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■オープニング本文 蒼き雷が十塚を奔る。 元々、雷は神鳴りと呼ばれ、神々のなせる業としてみなされていた。 ……ならば、人間が雷に敵う道理がどこにあるというのか? ――道破、我こそが万獣の主。ヒトを滅し喰らうは我が権利であり義務。 堕ちた神獣――滅雷の化身が殺戮と破壊と憎悪を撒き散らさんとしていた。 須佐の街を治める氏族、天尾家の娘……天璃は目の前の少年が告げたケモノの名を確かめるように口にする。 「『都牟刈』……ですか?」 「そー、つむがり」 対する少年は面倒そうに、しかしどこか懐かしがってるような口ぶりで頷いた。 少年――叢雲は記憶から必要な情報を発掘する為に目を閉じて過去に浸る。 「えーっと、角が生えてて、鹿みたいな馬みたいな体で、派手な鬣がある……麒麟、だっけ?」 「都牟刈は麒麟なのですか?」 「あぁ、いや正確には違うんだっけ。麒麟の青いのを……えーと――」 言葉に詰まる叢雲を助けるように、部屋の隅に控えている男性が口を開く。 「聳弧ですな」 「それそれ、しょーこだ。都牟刈は聳弧のケモノだね」 麒麟――通常の生物の範疇に収まらない幻獣である。 あくまでも伝承や噂話の類ではあるが、慈愛に溢れた神聖な生き物であり全ての獣類の頂点に立つという話もある。 そのうち赤い毛を炎駒、白い毛を索冥、黒い毛を角端、そして青い毛を持つ麒麟を聳弧と呼ぶ。 叢雲の話によると都牟刈は聳弧のケモノであり、それが閃津雨山に封印されていたモノらしい。 「で、そいつが死んで。でも死体を放置するわけにはいかないよね?」 「まぁ……そう、ですね。アヤカシに利用されるかもしれませんし」 「できれば完全に抹消するのが一番だけど、無駄に力を持っていた死体だった為にそれもできない。そうなると――」 叢雲は一旦言葉を止め、試すような視線を天璃に送る。受けた少女は戸惑う事なくさらっと言葉を継いだ。 「結果、都牟刈の死体は封印されたんですね。……あの洞穴に」 「そーいうこと。物理的に封じた上で、巫女氏族が霊的な力で更に封印を施したってわけ」 封印の経緯を聞いて、合点がいったと天璃は頷く。 閃津雨山の封印洞穴付近に人の手が入っていたのは巫女が封印を施す為だろう。 また、扇姫が封印の事を知っていたのも天羽家が最近まで封印を施す役目を担っていたからだと考えられる。 しかし、結局のところ…… 「封印は破れて、都牟刈はアヤカシとして復活しちゃったわけだねー」 「……都牟刈の目的は一体何なのでしょうか」 天璃の問いに、叢雲は「んー」と小さく唸ってから答えを導く。 「まず力をつけるというのが大前提だと思うけど。その上であいつが何をしたいかなんてのは僕には分からないなぁ」 何故ならば、 「アヤカシなんて人間を喰らう為だけに生きてるようなモノだしね」 それから数日後。 須佐よりやや離れた山の中、傷だらけの鎧を身に纏った男が歩いていた。 野宿が常だからか身だしなみは全くといって整えられておらず、しかし鋭い眼光や逞しい体つきからみずぼらしさよりも野性味を連想させる。 「……チッ。まさか、またここに来ることになるたぁな」 苦々しく言い捨てながら、眼下に広がる眺めを視界に収める。 男が立っている場所は崖の上であり、がけ下にはいくつもの建物が見える。集落のように見えるが、人の気配は無い。 集落は高い崖に囲まれており、普通に進入するには集落の南方向に伸びている狭い道を通るしかないだろう。尤も、その道も両側を崖に挟まれているのだが。 「……」 ここは過去に街への襲撃事件を起こした賊が住んでいた集落だ。今では賊は全員捕まり誰も住んでいない。 ――その筈、なんだけどな。 やはりざっと見たところ変わったことがあるようには見えない。 