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■オープニング本文 依頼が主に出されるのは、神楽の都だ。開拓者達の集うその町では、様々な依頼が張り出され、仕事を求める開拓者でごった返していた。 そんな人ごみの中を、受付と書かれた台に近づく青年が1人。動きやすい袖のない着物に、ジルベリア性のズボンを見につけた、銀髪の御仁。長い髪を1つにまとめたその足元には、どういうわけか小さなもふらさまがいる。リー船長と、お供のもふらさま、ぷらぁとだ。 「何でこんなところにもふらさまが‥‥」 「おまいらぷらぁとばっかり見てんじゃねぇよ」 回りが何事かと注視する中、その御仁は、受付のお姉ちゃんにとある紙をばしっと突きつけた。 「仕事だ。この先の港まで、荷を運びたいんだが、手前でアヤカシどもが巣ぅ作っちまってる。何とか排除してくんねぇか」 「は、はい。それで、状況の方は‥‥」 慌てて状況を走り書きする受付の人。その青年によると、こうだった。 天儀の港は、周囲に海がありはするものの、その先は空に繋がっている。天儀を渡る船の多くは空を飛び、それぞれの国を回る。どんなに遠くとも、何かない限りは、2週に1度は出航するもので、商人達が所有する小型船もそれに倣っている者がいる。今回、依頼をしてきた青年も、おおむねそのような感じだそうな。 その青年が、積荷を押し込み、目的地へ出向した所。出くわしたのは、そんな海や空を越えて、うねうねとした太い緑色の物体を飛ばしてきたアヤカシだった。 「だぁぁぁっ。この急いでいる時に、何でアサガオが巨大化してんだよっ」 どう見ても、この時期にあちこちの市に鉢植えで売られているアサガオの蔓である。しかもそれには、まるでジルベリアから輸入された薔薇のように、大きな爪が生えていた。その根元には、牙の生えた巨大なアサガオが、ぱっくりと口をあけている。 「もふー」 幾本も伸びてきた太い蔓が、青年の乗る定員10名ほどの小型飛空船を狙う。基本的な構造は、海を行く船とさほど変わらない。ただ、動力が宝珠に変わっただけの船は、瞬く間にバランスを崩してしまう。 「くっそぉ、何とか持たせろっ。このまま落ちたら、死体も残らねぇぞっ!」 舵を切る青年。ロープを押さえるクルー達。そしてもふらさまもまた、一番力の必要な場所で、帆を押さえ込んでいた。だが、アヤカシの蔓は、そのクルー達をも狙う。逃げ出す彼らは、ある意味仕方がないというもの。しかし、船のコントロールは外れてしまう。 「こんのぉぉぉぉぉ!!」 青年が大きく舵を切った。もふらさまがもふーーっと足を踏ん張っている。クルー達が甲板で尻もちをつく中、何とか陸の上へと不時着する船。縄張りからそれたのか、アサガオの蔓が引っ込んで言った。 「おい、大丈夫か?」 「へ、へい。何とか‥‥。すんません、お役に立てなくて」 乗っていたクルーが、頭を下げている。どこかで打ったのだろう。手足を赤く腫れ上がらせている者も多く、中には起き上がれないまま呻いているクルーもいた。 「仕方がねぇやな。起きれるモンは手当てして、近くの町へ向かえや。医者くらいいるだろ」 船は大事だが、動かせる面子がいなければ、どうにもならない。もふらさまに手伝わせ、怪我人を運ぶ青年。見れば、近在の者らしい村人が、何事かと集まってきている。事情を説明すると、手伝ってくれた。 「あの化けアサガオとやりあって‥‥。よく無事ですんだものですなぁ」 「無事じゃねぇよ」 怪我人たっぷりである。どうやら話を聞くと、その化けアサガオは、最近この辺りへ増殖しており、その向こうにある港との脇街道をふさいでいるそうだ。