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■オープニング本文 混乱激しい天儀の世の中。 二人の乙女は、もふらに焦る。 「かゆいもふーーーっ!!」 「でも、かくと痛いもふー」 「痛かゆいもふー」 もふらたちが呻きながら、ごろんごろんと転がる。身体のあちこちをかきむしりつつも、その度に嫌そうに手足をひっこめたりしている。 「調子に乗って、雪遊びしてるからだよぉ。ちゃんと御湯で温まって気をつけないとー」 悶えるもふらに、ミツコが腰に手をやり口調を強くするが……。 「といいつつ、うちらも酷い有様なんだけどね」 ため息深く。ひらひらと泳ぐハツコの手は、赤い筋があちこちに入っている。 「あうう、だってもふらさまが雪に巻き込むんだもん」 そして、ミツコの手も、今は全部の指が赤く倍ほどに膨れ上がっている。 若い女性の手とは思えない。無残な姿。 「たらこみたいでおいしそうもふ」 「やーめーてーよーー」 真っ赤な指に、もふらが食いつく。普段ならじゃれ付かれて喜ぶところが、今はしもやけが気になるのかミツコも嫌そうに手を引っ込めている。 「血の巡りをよくしたら治るんじゃなかったかしら? 御湯につけてよく揉むとか」 「でもかゆいんだよねー。はーちゃんは、やってるの?」 手をさすりながら、ミツコが愚痴る。 「水っけが染みるのよね。一応、塗り薬はつけてるけど、ちょっと人前には見せられないわ」 ハツコが苦笑すると、ミツコも泣き言を漏らす。 「でも、御世話はしなきゃいけないしー。もう雪遊び禁止!」 「もふ! そんな横暴は聞き入れられないもふ!!」 もふらたちはそろって頷いている。 雪は例年降るものだし、もふらは毎日遊びまわっている。 無用な傷は作らぬよう、こまめに手当てはしてきたが、今年はどうも調子が悪い。 「もふもふ。こうなったらしもやけを退治するもふ!」 ばりばりと耳をかいていたもふらが、毅然と立ち上がって宣言する。 「どうやって??」 「暖めるのがいいもふ! 温かいというよりあっついお湯につかるもふ! 縮こまるような小さい場所より広い場所の方がゆっくり動けるもふ!! そして栄養をつける為、美味しい物を食べるもふ!」 「……それ、条件合わせると温泉入ってお料理食べよ、ってことよね」 ハツコが纏める。 もふらは答えない。ただ自信満々に、期待に満ちた目で見つめてくるだけ。 「でも、悪くは無いよぉ。血行とか肌にいい温泉だってあるし、のんびりするのはいいかも」 少しだけ考えたふりをしてミツコが答える。 もふらたちが、うんうんとさらに大きく頷き、ずいっっと無言で迫る。 その無言の期待に、ハツコも考える。 「そうね。寒いし、遊びまわるもふらさまにつき合わされてちょっと疲れたし。のんびりするのもいいかもね」 自分の手をじっと見つめて、ハツコはもう一回ため息をつく。 そして開拓者ギルドに、二人ともふらが現れる。 「温泉とかに鍋食べに行こー♪」 「でも、温泉でゆっくりしたいから、もふらのおせわしてくれる人募集」 「もふ。かにむいて欲しいもふ」 一緒に行ってくれる人の旅費は出してくれる。 大勢の方が楽しいので、風呂も御飯も用意してくれるという。 条件は悪くない。ここらでのんびりするのはいいだろう。……もふらさまに振り回される可能性もあるけれども。 |
■参加者一覧
菊池 志郎(ia5584)
23歳・男・シ
鈴木 透子(ia5664)
13歳・女・陰
フェンリエッタ(ib0018)
18歳・女・シ
シュネー・E(ib0332)
19歳・女・騎
リンスガルト・ギーベリ(ib5184)
10歳・女・泰
八甲田・獅緒(ib9764)
