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■オープニング本文 それは刀と言うにはあまりに大きすぎた 大きく分厚く重く そして大雑把すぎた それはまさに鉄塊だった 「何ですかコレェェェ!!?」 とある刀工の鍛冶場にて、一番弟子の男の悲鳴にも似た―――事実、悲鳴だろう――声が響く。 良い日和の朝だった。引き締まった空気を肺に入れ込み、今日も一日頑張ろうと爽やかに意気込める‥‥弟子の男にとって、それはそれは良い日和の朝『だった』。 それを台無しにしたのは、一振りの大太刀。通常の太刀の倍‥‥いや倍ではきかない、成人男性の背丈以上の刀身。刃幅も広く、そして厚い。 「何って見ての通りだろ。あとは仕上げに数日ってところだ」 その刀匠は、満面のドヤ顔を弟子に返す。 「いやぁ、某神社から「大アヤカシを殺せる程の刀を作ってくれ」と言われてな。ヤツらに渡してもせいぜい飾って置かれるだけだろうから、思いきった物を作ったんだよ。見てみろ、斬撃の威力を高める為に先端部に両刃斧を付けてみた」 「見た目イヤ過ぎるでしょ! 奉納出来るワケないよこんなの! 大体コレを本当に太刀って言い張るつもりですか、何て名前付ければ良いんですかコレ!!」 「何って、そうだな‥‥名付けてネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング刀だ、完成度高けーだろオイ」 「アームストロング二回言ったでしょ、あるわけねーだろこんな大刀! こんなのにやられたらアヤカシだって残念過ぎるでしょ!」 そんな会話をしている中で、二番弟子の男が鍛冶場に入ってきた。 「先生、更に鉄壁の守りで万全を喫するべく、鍔の両端に丸盾を付けてみてはどうでしょうか?」 「よし、それいいな採用。ああ、と言う訳で神社側には納品が遅れると伝えて来てくれ」 「あー! 誰かこいつら止めてくれよ!! なんでこういう話になると往々にしてツッコミ役が足りなくなるんだよ!!」 と、滅茶苦茶な刀が作られている訳だが、何故か「あの刀匠は、物凄い完成度の刀を作った」と言う噂が広がっていた。 いざ完成が近くなってきた最近は、鍛冶場周囲に何やら不審な物音、気配が漂い始めている。 (評判が良くなっても、逆に盗賊に狙われる様になったら意味が無いし! なんで‥‥なんでそんな噂が広まるんだ?) 「先生、言われた通り街中に噂を流布してきました」 「うむ、御苦労」 「ちょっと待てオイィィ! 神社まで運んでいる最中に狙われて、奉納出来なくなったりしたら大変ですよ!」 「ったくうるせーなぁ。発情期のオオサンショウウオかてめーは」 「え、オオサンショウウオって発情期になると鳴くんですか?」 「いや、何となく言ってみただけだ」 「ホント適当だなこのオヤジは! 誰か止めてくれよ!」 「まぁしょうがねぇ。神社に納め行く時は念の為に、開拓者でも雇っておくか。そうだ、どうせなら盗賊に襲われた時に使ってもらえれば、更に評判ウナギ登りだぞ、このネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング刀の」 「あんたの知能はウナギ下りだよ、こんな武器取りまわせるワケないでしょ」 「そりゃあ、力の鍛錬が足りないんだろ」 「あんたは頭の鍛錬しろよ!」 |
■参加者一覧
無月 幻十郎(ia0102)
26歳・男・サ
相川・勝一(ia0675)
12歳・男・サ
柳生 右京(ia0970)
25歳・男・サ
雷華 愛弓(ia1901)
20歳・女・巫
斉藤晃(ia3071)
40歳・男・サ
ペケ(ia5365)
18歳・女・シ
サーシャ(ia9980)