そもそも、男は何か確信があってこの場にやってきたわけではない。ただ、なんとなく『嫌な気配』をこの地に感じただけだ。 「――あん? こりゃあ……」 ふと、男はあることに気付く。 傍にある木の枝が妙な折れ方をしているのだ。 焼け焦げた跡があるが、その枝以外に燃えたと思わしき跡は無い。火が付いたにしては少々不自然な気がする。 それに、燃えて折れたというよりも衝撃で折れたといった方が近いだろう。 「……最近、雷が多いのかねぇ」 結局、ここには何もないと判断した男はその場を去るのであった。 「ふーん……そっか」 闇を連想させる漆黒の髪を腰辺りまで伸ばした振袖姿の少女――否、少年は屋敷の庭で飛び立つ鴉を見上げていた。 縁側を歩いていた天璃は鴉に気づかず少年が何を見ているのか気になって、声をかける。 「叢雲様? どうしました?」 「あ、なんでもな――いやなんでもあるのかな?」 困惑する天璃を余所に、叢雲は縁側に上がると自室に向けて歩きながら簡単な指示を出す。 「伊都の集落に何かあったみたいだから調査しといてー。もしかしたら何も無いかもしれないけどね」 「えっ、しかし――」 「まー、場所は場所だから扇姫は向かわせない方がいいかな? そこら辺の判断は任せるけども」 「は、はぁ……」 何故今更あの場所を調査するのかが分からず、天璃は頭に疑問符を浮かべたまま気まぐれな少年を見送るのであった。 |
■参加者一覧
柚乃(ia0638)
17歳・女・巫
羅轟(ia1687)
25歳・男・サ
水月(ia2566)
10歳・女・吟
和奏(ia8807)
17歳・男・志
以心 伝助(ia9077)
22歳・男・シ
向井・奏(ia9817)
18歳・女・シ
長谷部 円秀 (ib4529)
24歳・男・泰
オルカ・スパイホップ(ib5783)
15歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●神獣 十塚に現れたとされるアヤカシ……都牟刈の調査。 伊都の集落に何かがあるということで開拓者達はそちらに向かっていた。 とはいえ、現地調査以外にも調べるべきことはあると判断した2人の開拓者は須佐の街にやってきていた。 「……なんでキリンすぐ死んでしまうん?」 じゃなかった、とオルカ・スパイホップ(ib5783)は慌てて首を横に振ると本来言うべきことを言い直す。 「なんでキリンさん死んじゃったの〜??」 行動理由が生前のもの影響されるのであれば、死んだ原因が分かれば目的も分かるのではないかという意図のものだ。 その質問を受けるのは天尾の屋敷に住む少年、叢雲だ。 彼はいつものように笑みを崩すことなく答える。 「なんで……と言われても困るなぁ」 とは言っているが、その表情から困っている様子は見てとれない。 「だってさ。生存競争に負けたケモノが死ぬのってそんなに珍しいことかい?」 「む……」 言われてみれば、ともう1人の開拓者である以心 伝助(ia9077)は心中で頷く。 山猫が兎を狩るように、狼が縄張りを守る為に戦うように、野生の獣達にとって命のやり取りは珍しいことではないはずだからだ。 ――けど。 解せないこともある。聳弧……麒麟の一種がそんな簡単に敗れることはあるのだろうか? 「……そもそも、都牟刈が封印されたのはどれぐらい前のことでやすか?」 「覚えてないなー。まー、人間の基準で言うと数世代は前の話になるのかな?」 ……? 今の、言い方は……? 知らないではなく覚えてない。この言葉の意味を伝助は黙して思考する。 代わりに、というべきか。オルカが別の質問を続けて行う。 「えっとー飛んだりするの? 大きさは〜? 常にビカビカしてるの??」 「んー、どうだったかなぁ」 叢雲の知識では少なくとも飛んだりはせず常に雷を発しているわけでもないらしい。