10歳・女・武
翆(ic0103)
29歳・男・魔
多由羅(ic0271)
20歳・女・サ |
■リプレイ本文 「しもやけって意外と治すの大変なのよ? なんて言ってももふら様はマイペースだし、注意してあげなくちゃね」 「耳に痛い」 「あうあう。反省しま〜す」 フェンリエッタ(ib0018)からの注意に、依頼者二人は反省しきりだ。 「しもやけに神風恩寵は効かないのでしょうか?」 「効くってさ」 菊池 志郎(ia5584)のふとした疑問にミツコがあっさり。一応ギルドには相談したらしい。 幸い、志郎は術を使える。これでもふらたちのしもやけも治って一件落着……。 「って、それではしもやけ退治に温泉でもふらともふもふという夢も終わってしまうのじゃ!」 もふらを眺めていたリンスガルト・ギーベリ(ib5184)が聞きとがめ、声を上げる。 折角の温泉! カニ鍋! しかももふら付! けれど、目的はあくまでしもやけ治療。 そのしもやけが治っては……もしや依頼終了? 「えー。もったいないから温泉も料理も行くよー。どの道、技で治してもらうのは簡単だけど、今のままだともふら様たち、すぐにまたしもやけ作りそうだもん」 「もふ! 根本的な体質改善には温泉と美味しい食事もふ!」 焦る開拓者を前に、ミツコは不満そうに口を尖らせ、もふらは妙にはりきって胸を張る という訳で、依頼続行。温泉旅行に旅立つ。 (結局の所、お風呂でもふってカニ食べる依頼になるのね。……何この御褒美) シュネー・E(ib0332)が呆れて鼻で笑う。けれど、目はずっともふらを追いかけている。口元も緩んで楽しそうにしているのを、自身気付いているのかいないのか。 ● 「温泉……」 鈴木 透子(ia5664)はどこか懐かしい目で熱い湯と上る湯気を見つめる。 はぐれた師匠は、今は何処の空の下か。 とはいえ、思い出に浸ってはいられない。一応依頼なのだ。 しもやけにはどの湯が効くのか。 聞けば、男湯・女湯・混浴も同じ源泉を引いているので効能も同じという。 「もふらさまも、意識上は性別があったりするけど、この子たちはどうなの?」 「好き勝手してるわね」 「牧場のお風呂は一まとめだよ」 「つまり、どこにでも入るのね」 ミツコもハツコも首を捻り、フェンリエッタは困ったようにもふらたちを見つめる。 水着は用意してきたが、さすがに男湯には飛び込めない。男手に任せねば。 「となれば、俺は男湯で。もふらさまたちはどうしますか」 志郎が尋ねると、もふらたちはどれに入ろうか思案の最中。 「白もふらさまは? 男湯と混浴なら御付き合いできますが」 翆(ic0103)が白もふらとふと目があう。 「どれも一緒なら広いお風呂がいいもふ。遊びたいもふ、泳ぐもふ」 「仲間内でばちゃばちゃやるのはいいですけど、遊びすぎはダメですよ。塀とか壊さないように」 「もふ!」 志郎の注意に、もふらたちは胸を張って約束してくれるが……さて、どの程度守ってくれるのか。 ● とりあえず。女湯と男湯と分かれて入浴。 「温泉で着衣は邪道だよね……」 女湯男湯は着衣禁止。 八甲田・獅緒(ib9764)はさっさと仕度を済ませ、手ぬぐい代わりにもふらに抱きつき、温泉へ。 「ですね。それに混浴も恥ずかしいです」 混浴は水着可だが、男性も一緒。多由羅(ic0271)としては恥らうばかり。 早速お風呂に飛び込もうとするもふらを、けれど透子が止める。 「お風呂の前に、まずは身体を洗う事。そのまま御湯につかるのは厳禁です」 「もふぅ。泳ぎたいもふ」 不満を口にするもふらに怖い顔を向けて、透子はもふらの汚れ落としにとりかかる。 「はうう。