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■オープニング本文 ━━━見られている。 纏わりつくような、ぬめっとした湿度のある不快な視線を感じる。それも一つではなくて、いくつもの視線を。 ●穴の間 栢山遺跡は大小の道や広間が複雑に繋がる遺跡である。単純に侵入者を排除するためと思しきアヤカシが配備されていることもあれば、罠や謎かけが施されていることもある。その仕掛けは多種多様。ゆえに、このような部屋があったとしてもさほど驚くことはないのかもしれないが‥‥。 穴。穴。穴。壁にも、床にも、天井にも、穴。 高さもあれば奥行きも十分に持つその広間は、その広さだけでも十分に異質ではあるのだが、それに加えて頭一つ程度はすっぽりと入るであろう穴がいたるところに開いているのだった。そしてその特異な景観から、広間は『穴の間』と呼ばれるようになった。そう、見つかってしばらくの間だけは‥‥。 ●気配 「なんか、いるよね?」 遺跡という場所には不釣合いなひらひらした服を着た娘がすぐ側にいた仲間の裾をぎゅっとつかむ。何かの気配は感じるのに姿が見えないというのはどうにも不安でならない。もちろん仲間もこの不穏な空気を感じていたようで、表情に余裕を感じられない。 殺気とはまず違う。だがこの気持ち悪い、不快な感覚の原因は何? その原因を探るため、まず後を振り返ってみる。基本だ。相手がアヤカシであれケモノであれ、あるいは人であっても背後からの奇襲には注意が必要だ。場合によっては『今あなたの後にいるの』などと襲撃を予告する輩もいるから侮れない。 しかし、後には暗闇が続くばかりで何もない。‥‥とりあえず背後から襲われるということもなさそうだ。 それならば、天井を見上げてみる。そう、『上から来るぞ!気をつけろ!』という言葉もある。歴戦の勇者達だって上への警戒は怠らないものだ。 だが‥‥ここにも何もない。天井は穴こそあるものの、それ以外には何の変化も見当たらない。 であるならば、横?しかし首を左右に振っても何もない。赤い扉の一つもありはしない。 前後左右上下を確認してみたけれど、いや、下はまだだっけ。と視線を下に落とすと‥‥ 目。そう、大きな目が彼女の神聖にして不可侵な聖域をじっと見つめていた‥‥‥‥。 「‥‥‥‥‥‥」 暫く『穴の間』は時が止まったような、そんな錯覚を覚えた後、 「イヤぁぁ!目が覗いてるぅぅぅ!!」 悲鳴が『穴の間』に響き渡るのだった。 ●エロ目玉の間 ローアングルからガン見。 なんというすばら、いや不埒な行いをしている犯人は『闇目玉』であると調査の結果、というか見た目からあっさりと特定がなされた。彼らは普段暗闇に潜みつつ、チャンスが来るとこのような覗きを繰り返した。もっとも闇目玉は下からだけでなく、上から胸元を凝視する事もあったし、うなじを一心不乱に見つめ続けることもあった。どうやら色々な嗜好をもった個体がいるらしい。 一方男に対しては強い殺意を込めた視線を送ることが多々あった。まれに男でありながらも熱い視線を感じる開拓者もいたようだが、詳しくは良く分からない。分かりたくもない。 そんなこんなで『穴の間』と呼ばれていたのもつかの間、穴だらけの広間は『エロ目玉の間』と関係者の間では呼ばれることになった。 ●闇目玉先生!早く逃げて!! 『エロ目玉の間』は色々と問題はあるものの、闇目玉が襲ってくることは無いし、闇目玉が物理的な攻撃を受け付けないという面倒さから闇目玉の駆除は後回しにされてきた。 しかし、先日仲間とはぐれて『エロ目玉の間」に一人迷い込んでしまった開拓者が闇目玉の襲撃を受けるという事件が発生した。幸い程なく仲間が駆けつけて大事には至らなかったが、発見当時迷い込んだ開拓者は助けに来た仲間に襲い掛かるなど錯乱状態を呈していた。 この事件により『エロ目玉の間』はやはり危険であるとの認識が高まり、また多くの女性開拓者からクレームがあがっていたことから、ついに闇目玉の駆除を行うこととなったのだった‥‥。もちろん闇目玉達はそんな事を知る由もなく、今日もひっそりと獲物を待ち構えているのだった。 |
