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■オープニング本文 そのアヤカシ‥‥蒼髑髏(あおどくろ)が立ち上がる。先の戦で大包丁を振るうその姿は恐怖の的であったが、緑茂の決戦で右腕を切り落とされ、自ら戦う力は失われている。 だが、蒼髑髏にはもう一つの力があり、その力がこの戦えないアヤカシを未だに大きな脅威となさしめていた。 「いたぞ!例のアヤカシだ!」 遠目にその姿を捉えた兵士達が駆け寄ってみたものは、異常とも不思議ともいえる光景。 高台の一部を切り崩して作られた、一本の岩の柱。その上で直立する蒼髑髏が大きな軍旗のようなものを左手で高々と掲げている。 兵士達が放った矢は、避け場の無い蒼髑髏に次々と突き刺さる。一方的に攻撃を加える立場の兵士達だが、その顔には何か焦りのようなものが見える。 「くそっ、まだ倒れないのか!」 箙が空になるまで撃ち続けた頃、彼らの後ろでガサリと草を踏む音がする。蒼髑髏の持つ何らかの力で呼び集められた周辺のアヤカシ達‥‥その数は軽く20を越していた。 アヤカシ達が兵士を虐殺するのを見届けると、蒼髑髏は腰を下ろす。次に立ち上がる時は、恐らく新たなる敵を察知した時であろう。 「‥‥というような状況で、ここが実質的に里と魔の森の前線になっている」 ギルド係員が地図の一点を指し示す。 「問題は柱の上にいる一匹。ただ旗を掲げて突っ立っているだけなのだが、恐らくはこれの力で周辺のアヤカシが活気付き、小鬼や剣狼といった小物までが捨て身で一撃を加えてくる恐るべき戦力と化している。そしてこのアヤカシが居座る限り、折角炎羅を討ち取ったにもかかわらず里は警戒を解けず、森を奪還する為の攻勢戦力も編成できない状態が続くだろう」 何度か散発的に攻撃がしかけられたものの、いずれも壊滅的損害を受けて退いている。 「言ってみれば殿(しんがり)にしてやられているようなものだ。相手は普通にやると飛び道具以外はとどかないような位置に陣取っている。時間をかければかけるほど不利になるので戦い方を工夫してかかる必要があるぞ。十分に注意しろ」 |
■参加者一覧
鬼島貫徹(ia0694)
45歳・男・サ
香坂 御影(ia0737)
20歳・男・サ
雲母坂 優羽華(ia0792)
19歳・女・巫
天河 ふしぎ(ia1037)
17歳・男・シ
佳乃(ia3103)
22歳・女・巫
橘 楓子(ia4243)
24歳・女・陰
ペケ(ia5365)
18歳・女・シ
廻里(ia7315)
25歳・男・志 |
■リプレイ本文 ●翻る蒼の旗 蒼髑髏が立ち上がる。 接近中の開拓者たちからも、姿そのものは見えずともたなびく蒼い旗を見れば見当はつく。 「持っているのは本当に軍旗か‥‥敗軍の将らしいな。しかも中々勘がいい」 香坂 御影(ia0737)が舌打ちをしながら歩を早める。 「どうするね?あたしらは早いとこ高台目指したがよさそうかしら」 「あんまり早く分けると勘付かれるんじゃねえかな。死なない程度にやるならもうしばらくはひと塊でいいさ」 橘 楓子(ia4243)の言葉に廻里(ia7315)が答える。正面からの突撃班と高台へ迂回して蒼髑髏を急襲する班に分けるのが開拓者側の作戦だ。 「さぁさ、そろそろ見えてきますえ。ほな皆はん、あんじょうよろしゅう」 雲母坂 優羽華(ia0792)の言葉に呼応するように、開拓者達の前にアヤカシの布陣が見えた。 