけに応ずるのは他の開拓者達も腕に覚えのある者ばかり。思ったよりも順調な出先に安堵して、受付は彼らを送り出すのだった。 ●鉄の壁と人の壁 ギルドを出て数刻、まずは村に寄る前に避難所の様子を確認すべきと開拓者達は洞窟に向かった。 襲われた様子も無く、扉を叩いて反応を窺えば村人が恐る恐る顔を出す。 「無事か、とりあえず一安心だな」 『避難場所の村人達が全滅』という最悪の事態はまだ発生していなかった事にオラース・カノーヴァ(ib0141)は胸をなでおろす。 しかし、この程度の守りではもし見つかれば全滅も時間の問題だろう。オラースは顎に手を当てて少し考えると呟いた。 「補強が必要だな」 そういうとオラースは魔法の言葉を唱え出し、鉄の壁を入り口に二枚、三枚と立てていく。今まであった扉の前は鉄の壁が立ってどうにか人一人が通れる程度の隙間だけを残した状態になる。これでアヤカシが殺到するということもないだろう。 だが、もし一匹でもアヤカシが入り込んでしまえばあとは袋小路に追い詰められるようなもの。そこで食い止める役回りの人間が必要だ。 「私がここに残ります」 ペケ(ia5365)が静かに一言。 腹部の傷跡は過去のものだろうが、それ以外にも彼女の体は生々しい怪我の跡が残る。今だって万全という状態ではないのだろう。この怪我ではここまで来るのだって楽ではなかったはずだ。 それならばこれから激しく動き回るよりも、ここで村人達を守っていた方が良いかもしれない。いくら傷だらけであってもそこに開拓者がいるといないでは天と地程の違いがある。 「皆さんは私が守りますから」 村人達に不安は与えまいと痛がる素振りを微塵も見せず、ペケは扉の前に立つのだった。 ●待ち受ける弓 いかなる名人とてその技術は才のみに構成されるものではなく、日々の研鑽と鍛錬と、強い精神力などによって支えられるものだ。 一日その努力を怠れば、それを取り戻すにはその倍以上の時間と労力を必要とするという。高みに在り続けるという事は、今よりも高さを求め続ける事に他ならない。 『たまにはちゃーんと撃たないと腕が錆び付くからなぁ』 開拓者はアヤカシと命のやり取りをすることは多いが、常に戦場に身を置いているわけではない。いつでも研がれた状態でありたければ、あえて自ら危険に足を踏み入れる必要もある。雲母(ia6295)は黒く塗られた弓の弦に触れて、その張りにゆるみがない事を確かめる。 「ここら辺だろうなぁ」 不破 颯(ib0495)も来るべき時に備え、準備を怠らない。 弓や銃というものは位置取りも大事だ。いや、その位置こそが大事だ。狙撃を行うにはまず高い場所がよい。そして視野が広くて身を隠せる場所が良い。こんな村はずれなら指し当たっては樹の上などか。 こうして二人はその時が来るのを待つ。 ●露払い おいしそう──。 食べる所は少なそうだけど、柔らかくてうまそうだ。 もぬけの殻となった村を彷徨う骨はやっと見つけた獲物を追いかける。 『おいでおいで』と手招きをするノルティアとレティシアを見てくれ通りのただの小娘と思ったか、あるいはそんな事を考える知能もなかったか我先にと争うように追いかける。 「意外と単純ですね」 「‥‥このまま、外まで連れて、行こう‥‥」 開拓者達が着いたときには村の中には骨達が獲物を求めて徘徊していた。そのまま村の中で始末するという手もあるが、家屋の損壊等を考慮すれば何も無い所のほうが良いという事でこうなっている。 「そろそろかぁね」 煙管を片手に紫煙をくねらせて彼方は村の方を見つめる。生活する者たちが姿を消した村は静かそうではあったが、小さい姿が見え出した頃よりがちゃがちゃとか、かたかたといった音が聞こえ出す。 「それじゃ、はじめようかぁ」 「五月蝿い。気が散る」 肩を、あるいは頭蓋骨を矢が射抜く。だが、骨達の歩みは緩まず引き続きこちらに向かってくる。 「えっとい〜ち、に〜い、さ〜ん、よん!それにしても根性あるね〜」 オルカが骨を数えて、その頑強さを感心した様に骨達を褒める。 そしてその距離は次第に狭まる。弓矢以外も加わりより苛烈な攻撃が骨達にしかけられる。 「吹雪に凍りつくがいい」 オラースは杖を向ける仕草ひとつでもいちいちキザな所がある。だが幾分芝居がかった動きではあるが、その杖の先から出る吹雪は容赦がない。