【黒将】無間の洞口
マスター名:咬鳴
シナリオ形態: シリーズ
危険
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/12/15 03:16



■オープニング本文

「さて、最初にギルドとしての依頼内容を話そう」
 ギルド受付がえらく神妙な顔で資料をめくる。
「開拓者が何度か接触しているアヤカシ、弾卵鬼。これが目撃された」
 場所は山中の天然洞窟。過去の調査で入ってすぐのところが軽く開けた広場になっているが、それ以上は奥に続く道なども無く完全な行き止まりとなっている。
「大柄のアヤカシが大勢居座るにも不便な気はするが、ご丁寧に周囲の木をなぎ倒して見晴らしを良くしている。中に居る事に何らかの意味があるんだろう」
 依頼は勿論、このアヤカシ達の排除し後続が居ないか確認するという話である。
「幸いにして、見通しが良いおかげでこちらも向こうの様子を確認する事は難しくない。入り口を固めるように四体。一体が周囲の状況確認に動き回っている。兎に角、洞窟に何が何でも近づかせたくないといった風だ。脚を止めている分狙いやすいが、陽動し辛い相手なので難しくもあるな。倒した後は、洞窟内の確認。灯りは要るが中は一部屋、さっと入って確認して出るだけ。以上だ‥‥依頼としては」
 何か含みを持たせて締めくくると、受付は新たに資料束を机から引っ張り出す。
「ここからはギルドとしての正式な発言でも何でもなく、俺が個人の勝手で纏めた分だ。まず、確認された、とはいったが昨日今日突然その洞窟に来たわけじゃない」
 そう言って過去帳から一枚取り出す。
「以前、このアヤカシの親玉格と開拓者がやりあった事がある。その時一度退いて、以後は監視体制を敷いていた。何せ退治依頼で無かったとは言え太鼓判が押せるくらい優秀な連中を退かせた化け物相手だ、半端に手を出すわけにもいかない。で、かれこれ二月近く砦の中に瘴気が一つ、じっと動かずに居るのを遠巻きに囲う簡単なお仕事だ。ところが、ある日好奇心の強いバカが砦の中に顔を拝みに入ったそうだ。で、中で見たわけだ‥‥弾卵鬼が一匹居るだけなのを。さっさとすり替わってるのに気付かず2ヶ月無駄足を踏まされたってわけだ」
 やれやれと肩をすくめる。
「押取り刀で捜索して、見つけたのが今回の洞窟というわけだ。で、確証も手がかりもないからギルドは言わないが、俺は無責任だから言ってしまう。この弾卵鬼の親玉、移動した先はこの洞窟という可能性がある。理由は簡単、手下を五体も何も意味が無いところをうろつかせるか?少なくとも俺はしないし、過去の事例からこのアヤカシはそうした戦術思考を持たない相手とは考えづらいと、そういうことだ」
 最後に念を押すように言う。
「依頼は、あくまで五体撃破と洞窟の確認。敵が何してるかは知らないが、無茶だけはやめてくれよ」


■参加者一覧
梢・飛鈴(ia0034
21歳・女・泰
柳生 右京(ia0970
25歳・男・サ
桐(ia1102
14歳・男・巫
輝夜(ia1150
15歳・女・サ
斉藤晃(ia3071
40歳・男・サ
菊池 志郎(ia5584
23歳・男・シ
鈴木 透子(ia5664
13歳・女・陰
フレイア(ib0257
28歳・女・魔


