【四月】契約
マスター名:梵八
シナリオ形態: ショート
EX
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/04/16 21:48



■オープニング本文

●またこいつらか
「僕と契約して、もふら仮面になって欲しいもふ」
「は?」

 ここは開拓者ギルド。春が近づいてきているはずなのにまだまだ寒い。そしてギルド受付の不月 彩(フヅキ アヤ)の前には白いもふら様がちょこんと座っていた。
 このもふら様はちょっとだけ他と違う特徴があった。
 耳毛(?)が長いのだ。量もある。まるで女の子がするようなツインテールみたいな感じだ。結構それだけでも、かなり違う生物(なまもの)の様にも見えるが、多分きっともふら様だ。
 そのもふら様は何故か『契約』を求めている。しかし、客はこいつだけではない。

『私と契約して、闇目玉仮面になるのだ』
「絶対イヤ」

 また闇目玉だ。通称闇目玉先生はアヤカシのくせにこういう浮かれた時期とか行事になるとすぐやってくる。おとなしくサッカーボールにでもなっていればいいのに。
 そして闇目玉先生ももふら様と同様に『契約』を求めている。だが、両者ともに契約内容は不明だ。理由も目的も伝えることなく契約を迫っている。

●帰れよおまえら
「仕事の邪魔だから帰って」
 仕事はしたくないが、やらなければならない事もあるのだ。さしあたってこいつらは邪魔でしかない。
「契約するもふ」
『契約するのだ』
 本当に邪魔だ。

「何なのよ、契約って」
 五月蝿いのでとりあえず尋ねてみる。
「もふら仮面になって、何もしなくていい世界を作るもふ。それを邪魔するやつを退治してほしいもふ」
『闇目玉仮面になって、自由な世界を作るのだ。それを邪魔する奴を退治するのだ』
 何もしなくていい、自由な世界。聞こえはいいがそんな事はありえるのだろうか?おいしい話には裏があるというもの。こういう話には疑ってかかるのが大人の対応というものだ。
「それで、契約するとどうなるの?」
「何もしなくても気にならない大らかな性格になるもふ」
『羞恥心という言葉が存在しなくなる』
「えーっと、両方ダメ人間になるってことでいい?」
 具体的には生活力を極端に落とした状態になるか、変態になるか。
 もふら仮面になれば、仕事はおろか掃除もめんどくさい、食べるのもお風呂もめんどくさいとかもうかなりどうしようもない状態になる。
 闇目玉仮面になれば本能の赴くまま、リビドーの発するがままの変態になる。
 両者ともに行き着く先は見えている。誰が契約するかと思いつつ、もう一つ気になるところを聞いてみる。
「それで、『邪魔する』とかって言ってたけど、それはもしかして開拓者じゃないわよね?」
「‥‥」
『‥‥』
 図星か。

「早く帰らないと、駆除の依頼出すわよ?」
「‥‥契約するもふ!」
『‥‥契約するのだ!』
 こうしてまた新しい依頼が一つ張り出される事になるのだった。

※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません


■参加者一覧
エメラルド・シルフィユ(ia8476
21歳・女・志
煌夜(ia9065
24歳・女・志
村雨 紫狼(ia9073
27歳・男・サ
エルディン・バウアー(ib0066
28歳・男・魔
雪切・透夜(ib0135
16歳・男・騎
八条 司(ib3124
14歳・男・泰
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
雪刃(ib5814
20歳・女・サ


