|
■オープニング本文 ●大船原北部・前線 「我は武征(ぶせい)!盆暗は寄るでないぞ!」 武征と名乗った煌びやかな大鎧を纏い惣面をつけたアヤカシが馬上から大太刀を振るい突撃する。後に続くは四騎のやはり華美な装備に身を包んだ勇壮なアヤカシ達。 槍衾に踊り込むと、人馬一体の動きで暴れまわる。一太刀ごとに人が切り飛ばされ、やがて恐れをなした足軽達はばらばらと逃げ始める。 「ええぃ、たった五騎だぞ!囲え、囲え!遠巻きで射倒せ!」 足軽たちの後ろで馬上より激を飛ばす武者。その姿を認めた武征は、周囲の様子を気にする事もなく真っ直ぐ骨馬を走らせる。 「汝がこの備の将か。一騎打ちを所望いたす、いざや、参る!」 ギィン、と一合刀がぶつかる音が響き、二合目には騎馬武者の首は飛んでいた。 ●大船原陣営 「敵五騎、そのまま続く四備を突破!間もなくこの陣へ来襲します!」 「分散しているとは言え、十倍以上居ながら止めれんのか!?」 「な、何せある備では太刀の一振りと共にカマイタチが襲い、ある備では突きで人のみならず後ろの岩を刺し貫いたそうで。とても尋常の者では相手になりませぬ」 前線指揮官は悲鳴に近い声を上げた。敗走兵の情報では武征なるアヤカシは一騎打ちの作法に則り指揮官格を真っ直ぐ狙ってくるらしい。そして指揮官を討ち取った陣地まで後続の大軍を前進させる。大将個人の武力が戦の帰趨を定める、古い時代の様式である えらいことだ。彼は剣術はあまり得意ではなかった。 「ま、まずは防御の兵を退かせろ。一騎打ちを拒否したと見なされて乱戦になれば勝ち目がないぞ。それと近場にいる腕の立ちそうな開拓者をすぐ呼べ!大至急だ!」 悪い事もあれば良いこともある。彼は戦術ついでに合戦作法も色々と学んでいた。一騎打ちの作法に拠れば代理を立てることと互いに最大四騎まで郎党が参加できる事、隙を見て入れ替わりができる事そして相手にばれない形であれば援護する事も認められている。そして武征は、自らの力に自身を持つ為か相手に助太刀が加わるまでは自分の側には加えない、つまり作法に従う限りは数の不利は考えずに済むようだ。 しばしの後。 陣幕を真っ二つに切り裂き武征が四騎の部下を従え姿を現す。 「汝がこの陣の将か。一騎打ちを所望いたす」 「さ、作法に則り代理を所望する!ぬ、主の相手は‥‥彼らだ!」 前線指揮官が震えながら指さす方向には何事かと駆けつけた開拓者たちの姿があった。 |
■参加者一覧
朝比奈 空(ia0086)
21歳・女・魔
井伊 貴政(ia0213)
22歳・男・サ
華御院 鬨(ia0351)
22歳・男・志
香坂 御影(ia0737)
20歳・男・サ
月城 紗夜(ia0740)
18歳・女・陰
水津(ia2177)
17歳・女・ジ
斉藤晃(ia3071)
40歳・男・サ
凛々子(ia3299)
21歳・女・サ |
■リプレイ本文 ●決起式 開拓者達は各々手に酒、或いは水の入った猪口を持っている。斉藤晃(ia3071)の提案した決起式だ。 「こういう事で士気を高めるというのは初めてなので、新鮮ですね」 朝比奈 空(ia0086)はそう言って珍しげに猪口に注がれた酒を見ると、皆の真似をして一気に飲み干す。 「うちを酔わしても何もでやせんどす」 「華御院さん‥‥酔った振りしてひっつかないでください」 色っぽくしなだれかかって来る華御院 鬨(ia0351)を押しとどめながら井伊 貴政(ia0213)が言う。 