情報どおり石柱の上に蒼髑髏。そして剣狼は4匹とも、いつでも襲いかかれる姿勢で構えている。その様子を見た鬼島貫徹(ia0694)がニヤリと笑う。相手が強力であるほど討った自分達の名も高まる。 「ククク、後もあるまい殿が攻めの陣とは‥‥つくづく魅せてくれるわアヤカシ風情が」 その隣では天河 ふしぎ(ia1037)が蒼髑髏を真っ直ぐ見据え、自らの黒地に白で染め抜かれたドクロの旗を掲げて音声を上げる。 「行くぞ蒼髑髏、僕は人々の幸せの為、お前を討つとこの旗の下に誓う!」 そして駆け出すふしぎを先頭に御影、貫徹、優羽華が楔形で正面から斬りこむ。 「じゃあこっちは気付かれないようこっそり、ささーっと‥‥」 そこまで言いかけたペケ(ia5365)に、貫徹への精霊の加護を祈った佳乃(ia3103)が指を振って否定する。 「あれだけ手早く反応する相手です。気取られず接近は無理と考えて動くべきでしょうね」 「はうぅ。じゃあ、どうしましょう?」 「ま、その為のあたしらさね。あんたは後ろは気にせず飛びつく心の準備をしときな」 符の束で扇のように扇ぎながら楓子が事も無げに言うと廻里も煙管をふかしながら笑う。 「ま、死なない程度に無茶はするさ」 「たわけぃ、道を開かぬか!」 正面から迫ってくる剣狼に貫徹が一喝する。引き寄せられるように絞られた狼の群れの横を残る三人が駆け抜ける。 「鬼島さんありがとう!一気に片をつけて来ます!」 「ほなお先に。あんじょうおきばりやす〜♪」 彼らが進んだ後、牙や爪を払いのけた貫徹は剣狼に向き直ると笑いながら斧を構える。 「俺の獅子奮迅の戦ぶりを知らしめる前に片付いては困る。本気でかかってこい!」 怒号とともに打ち下ろされた大斧が狼の頭を砕く。 ギィィイ‥‥ン! ふしぎが斬馬刀を石柱に打ち込んだ音が響く。 「一刀で駄目ならニ刀、ニ刀で駄目なら三刀!何度だって斬りつけてやる!」 「その意気で頼む。僕も手伝いたいとこだけど‥‥最初のお客さんが来たみたいだ」 そう言うと御影は石柱の反対側まで進み出る。向かってくるは剣狼に跨った小鬼が3匹。 御影は行き止まりだと示すかのように大薙刀を水平に構える。 「そうそう楽には登らせてもらえないみたいだねぇ」 高台組の方にも蒼髑髏が差配したアヤカシ達が近づいていた。 「多少強引にでも押し込めば一人くらいは突破できると思うけど、ね」 いいながら楓子はちらと廻里を見る。 「やれやれ、そう急かさないでくれよ。早駆けは苦手なクチでね」 名残惜しそうに一服吸うと、煙草の残りを叩き落す。 「よし、二人もいいかい?」 「廻里様が接敵後そのまま抑え、私と橘様が上下どちらの支援も可能な中衛、ペケ様が蒼髑髏目掛けて跳ぶ、という骨子のままでよろしいですね?」 作戦を復唱する佳乃に頷くと楓子は最後にペケを向く。 「あんたがこっちの鍵よ。尻が重くて届きませんでした、なんて言い訳は聞いてやんないよ!」 「は、はいぃ〜」 「ハァ、ハァ‥‥さ、さすがに十数刀振るうとこたえるなぁ」 ふしぎは斬馬刀を一度下ろして、呼吸を整える。目の前の石柱は、内側が脆くなってきつつある感触はあるものの表面的には殆ど変化がない。視覚的成果が無いというのは精神的にきつい。 「ふしぎは〜ん、うちが応援しとるさかいなぁ、あんじょうお気張りやすぅ♪」 優羽華が近くで踊りながら声援を送る。最も応援の神楽舞の主な送り先はアヤカシと交戦中の貫徹、御影であったりするが。 