■参加者一覧
雪ノ下 真沙羅(ia0224)
18歳・女・志
叢雲・暁(ia5363)
16歳・女・シ
エルディン・バウアー(ib0066)
28歳・男・魔
シャンテ・ラインハルト(ib0069)
16歳・女・吟
フレデリカ(ib2105)
14歳・女・陰
浅葱 恋華(ib3116)
20歳・女・泰
綺咲・桜狐(ib3118)
16歳・女・陰
月影 照(ib3253)
16歳・女・シ |
■リプレイ本文 ●変態対策 「‥‥え、この服ですか?今回の依頼でとても有効らしい‥‥と聞いたので着てきたのですが‥変、でしょうか?」 そういう雪ノ下 真沙羅(ia0224)の服はメイド服。 世界を破滅させるだけの火薬を詰め込んだような破壊的な大きさを持った二つの球体は、メイド服のキャパシティーを余裕で上回る。 胸のボタンは世界の破滅をギリギリのテンションで守っていて、少しも油断することは許されない。許されないんだ! 実際にはもう上半分くらいがはみ出てしまっていて、その、世界は破滅をしかかっているのだが、その服は変じゃない。それは『世界はいつも紙一重で不安定なバランスのもとに保たれている』と言う警告にすぎないのだ! 「変、というわけではありませんけど‥‥」 もう一人のメイド服、綺咲・桜狐(ib3118)がスカートの裾をひらひらさせながら答える。 桜狐のメイド服は裾の長い、控えめな古典的なスタイル。これと比べれば、真沙羅のそれはいささか扇情的であるという気はする。もっとも、『メイド服』という時点で十分に、その条件を満たしているわけだが‥‥。 というよりも、だ。 依頼内容には十分に今回のアヤカシの特徴が書かれていたはずなのだが、素晴らし、いやどういう偶然かその手の対策をしてきた者はいなかった。 「下から以外の視線は無視できると思います」 シャンテ・ラインハルト(ib0069)の服装は確かに露出も少なく、『アヤカシの危険性』は少ないように見える。 「発育も、みなさんより‥‥」 と手を起伏の少ない胸の辺りに置いて言う。大きい方が注意を引くだろうと、そう言いたいのだろう? 分かってない!君は自分の可能性を分かってないよ!14歳の(諸事情により削除されました) 「アヤカシも僕の魅力でイチコロだよね!」 叢雲・暁(ia5363)はどうやらその辺りを良く理解しているらしい。『ツルペタ』の言葉そのままの体型を隠すどころか、むしろ堂々と披露しているではないか。そう、露出が過剰ともいえるほどに‥‥。 「視られやすい恰好してるような人が悪いんですよ」 月影 照(ib3253)はクールに言い放つ。厳しいシノビの世界を知る身としては、見られるだけで済むなんてどれだけ良いかということなのだろう。 しかし、そう言う照の着物はで『見てくれ』といわんばかりの丈の長さ。『視られやすい格好』とはこういう服装のことを言うのではないだろうか。眩しい。太ももが、実にまぶしい。 「とんだエロアヤカシもいたもんだね」 フレデリカ(ib2105)は少しばかり空間が寂しい、胸元の開いたゴシックドレスでスカートは心なし短いように感じられる。そう、それだよね。完璧なスキの無い服装はつまらないし、開けっぴろげ過ぎるわけでもない。そのバランスがいいんだよね。 「腕試しにはちょうど良い相手なんじゃないかしら?」 浅葱 恋華(ib3116)は鼻歌まじりだ。