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■オープニング本文 猫族の祭りも一段落。月見や依頼目当てに訪れた者も多いが、用が無くなれば家路に着くだけ。外の儀から訪れた客もいつまでも留まってはいない。 各国都市には精霊門があり、これを使えば各国儀にすぐに移動できるが、使用許可が出るのは役人や開拓者など一部の人間。大抵の者は儀の移動に飛空船を使わねばならない。 航路は天儀行きに限られる。儀間の距離もある上、船の速度もまちまちだが、大体一日から数日程度の空の旅を覚悟せねばならない。 定期便は限られているが、それ以外でも商船で天儀に向かう者もいて、交渉次第で便乗させてもらえる。その場合、船内の仕事を任されたりしてのんびり船旅とはいかないが、それはそれで楽しい旅の思い出にはなる。 とはいえ。船旅は海路も空路も厄介事が多い。 最たるものが賊。そしてアヤカシ。 泰の朱藩冒険者ギルドに依頼が舞い込む。空にアヤカシが現れたという。 「海アヤカシの暴挙でそちらに目と手を取られた分、上が疎かになったか。凶光鳥が嵐の門に入り込んだらしい」 儀の周辺に取り巻く嵐の壁。無理に通れば乱気流にまかれて打ち落とされる。唯一穏やかに突破できる航路が嵐の門であり、いわばここを通らねば儀を出る事も入る事も叶わない。 嵐の門の内側にまで入り込んだ凶光鳥は通りがかる船を次々と襲う。 飛空船の飛行速度に任せて突破するのも可能だが、慌てて操作を誤れば壁に突っ込んで墜落、逃げ切れなければアヤカシの餌食。脱出用の竜や滑空艇は装備されていても、それで儀を渡る事は難しく、泰に入るしかない。 勿論、すんなりアヤカシが通すはずもないのだが。 月の華やぎが消えぬ内に、血の凶行を見過ごすわけには行かない。 「現在、船の航行を止め、空戦の許可も出してもらった。速やかにアヤカシを退治し、安全を取り戻して欲しい」 体力・練力温存も兼ねて、装甲小型船も一機だけだが貸してもらえる。嵐の門周辺まではそれで行けばいい。その後の戦闘に使うかは開拓者たちで決めてくれていいとの事。残念ながら武器の類は無いが、足場にぐらいは出来る。 凶光鳥。下級アヤカシではあるものの、その強さは中級と遜色無いとすらいわれる。駆け出し冒険者程度、簡単に屠りかねない獰猛さと素早さを持ったアヤカシだ。一般人など良い餌でしかない。 天儀との行き来の為には勿論のこと、けして見過ごしてはならないアヤカシだった。 |
■参加者一覧
海神 江流(ia0800)
28歳・男・志
玲璃(ia1114)
17歳・男・吟
鈴木 透子(ia5664)
13歳・女・陰
ジークリンデ(ib0258)
20歳・女・魔
ロゼオ・シンフォニー(ib4067)
17歳・男・魔
ルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)
10歳・女・砲
マレシート(ib6124)
27歳・女・砲
愛染 有人(ib8593)
15歳・男・砲 |
■リプレイ本文 儀を取り囲む嵐の壁。外部との行き来を不可能にする乱気流の中で、航行可能になる一帯が嵐の門と呼ばれる。 開通の折に立ちはだかった魔神も当におらず。泰儀と天儀の行き来は良好……だが。 油断すると、厄介なモノがでしゃばるのは空も陸も海も変わりは無い。 嵐の門にアヤカシ出現。中級に近いともされる凶光鳥十体に、飛空船の運行は休航を余儀なくされる。この状態が続けば、流通にもやがて影響が出る。 「門と分かって邪魔をしているのでしょうか?」 「さあなぁ。だが、あそこを陣取れば嫌でも飛空船――つまりは人が集まってくる。