16歳・女・騎
レヴェリー・ルナクロス(ia9985)
20歳・女・騎 |
■リプレイ本文 ネ刀を見るなり、唖然とする無月 幻十郎(ia0102)。一番弟子が、見かねて彼に声をかける。 「すいません、こんな物の輸送で――」 「‥‥素敵だ」 「――ええぇぇ〜?!」 「こういうのって好きだな、シンプルで。男だったらやっぱり、デカブツには見惚れるなぁ」 「凄く‥‥大きいわ。こんなに太くて大きな武器、あぁ、何て立派なの!」 「わー! この人達のっけから何言ってるの何言っちゃっているのこの人達はー!!」 溜息をつきながら言う幻十郎に加え、心なしかウットリとした目をしているレヴェリー・ルナクロス(ia9985)。そんな二人をみて、この一番弟子は何か勘違いをしている様だ。全く、これだから思春期の男ってのは困る。 「貴方達がアレに大きいとか素敵とか言ったら色々と不味いでしょ!!」 「あらあら♪」 しかしサーシャ(ia9980)意外にもこれをスルー。 「ほをををっ! ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング刀ですか」 「ふむ、完成度高けーのう」 ペケ(ia5365)、斉藤晃(ia3071)も続いて賞賛を送る。そう言われると、何だか段々と、本当にこの刀が素晴らしい物と錯覚してくる様に‥‥ 「どんな業物かと思えば‥‥これは『刀』に分類する段階から、まず悩む必要のあるものだな」 ‥‥なる訳はない。 「どう見ても均衡の取れていない形状だ。重さや取り回しを考えて、とても一人で充分な扱いが出来る物ではなさそうだな」 柳生 右京(ia0970)の言う通り。かと言って、実戦で二人掛りで振り回すと言うのも、別の意味で大変そうだ。 しかし『重量×デカさ×迫力=カッコよさ』と言う方程式は、年頃男子の基礎方程式。左京の隣にいた相川・勝一(ia0675)もご多分に漏れず、これを見て目を輝かせていた。 「予想よりも凄い刀ですねー‥‥。この刀がまともに使えれば‥‥!」 「破壊力だけで言えば、この天墜をも凌ぐだろうが‥‥最も、扱えればの話になる」 「いや‥‥いけるぜぇ、この刀ァ」 そこに依頼主の刀匠が登場、荷車を引いてやってきた。 「攻防一体完全無欠を体現した刀がこれだ」 「この完成度‥‥一家に一振りといって過言ではありませんね。この輸送『愛弓と七人の戦士』にお任せ下さい」 ある程度の過言を自覚しながら言った雷華 愛弓(ia1901)だったが、刀匠は親指を立てながら笑顔を作った。 「もし賊に襲われた時は、奴らにこいつをブチこんでやりな」 しかし、開拓者達は道中にて早くも驚異に襲われた。 賊では無い。 それは『退屈』と言う名の驚異。 今の所、山道から聞こえるのは車輪の音だけ。 『荷台を転がすだけの簡単なお仕事です』で終わってしまっては、折角のネ刀もただの鉄板になってしまう。あ、元からだだの鉄板か。 「盗賊は出てこないですかねー。出てこないといいですねー」 だから、勝一の台詞が棒読みでもそれは仕方無い事だった。 「なんや随分わきわきしとるなぁ」 「そそそ、そんな事は無いんですよ!?」 「まぁ、折角の機会なんやし、誘い出してでもコイツを使って戦いたいと言う気持ちは分からんでもないわ」 同調気味の晃。彼とて面倒事を望む訳ではないが、このまま不完全燃焼で終わるのは詰まらないと感じている事も事実。 「ほほう誘い受けとは、流石ですね勝一さん」 「さ、誘い受けって‥‥! 僕はそんなつもり無いです!」 勝一は両掌を向けて言うが、愛弓が何かに納得した様に頷いている。 右京は、溜息を洩らした。 「と言うより、こちらの都合で敵が出てきてくれる訳では――」 「やいテメーら、ちょっと待ちなァ!」 