■リプレイ本文

「出し惜しみは無しじゃ、ボケがあっ!」
 大きく隆起した斉藤晃(ia3071)の筋力から繰り出される渾身の一刀が、哨戒の為に他と離れてきた弾卵鬼の脚を殻ごと叩き斬る。
「斬り込み隊長の値千金の一撃じゃのう。さて、さっさと解体するかの」
「意味があるかはわかんないガ、目隠ししとくゾ」
 目(?)と思しき場所に拳を突き入れる物騒な目隠しを梢・飛鈴(ia0034)がしている間に、輝夜(ia1150)はくるりと弾卵鬼の腕の継ぎ目に刀をあて、比較的脆弱な関節部から切り落とす。
「手馴れたものですねぇ」
「同じ相手なら経験が生きますからね。弾卵鬼は数が揃ってこその脅威ですし」
 万が一の回復準備をしつつも手持ち無沙汰な桐(ia1102)の感心した声に、その警護と弾卵鬼の動きの観察の為同じく距離を置いている菊池 志郎(ia5584)がうんうんと頷く。
 開拓者たちのこれまでの戦いや他から集められた情報によって、弾卵鬼の戦法は明らかになりつつある。実感として他より脆い部分なども知り得た開拓者にとって、連携しての遠距離攻撃を除けば圧倒的な脅威足りうるものではない。何より、未知の能力を持つ相手に比べて見知ったアヤカシは戦いやすい。
「まあ、今親玉が出てきたら一目散が最善だと思いますけど‥‥」

「俺に動くなというからには‥‥それなりの理由があるんだろうな?」
「はい‥‥十中九十逃げを打つであろう速閃鬼を一撃で仕留める必要がありますから」
 柳生 右京(ia0970)の問いかけに答えつつも鈴木 透子(ia5664)の目線は弾卵鬼の動きに集中している。
「私のフロストマインがあれば、一瞬といわず留め置くこともできますよ」
「一匹の為にばら撒くわけにもいきませんから‥‥逃げ道を制限できるよう、囲う動きをしてもらうよう、お願いはしているんですが‥‥」
 望遠鏡を扇代わりに手元で弄ぶフレイア(ib0257)にも声だけで答えつつ、目は決して弾卵鬼から離さない。

「一気に吹っ飛ばしてやるゼ!」
「吹っ飛ばしたらいかんと思うがのう」
 飛鈴の勢いの乗った鉄拳が弾卵鬼の頭部を砕く。
「正面、射程ぎりぎりを狙う感じでお願いします」
「難しい注文ですこと。出来なくはありませんけどね」
 中身が無いかのように崩れる弾卵鬼の殻の中から、速閃鬼が後方へと駆け出す。だが、数歩も進まぬうちに地面から噴出す吹雪‥‥フレイアのフロストマインに動きを封じられる。
「その程度で逃げおおせるととでも思ったか?無様な」
 右京の切っ先が無数に分裂する。常でも避けづらい無明の太刀が動きの止まった相手に避けられるはずもない。
 袈裟懸けに斬られた速閃鬼の上半身が、するりと落ちた。


「さすがに潰されたから次の斥候を、とは動いてくれませんね」
 望遠鏡から目を離したフレイアが肩を竦める。
 残る四体の弾卵鬼は、洞窟入り口を固めるように密集隊形を取って微動だにせず周囲を監視している。
「気付いているのかいないのかは確認しようがありませんが、彼らの目的が洞窟の死守であるのは間違い無さそうですね」
「鬼さんが大事に隠しとるもんはなんですかってな」
「卵だナ!砂浜でポロポロと涙を流しながら埋めてるんダ!」
「梢さん、それは亀の産卵です。厳つい弾卵鬼の親玉がそんな産卵してたら夢にでそうですよ‥‥」
「第二段階に脱皮を図ってるのかもしれぬな。そして後二回変身を残しておるやもしれん」
「‥‥輝夜さん、それも最終的に天儀が大変なことになりそうなのでちょっと‥‥」
 そろそろ志郎が突っ込み疲れでダウンしそうだ。

 ひとしきり好き勝手な事をいったところで、桐がぽふんと手を叩く。
「このまま待っていても寒いですし、何とかしないといけませんね〜」
「敵が待ちの姿勢である以上、時間をかけても得をするのは奴らだろうな」
 右京は既に刀を抜き、準戦闘態勢に入っている。
「では相談どおり接近は分散、攻撃は集中でいくとしようかの」
「俺達は牽制中心ですね」
「隙有れば殴りかかるけどナ!」