もふらさまにしがみつけないと寒いですぅ」 露天風呂。湯につからねば寒さもこたえる。 獅緒ももふらから剥がされ、湿気混じりの風に身を震わせる。 「洗えた子からお湯につかっていいですけど……。つかるとこの毛どうなるのでしょう」 もふもふの毛並みを整え、透子が疑問を感じる。 「ちょっとやそっとじゃ、水気弾いてもふもふのまんまだよ」 「だから水にも浮かぶのよね。がんばれば残念な姿にもなるけど丸いわよ」 もふらの世話はもはや任せた。そう言わんばかりにさっさとくつろぐミツコとハツコも返事ぐらいはしてくれる。 「なんとまぁ。さすがもふらさまというべきか」 お湯につかってくつろぎだしたもふらを、リンスガルトはそっと撫でてみる。確かに、濡れてなおもふもふしていた。 風呂なので水深浅く、足もつく。が、その足も器用に曲げて、もふらたちは水面に浮かぶ。 「しもやけは治療済み。とはいえ、まだ冬の寒さも続きます。同じ事を繰り返さないよう、治療方法は覚えて下さい。――あのしもやけは酷いですよ。普通しもやけになったら遊びはやめますよ?」 多由羅が治療前の状態を思い出す。 もふもふの毛に隠れて分かりにくかったが、患部はパンパンに膨れていた。かなり痛痒かっただろうに、それでも遊ぼうとするもふらには脱帽する。 多由羅ははっしと湯に浮かんでいた桃もふらを捕まえると、足の裏など特にひどかった所を丹念に揉み解す。 「もふふ。くすぐったいもふー」 「暴れちゃダメです。もう一度あんな目に会いたくないなら、冷えた所で遊びすぎない事。自制心はないのですか、もふらさまは」 多由羅がたしなめるも、相手は笑ってばかり。――本当にもふらの辞書には載ってないのかもしれない。 「ミツコさまやハツコさまもご一緒にどうです?」 多由羅の誘いに、横からシュネーが泳ぐように近寄る。 「そうね。貴女のもふらももふらせて……じゃなかった、一緒に治療しましょう。――私のもふら黄色なの、可愛いでしょう?」 「シュネーちゃん、ノボセてる?」 「平気よ」 黄色のもふらにすがりつくと、シュネーはしっかり患部を温め――ているようで、やっぱりもふりを堪能しているようにしか見えない。 「しもやけ治療には熱いお湯と人肌で温めるのが一番ね。大丈夫、私ジルベリア育ちだけど、しもやけになった事ないの」 「そっかー。やっぱり育った場所って大事なんだね」 「もふたちも、じるべりあで生まれてたら雪遊びし放題だったもふ」 ミツコももふらもあっさり信じて、なにやら羨望の眼差しをシュネーに向けている。 透子も、本当にくらげのように浮いている赤もふらを捕まえると、洗面器に水と湯を用意する。 「しもやけには湯水と冷水を交互につけると良いそうです。どこかの書物に書いてありました」 「冷水は冷たいもふー」 「しもやけ退治の為です。――といいますか、もう新しいのが出来てませんか?」 少し教えるだけ、と思っていた透子だが。足の一部が妙に腫れているのに気付く。 「ここに来るまでにも雪はあったからのぉ。体を冷やして、またしもやけを作ったのじゃな」 リンスガルトも確認すると、患部をしっかりと湯にひたして揉み解す。 「靴とか腹巻とかで、しもやけ予防は出来ないのかしら」 「無いよりマシだけど。すぐに濡らして悪化の原因にもしちゃうんだよねぇ」 フェンリエッタの考えに、ミツコは申し訳なさそうに頭を下げる。 「もふぅ! もういいもふぅ。他に遊びに行くもふぅ!」 身体をまさぐられ、くすぐったいのか身をよじるもふらが、脱出を図る。一直線に塀に向かって。 「あ、こら。よそにいくならちゃんと通路を通らなきゃ。塀を壊すのはダメです!」 「そうだ、歌いましょう。