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■オープニング本文 「辰宿にアヤカシが出た!?種類は‥‥見たことが無い、と。外見は‥‥ああ‥‥そのアヤカシは同型を確認している」 伝えられたアヤカシの外見を聞き、ギルド受付の表情が険しくなる。 辰宿は街道の交差点に存在する宿場町である。旅人も多く、それを見越して宿や商店などに従事する住民の数も多い。野盗やアヤカシへの対策として結構な数の用心棒が雇われている‥‥が、今回のアヤカシ相手にはそれとて烏合の衆に過ぎないだろう。 「つい最近開拓者がやりあったばかりだ。戦闘方法とかの情報は出すが、正直かなりやばい相手だ。現地の戦力は住民や旅人の安全に注力して、撃退は開拓者を待ってほしい」 伝えるべき内容を一気に伝えると、慌てて解決マの依頼帳をめくる。 「とは言っても前回の状況からしても犠牲がゼロとはいかないだろうなぁ。にしても、前回が一体で今度は二体が連携している‥‥出現前後の行動と併せても偶然ということは絶対無いよな、これは」 「急ぎの話に集まってもらってすまんな」 受付は集まった開拓者達に説明を始める。 「辰宿がアヤカシに襲われている。厳密には、こちらを呼ぶ為の人質になっているという方が正しいだろう。現れたアヤカシは外見情報を聞く限りでは先だって別の村に現れたアヤカシと同じ種類のものだ」 行動原理や攻撃手段といった情報は、そこからもたらされたものである。 「一体でも危険な相手が二体出てきたというだけで相当頭の痛い話だが、さらに問題がある」 一つは、現れた二体が相互に遠距離支援が出来る程度の距離を常に保っている事。同種間での連携能力は高いと見られる。 次に、出現直後に町にいた神主や巫女を真っ先に殺して回ったこと。 ただ巫女を殺すことに執着するアヤカシ、というのも探せばいるのかもしれないが、このアヤカシの性質上開拓者の巫女が治癒・支援に長けると理解しての行動だろう。 「もっとも、開拓者か否かの判別までは出来ないようだし、咄嗟の機転で狩衣を他の服に着替えた巫女が一人、神社から逃げおおせていることから察するに大まかな外見情報のみで判断しているみたいだな」 そして最後に、前回の個体とは腕の形状がやや異なり攻撃手段が変化していること。 「今回の場所や戦い方に適合するよう『進化』してると見るべきかな。詳しくは資料に目を通してくれ。それと‥‥」 受付はアヤカシの資料の先頭部分を指で叩く。 「このアヤカシの呼称がまだ決まってない。複数体いるとわかった以上呼び名が無いと色々面倒くさいんで、適当に適切な名前を決めておいてくれ。以後、その呼称を使おうと思う‥‥出来れば、使う機会がないほうがありがたいんだがな」 |
■参加者一覧
恵皇(ia0150)
25歳・男・泰
柳生 右京(ia0970)
25歳・男・サ
斉藤晃(ia3071)
40歳・男・サ
珠々(ia5322)
10歳・女・シ
天ヶ瀬 焔騎(ia8250)
25歳・男・志
和奏(ia8807)
17歳・男・志
風和 律(ib0749)
21歳・女・騎
色 愛(ib3722)
17歳・女・シ |