空を飛ぶ奴らにしてみれば、狩場として上等だろうさ」 鈴木 透子(ia5664)の問いに答えたのは、飛空船を動かす船長自ら。武装されたこの船には通常の乗組員に代わり開拓者たちが、積荷の代わりに相棒たちが乗船していた。 空路の要となる場所。当然、警備もそれなりに敷かれているはずが――どういうわけか、今年の夏は海のアヤカシが大暴れ。猫族の祭りが窮地に立たされる事態にまで陥り、その対応に追われ大忙し。 海は治まり、陸の祭りもどうにか例年通りの賑わいを見せ。やれやれと思った隙をどうも入り込まれてしまったらしい。 「荒廃した世なれば何処にもアヤカシはいるというもの。油断大敵ですわ」 ジークリンデ(ib0258)が頭を振る。 このご時世、どこからアヤカシが入り込むか分かったものじゃない。今回は空で、飛空船を撤退させて被害を抑えられたが、これが都などであったら輪をかけて大変な事態になっていた。 平和を望めど、その先行きは見えず。けれど嘆いてばかりもいられない。 「さて、そろそろ門だ。準備はいいかね」 船長の表情は硬い。装甲船とはいえ、アヤカシの攻撃にさらされればどうなるか分からない。入り込むにはやはり覚悟がいる。 「はい。アヤカシ退治と航路の安全確保、承りました」 その強張りを溶かせるように、玲璃(ia1114)は静かにそう告げる。 開拓者たちも引き締まった態度で頷くと、相棒と共に出撃する仕度を始める。素早く、玲璃も加護結界をかけて回る。 ハッチが開き、相棒に乗った開拓者たちが船の周囲に展開する。 血気にはやる鷲獅鳥・クロムを宥めながら、ジークリンデはアメトリンの望遠鏡を覗き込む。 「――。その現実に納得がいかないならば、戦うしかないのでしょうね」 敵影が確認されるまで、さほどの時間もかからなかった。 ● 嵐の門内部は飛空船で航行可能とはいえ、湧き出る雲が所々で邪魔をして視界良好とも行かない。 その雲のどこかに潜んでいたのか。運行を止められた航路へ、久しぶりに迷い込んだ獲物を狙い、凶光鳥たちは真っ赤な翼を広げ、金のくちばしや爪を鋭く光らせている。 鳥銃「狙い撃ち」の照準眼鏡で周囲をのぞいていたルゥミ・ケイユカイネン(ib5905)もその姿を確認する。 「来たよ、準備はいいね」 「ああ。こっちは任せておけ」 滑空艇・白き死神に乗り込むルゥミを、海神 江流(ia0800)は笑顔で送り出す。 開拓者の中では、彼だけが船に残る。連れてきた相棒も、からくりの波美−ナミ−だ。 「龍だって疲れるんだし、帰る足は守らないとな。それに飛べないってのが、空で何も出来ないって訳でもないだろ」 「勿論。お客様じゃないもの。来た以上、きちんと依頼を務めるわ」 相棒銃「テンペスト」を手にして、波美は江流を見つめて微笑む。 主への期待に応えるべく気負っているのか、波美の動きは機敏で早い。 操舵は船長に任せてある。後は船が落ちないよう、立ち回るだけだ。 「ここから援護。相手の数も多いが、しとめられない数でもない」 手裏剣「無銘」を構えると、江流は苦心石灰。精霊力にて抵抗を高めて、相手の怪光線に備える。 風を切って飛んでくる凶光鳥たちは、瞬く間に開拓者+船へと迫っていた。 (速い) 飛速は滑空艇と同等か。彼方に見ていた凶光鳥たちが気付けば近くまで来ている。 「クロム、迎え撃ちましょう」 ジークリンデに答えて鷲獅鳥が大きく翼を広げる。飛翔翼で速度を上げるや、間合いを詰める。 うっかりか。考えていた広範囲への術は活性化していない。ジークリンデは先頭にいる一体に向けて射程ギリギリからアイシスケイラルを放つ。 「離脱して!」 かざした手から放たれた氷の刃。手練の彼女が放つそれは、一撃で凶光鳥をけし飛ばしかねないほどの威力を持つ。 