自分には見られる所がないなんて思っているようだが、泰拳士の若い健康的な太ももが、ふさふさのその尻尾が果たして見逃されることがあるだろうか?いや、ない。 それにしても闇目玉先生をなめすぎているのではないだろうか‥‥。 「婦女子を視線で穢す不届きなアヤカシども、神の天罰をくらわせてあげましょう」 今回の黒一点、エルディン・バウアー(ib0066)は自身の神にアヤカシの殲滅を誓う。 エルディンの服装はまあ、おいといて。とりあえず君が全裸や女装をしてこなかったことが何よりだ。 ●闇目玉先生のターン 「覗ける穴を少なくしてみましょう」 穴があるとはいえ、板を床に敷いていけば躓くこともないし、覗かれることもない。 シャンテは板を一枚一枚、丁寧に穴の上に置いていく。 もちろん他の穴から見られていることはわかっているけれど、気にしないで作業を進めなければ。 「早く終わらせれば被害は減るはずですっ!」 あせる気持ちからか、つい歩幅が広くなる。そしてちょっと大きめの穴を跨いだ時、見なければいいのに下を見てしまう。もちろん、そこには闇目玉。表情は無いのに何故かとても満足気に見えるのが腹立たしい。 「━━━━━━っ!!」 声にならない悲鳴を上げたシャンテは涙目になりながら、手に持った板でもぐら叩きを開始する。 「このっ!このっ!」 かわす必要がないのに、律儀にかわしつづける闇目玉だった。 「こんなのは、どうかな?」 暁はエルディンに向かってさまざまなポーズをとり始める。こうやって闇目玉の嫉妬心を利用して誘き出そうという考えだ。ちなみに今は『女豹のポーズ』だ。荒ぶる鷹ではない。 「おお、神は私に試練を与えられました!」 見ないように見ないようにと思いながらもついつい視線が行ってしまうのは悲しいかな男の性。エルディンは頭を抱えながら殺意をその一身に受ける。というかその試練代わって欲しい。 「ホント、君達って変態だよねえ」 夜春まで使ってノリノリな暁は闇目玉の反応を楽しんでいるようでもある。 挑発的な言葉以上に、演出は過激になっていく。暁は横になると、ただでさえ短い裾を持ち上げて、少しずつ捲り上げる。あと少し、あと少しでっ!というギリギリなところで暁は裾から手を離す。残念ながら、世界の真理はいまだ解き明かされないのだ‥‥。 しかしそれでも闇目玉は穴から出ることは無い。穴からじっと暁を見つめているのだった。 「アヤカシの変態‥‥これは早急に消すべきですね‥‥」 変態退治が趣味という一風変わった趣味を持つ桜狐にとって今回の依頼は趣味と実益を兼ねている仕事だ。アヤカシで変態。そんなものは生かしておくわけにはいかない。意欲に満ちた桜狐は力強い一歩を踏み出す。が、この部屋は穴だらけ。そんな力強い足取りで不注意に歩くと‥‥。 「変態は殲滅しま、え、きゃ!?痛たぁ‥‥!?」 足を踏み外しそうになった彼女はバランスを崩し、尻餅をついてしまう。 裾が長いとはいえスカートで尻餅をつけばどうなるか。どうなることか! 鉄壁の守りとでも言うのだろうか、薄い布でありながら男達の野望を悉くはじき返してきたスカート。しかし、その強固な防壁でさえも膝を立てて座ることによって壮大な歌劇に相応しい緞帳のようにも思えてくる。 そして緞帳が上がった舞台は‥‥‥見えない!闇目玉先生!そこをどいてください!!なんで顔半分だけ出すとかそういう嫌がらせみたいなことするんですか! 「えっと、な、何‥‥でしょう、か‥‥変な感じが、します‥‥」 真沙羅に纏わり付く視線。夢や希望が詰まりに詰まった胸!尻!メイド服が作り出す無敵の絶対領域!各種属性を盛り込んだ真沙羅にはありとあらゆる角度からの視線が集中する。 「そ、そんなに見られたら‥‥な、何だか、変な気持ちに、なって‥‥」 あまりにに熱のこもった視線のせいか、真沙羅の様子がおかしい。