■リプレイ本文

●契約
 ひたすら契約を迫るもふら様と闇目玉。奴らはうざい事この上なく、迷惑であった。
 このお馬鹿な二匹を対処して欲しいという依頼であったのだが‥‥。

「さあ、私と共にもふもふな世界に来ませんか〜♪」
 エルディン・バウアー(ib0066)がスキップしながら契約を迫ってくる。
 なぜだ。なぜこうなった。
 もふらの面に金色に輝く耳毛をふんだんに増量したエルディン。彼はもふら様と契約してしまった。
 その結果、耳ふーふーが駄目なのに、耳毛ぼーぼーだ。スキップするたび耳毛が揺れるね。
「ま、待てエルディン!トチ狂うな!」
 とエメラルド・シルフィユ(ia8476)が止めたが無駄だった。彼女の言うとおり、ちょっと考えれば契約するなんて狂気の沙汰だと思うのだが、契約したのは彼だけではなかった。
「なんか面白そうだね!」
 と簡単に契約してしまったリィムナ・ピサレット(ib5201)。この様に、『面白そう』と時として契約内容を良く確認せずに契約をしてしまう事もあるだろう。だが、契約書は良く確認するべきだ。この契約があんな事になるなんて‥‥。
「あ〜もうなんかめんどくさい」
 そして契約早々、ギルドの依頼も、もふら様契約のどちらにも履行する意志の欠片さえ見せず寝転がるリィムナ。すでにこの時点で二人が戦力外。開拓者達は危険な状態に近づきつつあった。

 さらにもふら様の方に気をとられている間に闇目玉の方でも契約が成立してしまっていた。
 ジャーンジャーンと銅鑼のけたたましい音とともに登場した全身黒尽くめの男。それを見た誰かが、
「げぇっ、透夜!!」
 と叫んだ。そう、雪切・透夜(ib0135)である。
「これにサインすればいいんですか?」
 そんな彼は重かったのか黒い鎧を脱ぎだして、その一連の流れとも言うべき自然さで闇目玉から差し出された契約書にサインしてしまっていた。
「透夜さん、それって‥‥」
 煌夜(ia9065)が指差すそれはすでにサイン済みで時すでに時間切れ。契約成立だ。

「うおぉぉーん」
 『俺はまるで人間火力はt』‥ではなく八条 司(ib3124)の力強い遠吠えがギルド内に響く。
 司も『惹かれたわけではない』と口にしながらも闇目玉と契約を交わしていた。そして今ここに『超エロ犬』が誕生したのだ。‥‥なんだ『超エロ犬』って恐ろしい。
「う‥‥」
 雪刃(ib5814)も釣られて遠吠えをしそうになるが、こっちはエロ狼でもなんでもないので無駄吠えはしない。むしろ変態が二名増えた事に警戒をしなければならない。

 ここに来て契約者はそれぞれ二名ずつで、計四名。
 何という事か、立ち向かうべき開拓者の半数はすでに敵の手に落ちてしまったのだ。
 ぐうたら人間契約を交わした、エルディンとリィムナ。
 変態契約を交わした、透夜、司、そして村雨 紫狼(ia9073)。
「え、俺ってば別に契約しなくても普段からそーだぞ!!」
 あ、そういえばそうでした。ロリコン紳士の村雨紫狼は平常運転。彼は契約していませんでしたので訂正します。
 契約してもしなくても変わらないのは人として結構問題があるんじゃないかと思わないでもないが、とりあえず契約者と非契約者の割合は半々。だが、もふら様と闇目玉を加えるとその数は六対四。戦況は厳しいといって差し支えない。

●交渉
「契約はいつ終わる?」
 正直変態とかその辺の事はよくわからない。まだもふら様の方が良いかと雪刃は契約内容について確認をしていた。
「何年たっても有効もふ。無期限もふ」
「‥‥契約解消の条件は?」
「な‥‥‥‥ないもふ」
 どこか不自然に視線を逸らしながらもふら様は答える。
 自然消滅もなければ解消条件もない。となれば、契約してしまったエルディンやリィムナは一生あのままなのだろうか。
「てきとーに頑張ってねぇ〜」
 腰のあたりをぼりぼりと掻きながら、リィムナはごろごろと寝転がっている。
 契約してしまえばもうあんな感じで気にならなくなってしまうのかもしれないが、何も好き好んでああはなりたくない。
「寝そべるリィムナたん萌え〜って、何か違うんだってばよ!そんなおっさんみたいな(以下略)」
 ロリコンならば幼女に関心を抱くのは当然かも知れないが、やっぱり契約せずともああはなりたくはない。