既に何人か被害が出ており、風神術の機械がない村では、使いを出した矢先だったそうである。 「旦那、どうするおつもりで?」 「このままにしちゃおけねえやな。とりあえず、神楽の都に行って、あの化けアサガオをぶっ飛ばせるクルーでも集めてくらぁな」 このままでは、納期に間に合わない。頭を抱えた青年はそう言うと、神楽の都へと、船を走らせたそうである。 「なぁるほど。確かに同じ村から、アヤカシ退治の依頼が来ておりますね」 受付の人が、同じ村から出された依頼の書類を出してくる。それには、大きなアサガオのようなアヤカシが、水辺に生えており、花に生えた鋭い牙と、獲物を捕らえる蔓でもって、人々を襲っているので、何とかして欲しいと書いてあった。ご丁寧にも、鍵爪の生えた蔓と牙の生えた花の絵図まで載っている。その足元には、流れている川と海まで併記してあった。 「まだ船はおきっぱだから、アヤカシさえどうにかしてくれれば、その向こうまで運べる。ちなみに積荷は泰産の水着って奴だ」 「‥‥季節モノですね」 だから、時間が押してるそうである。 『アヤカシアサガオを除草して、水着を運んでくれる人を募集します』 いや、確かに間違ってはいない。たぶん。 |
■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
貉(ia0585)
15歳・男・陰
篠田 紅雪(ia0704)
21歳・女・サ
天雲 結月(ia1000)
14歳・女・サ
フィー(ia1048)
15歳・女・巫
皇 りょう(ia1673)
24歳・女・志
凛々子(ia3299)
21歳・女・サ
杜夜(ia3933)
23歳・男・陰 |
■リプレイ本文 アサガオ。 夏の季語として名高いそれは、人によっては芸術性の高い花でもある。 「アサガオ‥‥見る‥‥。それから‥‥除草‥‥する」」 フィー(ia1048)の言うとおり、でかいアサガオなら見ごたえもありそうだが、今回のアサガオは、どうみても違うものだと、杜夜(ia3933)は思っていた。 「蔓に絡め取られて『大変なコト』になる可能性ですかー‥‥。肋骨折られて暫く動けなくなるのは困りますね、寝てるだけは実に暇ですし」 別の意味の『大変なコト』も、女性の痴態を見て欲情する趣味もなければ、人外相手に発情する趣味もないので、とても困る。 「何しろ、遊ばれるより遊ぶ方が性に合ってますので。しかし、近付かない訳に行かないとはいえ、厭な相手ですねぇ‥‥」 その『遊ぶ』に色々とけしからん単語がつきそうな空気が付きまとっているのは、気のせいだと信じたい。 「ああ、早く解決して、アガリで、お天道様の下を歩けるようになりたい‥‥」 そんな中、別の事を夢想する凛々子(ia3299)さん。なんでも、ただいま所持金マイナス二千四百文。完済にはまだ遠いらしい。 「見えてきた。あれが問題のアサガオだな」 しばらくして、現場に到着した水鏡 絵梨乃(ia0191)がそう言った。浜のど真ん中で、うねうねと蔓を伸ばし、周囲の鳥や動物を捕まえて、その生気を吸い上げては、食べカスをポイ捨てしている。大きな『動物』が、飛ばしきれずに周囲にぼとぼと落ちているのが、とてもイヤンな感じだ。 「しゃげぇぇぇ!!」 気配を感じ取ったのか、花弁の中央‥‥ちょうど、サメのような牙が生えたあたりから、空気を震わすかのような咆哮を立ち上らせている。 「‥‥やはり、趣に欠けるな」 その花弁の方を見て、篠田 紅雪(ia0704)がぼそりと言った。同じ感覚は、貉(ia0585)も持ち合わせていたらしく、延ばした蔓に生えたとげとげを見て取り、仮面の下からため息を漏らす。 