ちょっと足元がおぼつかない。 だめだ、これ以上は危険な予感しかしない。 「きゃぁっ!?」 片足を床穴に引っ掛けてバランスを崩した真沙羅は前のめりに倒れこむ。 幸いにも天然のエアバッグが彼女を守るのだが、そんな衝撃が加えれば‥‥!!弾け飛ぶボタン!抑圧から解放される『夢』と『希望』!!どうしてこうなった!どうしてこうなった!? 「神は私にこれを耐えろと!?」 エルディンが絶叫する。この試練は辛すぎる試練だ。目前には素晴らしい光景が、周りを見渡せばあちこちにドキドキ空間が待っているというのにそれを眺めることは許されないのだから。 エルディンは自分のコートを真沙羅の肩にそっとかけてあげると、神への祈りを口にする。彼は祈らずにはいられなかった。一層強く向けられた殺意の大きさ故に。 だが、闇目玉はそんなパラダイスを目の前にしても一向に穴から出てこない。 もちろん覗いているところを攻撃すことも出来るのだが、効果的なダメージを与える事が難しく、効率が良くない。そのまま続ければ途中で練力が切れてしまうかもしれない恐れがあり、どうしても闇目玉を穴から誘い出す必要があった。 ●開拓者のターン 闇目玉はなかなか穴から出てこない。となれば誰かが囮になればこの前の事件のように穴から出てくるかもしれない。 『物理攻撃が効かない相手なので』と恋華が囮役を買って出る。 「そう簡単には見せないわよ?」 恋華は軽い身のこなしで辺りを飛び回る。床を蹴り、柱を蹴り、一箇所に留まる事は無い。闇目玉ももちろん必死に追いかけているのだろうが‥‥。 「ついてこられるかしら‥‥!!」 さらにスピードを上げて闇目玉を翻弄する。追いつかれている気配はない。赤い尻尾がつかまえてごらんなさいと宙を舞う。 やっぱり余裕じゃない。きっとあいつらは床の下で歯軋りしながら悔しがっているに違いないわね。‥‥歯はないけど。なんて思いながらまるで曲芸のように舞ってみたり、宙返りをしてみたり。 「ほらほら、こっちよ。こっちっ!って、あっ!?」 足を滑らせた先はまるで恋華のために用意されたかのような穴。まさにジャストサイズ。 すっぽりと下半身だけ穴に落ちた恋華はあっという間に闇目玉に取り囲まれてしまった。何体かの闇目玉が床下に潜った気もする。‥‥確かにいい眺めだろうけど仕事してください。 「ちょ、誰か助け━━━」 「私がしっかりフォローしますから安心してください‥‥」 そう言って恋華を送り出した桜狐は、恋華の危機に真っ先に駆けつける。 「その魂、我が力によりうち砕け‥‥!」 今まさに恋華に襲いかかろうとしていた闇目玉に『砕魂符』を叩き込む。 一発、二発、符が闇目玉に吸い込まれるごとに闇目玉が削れていく。 桜狐はなおも速度を上げて、スカートを揺らしながら走る。そこに色気は必要ない。凛々しさがそこにある。 暗い闇夜を引き裂くように『砕魂符』が舞い、魔手が恋華に届くことなく闇目玉は瘴気の塊と化す。 「アヤカシだろうとなんだろうと変態は変態です。殲滅させてもらいます‥‥!」 「どうか、闇目玉に思い知らせてくださいますよう、お願いします」 そう言うとシャンテは龍笛を口に当てる。静かだった部屋に透き通った、滑らかな音色が響き渡る。 高い天井に奥行きのある石造りの大広間。ここはまるで彼女のために用意されたコンサートホールのようなものだ。残念ながら客の半分は目玉だけなので聴こえているかはわからないのだが‥‥。 シャンテの奏でる『天鵞絨の逢引』は闇目玉への怒りを込めるというには不向きな曲ではあるものの、何故だろう、仲間達には彼女の怒りを汲み取れたような気がした。何はともあれ、心強いサポートだ。 「な、なにを見とるかーっ!」 照の拳が闇目玉に叩き込まれる。が、たとえ『忍拳』であろうとも闇目玉に傷をつけることはできない。 