また、馬よりやや大きい程度だとか。 とはいってもそれはあくまでも都牟刈がケモノだった時のもの。アヤカシとなったそれがどうなってるかは……まだ誰も知らない。 ●調査 伝助とオルカが須佐に向かっている頃、先行していた開拓者達は伊都の集落に到着していた。 両側を高い崖に挟まれた狭い道を進むことで到着した集落もまた周囲を崖で囲まれていた。普通の人間ならば入り口の道を通ることでしか行き来できないだろう。 「集落の入り口は一つで高い崖に挟まれている……のですか」 柚乃(ia0638)は周囲の崖を見た上で、入り口へと視線を移す。事前に聞いていたとはいえ、改めて実際に現場にやってくると余計に気になるのだろう。 「もし落石で塞がれたりしたら……」 「実際、過去にそういったことがあったようですね」 柚乃の言葉に応える和奏(ia8807)の手の中には手帳が一冊。それには過去にここで起きた事件について調べたことが記されている。 「そんな事があったのですか……今回も用心した方が良さそうですね」 「でしょうね」 そんな2人の話を聞いてかそれとも聞く前からか、事件の当事者であった羅轟(ia1687)は当時の事を思い返していた。 「……ここか……。もう……来る事は……無いと……思って……いたが」 ここで明かされた真実。武蔵の罪。 彼は……今、どこで何をしているのだろうか。 ともかく。 これからなすべき事は都牟刈の調査だ。 集落の手前から瘴索結界で瘴気を探っていた水月(ia2566)は、今のところ瘴気の反応が無くてほっと安心したように胸を撫で下ろす。 調査の事を考えるのであれば、本来瘴気の反応はあった方がいい……のだが。 都牟刈の瘴気ということは、過去にそれが封印されていた洞穴にあった瘴気と同質のものということになる。 「あの洞穴の瘴気の残り香……まだ覚えてる……」 狂気を孕んでいた瘴気の恐ろしさを思い出し、水月は身体を震わせる。 できるのならあれをもう一度味わうのは避けたい……しかし。 「死んじゃった後まで、アヤカシに利用されてるなんて酷い話なの。早く見つけて……静かに眠らせてあげたいの」 強く優しい心を持つ少女は、健気に再び結界を張りはじめた。 「ふーむ、どの様な経緯があり、死したのかは知らないでゴザルが。人を喰らうアヤカシとなったならば、放置する訳にもいかんでゴザルな」 うんうんと頷きながら探索を続けるは向井・奏(ia9817)。 集落内では基本的に単独行動を控え、なるべく固まってすぐに集合できるような距離で探索をしていた。 もしも襲撃された時の備えである。 「都牟刈の手がかり、なんとしても見つけ出すでゴザルよ。うむ」 彼女が主に注視していたのは二点。雷の跡と、毛や足跡といった都牟刈の痕跡だ。 目的を探る以前にまず本当にここに都牟刈がやってきたのかを確かめなければいけないというのもある。 同じように長谷部 円秀(ib4529)も集落内の探索を行っていた。 「雲を掴むような話ですね……とはいえ、特徴が分かるなら手掛かりは見つかるかもしれません」 現状どこにいるか分からなくても、行動や習性が分かれば特定できるかもしれないからだ。 そういったわけで彼は雷の跡に加えて、家の中なども探っていた。何か目的のものがあって、それを持ち去った可能性を考慮して、だ。 「ん……しかし、これは」 扉を開けて中に踏み込むと同時、家の中の埃が舞い上がる。煙たさに眉を顰めてしまうが問題はそこではない。 「……少なくとも、ここ最近誰かが入った形跡はありませんね」 軽くしゃがみ込んで床に指をつつと走らせる。それだけで1本の線がありありと描かれることになった。 このような埃まみれの家では誰かが入れば分かりやすく跡ができるだろう。しかし、その跡は見当たらない。 一応、住人が素直に退去したというよりもやや荒れてるような印象も受けなくはない。 