■リプレイ本文 「うん、凄く面白いな」 「面白さで付けた名ではありませんが‥‥?」 珠々(ia5322)の抗議の声をよそに、受付はアヤカシの絵の下にその名を書き込む。 「では、弾卵鬼二体の討伐、改めて頼んだぞ」 大きな通りにどっかりと位置取る弾卵鬼を恵皇(ia0150)が睨む。 「堂々と仁王立ちとは、余裕の待構えじゃないか」 「こちらは小路を使った接近が出来ないからな。奴らの射程が活きる順当な布陣といえる」 柳生 右京(ia0970)の言うように、家屋や人々の犠牲を回避するとなると取れる手はどうしても限られる。 「正面戦闘、望むところだ。町への被害が抑えられるなら悩むことは無い」 風和 律(ib0749)が大剣を構えながら敵までの距離を目算する。開拓者達は二体の弾卵鬼に対するべく二手に分かれ、さらに色 愛(ib3722)一人が別行動を取る。 「色さん、一番大事な役目だ。頑張って、そして‥‥気をつけて」 「ふふ、任せて」 「さぁて、二度拝みたくない奴だったが会うた以上はいてまうかの。珠々、焔騎、準備はいいか?」 紅白饅頭を珠々に食べさせていた斉藤晃(ia3071)が外套を脱ぎ捨てる。 「もふもふ(食べ終わるまで待ってください)」 「抜かりない」 珠々と天ヶ瀬 焔騎(ia8250)も同様に覆うように纏っていた外衣を外すと、紅白の鮮やかな狩衣を着た三人の姿がある。さすがに焔騎は少し無理があり、晃は尋常ではなく無理があるが。 「いかん、アレはアヤカシよりも見てはいけないかもしれない‥‥」 恵皇が青ざめた顔で呟く。 「出会いがしらの一発が来る顎の動きを見とき。気配が見えたら散るで」 まずは距離を詰めねば始まらない。接近する様子を見せる開拓者たちに、晃の忠告通り弾卵鬼の口から瘴気の帯が放出される。 「牽制で時間を食うと次弾が来かねない、一気に行くぞ!」 まだ瘴気と熱気の残り香がある道に焔騎が躍り出る。 「さっさと野郎を片付けて直ぐに援護に行く。俺は、約束は守る男だからな」 恵皇が指を鳴らしながら別れの挨拶をする。通りに入ると笛の音以外に連絡手段は無い。合流するのはいずれかの弾卵鬼を撃破した時だ。 「では斉藤さま、囮は宜しくお願いします」 ぺこりと一礼すると和奏(ia8807)は先陣を切って接近を開始する。 「これが効くかの試しどころじゃの。ほうれ、大好きな巫女さんのお出ましじゃあ!」 袖をふりふりと振って挑発する晃。その様子への感想は右京と恵皇で大分異なる。 「ふん、的になり過ぎて一刀を浴びせる余力まで失うなよ」 「やばい、夢に出そう‥‥」 一方の弾卵鬼には確かに効果があったようで、より近い位置に居る和奏よりも晃を優先して狙ってくる。 「この距離まで届くかよ!」 晃の付近に立て続けに瘴気弾が着弾、爆発が巻き起こる。直撃以外の爆風に余裕を残して耐えられるのも彼ほどの強者であればこそ、生半の兵では接近すら出来ず殲滅されてしまうだろう。 「はっ、どうしたどうした、わしはまだピンピンしとるでぇ!」 もっと撃って来いと言わんばかりに手招きする晃にさらに数発が撃ち込まれる。 (「一度の射撃で左右各三発、弾再充填に十秒といったところですか」) 背中に響く爆音から瘴気弾の性能を計りながら刀を抜く和奏。新たな斉射が撃ちだされた直後を狙って切りかかる。 「今なら切って、撃ち返すより先に離脱できますよ。どう動きます?」 弾卵鬼は迷い無く腕を掲げ、盾で刃を防ぐとそのまま盾を鈍器として押し付けるように殴ってくる。 「おっととと、虚心が無ければ危なかったですね。攻防一体の腕ですか」 「だが、体の一部である以上攻撃を受け続ければ負傷する。攻め立てるぞ!」 「おうよ、わかりやすくていいぜ!」 間合いを取る和奏に代わって右京、恵皇が攻撃に入る。 その隣の通りでは、ひっきり無しに撃ち出される瘴気弾の音が響いていた。 「くっ、瘴気弾は小粒だが‥‥弾幕が激しすぎる!」 