「あたしとフレイアさんが遮蔽を作るので、接近時に利用してください」
「私も真っ直ぐ攻撃に参加したいところですが、敵の射撃を止める為とあれば仕方ありませんわね」
「私は時々結界を張ってます。異変があったら言いますから、ちゃんと聞いてくださいねー」
 彼我の距離は50m強。弾卵鬼の手によって、射撃や視界を遮るものが一切排除されている為それ以上の接近はどうあっても気付かれる形になる。
「口からの瘴気砲だけは避けなあかんが、後は根性で弾くとするかいのお!」
「要らぬ被害は受けるでないぞ」
 駆け出した開拓者に気付いて、弾卵鬼が一斉に砲口を向ける。四条の黒い光線が亡者の呻き声のような音と共に伸び、それを追うように大量の瘴気の塊がばら撒かれる。
「散れば散るほど向こうの射撃密度が薄まります!互いに距離を取ることを心がけましょう!」
 志郎が動きを止めず刹手裏剣を立て続けに投げる。弾卵鬼は手裏剣による被害には全く動じず側面を晒しながらも、近づいてくる志郎には反応して向きを変え、射界に捉えようとする。
「なるほど、優先順位としてまず洞窟への接近阻止があるようですね‥‥それなら」
 透子は足を止め弾除けの結界呪符を張ると、人魂鼠を呼び寄せる。
「多分、嫌がると思います」
 透子の目論見通り、明らかに脅威足りえない鼠を狙って過剰ともいえる瘴気弾が叩き込まれる。
「敵を前にしてネズミ捕りとは余裕じゃのお」
 鼠を排除するために低く構えていた弾卵鬼の腕を踏みつけながら、晃がニヤリを笑って蛇矛を振り上げる。
「まずはてめぇからじゃ。一匹ずつ削らしてもらうかのぉ」

 輝夜は仲間達が一匹に攻撃を集中させる間、他の弾卵鬼をひきつける為の牽制攻撃を担当している。
 それと同時に、聴覚を研ぎ澄まし洞窟内の音に耳を澄ます。
「ええい、目の前の連中が五月蝿くてかなわぬ。しかし‥‥水泡内で虫が動くような音、より遠くから岩を砕くような音とは。ひょっとして羽化や卵も洒落でないかもしれぬな‥‥後者は抜け穴でも掘っておるのか、だとすると行き止まりというのも怪しくなってくるかの」
 考えながらも、全身を叩きつけてくる弾卵鬼の体当たりを刀で受け、姿勢を整える。
「やれやれ、あくまでも洞窟に入れないのが仕事のようじゃな。然らば切り伏せて行くしかあるまい。竜の鱗を切り裂く刀と汝の甲殻、どちらに分があるのか試してみるかや?」

「この壁は瘴気砲でも無ければ壊せませんよ」
 フレイアが指を鳴らすたびに生成される鉄の壁を弾除けに、彼女と桐が距離を詰める。
「後ろから増援とかは無さそうですねー。後は洞窟の中‥‥え‥‥ええっ!?」
 瘴索結界を張った桐が驚愕の声を出す。洞窟の中が瘴気でびっしりと埋まっている。おそらく奥から漏れる薄い瘴気が洞窟全体に充満しているのだろう。
 問題は、その瘴気の源がなんであるか、だが。
 あまりの事に自身も瘴気に当てられたように青い顔になる桐を気遣うようにフレイアが声を掛ける。
「桐君はゆっくりと続いてくださいまし。私は前衛の方々の直接支援に参りますので」


「そろそろ一匹目が落ちるか‥‥しかし、これまでに比べ生彩に欠くな」
 状況を差し引いても威圧の弱い弾卵鬼の動きは、右京に戦う傍ら観察し返す余裕を与えている。
「行動の元になる目標が単純に守りなせいか‥‥いや、それにしても鈍い」
「ま、そのあたりは潰してから考えるとしようや。一匹目、行くでぇ!」
 晃が弾卵鬼を叩き潰すと、間を置かず霧散した瘴気から速閃鬼が飛び退る。だが、洞窟に飛び込もうとしたその背は鉄壁に叩きつけられる。
「ちゃんと移動先を見て動く事をお勧めいたします」
 フレイアが微笑を浮かべながら、続いてアークブラストの詠唱を終える。
「四方を封じられて尚この雷をかわしおおせるならば、生き目があると思いますよ?」