「ぱっと見た感じ家捜しされてるような印象を受けますが……」 「それは実際に家捜しされたからでしょうね」 円秀の疑問に答えたのは和奏だ。彼も同じように色々な家の中を調べており、こちらの様子を覗きにきたといったところか。 「……どういうことです?」 「調べた記録があるんですよ」 ここは天羽襲撃事件を起こした伊都という賊が住んでいた集落である。 当然のことだが、彼らが捕まればここも捜査されることになるだろう。家の中が微妙に荒れているのはその時のものだろう。 「当時の調査では彼らの武器などを押収した程度で、これといった発見は無かったようですね」 「成る程……」 それに加え、誰かが侵入した跡が無いこともあって、彼らは家の探索をそこで打ち切るのであった。 ●死の先 伝助とオルカも合流し、調査をはじめてしばらく経った頃。 最初に痕跡らしきものを発見したのは奏だった。 「んん……これは足跡でゴザルか?」 人のものではない足跡が集落内にあるのを見つけたのだ。足跡は雨などで容易く消えてしまうものであることから、少なくとも最近ついたものだろう。 足跡があったという報告を聞いて、他の者も集まってそれを確認する。 「この足跡から推測するに……」 円秀が導き出した結論は馬に近似した生き物の足跡、ということだ。 「……確認を取った都牟刈の体格とちょうど一致しますね」 つまり、アヤカシとなった都牟刈はケモノ時代から見かけ上はそう変わってない可能性が高いということになる。 「後は、青い毛……ですね。……あ、自分の髪も青……」 これで青い毛が見つかれば、都牟刈がいたのはほぼ確定になるだろう。そう考えた柚乃は何の気無しに自分の髪に触れ……もし自分の髪の毛が落ちていたら面倒かもと懸念してみたり。 見つかった足跡を中心に辺りを捜索してみたものの、都牟刈のものと思わしき青い毛は見つからない。 「あ、これかな〜??」 「いえ、それは私の髪です……」 見つかったと思ったらやっぱり柚乃の髪だったり。 しかし、馬の毛らしきものすら見つからないという現状はある事実を浮かび上がらせる。 ――アヤカシの死体や分かたれたものは瘴気へと還る。つまり、アヤカシの毛が見つかることは決してない。 毛は見つからなかった、といっても足跡が1つ見つかれば後は早かった。 周辺を探れば別の足跡もまた見つかったからだ。足跡を観察して円秀は都牟刈について考察をする。 「普通の馬に比べれば大分間隔が広いですね……。飛びはしないが跳びはする……といったところでしょうか」 「問題は何を求めてここにやってきたか、ですが」 和奏の言葉に開拓者達は頷き、足跡の先へ向かい歩いていく。 そして、 「瘴気……なの?」 最初に反応したのは瘴索結界を張っていた水月だ。 瘴気があると聞いた開拓者達はすぐに武器に手を伸ばす……がアヤカシの気配はない。 「……あくまでも瘴気しか無いみたいですね」 同様に瘴索結界を張り、何か隠れてないかと術視をしていた柚乃が敵がいないことを告げる。 そう、見つかった瘴気はあくまでも残り香であった。 「……う」 再び水月は寒気を感じて体を震わせる。……洞穴の瘴気と同質のものを感じ取ったからだ。 ――足跡の先、瘴気が漂っていた場所。 そこは集落の外れ。ぱっと見たところ、これといって何かあるわけではない。 いや、何も無いというわけではない。 「石……でゴザルか?」 一定の間隔で石が置かれているのだ。それぞれ形も大きさも不揃いで、特に加工などがされているわけではない。 その辺にあった手頃な石を適当に置かれているようにも見える。 「……!」 その中の1つ、やや大きめの石が倒れている――いや、それよりもその石の根元が掘り返されてる事に気付いた水月は服が汚れる事も厭わずに、しゃがみ込んで調べる。 また、ほぼ同時に和奏は手帳に記された情報を確認することでここが何なのかを知る。 