「い、いや僕も頑張ってるんだけど、少しだけ休憩を‥‥」 「男の子なら文句言わんと手を動かしい。活躍して報酬もろたら、晩ご飯がええモンになるさかいなぁ♪活躍出来ひんかったら‥‥晩ご飯がぶぶ漬けになりますえ〜」 「むむっ!‥‥ええぃ、やってやろうじゃないか!」 男なら、という言葉はふしぎを発奮させるには覿面の効果がある。体全体で振り回す斬馬刀の一撃が、石柱諸共大地を揺るがすような音を立てて打ち込まれる。 「ちっ、掠り傷とは言え何度も受けると意外と響くな‥‥」 所々血の滲む腕の感触が残っている事を確かめながら、御影は新手のアヤカシを持ち直す。最初の六匹を討ったと思えば二匹の剣狼、さらに今度は骨の一団が迫っている。 数を集めるまで待つなどせず逐次投入されているのが幸いといえば幸いか。隙を見て、立て直しを図ることが出来る。 「優羽華、一発だけ治療を頼む」 「はいな。風の精霊はん、力を借してなぁ『我、癒したり』〜」 豊満な胸をわざと揺らしながら優羽華が恩寵の舞を舞う。 「大サービスどすえ」 「いいから次は普通に舞ってくれ」 「あん、御影はんったらいけずどすなぁ」 ‥‥まだ余裕はあるようだ。 「さて、次の一服の為にもここは守り通さないとな。ま、死なない程度にだがね」 高台の上へ続く道のくびれたところで廻里が立塞がる。 (「さてはて、格好はつけたもののどれくらいもつかねぇ」) 時間とともに増えるアヤカシを相手に回し、何時までも持ち堪えられるとは自分でも思っていない。 後ろから楓子の飛ばした式を受けた一匹を組み伏せ、何とか討ち取る。 「やれやれ、危なっかしくて面倒な戦い方だねぇ。死なない程度、じゃなかったのかい」 楓子が呆れ顔で見ている。廻里はどこか愛嬌のある顔で笑うと、 「俺もそのつもりだけどね。実は死んだ事がないからどこまでが死なない程度かは自分でもよくわからんものでね」 と平然と言う。一瞬ぽかんとした楓子が大笑いする。 「はははっ、面白いねあんた。やばいと思ったら言いな。あたしの火獣で怪我治す時間は稼いでやるよ」 「すー、はー」 深呼吸をするペケ。なだらかな斜面を登るうちは気付かなかったが、石柱へ跳ぶ為の絶壁に来てみると、下まで結構な高さがある。下手な落ち方をすると痛いではすまないかもしれない。 「跳びます?やめます?」 返事を知った上で佳乃が聞く。回りくどいが彼女なりの応援ではある。 「‥‥大丈夫、跳びます!」 ペケの返事ににっこりと笑うと、胸の前で印を切る。 「では、勇気あるペケさんに精霊のご加護を。いってらっしゃいませ、こちらから援護もしますので」 「やった‥‥!表面にも、ひびが入り始めた!」 ふしぎが歓喜の表情をしていると、後ろから高笑いが近づいてくる。 「ふははは、そろそろ赤鬼と蒼髑髏の対峙する頃合と思うてな」 最初の剣狼に、伏兵として隠れていたのか、開拓者の来た方向から現れた増援も殲滅した貫徹が斧をかついでやってくる。 (「何かおいしいとこどりに現れたようにも見えるんだけど‥‥」) 「まだ暫くかかりますよ。それと‥‥西から新手が来ます」 心眼で探った敵増援の方角を告げる。ふしぎが石柱に専心できるのは貫徹・御影が敵を迎撃していることが大前提だ。 「左様か。では捻ってくるとしよう‥‥上が不首尾に終わった時はすぐさま呼べい。任を果たせねば小物を百匹討ったところで意味が無いからな」 「心得ました。