一方で、月城 紗夜(ia0740)と水津(ia2177)は猪口を片手に、早くも武征への舌戦を仕掛けている。 「まさか、私達との戦いから逃げませんよねえ‥‥? あ、すいません‥‥こんな事言ったら可哀想ですね‥‥」 水津の言葉に武征は無論と言わんばかりに馬の歩を進める。 「陰陽師、月城家門、月城の姓、賜った、紗夜。騎馬、した、まま、戦う、つもり、かしら?‥‥どちらかが、倒れるまで、続く、ならば、退く為の、馬は、不要、でしょう?」 挑発に乗って馬から下りてくれればしめたものと紗夜は畳み掛ける。だが、武征は割れ鐘のような声で言い放つ。 「こは異な事を。士と騎は一身、本来ならば徒歩にて現るる事こそ不調法の極みよ。礼を以て応ずる我が慈悲に感じ入るがよい」 「言い、繕う、ばかり‥‥下衆ね‥‥」 挑発は続けながらも、舌打ちする他無い。 「‥‥思ったより冷静ですね」 「‥‥冷静と、言う、よりは、昔の、武人の、受け売りね‥‥」 「いいんかね、放っといて」 やいのやいのと挑発を続ける二人を横目で見ながら香坂 御影(ia0737)が言う。 「大丈夫でしょう。しきたりによれば名乗りをあ下手からが一騎打ちだから」 「せや、悠々と一杯ひっかけてくのも流儀ってもんや」 「‥‥それもそうだな」 凛々子(ia3299)と晃が笑いながら言うと御影もふっと笑い返して酒を飲み干す。 パカァンと地面に落とされた猪口が割れる音が景気良く響く。 「いくでやろう共!」 ●五対五 「逃げずに来たか。末期の酒は美味であったか?」 「ほざけぇ!酒を呑むようにてめらアヤカシも呑む!酒呑童子の斉藤晃とはわしのことや」 武征に正対した晃が呵々大笑しつつ名乗り出ると、先発組がめいめい名乗りだす。 「うちは華御院 鬨どす。尋常に勝負どす」 「僕は井伊貴政。お相手願おうか」 「私は凛々子。いざ、尋常に勝負!」 「香坂 御影だ。お前の進軍もここが終着点だ」 五人の名乗りを聞くとさも嬉しそうに武征は頭を縦に振る。 「よかろう、我と我が股肱の臣、義骨、忠骨、信骨、孝骨が相手いたそう。我が名は武征なり!」 「まずは足を止めさせてもらおうか」 直属兵の一人、義骨に向かった御影は躊躇なく馬の前脚に切りつける。悲鳴を上げながらのけぞった馬は、次の瞬間煙のように消えうせる。 「幻術の類か?‥‥まぁ、いい。皆、馬は脆いぞ!積極的に狙っていけ!」 落馬を予期していたかのように身軽に姿勢を直した義骨に向き直り、御影も構え直す。 「鬼さん、こちらどす」 歌舞伎の舞のような動きで翻弄しながら、鬨は忠骨の隙を覗う。忠骨は素早い動きの前に攻めあぐねるも、低く構えて己の隙を抑える。 「あらら、一緒に舞ってくれはったらうちの虎の子、流し斬りの出番やったんどすけど」 繰り出された突きを舞うようにかわしながら鬨は残念そうに言う。細く細かく、確実に当ててはいるものの大きな一撃に繋がる隙が無い。 神経を削るような持久戦の時間が過ぎていく。 「馬の扱いの至らぬ未熟者共よ」 馬を切り倒される部下達を一瞥する武征。 「自分も正面がお留守とちゃうか?」 その一瞬で晃は踏み込み、武征の乗る骨の馬に一太刀を浴びせる。だが、ぐむ、と武征の苦悶が一瞬聞こえたものの骨馬は他の馬のようにはかき消えない。 前脚で晃を踏み潰そうとし、間髪入れず武征の刃が襲い掛かる。