「‥‥綺麗な花にはとげがある、とは言うがな‥‥アサガオにゃにあわねーわな、ウン」 「幼少のみぎりは、寺小屋の先生から言われて朝顔の観察日記をつけたものだが‥‥この朝顔は流石に愛でる気になれないな」 何しろ、横幅だけで一尺はあろうかというバケモンである。人の鉢植えには少しばかり大きすぎると、苦笑している皇 りょう(ia1673)。 「花は1体か。その代わりに、蔓が無数‥‥と、中々立派なアサガオだ」 絵梨乃は冷静に敵の数を確かめていた。生えているというのが適切だろう。砂浜に生えた昼顔に見えるのは、花弁から生えた蔓らしい。花と同じレベルで、どでんと存在感を主張している。 「斥候は慎重に‥‥。お願いしますよ」 結構距離は離れているが、吼え声が聞こえてくるあたり、縄張りが広そうだ。弓や術で攻撃できれば、それに越した事はないのだが、その範囲がどこまでかわからない。 「えぇと、まずは遠距離が攻撃できる人が試しつつ、近付くという感じだね」 「そう言うことだ」 天雲 結月(ia1000)が確かめるように、一歩踏み出すと、それより早く、絵梨乃が浜辺へと足を踏み入れた。 「きしゃあああ!」 その刹那、気付いたアサガオは、取って食おうと、周囲の蔓を、絵梨乃の方へ伸ばしてきた。 ずしゃあああああっ!! 盛大に砂から引っこ抜かれる音がして、周囲に散らばっていた昼顔らしき蔓が、一斉に動き始めた。 「やはり、全方位からかっ」 しゅるしゅると伸びてきた蔓は、容赦なく絵梨乃を捕まえようとする。手刀や蹴りで、何とか追い返すものの、切断までには至らない。このまま受けてしまうと、絡みつかれそうなので、回避に専念する彼女。 「別格だけど、このままじゃ‥‥」 結月がそんな彼女と同じ様に、囮になろうと駆けつける。自分の守りに自信のあるらしき彼女は、逃げまくる絵梨乃の壁になるべく、立ちはだかる。 (僕の守りは万全。ガードは固いんだ) 足元もブーツで堅め、刀も手にしている。上半身の攻撃から身を守るべく、持っていた盾を構える彼女。 「結月?」 「僕が勇ましく白騎士と呼ばれている所以…見せてあげるっ!」 怪訝そうに首をかしげる絵梨乃さんの前で、咆哮を上げる彼女。見る限り人の頭を持ち合わせていないアサガオは、空気を震わせて、結月へと蔓を伸ばしてくる。 「しゃげぇぇぇ! きしゃああ!」 だが、その蔓は、盾とブーツと刀の隙間を狙ってきた。速度はたいした事はない。 「やれやれ。無粋な蔓だな。邪魔なんで、向こう行っていってろ」 その蔓を、背拳で払いのける絵梨乃。そのおかげでか、絡み取られる事はなかったものの、とげとげが、腰の辺りを引っ掛けて行く。 「おやおや、複眼複眼」 その中身を、しっかりと堪能する絵梨乃。鼻の下が盛大に伸びているが、伸ばしたまま器用に蔓を蹴り飛ばし、スカートを押さえている結月を抱え込む。 「大丈夫?」 「う、うん」 真っ赤になっている彼女。が、怪我はなさそうだ。 「こ、こんな所狙うなんて…ここが白いから白騎士なんて事はっ…うぅ、二度目はないもんっ!」 ずり落ちかけたスカートを直し、ぷうと頬を膨らます。と、そこへ絵梨乃さん、耳元に唇を寄せ、「結構可愛かったぜ?」と、低い声音で囁いては、さらに頬を真紅に染めさせていた。 「バラバラに戦っていても駄目だ。術師を中心に、菱形の陣を組むんだ!」 性別と口調がバラバラのまま、年上のお姉さまに抱えられた美少女騎士はさておき、真面目な篠田さん、彼らをカバーする陣を組み始める。 「こっちだ、こっちー!」 「私の位置はこのあたりね」 篠田の逆側に凛々子。前衛は相変わらず絵梨乃と結月。最後尾はりょう。その中心部に、貉とフィーと杜夜を配置していた 「他には、いないようだな。では、前衛職の方々は蔓を。