けれど、アヤカシが切り裂かれるのを見るか見ないかの内に、ジークリンデは鷲獅鳥に距離を取らせていた。 その指示が出る頃には、残りの凶光鳥から一斉に怪光線が飛ぶ。 向こうの射程も長い。怪光線はクロムを捕らえていた。悲鳴を上げる鷲獅鳥だが、一足先に逃げたお陰かさほどの影響は無い。 わずかに羽を散らし、けれどそれで闘志に火がついたか、鷲獅鳥が高らかに吼える。 「蝉丸、先頭を狙いますよ」 そこへ駿龍が落ちてくる。 頭上を取ると、落下の速度を利用したスカイダイブ。ジークリンデの攻撃で深手を追った相手に、止めとばかりに透子の駿龍が爪を立てて自身の重みと共に引き落とす。 同時に、透子はそばの個体に向けて暗影符を放つ。 霧状の式が凶光鳥の視界を奪う。不意に視界を遮られて、慌てる一体に、他の凶光鳥たちも警戒して動きが止まった。 その間に、駆け下りた駿龍は凶光鳥の重みと落下のままに差を広げ、墜落の前にいらぬ錘を捨てて翼をひるがえした。 蝉丸は凶光鳥たちとの間合いを取る。捨てられた凶光鳥は羽ばたく事無く、瘴気を霧散させながら地面へと落ちていった。 凶光鳥残り九体。一体がやられたにも関わらず、殺気は変わらず。獲物を逃がさぬよう、周囲を囲い込んでくる。長距離から怪光線、近距離ではその爪や嘴の素早い相手。 「リーダーのような個体は見当たらないですか……厄介ですね」 甲龍で距離を置き、銃で狙いながら凶光鳥たちの動きを見ていた愛染 有人(ib8593)。 指示する一体がいるなら、それを狙えば戦意に響く。だが、各々で連携を取っているようで、一羽が落ちても動揺する気配も無い。 それともまだ観察不足なのか。いずれにせよ、敵は待ってはくれない。迅速に次の獲物を定めると、次々と動き出す。 返り討ちにせんと吠え立てるクロムに、しかし、ジークリンデは待ったをかける。 「落ち着いて。まずは相手の陣形を崩すよう動き回ってちょうだい」 鷲獅鳥なら、加速すればどうにか逃げられる。 けれど、このまま連携されては、さすがに厳しくなる。 相手の間合いを崩しながら、ジークリンデもまた遠距離から術を放ち、鳥たちを翻弄する。 ● 玲璃は瘴索結界「念」でアヤカシの位置を探る。 空の上に遮蔽物はほとんど無い。――ほとんどであって、皆無でもない。 例えば流れてくる雲。吹き付ける風は目を閉ざさせようとする。足場である飛空船も影に入られれば目が届かない。 「下に入り込まれています! 注意して」 「了解しました」 船底に隠れようとした凶光鳥に向けて、玲璃が注意を促す。と、甲板から波美が銃を放つ。 自動装填を使用しての素早い射撃。相手も近付きがたいようだが、ならばと凶光鳥は離れたまま怪光線を放とうとする。 「させないよ!」 横合いから滑り込んできた有人がマスケット「バイエン」で狙う。反動の重い手応えと同時に、凶光鳥の翼が爆ぜた。 体勢を整えようと凶光鳥が一旦離れる。その間に、有人は素早く再装填するも――。 「危ない、下です!」 玲璃の鋭い声が飛んだ。 別の個体が視野の外に見えたかと思うと、急速に迫ってきていた。 「白鋼!」 有人が声を上げる。応えて甲龍が、尾を振り回す。 けれどもそれをあっさりとかわし、飛び込んだ勢いのままに金の爪が甲龍の体をえぐった。 鱗が幾つか剥げ落ち、甲龍の重い悲鳴が広がる。 「この!!」 近寄ったならそれも好都合。有人は再装填した銃を、その鼻先に突きつける。 放つ。 外しようが無い距離。頭半分が吹き飛んだ凶光鳥に、船から江流の手裏剣が次々と刺さる。 その機に乗じて自分もと飛び出しかける鷲獅鳥を、玲璃は留める。 「涯は我慢して。