歌いながらゆっくりつかれば、しもやけも大丈夫ですよ」 もふらの脱走を多由羅が止めると、フェンリエッタが気を引き歌いだす。 「歌うもふ?」 楽しいことが好きなもふらさまたち。 すぐに興味を引かれて、一緒に歌いだす。 賑やかにもふらたちは風呂を楽しむ。 しかし。 六人の女開拓者と依頼人二名がいるが、ここにいるもふらは赤青黄桃緑の五体のみ。ただでさえ開拓者全員よりもふらは少ないのに、白黒は男たちと男湯に行っていた。 それに気付いたシュネーが、すっくと立ち上がる。 「……。もふら分が足りないわね。向こうに貰いに行きましょう」 生真面目に宣言すると、そのまま男湯へと向かいだす。 本当にそのまままっすぐ。塀を飛び越えて向こう側へと……。 「シュネーちゃん、やっぱりノボセてる?」 「寒い国の人は熱いお湯に弱かったのねー」 変に納得したミツコとハツコに、獅緒はどうしたものかとうろたえる。 「じゃなくて。止めなくていいんですかぁ?」 「そうもふ! 竹塀を越えるのは危険もふ! きちんと片付けるもふ」 「だから、壊しちゃダメなんです……よね」 「そうじゃ。それにまた冷やしてしもやけを増やすつもりか?」 獅緒とリンスガルトがもふらにしがみついて止めようとする。が、案外力持ちのもふらさま。そのまま二人を連れて塀に突進したりする。 そこで、気配で察したか。男湯から志郎の声がかかる。 「塀を壊すような悪い子には、カニの殻を剥いてあげません」 「もふ、それは困るもふ!」 もふらが震えて急停止。 「きゃん!」 「わわわ!?」 「いやん!」 獅緒とリンスガルトが勢いあまって投げ出され、放り出された先にシュネーもいて。 三人が絡まって、塀にぶつかって落ちた。 ● 男湯には白黒もふらと翆に志郎がまったりと湯につかっていた。 「お湯の中で手足を曲げ伸ばししたりして、血行を促進するのがいいですよ」 「もふ。こうもふか?」 志郎の指導で、もふらは手足を曲げて泳ぎだす。何か違うと思うも好きにさせておく。 「しもやけだからと言って侮ってはいけませんよ。また皆で元気に遊ぶことができるように、しっかり治そうね」 しっかりといい含める翆。自身、脚に傷負い、冬はその傷が痛む。動けぬ辛さはよく分かっている。 まったりと温泉を楽しむ二匹に、塀を壊す気配は無い。 あらぬ疑いをかけられる心配はなさそうだ、と志郎は胸を撫で下ろす。けども、それはあくまでこの場にいるもふらたちの話。 「もふ。向こうが賑やかもふ」 「……ですね」 女湯からは、歌が聞こえたり、悲鳴が聞こえたり。人数ももふらも多い分、楽しそうにはしているようだが……。 「塀を壊すような悪い子には、カニの殻を剥いてあげません」 どうにもまずい気がして、志郎が声をかける。 「もふ、それは困るもふ!」 案の定、もふらの慌てた声の後、女性たちの短い悲鳴が届き、塀が僅かに揺れた。 「やれやれ。さっさとあがった方がよさそうですね」 「ですね。……十数えたら上がろうか」 「もふ」 女湯からの賑わいは絶えず。 けれど男湯では。志郎が告げると、翆ももふらたちに促した。 ● 濡れた毛をそのままにしておくのもしもやけに悪い。と、風呂上りには丹念に水気を取る作業。 もっとも、もふらさまの毛はすぐにふかふかに戻る。 「ほほ。全身がもふ毛で気持ちいいのじゃ♪」 「埴輪とは大違いですぅ」 リンスガルトと獅緒が、素肌にもふ毛を堪能する。 「こちらも上がりましたか。薬を作ってきました。あかぎれにも効果があるので、ハツコさんたちにも渡しておきますね」 「ありがと。恩にきるわぁ」 翆は、持ってきた薬を見せると、ハツコが手を叩いて喜ぶ。 「おいしそうもふ」 「食べ物じゃないです。