激しい吹雪が骨達を包みこんで唸りを上げる。 そんな吹雪の合間を縫って、飛び出す一人の白い影。 「よっし!いっくよ〜!!」 貫いても凍っても動きを止めないなら、粉々に砕けばいい。 一気に間合いを詰めて懐に踏み込んだオルカの拳は小骨の手を砕き、刀を叩き落す。 だが、小骨はやはり怯むことなくもう片方の手でオルカを殴りつける。 「いった〜!」 殴られた頭を抑えて下がるオルカ。一方相手に痛覚はないのか、所々体が欠けていてもそれを気にする様子がない。 ノルティアは小骨に向かって盾を強く押し出し、バランスが崩れた所を斬りつける。大きな一撃はなかなか期待できないが、確実に手数を加えていくことはできる、ある意味騎士らしい戦い方といえる。 そしてノルティアは時折、横や後ろを振り返る。今追いかけてきた骨が全てとは限らないからだ。 「きっと‥‥他には‥いない、と思う‥けど‥‥」 だがその目を離した瞬間に、盾に強い衝撃が走る。 骨達の中で一体だけ鎧兜を身に着けた大きめの骨がいる。その骨が力任せに叩きつけてきた刀を不用意に受けてしまったノルティア。彼女は盾を構えたまま弾き飛ばされ、今度は逆に自分がバランスを崩されてしまった。 「‥‥あ‥」 と声をあげるノルティアの前に一人の長身が割って入る。 「あんたの相手はこっちだぁ!」 骨が刀を大振りにしていたこともあって、声を荒らげた彼方から振り下ろされる十文字槍は巨体をもたたき伏せる。 「こうも退屈だと、なんともなぁ」 雲母の手は動き続けるが、相も変わらず煙管は咥えたままだ。 外見は骨だが、『骨のある相手』とは言い難い。手を抜いているわけではないものの、もはや途中から機械的に撃っているだけだが、それでも中るし、貫く。 この骨はちょっとやそっとでは動じない所はいいのだが、前進しかしない様な単純さだ。痛みを感じない分自分がダメージを受ける事も全く気にしていない様に見える。 直接斬り合うのならそれは非常にやっかいな性質といえるのだが、狙撃する側であれば『いい的』としか言い様がない。 「これで終わりだねぇ」 颯の矢が小骨を砕く。颯にもまだまだ余裕が見える。実のところ彼らは、一歩も動いていない。 そうこうするうちに小骨の数は減っていき、残るは鎧兜の骨一体のみ。 「なかなかしぶといですねっ」 小骨より力が強いのもあるが、防具がある分こちらの攻撃は通り辛い。それならばとレティシアはある一曲を歌いだす。精霊の力を借りて紡ぐ歌は、その歌詞など理解できぬアヤカシにさえ作用する。 それに、いくら強いといっても『小骨より強い』だけの話。小骨を簡単に葬り去った彼らにとって『ちょっと大きめの骨』を退治するなんて時間の問題でしかなかったのだ。 ●再来 「もう片付いたかもしれませんね」 流石にこの洞窟の中までは争いの音や匂いは届かない。 ペケは何の情報も届かぬ場所で村人たちの不安げな視線を背中に受けながら、ただ待たなければならない。 そんな状況に少し窮屈さを感じたペケはとりあえず様子を見てみようとそっと洞窟の外に出る。 まず村を見下ろすが、火の手の一つもない。続いてその周辺を見ても戦いの気配はない。 もしかしたらもうとっくに片付いたのかもしれない。相手が弱ければ別に考えられない話ではない。 「皆さんはどちらへいかれたのでしょうか」 終わったのなら、ここに向かってくるのが普通だ。ペケは再び確認のため、崖から身を乗り出すようにして下を眺める。 すると、距離はかなりあるが眼下に見えるは骨達。そのうちの一体はやたらと大きい。こいつがいなければ見落としていたかもしれないくらい露骨な違和感がある。 「はわわわっ、ま、またアヤカシです!!早く皆さん、洞窟へ避難してください!!早く!!」 それが危険な存在であると直感した彼女は頭を出して除いていた村人達を中に戻す。幸いこちらの存在には気がついていない様子。だが、仮にここに来たとしても『絶対に犠牲者を出させはしない』と拳を握るのだった。 「やっとおわった〜」 「まだ終わりじゃない。一休みしたら、索敵を開始だ」 先ほどの戦いで一寸ずれた帽子の位置を整えながら、さも索敵は当然といった風でオラースがこれで一件落着と喜ぶオルカに告げる。 他の仲間たちもどこか気になるところがあるようで、まだ警戒を解いていない。 『この間みたいに迷惑はかけられませんし』とレティシアは特に不意打ちを気にしている様だ。 