後で好きなだけ攻撃出来るようにしますから、今は攻撃以外の命令を優先しなさい」 開拓者たちは戦いに慣れている。けれど、それを空で維持できるかは相棒の動きも関わってくる。 今、自分がやる事は前に出て戦うことではなく、後ろから援護すること。 涯が不満を訴えるも、今はその時では無いとして譲らない。 傷を精霊の唄で癒し、加護結界で防御を高めて回ること。戦場を回りながら呼びかける。 「負傷された方は集まって下さい。治療しますから」 近寄る敵の迎撃は任せるが、何を優先させるか、この機に教え込まねばならない。 「波美も大丈夫か? 一応スペアパーツは用意しているが……」 「ええ。今の所は」 周囲への警戒を怠らないまま。江流は相棒に呼びかける。 波美は怪我よりも、服につく火薬の匂いをしきりと気にしている。その様子を見て一安心すると、江流は伝声管で船長に指示を出す。 「船を少し寄せてくれ。動きを乱す」 了解、という声は遠くに聞こえた。行動は素早かった。 動き出した船に、凶光鳥が迫る。 波美が江流の前面に立ち銃を撃つも、勢いついた凶光鳥はそのまま鉤爪をからくりに引っ掛ける。 「波美!」 「平気だってば」 無痛の盾で痛手は軽減させ、即座に船から離れた凶光鳥に攻撃を続けている。 射程に凶光鳥が複数入るのを見ると、江流が瞬風波を放つ。 一直線に伸びる風の渦。巻き込まれた凶光鳥が刻み込まれ、風の勢いを利用して船はその場を離脱する。 ● 「船の方は、どうにかなりそうですね」 大きな飛空船は嫌でも目立つ。目立てば当然奴らも寄ってくる。 江流や船長たちの奮戦で取り付かれぬよう動き回り、他の者たちも撹乱を続けている。 そちらは大丈夫と踏むと、マレシート(ib6124)は駿龍・烈と凶光鳥に向かう。 「兄さん、敵は怪光線を使ってくるからね。気をつけて!」 炎龍のファイアスに呼びかけるロゼオ・シンフォニー(ib4067)。追いかけ、追われながら、表情は険しいまま。 「空中戦。何とかなるかと思いましたが、兄さんでも厳しいですか」 遠くからでも危険な相手。 近付いても、凶光鳥の方が上。遠距離から容赦なく近寄り、爪を立ててくる。 全く油断ならない。 けれども、さすがは炎龍というべきか。なめて近寄ろうものなら、ファイアスは火炎を吹き、牙を立て、果敢に反撃している。 ロゼオも雷を放ち、凶光鳥を撃ち続ける。 「あまり壁に近寄り過ぎないように。気流が乱れます」 「分かっています。悪天候で戦うのは初めてですからね」 透子からの声に、ロゼオは頷く。 壁に入れば暴風と雷が無差別に襲いかかってくる。さすがに自然相手ではどうしようもない。 「嵐の壁辺りに追い込んで。幾らあいつらでも壁には入りたくはないでしょう」 透子が蝉丸に指示を出す。 アヤカシでも翼ある以上、風の影響は受けるはず。そんな厄介な地域に好き好んでは入りたくないと見えて、向こうも視界を阻む厚い雲の内には入ろうとしない。 危険な壁と隣りあわせでは相手も動きにくいはず。 なのだが。 龍の中でも飛翔の速い駿龍なのに、追い詰めたと思えば、凶光鳥はするりとそこから巧みに逃げてしまう。 蝉丸は無理に追いかけまわさず、待ち構えるように動き出す。 「綺麗に並んで撃ってくるという芸当までは考え付かないようですね」 蝉丸の背から支援しつつ、透子もまた凶光鳥の動向には注意している。 隙間なく撃たれては逃げ場にも困るが、あちらこちらからそれぞれが各々のタイミングで撃ってくる。かろうじて逃げ場を確保しながら、距離を置きつつ攻撃の機会を窺う。 飛びまわる凶光鳥に有人は銃撃を続ける。だが、風のままに意のままに飛び回る相手を捕まえるのは難しい。 「バラバラに動くのはきっと危ないです。