そんな彼の声を遮ったのは複数の粗野な声。ぞろぞろと、出て来たのは声に違わず粗野な連中。 「盗賊、出ましたね! 出てくれてありがとうございます!」 何やら嬉々として言う勝一、一方右京は言いそびれた語尾をそのままにして武器を構える。 「随分でかい桐箱じゃねえか。それが噂の、完成度の高い刀かぁ!」 「知ってたかい、ここを通るには通行料が必要なんだぜ!?」 「‥‥なんでしょうね、あれ」 サーシャの問いに、幻十郎は曖昧に頷きながら顎をかく。 「‥‥んー、なんだろうな」 襤褸切れ袴。手には鈍器や刀、槍。男達は、とどのつまり‥‥見ての通りの連中だろう。顔に『僕達は賊です』と書いてあるぜ。なるほど、それならネ刀の試験運用の対象になっていただきましょう。 「レヴェリーさん、あれを使うわ」 「ええ、良くってよ!」 サーシャ、そしてレヴェリーが桐箱に手をかける。早くも、高完成度刀のお披露目か!? 思わず、賊達も息を呑む。 「あんな大箱だ、きっとものスゲー刀が――にぎゃああ!」 その台詞、最後まで言う事、叶わず。 「ああ、酷い! 右京さん何て唐突な攻め!」 「何か問題か?」 真空刃に賊の一人が吹っ飛ばされていた。愛弓は叫ぶが、当の右京は首を傾げもせずに言う。先手必勝、間違った事はしていない。 「あ〜ネ刀使いたい奴は順番に並んで並んで、吹っ飛ばされる盗賊も順番まちね」 晃はまるで催し物の整理員のような口ぶり。その足元には倒れている賊が既に一人。晃が手に持つ大型斧の腹で殴られたのだ、まるで何かの作業の様に味気も無く殴られたのだ。 「畜生ッ、てめえらの血は何色だァ!」 何色だろうが許してくれなそうな憤激具合で、賊達が襲い掛かってくる。 「さぁ、ペケ達が敵を抑えている間に!」 「ネ刀を、その手に!」 ペケ、そして愛弓の言葉は二人の騎士に向けて。 サーシャ、レヴェリーはお互いの顔を合わせて頷き、そして桐箱に手をかけた。仰々しい大箱、その蓋になっている長板をついに外す。 板 解 「なん‥‥だと‥‥?」 賊の勢いが、消えた? 無理も無い。今、サーシャとレヴェリーが二人掛りで構えているモノ、それの聳え立つこと塔の如し。 「うん、やっぱり実に好いモノですね」 ペケは、顎に手を添えながら呟く。 「ま、負けた‥‥」 「敗北を認めるんじゃない!」 「女二人に持たれているんだ、こ、こいつぁ分が悪い話だぜ!」 この賊達は、何を話しているのだ。 「いよ、女傑御二人組!」 幻十郎は、まるでお祭りの囃し文句の様に言って盛り上げる。 「大剣持たせれば天儀一!」 「さぁ、お二人にとって初めての共同作業です!」 愛弓の台詞は何か違うそれの様な気がする。 「すごく‥‥ご立派です‥惚れ惚れするほど」 「こ、これは‥‥想像以上の重さかしら‥‥!!」 二人は、強く柄を握り締める。指に意気を込め、そして息を合わせて駆け出した。 「「やぁーーー!!」」 二人三脚で疾駆し、慌てふためいている男達に接近――剛剣一閃。 賊の全身を襲う、激しい――風圧。 「あああぁぁあ〜〜〜」 「剣がああぁぁぁー!」 圧倒的、空振り。 実際に振ってみると分かる、この剣の扱い難さ。 しかし、そのインパクトはやはり強烈なものを相手に与えたらしい。 「ケツの穴にツララを突っ込まれた気分だ‥‥今‥‥あのままあそこにいたら確実に一人ずつやられていた!!」 「初めて出会うタイプの刀だ! 実際食らってはいないが今まで出会ったどの武器をも越えている凄味を感じたッ! 蹄音だけ聞いて牛車だと認識できるようにわかった!」 若干誇張表現のきらいはあるが、其れ位の衝撃だったのだろう。 「ハァ、ハァ。でもこれ‥‥思っていたよりもずっと、良いわ」 「レヴェリーさん。