でも、僕はペケ君を信じてますから」 視界の先には、目標となる蒼い旗。 (「よぉ〜し‥‥いける!」) 早駆で一気に加速をつけると、ペケは大きく跳んだ。 「‥‥あう」 そして、石柱まで届いた‥‥つま先だけ。 「あ〜〜れぇ〜〜」 「あぁ!ペケさんが落ちる!?」 「ふしぎはん!身を挺して守りなはれ!」 「無茶言わないで!」 が、いつまで経っても響くべき音、地面にぶつかる音がしない。上を見ると、ペケが石柱からぶらさがっている。端にしがみついてなんとか落下を防いでいるようだ。 「あ、危なかった〜」 最も現在進行形で危険である事に変わりはない。握力を緩めればまっさかさまであるし、蒼髑髏も積極的な攻撃が不可能といっても、すぐ傍にある手を踏む為に片足を動かすくらいは造作も無い。 「まあ、こういったときの為に私が控えていたわけですけど。さて、こんな時、アヤカシはどのような声で啼いてくれるのでしょうか」 高台の際まで歩み出ていた佳乃が薄っすらと笑いながら手を振ると、蒼髑髏の懐でぐにゃりと歪が起きる。 啼きこそしないが、蒼髑髏は体勢を保つ事だけに専念しペケへの攻撃を諦める。何とか命の危機を脱した彼女は反動をつけると石柱を蹴ってクルリと宙を舞う。 「こっちだって色々と捨て身なんですから〜!!」 そのまま蒼髑髏の頭蓋骨に飛び乗ると、足で挟んで投げ倒そうとする。生身の男なら嬉しい攻撃かもしれない‥‥が、蒼髑髏は根が生えたようにびくともしない。完全に力負けしている。 「‥‥あれ?えい!この〜!」 その様子を「駄目かも」と思って眺めていた仲間達だが、ふしぎがふと閃いたように叫ぶ。 「無理矢理投げ飛ばさなくても大丈夫!そのまま横から力をかけて!」 ここまで温存していた練力が、ドクロの旗からふしぎの体、そして斬馬刀へと炎の形で伝わっていく。 「どこまでも立ち続ける執念は見事!‥‥でも、強い思いなら僕達だって負けないんだからなっ!いざ、信念の勝負だっ!」 信念の炎を纏った一撃が、大きく石柱を揺るがす。その衝撃で足が石柱から離れた瞬間‥‥ペケが横からかけていた重圧に押される形で蒼髑髏の体が動いた。 状況の変化は、周辺で増援のアヤカシと戦っている開拓者達がより如実に感じ取っていた。 「ふむ、急に鈍くなったな」 「あの子らがうまくやったみたいだねえ」 肩で息をする廻里に間断なく入れ替わり攻撃をかけていたアヤカシ達の動きが止まる。アヤカシが個体能力の差を認識して連携を取るのはより上位種の命令がなければ難しい。 「あたしらの時間稼ぎも終わっていいみたいだし、そろそろ逃げるとしようかね。どきなっ!」 楓子の声とともに廻里は横に転がると、ひーこらと走り出す。その後を舐めるように炎の轍が延びていく。 「出番だよ火炎獣、一暴れしてやりな!」 その声に答えるように姿を成した式が、アヤカシの一群の中へと踊りこむ。 佳乃が高台から周囲を見渡す。どの位置でも基本的に仲間が優勢なようだが、楓子と廻里の退路に小鬼の一群が居るのが見えた。鉢合わせになると消耗した二人では少々厳しいかもしれない。すかさず歪を作り出し、小鬼達を捻り上げる。 「クス、やはり小鬼はいい声で鳴いてくれますね」 高所で笑みながら攻撃する自分は、仲間たちからアヤカシをいたぶって楽しむように見えるだろうか。そして、皆はどう反応するだろうか。それを考えるのが彼女の楽しみだ。 「敵前にて逡巡するとは所詮小物よのう。