「避けられないと思ったら自分の後ろに隠れろ!ヴォストークの強度なら耐え切れる!」 剣を盾のように翳して律が叫ぶ。珠々と焔騎が身を隠す間も律がじりじりと弾を防ぎつつ前進する。 と、正面の圧力が低下した弾卵鬼・乙は両腕からの射撃はそのままに、脚を踏ん張り体をやや前傾させる。 「これは‥‥予想してたこととはいえ、射撃と同時に撃てるんですか!?」 珠々の呼子笛が建物を挟んだ甲班への警告を伝える。その音に混じってゴン、ゴンと地を揺らす重低音が数度響く。 シュルルルと風切音が鳴り、弾卵鬼・甲に接近戦を仕掛けていた右京達の立つ位置に驚くほど正確に砲弾が降ってくる。幸いに弾速が遅めな為、回避を取る余裕は十分にあったが、巻き上がる爆発と土煙のもやに弾卵鬼の姿は見えなくなる。 「仕掛けてくるか?」 「多分。不意の弾にも気をつけましょう」 爆煙を煙幕代わりに突撃姿勢を取った巨体が飛び出す否や、恵皇が反射的に拳を突き出す。 「っつう!」 全身にびっしりと生えていた棘が、数倍の長さに伸びている。腹いせに拳を捻ると、刺さっていた数本の棘がベキリと折れ落ちる。 「ハリセンボンかよ、ったく」 「毒が無いだけ良かったじゃないですか」 前衛を振り切った弾卵鬼はそのまま晃に体当たりをかけてくる。 「手間が省けたのう!」 注意すべきは防御装備の脆い棘より盾撃からの零距離射撃。一瞬で判断すると跳躍し、弾卵鬼の背に乗ると足に棘が刺さるのも気に留めず相手の腕に一撃を浴びせる。 「ちっ、足場が悪いと一刀両断とはいかんか‥‥足袋に空いた穴は帰ってから誰かに繕うてもらわんとな」 大方の住民はアヤカシが引きつけられていると伝えるだけでも大急ぎで逃げ出してくれた。だが、戦場である二本の通りに挟まれた建物ではそうはいかない。両側から聞こえる爆音や銃声、怒号や剣戟の響きを聞いてすくみ上がるなというのも酷だろう。 「さ、大丈夫。外の開拓者がおびき寄せてる音だから。私と一緒に逃げるわよ」 愛は時には屋根を伝い時には壁や窓を抜き、そんな動けない町人達を救出する。老婆は神棚に祈り、赤子は火がついたように泣き、子供は涙目で震えている。 「ほら、飴舐めて元気出して‥‥あんな思いはもうイヤなの」 本来は密命の為に単独行動を取る為の方便だったはずだが、心の古傷が彼女を突き動かす。 最後の一人を連れだしたところで、今しがたまで居た長屋を流れ弾の爆風が吹き飛ばす。 「今逃げたから助かったのよ。運があるうちに、早く!」 恐怖で足が止まりそうになる町人を叱咤し、ひとまずの安全圏まで避難させる。心配そうに戦域の方を見る人々に向き、愛は力強く言う。 「それじゃ、私も行ってくるわ。これでさっと倒しちゃったら逃げ損よね」 あくまで余裕があるかのような態度を崩さず、仲間達のもとへ駆け出した。 呼子笛の音が繰り返し鳴り響く。打撃力自慢を集めた甲班だが、乙側がら飛んでくる援護砲撃に妨害されて腰を据えての攻撃に移れない。更には煙に紛れて甲から乙へ建物を破砕しながら援護射撃も行われ始めている。長引けば長引くほど状況はアヤカシに有利になるだろう。 「やはり、あの背中の筒を壊さねば状況が改善されないな」 「『とっておき』を使えば行けると思いますが、その為にはあの弾幕が問題です」 「つまりはあの瘴気弾を少しの間止めれれば珠々が背中は何とかできるんだな?‥‥焔騎、自分が盾でそちらは剣だ」 「成程。ただ、十秒抑えれれば良い方だと思ってくださいよ」 背後に焔騎を隠した律が雄叫びを上げて突進する。