それはまるで人馬一体、否、一つの生き物のよう‥‥ 「なぁる、そないなカラクリか」 「馬上が武士の生まれ、散る場所よ」 つまり武征とは骨馬と馬上の武者を合わせて一体のアヤカシなのだ。そして、確かにその一撃は受け止めた。にも拘らず晃の肩口からは血が噴き出す。馬の如き力と手練の刀術の組み合わせか、武征の刃は空を裂いて相手に叩きつけるのだ。 十人中最初の脱落者は孝骨だった。始めから全力で斬りかかる凛々子の重たい打撃を受け損ねた孝骨は前のめりに崩れながらも反撃を試みる。しかし決死の攻撃もいなされ、止めの一刀で首を切り飛ばされる。未だ五合も打ち合っていない。 「まず一つ!孝骨討ち取ったり!」 高らかに宣言する凛々子を仲間が祝福する。 「さすが凛々子さん」 「安産型は違うな」 「余計な事は言わない!」 後に一部始終を見ていた水津は語る。 「あの時の凛々子さんは‥‥援護に向かうというより敵味方纏めて切り捨てそうな雰囲気でした‥‥。こういうと不謹慎ですが‥‥同じ女として憧れちゃいますね‥‥」 「なるほど、巧遅より拙速か」 伝来の赤備具足をがしゃりと鳴らすと貴政も攻めの構えを取る。信骨の迎撃を受けるも、不思議とその突きは具足の表面で滑るように逸れていく。 「ご先祖様が護って‥‥てわけじゃないだろうけどね。折角の好機だ、やることはやらせてもらうよ」 手の甲で信骨の刀を払うと、その口に切っ先を突き入れる。バキ、と顎の砕けた頭蓋骨を手早く切り離す。 そのままがくりと崩れ落ちる信骨。手の中で塵になり始めた頭蓋骨を捨て貴政は言う。 「料理は得意だからね、捌くのは慣れてるんだ」 ●三対五 後方で見ている三人も暇なわけではない。紗夜は常に戦局全体を見届け、交代の機を待っている。空と水津は只管舞う。風の精霊の力が止まれば、武征の攻撃を一身に受ける晃が何時血の華と化してもおかしくない。 「ああ‥‥飼い主様が絵巻物で見た首取り武者のようです‥‥」 何かわくわくしながら水津が言う。ちなみに絵巻物に出てきた徒歩の首取り武者は馬上の若武者の一刀で切り殺されていた。 「そんな不吉な事を‥‥」 神楽を舞いながら空が顔をしかめる。 そんな会話をよそに、戦場を見ていた紗夜がぴくりと動く。 「多分、交代。二人、共、準備を」 「ほう、まだ死なぬとは頑丈な人間よ」 傷口が開いては塞がる晃に何ら疑問を持つでもなく武征は彼を褒める。或いは、今まで一刀で斬ってきた為に人の傷の負い方、治り方自体知らないのかもしれない。 「へっへ、頑丈なんが売りやさかいのう。ほれ、自慢の技をもっとふるって来いや」 傷は治るとはいえ、斬られる際の痛みが消えるわけではない。平然と話せるのは、晃の精神力の賜物である。彼の挑発に武征は蹄で答える。 「守り堅きは討ち難し、か。さらば攻め急ぐものの脇腹は如何であろうな」 蹄の一撃は自分の目線を晃から塞ぐためのフェイントであったようだ。その目の先には‥‥二人で忠骨に当たる鬨と凛々子の姿があった。 「危ねぇ、避けろぉーーーーー!」 鬨と凛々子は忠骨が意外な行動を取るのを目にした。二人に両側面から交互に攻撃を受けていながら、まるで斬ってくれといわんばかりに地に伏せたのだ。その意図を察しきる前に、武征の方角から強烈な空気の塊が二人を襲った。 「え‥‥?」 「うわっ!?」 無論、飛び道具に無警戒だったわけではない。直線状になることなどは特に注意を払った。が、襲ってきたのは「横向きの竜巻」とでも言うべきものだった。吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる二人。 「うっく、まだまだ‥‥」 凛々子は刀を杖に立ち上がる。見ると鬨は派手に吹き飛ばされ未だ地に臥せっている。味方の方に飛ばされたのはもっけの幸いか。 「つつ、少ぉし交代してほしいどすな」 聞こえてか聞こえずか、既に準備していた紗夜が戦場へと走り、空が慌てて治療に来るのがわかる。鬨は緊張を解いて呟いた。 「ほな、休憩させてもらいます」 「あれを見ると、こっちも急いだほうがいいような気がするな」 目の前の義骨に負ける気はしない。が武征との対峙の為に技は控えておくべきか否かを御影は思案していた。 「助太刀します。御影さんは温存しておいてください」 貴政がやってきてやや距離をとりつつ相対する。 「は‥‥てことは」 「僕のほうは出し尽くしました」 「なるほど。だが、ゆっくりしているとさっきのがこっちに来るかもしれないぞ?」 そんなに遅くなるつもりはないがな、と付け加えると御影は義骨への攻撃を再開した。 「二つ!忠骨討ち取ったり‥‥!」 勝ち名乗りを上げるものの、凛々子も膝をつく。一先ず、治療を受けねばならないようだ。 ●二対四 「てめぇ‥‥」 晃は呻くが、汚いという言葉は言い留まった。助太刀自体は決して作法に反してはいない。それに攻めっ気の無さを見切られた自分のミスでもある。 「くくっ、亀は放って、次はどこを狙ったものか」 「アホ抜かせ、わしが付きっ切りで相手したるわ」 晃は吼えると、武征に切り結びに掛かる。 数合打ち合ったときだった。決して激して隙を見せたわけでもなく、守りを怠ったわけでもない。ただ、馬の体重を乗せた武征の突きはこの時が初めてだった事と、空が負傷者の手当てに回って水津の回復しか受けてなかったことが響いたか。 貫かれた晃の腹部からこぼれる血が地表を赤く染めていた。 「‥‥ごっついのぉ」 「これで死なねば同類と認めてやってもよいぞ」 哄笑しながら武征が言う。 (「あかん、血ぃ減らしすぎたかのぉ‥‥」) 霞む視界の中に見えたのは水津の小さな背中だった。 「一騎打ち‥‥実は大好きです‥‥」 目の前で見ると武征は大きく、そして威圧的だった。怖くはあるが、高揚ゆえかその声には喜色すら混じる。 新手を見た武征は明らかに小馬鹿にした姿勢を取る。一端の剣の使い手には見えない。無造作に刀を振り下ろす。 「どうしました‥‥?私の守り、抜けてませんよ‥‥」 防具を固めた甲斐があった。打ち込みが弱かったのも幸いした。武征の刃を受けても水津は立っていた。立っていただけ、という位消耗はしていたが。 武征はほう、と驚きの声を発すると、先程晃に見舞った馬上突きの構えを見せる。 「おい、はよ逃げぇ!」 「飼い主さん‥‥大丈夫ですよ‥‥多分」 「空さん、晃さんら先にしておくれやす」 「いいんですか?」 空の風の精霊への交信は弱まりつつあった。後回しにすれば鬨への回復分は残っていないかもしれない。 「命にはかえられまへん。そやさかいうちは空さんの膝枕で不貞寝しときます」 「やらせ、ない」 紗夜の札から現れた蜘蛛の巣が武征に絡まりつく。それに勢いを削がれてか串刺しは免れたものの、水津の体は蹴鞠のように飛ぶ。彼女を受け止めた晃が酒瓶に口をつけつつ自嘲気味に笑う。 「でっかいわしが小さいのに庇われとるんや。