やはり貴様等如きでは足しにもならんわ!」 貫徹は小鬼を真っ二つにすると、そのままその乗騎であった剣狼の頭を刎ねる。急に命惜しみをするようになったアヤカシ達に、彼の勢いを止める術は無い。中には露骨に背を見せ逃げようとするものまで出る。 機を逃がさず屍の山を作った貫徹は踵を返して石柱の方へと向かう。 「あの乱れは敵本陣の異変か。フン、今戻らば大物が狙える気配がするな」 最後に上がった妙な悲鳴は気になったが、今の轟音と目の前のアヤカシの動きから察するにふしぎが上手くやったらしいと御影は判断した。 さらに一歩踏み込んでアヤカシの前衛を蹴散らすと、残る群れに対して咆えかける。 「貴様達の負けだアヤカシ共!軍旗が倒れる前に逃げ出すのが懸命だぞ!」 地に伏せる蒼髑髏が立ち上がる。蒼き軍旗は健在なりとアヤカシ達に知らしめるべく‥‥旗とともに骨の間にひっかかったペケの褌もはためかせながら。 「あわわ‥‥」 「色々台無しどすなぁ」 一迅の風が白い布を何処かへと運び去り、それとともにふしぎが蒼髑髏に飛び掛るように斬りつける。 「やっと面と向かいあえた。ここから正面勝負だっ!」 怒濤の連撃を浴びせかける。頭蓋に皹が入り、肋骨が砕け飛ぶ。それでも、蒼髑髏は立ち続ける。 ゴッ 鈍い音とともに、投げつけられた大斧が蒼髑髏の片足を砕く。 「そろそろ混乱から立ち直るところ。疾く仕留めねば囲まれようぞ」 戻ってきた貫徹が、地面に刺さった大斧を引き抜く。その目線の先には、片足を失いつつも地面に立てた旗を決して傾けようとしない蒼髑髏の姿。 「ククク‥‥それよ。その剛毅こそ我が打ち砕くに足る大器!次で片をつける、ぬかるでないぞ小僧!」 「言われなくても、そのつもりだよ!」 ずい、と進み出る貫徹が、真一文字に得物を振り下ろす。 「我が栄誉の糧となれるを、誇りながら散れいッ!」 旗を持つ側の半身を斬り離され、とうとう旗を倒‥‥さない。執念の成せる技か、残る半身を回転させ、開拓者達に背を向けてでも尚の事旗を立たせ続ける。 「その執念ごと、燃え尽きろ!炎精招来‥‥紅・葉・剣、紅蓮Vの字斬り!」 斬り降ろしてから跳ね上げる、ふしぎの刃の軌跡に沿って紅葉のような燐光が踊る。 止めの一撃を受けて尚、旗を手放さぬまま‥‥蒼髑髏は、空に溶けるように消滅した。 「追い討つぞ!ここで多く倒せば、それだけ里の安全が高まる!」 御影は一声発すると、背を見せたアヤカシに踊りかかる。指揮官を失ったアヤカシは面白いほどに烏合の衆と化した。もともと傷も癒えきらぬ敗残の寄せ集め、蒼髑髏の妖力が無ければ開拓者と正面切って戦うには力不足であった。 「一つ、二つ‥‥三つ、そこも逃がさん!」 地奔の刃が逆袈裟に伸び、新たに一匹のアヤカシを屠る。後ろの仲間を護る為に守勢に徹してきた御影の刃は、攻勢に回った瞬間正に飛翔するかのごとく勇躍する。 彼の走り抜けた後に残るアヤカシは一匹たりとも居なかった。 「逃げ散ったか、呆気ない」 最早周囲にアヤカシの気配も無く、開拓者達は余裕を持って怪我の治療を行っている。 「やれやれ、ようやく続きが吸えるよ」 廻里が腰を下ろし煙草に火をつける。彼は危険が片付き、仲間達の無事がわかってからゆっくり吸う一服が何よりも大好きだ。 「ふしぎはん、気張りはったなぁ♪」 「よしてよ、皆のお陰で石柱と蒼髑髏に専念できたってだけなんだから」 ふしぎのドクロの旗、勝者の旗が蒼き旗に代わって風を受けてたなびいていた。 |