「恐らく……ここは墓場、ですね」 「――ないの」 「え?」 「お墓の下に……何も無いの!」 掘り返された穴の跡……そこには水月が見る限り何も無かった。 もしここが墓場だとすればあるべき筈の遺体もしくは遺骨――それすらもだ。 「う〜ん、もしかして実際は何も埋めてないシンボルとしてのお墓かもしれないよ?」 そう、今のところオルカの言葉を否定する材料も無い。 事実を確かめるには―― 「……我が……やろう」 羅轟は別の墓に手を合わせ、すまぬと呟いてから鬼腕を発揮し墓を掘る。 結果、 「……あった」 墓の下には当然というべきか。やはり誰かの遺体があった。 羅轟はもう一度手を合わせて謝罪をすると墓を埋め直す。 この事からわかる事。それは、何者かが墓を掘り返し、遺体を持ち去ったということ――。 「何者か……それは当然、都牟刈っすよね……?」 しかし、一体何の為に? 今のところ……答えは出ない。 ●鎮魂の谷 伊都の集落に琵琶の音が響く。 柚乃が墓の前で弾いているのだ。 「のんびり奏でている場合ではないのですけど……」 彼女自身もそれは自覚していた。だが、弾くことをやめなかったし、仲間達もそれを止めなかった。 ……誰もが祈りを込めた鎮魂歌が必要だと感じていたかもしれない。 今のところ都牟刈が何を企んでいるか明確な答えは出ない。 ただ、彼のアヤカシが害を振り撒くということは間違いないだろう。 ならば……と羅轟は今どこにいるか分からない友人の身の振り方を考える。 「武蔵殿が都牟刈を討てば天尾家の心証は多少改善されるかも知れんが……扇姫殿が、な。どうにかせねば死罪は回避してもそれを無視して殺しかねん」 考えようによっては武蔵が公に許される機会がやってくるのかもしれない。だが、それで復讐が止まるのか……? そんな彼の呟きが聞こえたのか、オルカもまた小さな声でぽつりと呟く。 「――苦しみを知らない人がその苦しみを知ってる人にやめろとかいうの自体罪なんだよね」 想像じゃ相手の目線に立てないし、した方とされた方じゃ話も変わるし……というのが彼女の持論だ。 ――だから、あっしは。 「……彼らに関わる苦しみの一端でも知りたいと思う。それがあの二人を殺し合わせない事に繋がるかはわかりやせんけど」 知らない人間が止めるのが罪というのであれば、知った上で止めたい。 それが……以心 伝助の出した答え。 「扇姫さんも炎樹さんも、大事な物を傷つけられたから復讐を考えた。なら、伊都家が傷つけられたのは何なのか」 ――面子だけでそこまで人の憎めるのか。今回の調査ではそれに繋がることは分からなかった。 しかし、いつか必ず……。 ――ただ、それでも。 オルカが思い浮かべるは辛そうな顔をしている羅轟や伝助。冷めた表情の扇姫や、まだ見たことの無い武蔵。 復讐が終わらない限り……いや復讐が終わっても、そのままかもしれない。 「みんな笑顔で居て欲しいってのは間違ってるのかな」 泣いたり怒ったりするよりも、笑った方が楽しいから、と。 集落の周辺の森も探索した結果、都牟刈のものと思わしき足跡と雷の跡も見つかった。 集落内では雷の跡が見当たらなかったのは、単純に森の中では邪魔な木々を雷でなぎ払っていたからで、集落内では邪魔になるようなものがなかったからだろう。 跡を追った限りでは森を出た事だけは分かった。その後どこに向かったかは分かってない。 特筆するようなことがあるとすれば、集落周辺に成人男性のものと思わしき足跡があったことぐらいだろうか。 ●滅雷 ――不無。手頃な怨念があればこそと試してみたが……まさかここまでとはな。 成程、我が力と相性が良いのかもしれん。 「――」 ……逢有、貴様に当てがあるか。 ――好志。今の我には手も足もどれだけあったところで困りはせぬ。喰らい、滅ぼす為に、な。 |