 そしてもふら様と話をしている間にも雪刃に変態の魔の手が伸びる。
「雪刃さ〜ん!!」
 その肉付きの良い体を隠そうともしない雪刃を見れば、エロ犬ならずともむしゃぶりつきたくなるのはわからないでもない。だが雪刃としてみれば、エロ犬まっしぐらは歓迎できる事ではない。
「うるさい、今は話し中」
 雪刃は司の頭を抱え込んでヘッドロック。二の腕が司の顔面を締め上げ、後頭部は雪刃のふくよかな胸に押しつぶされるという状態。できれば顔の向きが逆のほうが望ましいが、それでも実に羨ましい事態だ。
 だが、司は大きな過ちを犯していた。悔やんでも悔やんでも後悔しきれない大きな過ち。
 それは、後頭部に仮面をつけていた事。
 もし、普通に仮面を身につけていれば‥。何故あの時自分は面を後ろにつけてしまったのか‥。
 司は薄れゆく意識の中で激しく自分を呪いながらおちていく。
 そんな時、妙な声が聞こえる。
「司きゅん、力を貸してくれ!ダイジョーブだって、おにいさん痛くしないから!」
 なんか意識をこのまま失うのは凄く拙い気がしたが、司の意識は混濁の渦へと溶けていったのだった。

●犯行
「もふらが一匹、二匹、三匹、たくさん♪」
 惰眠こそが真の幸せとばかりに怪しげな言葉で人心を惑わし、眠りにつけようとするもふら仮面となったエルディン。
「な、何を‥‥」
 文句を言う間もなく、エメラルドに激しい眠気が訪れる。
「眠ってしまったようですね」
 床に臥してしまったエメラルドに怪しく近寄るエルディン。
「これなら抵抗できませんね」
 そしてエルディンはエメラルドを起こさぬよう注意しながら覆いかぶさるように彼女の上になる。
「‥あっ‥」
 眠ったままのエメラルドの口から艶っぽい声が漏れる。
 ──そして‥‥。

「ふぅ」
 一仕事を終えた顔でエルディンが一息つく。
 誰かが止めるまでもなく事は済んでしまった。
 早い。早すぎる。一分どころか三十秒とかかっていまい。その恐るべき早業にエメラルドはエロディンの為すがままに‥‥。何ということだろう。このままでは蔵倫に抵触して『お蔵入り』になってしまう。闇目玉よりも注意すべきはもふら仮面化したエルディンだったとは。
「あはは面白いねそれー‥。あーなんか笑うのも面ど‥」
 リィムナが不思議な笑い声をあげる。笑ってる場合なのか。
 エルディンがどいた後には無残にも蹂躙されたエメラルドの姿が。あまりのショックに気を失っているのだろうか、動かない。
 着衣の乱れは、ない。ただ静かに寝ているだけのようにも見える。
 ──不自然な耳毛を除けば。
「うん、耳毛がキュートですね♪」
 エルディンの行為、それは眠っている人間にお手製の耳毛を植毛すること。
 それはどんな妖怪だ。

●蛮行
 エメラルドはまだ眠っている。
 突然だが、貴方は伝統や風習なんて古臭いと馬鹿にしてはいないだろうか。もしそう考えているのなら、ちょっと待って欲しい。例え今の自分には意味がわからなくても往々にしてそれなりの意味があるものだ。
 見たまえ、エメラルドの姿を。この衣装は彼女の趣味ではない。家の伝統によるものだ。そしてそれは、ヘソ出しだ。これが伝統の力だ!!だから眠っている今こそしっかりと見つめ続けよう。
 おはようからおやすみまで貴方をいやらしい視線で見つめ続けるのが闇目玉だ!