こうやって患部に擦り込んで使うんです」 カラスウリの実をお酢でひたしてよく潰し。ぺろりと舌をだすもふらさまに苦笑しながら、少し手にとって塗ってみせる。 「見ての通り、手を当てて治すから『手当て』と言うんです。早く良くなるように……っていうおまじないだね」 翆が笑うと、もふらも笑う。 ● 風呂から上がると、座敷に用意されていたのはカニ鍋。長い鋏と脚が鍋からはみ出ている。 「ほれ、もふらさま。あーん、なのじゃ」 リンスガルトがカニを剥いて差し出すと、もふらが大口を開けて待っている。 その光景に、シュネーが目を丸くする。 「カニ剥けないの?」 「剥けないもふ。ぼろぼろになるもふ」 「……仕方ないわね、剥いてあげるわ。ほら、はい次。ミソも食べる?」 口を開けて待つもふらに、何気に口端を緩ませるとシュネーはせっせとカニを剥きにかかる。 もふらさまはおいしそうに食べる。――食べるだけだ。 開拓者たちはせっせと剥いて食べさせるが、自分たちだってカニを食べたい。 しかし、食い意地の張ったもふらたちに待ったはない。ちょっと手が遅れれば、待ちきれなくて殻ごとかぶりつく。 「殻ごとなんて。もふらさま丈夫じゃなさそうですから、散々食べた後におなか壊しそうです」 「それはありえる」 多由羅の言い分に、ハツコは至極納得してくれている。が、依頼人たちは自分たちが食べるのに手一杯。 せっせと多由羅はもふらと自分のとを交互に剥いて食べていく。呆れながらも目も手も真剣。あっというまに剥かれた殻が積みあがっていく。 「これも一種の戦場ね。……カニばかりじゃなく、お野菜も一緒にね」 「ですね。カニばかりだと気持ち悪くなりますから、野菜もたくさん取るんですよ」 フェンリエッタが野菜を勧めると、志郎がもふら全員にいきわたるよう取り皿に分ける。 「青魚もしもやけに良いそうですよ。足りないものは追加していいですよね?」 「いいよー。じゃんじゃんいっちゃおー」 鍋にはカニ以外の具もたくさん用意されていた。透子が魚を用意する。 「もふもふ。美味しいもふ」 「わ、私の分も置いておいて下さいよぉ。あ、お酒は遠慮しますぅ」 獅緒がカニ剥くそのそばから、剥かれたカニが消えていく。誰の分だろうとお構いなし。 もふらの分も加えて大量にカニだらけにはなっているが、用意された一人当たりの数は決まっている。が、もふらさまはそんな事一切考慮しない。 「がっつくんじゃないの。行儀よく食べなさい」 もっともシュネーは、そんなもふらが可愛くて自分の分でも気にせず与える。 もふらは幸せそうにカニを堪能し続けていた。 「はぁ。食べたぁ」 「もう無理ぃ。カニは当分見たくもなーい」 もふらを開拓者に任せて、依頼者二人、お腹を膨らませてひっくり返る。 「もふもふ。おなかいっぱいになったら眠くなったもふ」 それよりも丸くなったもふらたち。そこら辺でころんと寝そべる。実に自由気ままでうらやましい限り。 「やっぱり寝ましたね。まぁ、ここなら冷える心配は無いかな」 だらしない格好で寝だしたもふらさまを、翆は和んだ目で見つめる。 もふらが休息に入ったので、開拓者たちものんびりしだす。 「布団敷く邪魔でしょうか」 「いいんじゃないの? もふらさまを布団代わりにしとけば」 畳でごろごろしていた透子が気にするも、ミツコたちはどこまでもおおらか。 「お二人とも、いつももふら様に囲まれていて楽しそうでいいなぁ。俺は最近暗いことが多くてなんだかささくれた気持ちが続いてますが……」 そんなもふらと依頼者を眺めて、志郎は肩をすくめる。 「なんか大変って話は聞こえてるわよ。で、どう? 少しは楽になった」 尋ねるハツコに、志郎は小さく笑い返す。もふらに癒されない者は無い。 |