弾卵鬼は焔騎を律ごと撃ちぬかんと射撃を集中させる。 一帯を制圧していた弾幕が止むのに合わせ、珠々がシノビの体術を駆使して風のように駆ける。迎撃に入ろうとする弾卵鬼の腕に焔騎が業物を打ち下ろす。 そのまま宙を舞った珠々の影刃が走り、弾卵鬼の背中の筒が根元から切り倒される。 「まずはこれで、厄介な攻撃を封じれます」 「よし、律さん、一旦離れますよ!」 弾卵鬼の顎が開くより早く、焔騎が伏せながら転がり、地面を薙ぐような瘴気砲を間一髪で回避する。 「よぉし、上からの攻撃は止んだようやし一気に仕留めにいくでぇ!」 「ようやく陽動から攻撃に移れますね」 人心地ついた表情の和奏が白梅香の乗った刀でアヤカシの膝関節を斬りつける。その次に近付いてくる恵皇に対し、両腕の盾でがっちりと守りの構えを取る。 「そう硬くなるなよ。盾に使えるとはいえ体を張って受け止めるのはこういう危険性もあるんだぜ!」 点穴の技は相手を内側から破壊する。欠点である当て難さも相手が受けの構えを取ってくれるなら解消できる。 開拓者達の幾度もの攻撃を受けて尚健在だった防盾が内側から吹き飛ぶ。 そこに踏み込んだ右京の焔を纏った太刀筋が弾卵鬼の頭部を捉える。 「つくづく頑丈な奴だ。斉藤、目印はつけておいたぞ」 十字砲火に晒されている晃に事も無げに言う。 「おうよ、人斬りと鬼切りで人鬼相殺や!」 至近距離からの瘴気弾を強引に防ぐ。反吐を吐き捨てながら、捨身の必殺剣が唸る。 「黒朱虫と名付けよかと思うとったが、珠々に感謝せんとな。鬼切の由来をなぞれるとは思うてへんかったわ!」 右京の付けた目印‥‥弾卵鬼の額(?)の刀傷に寸分違わず斬りつける。外殻ごと中身を切り裂く。アヤカシの尋常ならざる生命力は頭を割られても尚動き回る力を残すが、瘴気砲を封じたことと、外殻の中身を晒させたことは大きい。 「ふん‥‥外殻ごと撃ち貫くとは、冗談のような破壊力だな」 すかさず、一度下がっていた右京がアヤカシの巨体を貫通するように刀を突き込み、抉るように斬り上げる。筋繊維の中に戦闘用の器官だけが点在する弾卵鬼の中身が真っ二つに切り裂かれ、そのままばさりと霧散する。 「これで普通なら終わるんですが、もう一段階あるんですよねぇ‥‥」 和奏が溜息をつく中、霧の中から現れ出た弾卵鬼の第二形態、速閃鬼が右京を狙って刀のような爪を一振りし、そのまま周囲の建物の壁を利用して縦横に動き回り開拓者達を撹乱する。 「相変わらず厄介な速さじゃの」 「おいおい、あんな高い所を動かれると紅砲くらいしか届かないぞ」 そして速閃鬼がうだつに手をかけて急降下攻撃の姿勢に入ったその時。 「色家忍法、鷹映し」 屋根の上から跳躍した愛がその頭に太刀を突き刺す。そのまま一緒に落下すると、空中で身を捻って晃の背の上に着地する。 「見とったような絶妙なタイミングやな。見とったやろ?」 「さあ、何の事かしら?」 実際、情報収集の為に観察していたところですぐそばに来たので先手を取ったのだが。 「恵皇さん、足を少しでも止めますのでこのまま逃がさず仕留めて下さい!」 和奏はすかさず脚を狙って刀を突き立て、そのまま力を込める。縫いとめられた脚を、刀傷を広げてでも解き放とうとする速閃鬼の前で、恵皇がゆっくりと気を練り上げる。 「あんたらが俺達を見るように、俺達もあんたらを見て学習するってことさ。しっかり、一撃で終わらせてやるぜ!」 外からの打撃と内からの衝撃が、アヤカシの体を粉々に砕いた。 「片腕くらい切り落としておきたいな‥‥珠々、先程の攻撃をもう一度いけるか?」 