 一匹失えば、後は崩れた戦力比からじりじりと押し込まれ‥‥残る弾卵鬼は最後の一体のみ。
 それもまた傷付き、今まさに力尽きようとしている。
 変化して現れる速閃鬼はどう動くか。退路は、鉄の壁に塞がれ。正面と両側は三人のサムライに包囲されている。そして、十分な支援。
 特攻は下策。如何に電光石火の速度をもっても、警戒した相手に致命傷を与えるのは難しい。では逃げる‥‥どこに逃げるか。
 速閃鬼のとった手段は跳躍。鉤爪を使えば、山の斜面にぶら下がりながら逃走することも可能。‥‥但し、跳躍が成立していたならば。
「三秒強。首を落とすのは無理ですが、足を押さえつけるくらいなら何とかなりますからね」
 『夜』の忍術。時の止まる僅かな時間で、志郎は速閃鬼の片足にしがみ付いていた。
「十分。首を獲るのは誰でも良いわけじゃからな」
 倒れこむ速閃鬼の首筋に、輝夜の斬竜刀が滑り込んだ。

「さて、邪魔の排除は済んだ。本命に入るか」
「鬼が出るか蛇が出るか、といったところですね」
 松明に火をともし、洞窟へと慎重に踏み込む。
「心配のしすぎ‥‥だといいんですけどねー」
 桐が乾いた笑い声を出しながら、十尺棒で周囲に罠がないか執拗に突いている。
 結界にかかる瘴気は全く収まる様子が無い。
「何やら耳障りな音が多いのう」
 輝夜の超聴覚には相変わらずの岩を砕く音、虫が体を軋ませる音、泡がぽこぽこと発生する音が聞こえる。
 そして、直に洞窟の終着点とされた広間に辿り着く。
 広間からは、情報には無い道が一本伸びている。ギルドの調査ミスではなく、この2ヶ月で掘り進めたものだろう。
 地面には数十個の割れて乾燥した殻が転がっていた。そこに残る瘴気の残滓が瘴索結界を乱していたのだろう。
 そして殻の間に屹立する縦に伸びた泡のような物体が五つ。
「これは‥‥」
「卵だナ。というわけで、てリャ!!」
 飛鈴が全く躊躇なく動いた。ぶにゅぶにゅとした手触りの泡と、その中で丸まっている虫のような物体にぶすりと指を刺す。
 泡に詰まっていた紫色の液体と、内側から破壊された虫の残骸が開けた穴から流れ出ていく。
「酸みたいに溶かされないかと少しだけ心配だったゾ」
「そう思ったら行動を躊躇しましょうよ」
「それよりも、飛鈴君が壊した卵の殻が面白い事になっていますね」
 フレイアが指した先で、先程破壊され液を出し尽くした卵は周囲に散らばる殻と同じような形に萎んでいた。
「なるほど。これ全部その卵だった、ちゅうわけか」
「とりあえず、あるだけ壊した方がよさそうですね」
 志郎の言葉を待つまでも無く、それぞれが行動していた。流れ出た液体は地に流れてまもなく蒸発していき、虫の残骸も靄となって消えていく。
「あいつラ、こうやって増えてるのカナ?」
「それは、奴に聞いたほうがいいだろう。もっとも、答えてくればの話だが」
 卵の破壊に加わらずにいた右京の視線は先程発見した通路‥‥否、その先から向かってくる強烈な瘴気を発する存在に注がれている。