後衛職の方々は花弁を頼む」 その中央の後衛陣に援護を頼み、すらりと刀を抜く篠田。周囲の蔓から、じりじりと切り落として行く方法だった。 「心得た。‥‥結!」 泰拳士でもある絵梨乃、遠距離の攻撃方法は自ら練り上げた気の波動。それを、封印を施すかのように放つ。切り離された煉力が、蔓のいくつかを弾き飛ばしていた。 「飛行艇を落とすくらいだからねぇ。射程もそれなりかしら」 そんな遠距離の攻撃は持っていないが、とにかく近づいてくる蔓を、切り落とす凛々子。借金を重ねて手に入れた珠刀「阿見」 が、ざっくりと緑色の汁を飛ばしている。 「まぁ、うちらは蔓には近づかない方向で」 それでもなお、元気な蔓に、杜夜はややげんなりした表情で、足元を確かめつつ、符を飛ばす。攻撃の手を取られているとはいえ、花もまだまだ元気で、1枚2枚の符では足りそうにない。 「敵の射程距離が長い‥‥。皆、近づくから、陣を崩さないでくれよ」 このままでは、埒が明かないと感じた絵梨乃、陣を移動させようとしている。が、その直後、蔓が彼女の方まで延びてきた。1本目は、背拳で何とか打ち落としたものの、蔓は2本3本と迫ってくる。 「しゃげぇぇぇ!!」 「危ないッ」 かばうように割り込んだ結月に、蔓が絡みつく。そのまま、じりじりと引き寄せられそうになる結月。 「こんのぉぉぉぉ!!」 「結月っ」 強力がめきょりと発動し、女性の腕に筋肉が浮き出る。そのまま踏ん張る彼女に、かばわれた絵梨乃が駆け寄り、蔓を切り落とした。 「気をつけろ。アヤカシが消滅するまで、気を抜くなっ」 「蔓1本1本は、たいした事なさそうですけどね」 篠田の忠告が飛び、その隙間を縫って、杜夜の斬撃符が舞う。それでも、アサガオの勢いは衰えず、うねうねと動いている蔓は、まるでバカにするようなダンスを見せていた。 「再生能力まではなさそうだな」 だが、切り落とされた蔓はそのままだ。全員で集中して攻撃すれば、どうにかなりそうだと、絵梨乃は判断する。 「範囲が結構広いわ。周りから削り落とした方が良いと思うわよ」 そこへ、凛々子は、残った蔓を外側から順繰りに切り落として行く。その作業を手伝っているのは、後ろのほうで補佐していたりょうだ。 「術師達には攻撃に専念してもらいたい故な、蔓の一本も通すわけにはいかぬ」 そのおかげでか、中央の術師達は、殆ど被害なく、符を放つ事が出来た。多少、牙の欠片は飛んでくるものの、かすり傷と言っていいだろう。 「お下品に大口開けちゃってまぁ‥‥腹減ってんならこいつはどうだ?」 しゃげぇぇっと、口をあけているアサガオに、貉は飄々とした口調で言って、自信の仮面にそっくりな顔をした、大きな丸い岩を召還する。それを、そのまま口の中に落とす彼。がきょっと硬いものに位付く音がして、アサガオの動きが止まった。 「いける。陣を崩すなよ」 「しゃげぇぇぇ!!」 どうやら、その辺りの区別はなさそうだ。ぺっと吐き出し、動きを鈍らせるアサガオに、篠田は確信したように、蔓を切り落とした。 「おっと、手が滑っちまったい、時間かかると集中が切れてきてまいるな、ちゃっちゃと済ませるか」 一方では、足元の砂浜が不安定の為、片方の膝をついてしまう。そこへ、足元からしゅるしゅると伸ばされる蔓は、すぐ後ろのりょうが代わりに受け止めていた。 「引き寄せられると、いいのだが‥‥」 ずりずりと、その足が引き寄せられる。足元に、砂の山が出来上がって行くのを見て、りょうは逆に蔓をしっかりと掴み取った。 「きしゃああ!」 うねうねと、それを解こうとする蔓。しかし、りょうは離さない。その間に、凛々子が腰を落とし、ゆっくりと前に進んで行く。尻が重いと、こう言う時に安定感があるなと自嘲しつつ、狙うは花本体だ。 