「そこまでだ、闇目玉!!」
『誰だ!!』
「エロスとは」
 物陰から声がする。前口上がエロスで始まるヒーローは多分いない。
「本来、ひたすら我が身を削る求道的にして神聖なもの!安易なエロスの安売りなど愚の骨頂!!」
 そう言いながら姿を現したのは紫狼だけではない。
 そこにはフリルのスカートに大きなリボン、まるで魔法少女といった風になってしまった司の姿が。
「見ろ!これが『萌え』だ!!」
 どうだと司を前に押し出してなおもまくし立てる様に説明を続ける。
「魔法少女風男の娘でローライズで生ケモミミだ!!」
 属性いくつ突っ込んでるんだ。とにかくこれが紫狼の対闇目玉の隠し玉らしい。
「もうなにも怖くない!さあ司きゅん、エロッ☆フィナーレだっ!!!」
 その技の名前、嫌な予感しかしない。
 しかし、司は紫雨の予想を裏切ることになる。何故なら、司は闇目玉仮面なのだから。
 
 というわけで司が飛び込むのはもちろんエメラルド。
「つ、司きゅん!?」
「そんな事よりおっぱ〜い!!」
 そうですね。闇目玉よりもおっぱいです。
 この騒がしさに何事かとエメラルドが目を覚ませば、目の前ににたりと笑い迫りくる超エロ犬。
「く、来るな‥‥」
 座ったまま思わず後ずさり。だが、エメラルドが一歩下がれば司は二歩寄ってくる。
「や、やめ、あ‥‥」
「柔らかー、あったかー、きもちいー♪」
 大変です。
 柔らかで、暖かく、気持ちがいいそうです。
「司きゅんなにやってるんだ!!」
 紫狼が用意した魔法少年は、エッチな格好のお姉さんに抱きついている。
「う、羨ましくなんかないぞ!俺は紳士だからな!!」
 力いっぱい握り締めた拳から血が滴り落ちる。
 変態とはいえども変態には変態なりの意地というものがある。『踊り子には手を触れない』これが変態紳士としてのルールだ。だから、どんなに辛くとも耐えるしかないのだ。
「‥‥止めないの?」
 そうだ。そんな事より早く止めろ。

●思慮
 あー面倒臭〜い。面倒臭いって思うのも面倒くさい。息をするのも面倒くさい。
 そして面倒くささは極まって、面倒くさいと考える事すら面倒になったリィムナはそのうち考えるのをやめた。
 するとどうだろう、いつしかリィムナの意識は自分の体を離れたかの如く、大きな何かとの一体感に包まれていた。
『これが、あたし。そして、あたしが‥‥』
 今まで得たことのない至福の時。思わず頬を伝う涙。だらしなく寝ていたはずのリィムナはいつのまにか綺麗な姿勢で座っていた。
 そして騒がしいギルドの中、リィムナはただ一人静かに座禅を続けていた。
 たとえロリコンが近くに来ても動じることはない。
 次にその姿をスケッチする者が来てもまるで意に介さない。
 しまいには耳毛を増量されても反応一つない。
 ただただ微笑みを浮かべているのだった。

●凶行
「スウィート、スウィート。とてもスウィートですよぉぉぉ!!」
 透夜はもはやいつもの透夜ではない。いつもならば煌夜のちょっとしたからかいに赤くなる透夜も、今日は何時になくアグレッシブな動きを見せる。
「本当はいつも我慢していたのかしら?」
 煌夜はそんな事を考えながらも、一寸戸惑っていた。照れて慌てる透夜を見るのは良いが、恥じらいを捨てた今の透夜には胸元をちょっと開いて見せるのすら面白くない。
 しかし煌夜の思いを他所に、透夜は腕を煌夜の腰に回すとしっかりと抱きしめる。
「たまには甘えてみるのもいいものですよ?」
 そしてそのまま唇を煌夜の耳元に寄せて、『ね、ステラさん』と囁く。
 耳元に届く微かな声とは反対に抱きしめられる力が強くなる。
 予想外の不意打ちにステラ──煌夜は頬を薄く紅に染めながら、それを隠すように無言で俯く。
「ちょっと、ほら皆が見てる‥‥」
 そう言いながらも拒む様な真似はせず、透夜を受け入れる煌夜。闇目玉は心の中で録画ボタンを押すのは勿論、みんなも見ているわけだけれども。あんまりやりすぎると困るわけだけれども。