「そうしたいのはやまやまですが、背中の筒を切り落として以降瘴気砲の頻度が上がっていますから‥‥」 少しずつ後退しながら両腕の瘴気弾と瘴気砲を連射されると、避けに必死で牽制すらままならない。 甲班の方から、一際長い呼子笛の音が響く。一作戦の完了‥‥弾卵鬼の撃破を報せる音だ。 「よし、二人とももうひとふん張りだ。合流したら一気に攻勢に回れるぞ」 焔騎が鼓舞する中、弾卵鬼甲があけた建物の穴を通って、甲班の仲間達が向かってくる。それを牽制すべく、弾卵鬼が弾幕を張る。 「ちっ、足音を抑えれば何とかなるもんでもないか」 「心眼みたいな力でも持ってるんじゃないでしょうか」 だが、お蔭で三人に対する重圧が弱まる。焔騎はこの機を逃さず距離を詰め、片手に持った業物を振う。それを弾いた弾卵鬼の腕に、空いた左手に呼び出した精霊剣を刺し込む。腕に刺さった異物を、自身には害を及ぼさないらしい瘴気弾で無理矢理排除しようとするが実体を持たない精霊剣には意味を持たない。 「精霊剣を使ったのは正解だったな。業物がなまくらにされるところだった」 「瘴気砲の間隔が非常に短いので注意してください」 そう伝えながら、珠々は自らの存在を誇示するように弾卵鬼の前で小刻みに動く。 「わしらが撃たれてる間に和奏が上手いこと合流してくれるかのう」 「あんまり壊れると修繕が大変だろうなぁ」 建物の影から様子を見ながら恵皇達が呟く。 「お待たせしました、焔騎さん!」 「ありがたい!一気に畳み掛けるぜ、和奏!」 和奏のフェイントによる援護を受けながら、焔騎が切り込む。 「色家忍法、散り鬼灯」 愛の火遁が、弾卵鬼の反応を一瞬遅らせる。その間にまず和奏が弾卵鬼の顎を下から打ち上げ、瘴気砲の狙いを歪ませる。 「自分の攻撃はこれで打ち止めですよ」 「解ってる、出し惜しみはしないさ。朱雀悠焔。紅霊剣っ!」 瘴気弾射出の為複数の孔が空いている弾卵鬼の腕は存外に脆い。焔騎の全力の攻撃が腕を切り落とす。 火力の弱まったところで、全員が合流して一気に押し切る。 速閃鬼は唯一狩衣が残っている珠々を真っ直ぐ狙ってくる。 「如何に速かろうと、狙いが解れば防ぐことは容易だ!」 律の太刀と速閃鬼の爪がぶつかる音が響く。 「影を捕まえることも‥‥影から逃れることも難しいんですよ?」 律のガードを信頼し、攻撃に全神経を注いでいた珠々の刃が、アヤカシの首を落とす。 速閃鬼は崩れ落ちながら自分の首を掴み、開拓者一人ひとりの姿を焼き付けるように眼に映す。 「てめぇらの目的はなんぞ!」 殴りつけながら問う晃に対し、返事は勿論無かった。 助け出していた子供を抱き上げて一緒に喜んでいた愛が、応急手当を済ませた焔騎に駆け寄る。 「天ヶ瀬様っ、私の縫った服はお役に立ちました?御守りを縫い付けてましたの!」 「あ、ああ、ありがとう‥‥道理で重くて耐弾効果があると」 びっしりと裏に縫われていた御守りの中の木札が良くも悪くも効果を持っていたようだ。 「ところで、戦闘中何か視線に近いものを感じていたわけですが‥‥」 観測者が居ないかと周囲を警戒していた和奏が、疑念を口にする。ちなみに途中まで観察していた愛の事ではない。 「焔騎の心眼にかかった気配は倒した二体だけという話だったぞ?」 「何といいますか、直接的な視線ではなくて」 「斉藤も言っていた、倒れた弾卵鬼から情報を回収している存在か‥‥」 「ふん、手応えのある相手であれば望むところだ」 今回も終わりではない‥‥それは、今際の際のアヤカシの行動からも間違いではないだろう。 |