そんな前衛陣達への強化をするべく、射程ギリギリで弓を討っていたフィーが、その中央で、神楽の仕草を見せた。 「‥‥駆けること‥‥風の如し‥‥」 舞うは「速」。古の書物から紐解きし言葉を胸に、フィーの舞が、皆に力を与えて行く。そは、風鈴崋山。 「感謝する。さあ、どこからでも掛かってくるが良い! 我が働き、武神に御照覧頂こうぞ!」 その力を得て、りょうは押さえていた蔓を切って切って切りまくる。しゃげえぇと花が悲鳴を上げたそこに、杜夜が符を放った。 「術式‥‥鋭斬符」 「きしゃああああ!!」 飲み込んだアサガオの花弁が切り裂かれる。暴れ、のた打ち回るアサガオに、凛々子が咆哮を放った。 「攻撃するなら借金返済ー!!」 血涙を流した魂の叫びにより、取り囲んでいた蔓がいっせいに凛々子へと襲い掛かる。それを受け流し、切り払う彼女。そのおかげで、アサガオの注意が、彼女へ向いたままだ。 「よし、今だ」 絵梨乃が、蛇の構えを取った。ゆらゆらと動くその動きは、獲物を狙い、飲み込もうとする蛇。その動きは、扱う者に必中の攻撃力を与えてくれる。 「見方は巻き込みたくないな。だが、今なら大丈夫そうだ」 篠田が、目の前にいる結月に合図する。 「使えるのは一回だけ‥‥」 ぎゅっと刀を握り締める彼女。錬力の都合と言う奴だが、アサガオはそんな事、お構いなく吼えている。 「いくぞ。地断撃!」 「きしゃああああああ!!!」 その刀が、アサガオの花弁を捕らえ、花を文字通り散らせたのは、それから間もなくの事。 「因果、応報‥‥」 消滅して行くアヤカシを前に、しゅたりと刀を納め、そう口にする篠田だった。 死体だらけの浜を抜けると、泉の湧き出る岩場に出た。その岩場の先には、街道が続いており、村人達がここを憩いの場にしていた事が見て取れる。積荷は、その先の町へ届ける手筈になっていた。 「ふーんふん、なるほどねぇ、で、これ一着いくらくらいすんの?」 薄い生地で上下に分かれた『水着』は、花や動物の様々な柄がついている。貉が不思議そうに眺めていると、フィーが胸元に小さな札が取り付けられている事に気付いた。 「ここに値札‥‥ある‥‥」 それには3000文と記してある。万商店に並んでいる品々と、さほど変わらない価格だが、普通の衣服にしては、少し割高だった。 「‥‥‥‥お金ある奴の考えってわからんよな、ほんと」 「出来れば試着してみたいな」 絵梨乃がそこだけ女性らしい面を見せる。 「ふぃーも‥‥着る‥‥」 「私は褌派なので、後で機会があれば新作水着の中に褌に合うトップがあるか見たいんだが」 いや、彼女ばかりではない。フィーと凛々子も、色とりどりの水着に、興味津々だ。 「そちらのお2人もどうです?」 そう言って、杜夜が遠巻きに見ている残りの2人を見た。が、その2人‥‥結月とりょうは、なんだかもじもじしている。 「え、えと。あの‥‥。こんなにぴったりした生地だとちょっと‥‥」 結月は、やたらと胸を見下ろしている。まぁ見た目でまだ女性らしさは成長途中なので、いわゆるつるぺたとかまな板なのを、気にしているようだ。 「秦産の水着か‥‥い、いや、決して厚かましい事は考えて‥‥」 りょう、乙女心はあるようで。年頃の娘さんらしく、頬を染めてしまっている。そこへ、杜夜がにこやかーにこう口にする。 「我慢しなくてもいいんですよ?」 「う、じゃああの‥‥少しだけ興味がある。どういった物が殿方に好意を持って頂けるのか、そ、そう! 後学の為にな!」 やたらと声を張り上げる彼女。そんなりょうに、杜夜は笑顔のまま、「ふふ。貰えるといいですね」とか言っている。 「どっちにしろ、買わないけどな」 貉、盛り上がる女性陣を尻目に、そんな事を呟くのだった。 |