嗤えや。ああん?嗤えちゅうてるやろう!」 怒気を見せた晃を隙だらけと感じた武征は突きを入れる。晃は避けなかった。正確には鎧の厚い部分で受け止めた。そしてそのまま、口の中に含んでいたもの‥‥酒と血の混合物を噴きかける。 目潰しは武征の思考に無かった‥‥ゆえにまともに受ける。 「ぐぉおおおお!?」 「不意打ちご無礼。卑怯とは言うまいな」 混戦の中力を温存してきた御影が全力で放つ斬撃に対し知覚を失い、得物を自由に振るえない武征には避ける事も受けることも叶わなかった。初めて受ける効果的な打撃に狂うように呻く武征に返す一撃を叩き込む。 「これ程の攻撃、俺も仲間達も何度も受けては耐えてきたんだ。初めて転んだガキみたいに喚くと格が落ちるぞ、アヤカシの大将」 紗夜は明らかに動揺の色を見せる武征に満足そうに笑むと、次なる符を一句発しつつ飛ばす。 「黒き蝶 彼岸の使者と 知りて飛ぶ」 符は空中で句の通り黒い蝶と化すと、鋭い羽で縦横に切り裂く。 「理が、相容れないと、告げている‥‥そして、貴公は、たった今、理からも、外れたの」 次の符を取り出しながら紗夜は告げた。 ●一対‥‥ なぜ、自らは外界を感知できないのか。己の理外の状況に武征は混乱していた。 賢しく背後から切りかかるは香坂と名乗る侍だったか‥‥呼吸から、先程のような大技は無いとわかるも、その太刀筋までは目にせねば避けきれない。 怪しげな術を用いるのは月城とか言う、馬から下りよとほざいた無礼者‥‥いかな技か、身を切る刃は槍や刀と明らかに異なる。 おお、先ずは刀を斉藤なる者から引き抜かねばならぬ。手応えはあったのだ‥‥ 「こんな痛みなんぞ屁でもないわ!死にさらせ!」 瞬間開けた武征の視界には、憤怒の形相で刀を振り上げる晃の姿があった。凌ぐべく、馬の脚で蹴ろうとするが 「てりゃあああああああ!」 凛々子の両断剣に振り上げた前足が斬り飛ばされる。 「おう凛々子、ありがとよ!」 そのまま、骨馬の頭を踏み台に武征の頭へと振り下ろされた晃の太刀が勝負を決した。 「まだだ‥‥武征の兵は‥‥退くを知らぬ。いざや‥‥進め‥‥」 死の際に約束を違えたか、全軍に進撃を命じる武征。だが、武征の力で操られた死骸に過ぎなかった兵卒は糸の切れた人形のようにばらばらと崩れる。 周囲の兵たちの歓声をよそに、開拓者達はやれやれとへたりこんだ。 「往生際の悪い奴だ」 「所詮はアヤカシ、ですかね」 砂像のように崩れ消滅していく武征の最期の足掻きの感想を御影と凛々子は漏らす。 「怪我でも酒が飲みたいでぇ」 手当ても待たずに祝い酒とばかりに一杯呑みだす晃の背後に紗夜の治癒符をぺたぺたと貼られた水津がすぅーっと立つ。 「飼い主さん‥‥小さいって言いましたね‥‥?」 「おお、水津が、燃えて、いる」 人は自らが気にする事には過敏になるという。体躯について晃が言った「小さい」を気にしている胸のことと勘違いした水津の凶拳はごつりと良い音とともに晃の意識を刈り取った。 「あらあら、水津はん、お強いどすなぁ〜」 「わあっ、大丈夫ですか斉藤さん!」 鬨の応急手当をしていた空が慌てて駆け寄る。 晃が完全にのびているのを見た貴政が口元を団扇で隠しながらぽそりと漏らす。 「武征の攻撃を受け続けても倒れなかった斉藤さんに止めを刺した水津さんが特別強いのか、それとも斉藤さんが水津さんに特別弱いのか‥‥ま、言わないでおいてあげますよ」 |