しかし照は別に驚いた風でもなく平然と言ってのける。 「‥‥本当に効かないようですな」 全く影響を受けていないように見える闇目玉に照は情報の正しさを認識すると、手帳に『闇目玉は本当に殴っても無駄』と彼女にしか分からない文字で、すらすらっと書き込む。 「殴ってもダメでも、これならどうでしょう?」 照の右手に小さな炎が生じたかと思うと、瞬く間に照の全身を赤い炎が包み込む。そして間際にいた闇目玉も同様に炎に包み込まれる。照の炎は一瞬で消えて何事も無かったかの様だが、闇目玉は焼き目玉になっていた。 「ふうん、燃えは、すると」 また手帳を取り出すと癖のある文字を書き足すのだった。 「視線を感じるほどって、どれだけ熱心に凝視してるんだよ!」 言われてみれば確かにそうだが、それだけ闇目玉も本気ということなのだ。 フレデリカは鋭い剣のような式を闇目玉に叩き込む。まるでダーツを楽しむかの様に面白いように剣が刺さっていくのだが、フレデリカの気は晴れない。 さっき柱から覗いていた闇目玉は、フレデリカの胸を一瞥するといかにも興味がなさそうに次のターゲットを探しに行ったのだ。どうやら小さいのは好みじゃなかった個体らしい。『薄い』とか『見る価値がない』なんてもちろんしゃべりはしないのだが、フレデリカには闇目玉の考えていることが痛いほどよくわかった。 「あからさまに興味なさげに視線逸らされたら分かるよッ!」 「女性を穢すその視線、聖なる矢で潰します!」 エルディンより放たれた『ホーリーアロー』が真っ直ぐに闇目玉に向かう。ざくざくと聖なる矢が性なるアヤカシに突き刺さる。その鋭さは闇目玉の視線に負けてはいない。 「流石に手厳しいですねっ!」 闇に映える金髪をなびかせながら器用に闇目玉をかわしつつ反撃を試みるエルディン。混戦状態となった今、誰よりも激しい攻撃を受けているのは彼に他ならない。とはいえ闇目玉は精神攻撃ばかり行うので、傍から見ると大きな目玉からたくさん睨まれている様にしか見えないのだが。 「私は全世界の女性の味方、この身に全ての攻撃を受けましょう!!」 エルディンにとってこの日何度目の試練だろうか、勇者は果てしない困難に立ち向かうことを決めるのだった。 「うぅ‥‥こんな‥‥こんな恥ずかしい目はもう沢山です‥‥っ!」 真沙羅の刀が淡い光を帯びる。闇に浮かぶ瑠璃色の光。 微かな光に照らされた真沙羅は刀を上段に構え、正面より迫り来る闇目玉との距離を測る。 「‥‥あと、三歩、半歩‥‥‥!!」 闇目玉に触れてしまうのではないかと思うくらいの距離まで引き付けてから真沙羅は蒼い一閃を放つ。 「このロリコンどもめ!!」 露骨に侮蔑の表情を浮かべながら暁は『雷火手裏剣』を放つ。煌く雷は幾重にも重なって闇目玉に襲い掛かる。 先程とは全く別人のように情け容赦なく攻め立てる。遊びも手加減も一切加えられることなく放たれる雷が大きな目を貫く。なおも攻撃の手を緩める事なく、燃え盛る真っ赤な炎が闇目玉の体を焦がす。 「ロリコンの末路って、無様だね」 別に闇目玉全てがロリコンということではないのだが、執拗に暁を見つめ続けたコイツはそれに間違いない。 ●変態は終わらない 「いやー‥‥大変な目にあった‥‥」 フレデリカがさも疲れたと言わんばかりにため息をつく。 そう、相手が目だけにまさに大変な目であったと言えよう。 「これでまた一つの変態が消えました。でもきっと、この後に続く変態が‥‥」 確信めいた何かを感じ取ったのだろう、桜狐は何かを悟ったような表情で呟く。 「出て来て欲しいの?」 もう変態は十分だと思いながらフレデリカは問いかける。 「いえ、出て欲しくはないですけど‥‥」 どうか、この予感は気のせいでありますように、と思わずにはいられないのだった。 |