なんとか各個撃破できるように立ち回れれば上々なんですけどね」 「それは向こうも同じみたいだけどね」 逃げ回る凶光鳥に狙いを定めて、ルゥミはブレイクショット。まさしく狙い撃ちされた凶光鳥は下半身を吹き飛ばされる。 連携されれば厄介なのは分かっているのは双方同じ。何とか個別に引き離そうと立ち回るが、それで手を出されて落とされても困る。 「まとまったならまとまったで、範囲攻撃で始末もできますのに」 照準を合わせてマレシートも魔槍砲を放つが、飛びまわる相手を捕らえるのは難しい。 敵味方入り乱れつつ。双方共に、どうにも間を開けて牽制しながら、それぞれの隙をうかがうような戦闘が続いている。 「うーん。面倒だなぁ、……と!」 手鏡で背後を確認していたルゥミが、滑空艇を加速させる。 いつのまにやら背後に一体。 覗く手鏡には、大小さまざまな三角形が描かれている。それとの対比で、どのくらいの距離に凶光鳥がいるのかを把握。 さらに怪光線を撃つ気配が無いと見ると、ルゥミは愛機である白き死神をわざとふらつかせた。 白く塗られた滑空艇はよろめくように落ちていく。好機と見て、凶光鳥が追いすがる。 嗅ぎ爪が届く前に、白き死神は一気に加速。 「今だよ! お願い!」 「兄さん、追って下さい!」 突出した凶光鳥に、後ろから炎龍が喰らいつく。 獲物を見失いまごついていた相手に牙を立てると、ロゼオもすかさずサンダーで打ち抜く。 攻撃が集中する。ルゥミ自身も滑空艇の位置を直すと、間をおかずに銃を打ち続ける。 「離れて下さい! 行きますよ!」 滑るように飛び込んできた烈の背で、マレシートが魔槍砲「死十字」を構えていた。 魔砲「メガブラスター」発射。練力を溜めた光線が一気に伸び、射線上にいた敵を次々と落とす。 ロゼオの練力の消費が危ういと見たか。ファイアスは船のそばまでさがる。 玲璃からの精霊の唄で傷を癒しながら、江流と共に船を守り。透子と有人にマレシートは船を気にかけながら凶光鳥を追う。 自然、最前を自在に駆け抜けるのは白き死神とクロム。双方加速し、風を捕まえ、凶光鳥の攻撃も巧みにかわす。 「クロム、がんばって。あと少し!」 それでも軽々にとはいえない。苦しげに翼を羽ばたかせる鷲獅鳥にジークリンデはレ・リカルをかける。 回復できるかどうか。結局それが明暗を分けたか。 傷付いたままの凶光鳥たちはやがて速さも落として、じわじわと打ち落とされていく。 逃げ出そうとする凶光鳥もやがて出てきたが、その背にルゥミは容赦なく、銃撃を浴びせていた。 「これからの安全の為にも逃がさないよぉ」 抜けた羽根が風に散る。 落ちていく凶光鳥も、地上につくまでに瘴気となって失せているだろう。 ● やがて目に見える範囲に凶光鳥の姿は無くなる。 「反応無し。隠れている個体はないようです」 念には念を。瘴索結界「念」で瘴気を下がりながら玲璃は涯と共に飛ぶ。 安全を確認して船に戻れば、開拓者も相棒も疲れた様子で座り込んだ。 「船が無事で良かったよ。地上までとはいえ、休んで帰れる」 「本当に、御苦労様でした」 重い体を横たわらせている白鋼に有人に微笑むと、透子も駿龍を十分になでてねぎらう。 龍や鷲獅鳥が疲れをとっているかたわらで、江流は波美の手当てをしていた。 「よしできた。課題はいろいろだけども、僕の一番の相棒になってくれるんだろ? 頑張ってくれな」 「ええ、これからも結果はきちんと出して見せるわ」 「頼むよ。でも、無茶はしないように」 壊れた箇所はスペアパーツで修復。幸い深手は無い。 「では船はこれより帰還する。短い時間だろうがゆっくりしていてくれ」 船長の声はどこか弾んで聞こえる。 わずかな振動の後、地上へと船は動き出していた。 |