「やっぱりそう甘くはないわなぁ」 颯の手が弾いた弦が振れる。そしてその振れは『まだ終わりではない』事を颯に示した。やはりこのまま帰るわけにはいかないようだ。 「しかし、嫌な予感がぁするねぇ‥なんとぉいうか‥‥」 その時、日はすでに傾きかけていた。 いつもどおりの日常であれば、最初に骨を見つけたきこりもそろそろ戻ってくる頃合だろう。またそれぞれの家の竈には火がともり始める頃でもある。 だが、きこりは降りてこない。洞窟にこもったまま。 そしてその代わりに山から下りてきたのは‥‥。 「のわ‥‥なんだかさっきよりも大きくない?」 「‥‥‥う?」 大きさにオルカは目を見張り、ノルティアは言葉を失った。 その驚きに目は釘付けで口は開きっぱなしだ。 巨大な骨。先ほどの骨なんて比べものにもならない。それはもう明らかに格が違う。 小骨はともかく、さっきの鎧兜付きの骨はそんなに弱い相手ではなかったはず。 だが驚く者もいれば、余裕を見せる者もまたいる。 「なに、敵襲が何回来ようがやることは変わらないさぁ」 違うとすればいつもよりも『ちょっと』疲れるくらい。こんな事は慣れっこで大した事じゃないと颯は余裕を見せる。 「いい的がいるじゃないか!」 大きくて頑丈そうでちょっとやそっとでは壊れそうに無い的が。雲母はまるで彼の者を待ち望んでいたかのようでその表情に恐れはおろか、笑みすら見える。 そしてそのどちらにも属さぬ者も。 「しんどい時こそ笑顔、ですよっ」 村人を呼び戻していなくて良かったですねと思いながらレティシアは明るく振る舞う。 もしここで村人が帰ってきていたり、あるいは自分たちがあのまま帰っていたとしたら‥‥。 「そ、そだ‥‥依頼。村の人‥為にも。戦わ、なきゃ」 ノルティアは我に返る。驚くのは依頼人の仕事。そして彼らを守るのが自分たちの仕事だ。そう思えば驚きも恐れも消える。きんっと鯉口を切って構えればもう迷いはない。 ●粉身砕骨 「こんな所までご足労いただいて」 わざわざ出てきてくれるとはご苦労なことだとオラースは帽子を脱いで恭しくお辞儀をする。 だが、アヤカシはそんな冗談にもまるで応じない。 「やれやれ、何の反応もないなんてつまらない奴らだ」 まあいいか、と再び帽子をかぶると杖を振りかざす。 巻き起こる雪と風。視界が真っ白になってもやはり歩みを止めない。 「小さいのからいくかねぇ」 大きいのは任せてまずは数を減らそうと颯は矢を番えては放つ。小骨は怖い相手ではないが、それでも大骨や中骨の相手をしている所に加わられては厳しくなる。 だが、どんな攻撃にも怯まぬ相手を止めるには完全に倒す以外に術がない。 「さっさと砕けなぁ」 颯の矢はペースを上げる中、雲母の矢は大骨の斧に弾かれる。 「あははは!そうだ!こうじゃなくっちゃなあ!!」 だが矢が通らなかったにもかかわらず雲母の機嫌は良い。 そして大きく笑った後、彼女は煙管を仕舞うと今度は急に静かになる。 「‥‥‥」 無言のまま放たれた矢。緑色の気を纏って真っ直ぐに突き進んだ矢は鎧など無かったかのように大骨の体を突き抜ける。 目の前に小骨と戦うノルティアやオルカの小さな背中がある。前で戦ってくれる仲間がいるからこそ自分も戦えるとレティシアは感謝を込めて勇気を届ける。 巨大な骨を前に一歩も引かぬと腹をくくって槍を構える。 「粉々ぁにしてやるよ!」 彼方は体から蒸気の如き練力を発しながらそう言い放って槍を振り下ろす。その一太刀は予告どおり骨を砕く音を響かせる。 そして戦いは骨を砕く音に加えて、刃と刃が擦れる音に矢音も交えつつ、半刻は続いた。 「今度こそ、終わりかな‥?」 「二度あるってことはねぇ‥」 今度こそ弦の振れに異常はない。だが、それでも気にならないといえば嘘になる。自分たちはともかく、村人が巻き込まれてはどうにもならない。そう考えるとどうしても慎重になってしまう。 「もう暗くなってしまいましたし」 いっそ一晩とどまって様子を見てはとレティシアは言う。 「だぁな。まぁ迎えにいくかねぇ」 「‥‥もっと、精進。しなきゃ‥かな」 ノルティアは昼間のことを思い出していた。反省や不安は残ったが、いつしか適度な疲れは眠りを誘う。 そして眠りを妨げる襲撃者は遂に現れることなく、開拓者達は快適な朝を迎えるのだった。 |