 それはともかく、何か違う。
『積極的なのも悪くないけど‥‥』
 やはり『らしくない』のだ。
「さあ、めくるめく熱い情熱の世界へ!!」
 いつの間にか煌夜を抱いていた腕は解かれ、這う様に煌夜の体を弄る‥‥事はできなかった。
「ごめん、やっぱり何か違う」
 透夜を強い力で撥ね退けると煌夜は闇目玉の方に向きを変える。
「羞恥心は必要よ。盛り上がるためにはね」
「そうだ!本物の萌えはこんなのじゃない!!」
「というわけで邪悪な存在は成敗させてもらう」
『ええい者ども、出会え出会えぃ!』
 と闇目玉は契約者を呼び寄せるが、所詮は変態。
「もう一度生まれ変わって、やり直せ」
「反省、してくるといい」
「だから俺は契約してないんだって〜」
 約一名余計に吹っ飛んでいった気もするが、いとも簡単に星となる。
『ウボァー!!』
 もちろん闇目玉先生もさようなら。契約者が濃すぎてあまり出番もなかったけれど。

「‥どうする?」
 雪刃はもふら様に尋ねる。『帰るかぶっとばされるかどっちがいい?』と。
「き、今日はこの辺でお暇させていただくもふ!」
 すばやく空気を読んだもふら様は、普段見られぬ機敏さで帰り支度を始める。
「じゃ、失礼するもふ」
「‥待って」
 雪刃の声にびくっとして動きを止める白耳毛獣。獣が静止するのを見て雪刃は言葉を続ける。
「あれ、本当にあのままなの?」
 あれ、それ、これ。
 視線が示す先には耳毛生やしてなんか嬉しそうにはしゃいでる聖職者。あれは一生そのままとすればかなり可愛そうな余生を過ごす事になりそうだ。リィムナはなんか大人しいので大丈夫そうに見えなくもないが。
 とにかくあのままでは困る。困るのでどうにかしてしまうかもしれないという雰囲気で雪刃は耳毛セールス獣に解除方法を迫る。
「‥仮面をはずせば元に戻るもふ」
 残念そうに口を割ったもふら様はとぼとぼと帰っていった。

●事後
 スライディング土下座。
 両手は勿論、額もしっかり地につけた見事な土下座だ。
 芸術的な土下座を見せる司であったが雪刃もエメラルドも冷たい視線を投げかけるだけで顔をあげろとは一言もいわない。司が得た一時の快楽の代償はあまりに大きかった。
「変態は葬るべきだ‥」
「‥変態は死ぬべき」
「さあ、懺悔するのです」

「ねえ、どういうつもりだったの?」
「あ、あの、その‥」
「触りたかったら、触ってもいいのよ‥‥?」
「いや、そういうわけじゃ!」
 透夜の反応に『やっぱりこうじゃないと』と心の中で舌を出す煌夜。とりあえず当分はこのネタでいじめることができそうだ。

「‥‥‥。」
 全ての終わりを見届けたリィムナが結跏趺坐を解いて立ち上がる。そしてこつん、こつんと杖が床を叩く音だけを残してギルドの外へと歩いていく。
「真理を、伝えなければ‥‥」
 まだこの世の中には苦しみを抱えている者達が何処かで待っている。リィムナの頬を夕日が照らす。光に照らされる彼女は深い微笑みを湛えながらまた杖の音を響かせて歩き始めた。

「俺、何も悪いことしてないよなあ‥‥」
 紫狼は呟く。
 世間の目は変態に厳しい。それ故にあらぬ疑いをかけられる時もあるだろう。だが、負けるな紫狼。いつか理想の萌えをこの手に掴むまで。