もう一度、行けますか?」 刀は余程重いらしい。二人とも紅潮させながら、不規則に熱い息を吐き出している。 「‥‥ええ、私は大丈夫よ」 「では、手を合わせて下さい。もう一度‥‥っ」 二人は再び構えると、一気に横へ薙ぐ。刃は空気を切り裂きながら相手へ迫りそして―― 「「ああぁあぁぁぁあぁっあぁぁ」」 ――すっぽ抜けた。切っ先にかなりの重量があり、其れに加えて二人の膂力。遠心力は十二分に乗ってしまい、ついには二人の握力の許容を超えてしまった。 ひゅーぅぅん、刀が飛ぶ。 「ひやぁあ!?」 それは、ペケの褌の横紐を掠めていった。二重の意味で危ない危ない! そしてネ刀はペケの近くの木に突き刺さる。 「い、今だ! 刀を奪え!」 賊達が、ネ刀に群がる。 「ペケさん、賊達に奪われる前に引き抜いて下さいっ」 「え、えっ、ちょっと待って下さい愛弓さん! 紐、褌の紐をちゃんと結び直さないと大変な事に!」 「大丈夫です、その時はちゃんとその風景を網膜に焼きつけます」 「大丈夫じゃないですソレ!」 「ああ、賊達が迫ってきましたーっ」 「え、ええ!?」 紐は適当な仮結びにして、ペケはネ刀に手を掛けた。 彼女は顔を真っ赤にしてネ刀を引き抜こうとするが中々抜けない。それもそのはず、それはサーシャとレヴェリーが二人掛りでも扱い切れなかった代物。 しかし、その刀身が僅かに浮く。あともう一息! 力みに震えながらなので、彼女の肉が小刻みに触れる。そうしてぷるぷるしているとなれば、当然仮止めの紐などは緩み‥‥こちらもあと一息! 「う、うにゃにゃらぁぁぁ〜!!」 刀はすぽーんと抜け、クルクル宙を舞う。 そして、ペケは!? 「きゃーん!」 茂みの中に転倒してしまって姿が見えない。残念さと安心を同時に感じ複雑な心境なのは筆者だけで良い。 刀身は何故か都合よく、三人の男達の前に突き刺さる。 「俺達サムライ三人掛りで扱ってみせようぜ――」 斉藤晃。 「おお、それじゃやってみるか。当たると痛いぞ、この――」 無月幻十郎。 「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング刀は!!」 相川勝一。 「「「三つの力を一つに合わせれば‥‥」」」 漢、剣士三人は今まさに巨大刀を振り下ろさんと上段に構えた。 「「「百ぅ万ん馬力だあああああ!!!」」」 いや、そのりくつはおかしい。 ズドン。 「‥‥埋まっちまったのう」 また当たらなかった。やはり壊滅的に命中力が低い。確かに三人なら重量にパワー負けもしなくなるだろうが、如何せん持ち難くなる。 「はっはっはっは。やっぱり重すぎたか? いやぁ参った参った」 晃と幻十郎は悠長に言っているが、勝一は慌てて周囲を見渡した。 (しまった‥‥賊は沢山数がいるんだからこんな隙を晒したら――ってアレ?) 勝一の視界に映る敵数は、当初の半分以下になっていた。 不思議がって見回していると、勝一は右京と目が合う。 「いや、普通に倒した」 レヴェリーは靴の裏で地を弾くと、一気に対象へ肉薄する。男は刀を構えようとした時、懐には流れる銀髪を見た。何か防御動作を取ろうとしたらしいが、動きは完遂しない――既に、レヴェリーの突き出した石突が、男の腹にめり込んでいるからだ。 右手の手斧を振り下ろしてきた男がいたが、それはサーシャの持つ両手剣に当り、そして力負けして弾かれた。相手が衝撃に仰け反っている間隙にサーシャは踏み込み、横から水平に己が持つ両手剣を振う。空気抵抗は膂力を以って無視し、そのまま剣の腹で相手の左肩を強打する。 紐を無事に結び直したペケも、茂みから出て戦っている。そして普通に戦い、普通に倒している。 皆、普通に戦闘中。 