 先ず、数体の弾卵鬼が現れる。これまでの弾卵鬼も個体ごとにある程度異なっていたが、今回の姿はそれまでと露骨なまでに異なる。
 顎は口としての機能が退化し、最早瘴気砲を撃つ為だけの砲身と変わり果てている。目のような部分は8つに増え、内四つは背中の後方についている。
 肘や膝は殆ど動けなくなるほど複雑に重なり合った外皮に包まれている。手‥‥金属棒のような腕の先にある瘴気弾の発射孔と幅広の両刃剣状の白兵装備以外に何一つ無い部分をそう呼べるなら‥‥や三脚のような足は、戦いというたった一つの目的以外への使用を拒絶したかのような袋小路の変化を遂げている。
 背中には鍵穴のように複雑な溝の刻まれた窪みが二つ開いている。何かをはめ込むのだろうか。
 色はこれまでの弾卵鬼とほぼ同じ。全体的な大きさは一回り小さく、威嚇するような棘などは見あたらない。外皮はより鋭角的になり、攻撃に対して厚みのある部分で受け止められるようになっている。

 そしてその後ろから、あの黒いアヤカシが姿を現す。
「情報ヲ訂正‥‥受領シタ新戦力ノ九割ガ稼動。人間・強ノ介入アリ」
「喋ったゾ!?」
 全く感情の篭らない冷たい声がアヤカシの口から発される。
(「私達に向けられた言葉ではない‥‥それよりも『受領』?新しい弾卵鬼は、この黒いアヤカシ以外のアヤカシが造ったということでしょうか?」)
 透子は思考内で疑問符を浮かべつつも、その言葉の中から優先して選び取るべき内容の選択を行う。
「攻撃してくる気はないのでしょうか?」
「向こうがその気ならとっくに刃を交えておろうな」
 緊張を含みながらも、互いに武器を抜かぬまま僅かに時が過ぎ、そしてアヤカシが再び口を開いた。
「三位ノ頭脳ノ承認ヲ得テ、黒ノ将ラングガ管理ニ於イテ第二段階ノ活動ヲ展開。交戦シ、戮滅シ、破砕スル。刮目セヨ、恐怖セヨ、絶望セヨ。是ヲ以テ布告ト為ス」
「『らんぐ』、ちゅうんか。名前は覚えたで。ちと狭いが、ここでやりあってもいいんじゃがの」
 晃が啖呵を切る一方で、右京は無言で刀を抜く。軽く肩で反応したアヤカシは、しかし腕を組んだまま動かない。
「殺気の有無が解るか。ここで斬り合うつもりだったが、気が変わった。貴様とは長い付き合いになりそうだ‥‥恐らく遠くない内にその機会も巡るだろう」
 右京が刀を鞘に納めると、アヤカシ達は開拓者達に背を向け横穴へと入って行く。
(「結界と壁で穴を閉じますか?」)
(「時間稼ぎにもならないので止めておいた方が無難かと」)
 フレイアと透子の小声の会話を聞いたわけではないだろうが、アヤカシの足が止まる。
「状況開始点ヨリ北領域ニテ、第三、第八隊ガ兵站確保ヲ開始スル」
 それだけ言い残し、アヤカシの姿は暗闇へと消えていく。

「瘴気が横穴から無くなって行きます‥‥本当に山の北側まで掘りぬいてるみたいですねー‥‥はぁ〜〜〜〜」
 桐がへたり込む。瘴索結界で映る瘴気の様子は、強力なアヤカシの脅威を視覚より直接的に認識させる。
「言葉がわかるなラ、バーカとでも言ってやれば良かったかナ?」
「飛鈴さん、あんまり気安く挑発するのも‥‥」
「私は、原稿を無感動に読み上げるような抑揚の無さを感じましたね」
 フレイアの感想に数人が同意する。
「言葉を喋る能力はあれど、言葉を我らと同じように認識しているかは別ということかの」
「何や最後に思わせぶりな事をゆうちょったのぅ」
「まぁ、アヤカシの食料といえば人間じゃから、概ねやる事は他のアヤカシと同じじゃな」
「帰ったらすぐそれを防ぐ依頼を出してもらうようお願いしないといけませんねー」

(「幾つか気になる単語が出てきましたが‥‥今の段階では憶測ですね。弾卵鬼の統率者ということに関して本人のお墨付きが得られたのは貴重ですが‥‥」)
「おーい透、置いてくゾ〜〜」
「あ‥‥はい、只今」

 アヤカシの残した言葉の謎。それが解ける日は来るのだろうか。