そう、普通に戦った方が強いのだ。 「‥‥何はともあれ盗賊に情けは無用! 成敗!」 金剛刀に持ち替え、勝一の野太刀一閃。 「くっ、逃げろぉぉ! お前ら覚えておけよ!」 「どうする? 覚えるのが面倒だからここで追撃して殲滅させるかい」 「いやぁ、追っ払えればそれでいいんじゃないかねぇ。あ、別に俺も奴らの事を覚えておく自信はないが」 何か物騒な事を言っている晃に、幻十郎は苦笑しながら返した。 そして盗賊達の背中が風景から消えた頃、愛弓は自分達が新たな難題に直面した事に気が付く。 「ところで皆さん、このネ刀を見て下さい。こいつを見て、どう思いますか」 ネ刀は地に深く挿さっている。サムライ三人分の力を込めて振り下ろされた一撃だ、無理も無い。 「‥‥大根など、発注した覚えは無いのだが」 声は、神主と思われる初老の男のもの。 その後、開拓者達の必死の発掘作業によりネ刀は掘り出された。その後は特に襲撃される事もなく、神社への輸送する事が出来た。が、そういえば使用後の手入れと言う観点はあまり考えていなかった。 「いやですね、神主さん。これはダイコンと言うより、だん――」 愛弓が何か、全く問題なさそうな何の懸念も無い発言をしようとしていたみたいだが、何故か右京に口を塞がれる。 「この後、綺麗に汚れを落とす。これが、刀匠に依頼していた太刀‥‥奉納物だ」 「これが‥‥」 神主は、何ともコメントに困った様子で押し黙った。 この沈黙は、嫌な空気だ。せめて何か言ってくれれば、ボケ返す事も出来るのだが‥‥。 「よぅお前ら、ご苦労!」 「皆さん、お疲れ様でした」 沈黙を破ったのは、馬に乗って現れた刀匠と一番弟子。 一番弟子は到着して早々、場の雰囲気を察するとフライング土下座して「いずれもっと普通の太刀を作るから今はこれをお納め下さい」と訴える。 「あー神主さん、こいつ眼鏡のし過ぎでしばしば可笑しい事言うから、余り妄言を真に受けないでくれよな」 「眼鏡は関係ねーだろォォ! て言うかお前が神主さんと全国の眼鏡キャラの方々に土下座しろ!」 神主、益々コメントに困る。 「でも確かにコレ、大アヤカシを倒せそうな刀ではあるよな。扱いに難はあるとしても」 ぼそっと晃が呟くと、刀匠はそうだそうだと頷く。 「な、なら私が、これはちゃんと一人で扱える刀だと言う事を証明して見せますわ!」 まずはレヴェリーが一人でネ刀を構えて見せるが、一振りしてはバランスを崩し、面前で尻餅をついて赤面してしまう羽目になる。 「それなら私も、挑戦させて頂きます」 続いてサーシャも挑戦する。確かにサーシャの方がレヴェリーよりも腕力がある、が‥‥ 「ああ、レヴェリーさん‥‥危ない転んじゃいます!」 ペケは叫ぶも、既にサーシャはネ刀を振り抜き、そして姿勢を崩している。このままでは、転ぶのは必然―― 「あ‥‥」 「だ、大丈夫ですか?」 そこで、咄嗟に彼女を支えたのは勝一だった。やはり、二人。ネ刀を振るには二人の力が要る。 「一人では使えない‥‥つまりは二人の愛の力で使えるもの、と言う事なのです」 「あ、愛!? 愛ってちょっと愛弓さん、話がオーバーですっ」 勝一の顔に朱が差すが、ここでもサーシャは「あらあらうふふ♪」とナイス・スルー。 「なるほど、そういう事なら‥‥」 「え、ウソ!? それでいいの!?」 何か、納得した様に頷く神主に驚嘆する一番弟子だったが、愛弓は話を続ける。 「小さい物を作って縁結びのお守りにしたり‥‥神輿に乗せて奉るのもいいかもしれませんね」 「僕は嫌ですよそんな神輿担ぎたくないですよ!」 「まーそれでお祭りが楽しくなるんだったら、いいんじゃないかねぇ」 幻十郎は、豪快に笑っていた。 何はともあれ、奉納完了。皆様、お疲れさまでした。 |