水の流れともふらさま
マスター名:からた狐
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 易しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/07/23 00:11



■オープニング本文

「あかもふら!」
「あおもふら!」
「みどもふら!」
「きもふら!」
「もももふら!」
「「「「「五体揃って、もふられ隊もふ!!」」」」」
 現れた五色のもふらさまが胸を張る。
「そして、今ここに! 六番目の新たなるもふらさまが!!!!」
 ミツコが声を張り上げ、手を振り上げると、どこからともなくファンファーレと鳴り響き、颯爽と新たなるもふらが姿を現し‥‥てこなかった。
「あれ〜?」
 手を上げたまま、首を傾げるミツコ。
「た、大変もふ〜。くろもふらが〜!!」
 のそのそと裏手に見に行った赤もふらが、もう一体を伴って戻ってくる。
 黒いもふらはのそのそと歩いて目の前まで来ると、おもむろにごろりと転がった。
「うう、やられたもふ〜」
「くろもふらさま! どうしたの!?」
「暑いもふ〜。黒は、黒は暑いんだもふ〜」
 ごろんごろんと楽しそうに寝そべる黒もふら。
「そんな、くろもふらさまが暑気にやられるなんて‥‥一体どうすれば‥‥」
 ミツコは愕然と膝をつく。
 そんな彼女に、五体のもふらは寄り添い勇気付ける。
「祈るもふ! 聖なる祈りこそが、力になるもふ!!」
「天高く伸びる若竹に、願いを括りつけ。昼は暑いから夜に祈るもふ!!」
「一晩中火を灯して、歌って踊るもふ! でもそれはお腹が空くから御飯を用意するもふ! するっと入る素麺がいいもふ!」
「すべてが滞りなく上手く行くよう願いを込めて! 冷たい水に素麺を流して食べるのがさらに祈りを高めるもふ!」
「素で食べてもよし! お好みの具を入れるもよし!! ついでにおやつもあるとさらによし!!!」
「「「「「そうすれば、きっと良くなるもふ!!!」」」」」
 断言するもふらたち。
 力強い言葉に、ミツコは涙腺を緩ませる。
「分かった。くろもふらさまの為に、立派な竹と素麺を用意するからね!!」
 縋りつき、強く誓うミツコ。当の黒もふらは、寝てる内に気持ちよくなったか高いびきをしていた。

   ―― ちょん、ちょんちょんちょん‥‥(← 拍子木。そして幕) ――

「以上、七夕で素麺食べませんかのお誘いでした。あ、おひねりはこちらに♪」
「‥‥ギルド内で商売するな」
 開拓者ギルドの受付前で。六体のもふらと礼を取るミツコに、周囲から拍手と小銭ともふらの餌がぱらぱらと飛んで来る。大道芸の寸劇とでも思われたらしい。
「やーね、こうなった経緯をちゃんと説明しただけじゃない。だから、これは善意の心づけ。ありがたく受け取らなきゃ」
 頭を抱える受付に、ハツコはきっぱり告げて落ちた小銭を集めている。
 さらに、受付は肩を落とす。これはもう、とっとと帰ってもらった方がいいだろう。
「夜に素麺食べながら七夕をしようという事か。開拓事業が忙しいとはいえ、息抜きも必要だしいいだろう」
 開拓事業は好調‥‥とは言いがたい。アヤカシの出現は元より、様々な事故も報告されている。
 だからといって、気を張り詰められすぎてもまたいらぬ事故を招く。
 どの道、参加するしないは開拓者の自由。そう考えて、受付はとっとと依頼募集の手続きに入る。
 それを見届けてから、おもむろにミツコはハツコの袖を引っ張る。
「何よ、ミツコ。ものすごく珍しく真剣な表情して」
「うん。あのね、はーちゃん。みーちゃんは一つ疑問があるんだけどー」
 考え込む仕草の後、思い切ったように言葉をつむぐ。
「もふらさまって御箸使えるのかなぁ‥‥」
 ミツコの素朴な疑問に、ハツコともふらたちが顔を見合わせた。
 じっともふらたちの足を見る。
 頭は悪くないもふらたち。使い方ぐらいは理解出来る筈。
 しかし、その手というか足が、細い棒二本を自在に操れるのかとなれば‥‥きっと無理。
 それでは流れる素麺をすくうなども無理では無いか。
 誰かが器にとって食べさせるのが普通だろうが、それはただの素麺と何が違うのか。流れる意味なし。
 流れてきた素麺を直に食べる手もあるが、それだと流れる水も一緒に飲んでしまうし、味もさほど無い。
「‥‥ま、いいでしょ。多分、開拓者が何とかしてくれるわよ」
「そだねー」
 あっさり結論を出す。人任せである。当のもふらたちもそれでいいやと頷いている。
「ま、あちこち出かけるヤツラなら、いい知恵出すかもな」
 受付も、もう完全に人任せである。
「それで、だ。こっちからも一つ疑問というか、忠告だが。七夕をどこでやるのか知らないが、今の時期、高確率で雨だぞ」
 まだまだ雨の多い時期。すっきり夜空など珍しい。
「‥‥ま、いいでしょ。きっと、開拓者が何とかしてくれるわよ」
「そだねー」
 どこまでも人任せである。


■参加者一覧
燐瀬 葉(ia7653
17歳・女・巫
シャンテ・ラインハルト(ib0069
16歳・女・吟
ブローディア・F・H(ib0334
26歳・女・魔
ラムセス(ib0417
10歳・男・吟
一ノ瀬 彩(ib1213
17歳・女・騎
草薙 茜(ib2268
19歳・男・巫
蒼海 理流(ib2654
15歳・女・弓
劉 星晶(ib3478
20歳・男・泰


■リプレイ本文

 倒れたくろもふらの為(?)、流し素麺を行う事になった開拓者たち。
「雨‥‥ですね」
「雨だわ」
「雨だー」
「雨もふ」
 空を見上げて呟く蒼海 理流(ib2654)に、ハツコとミツコともふらが続く。
 季節柄、あいにくの雨天。何か遠雷も聞こえてくるような気がする。
 それでも、この日にやらねば意味が無い。
「七夕だもんっ。一年に一度恋人たちが出会える唯一の日!」
「愛の力が高まる日もふっ! その力を借りてくろもふらも元気になるもふ」
 ミツコとあかもふらが胸を張る。
 当のくろもふらは、他のもふらたちと一緒に持ち寄った食材をつまみ食いしようと狙っている。
 ラムセス(ib0417)が、連れてきたもふらのらいよん丸と阻むと、すねて転がったが、また様子を見ては手を出したそうにしている。
「もふらさまたち、増えたのですね‥‥。六体目は確かにお約束とどこかでお聞きしましたが」
「約束は守るもふ!」
 シャンテ・ラインハルト(ib0069)に、もふらたちは自慢げに告げる。
「微妙に約束の意味が違う気がするのよね。別にいっけど。‥‥別によくはないのが、この天気。中止する気も無いけど、どうする?」
 雨に手を翳すハツコに、草薙 茜(ib2268)も並んで空を見上げる。
 多少の雨なら濡れても知れてるが、結構普通に降っている。雲の流れも早く、雷雲が流れてきそうだ。
「少しくらいの雨なら風情があるとも言えるけど‥‥。まぁ、屋内でやるのが妥当だろう」
 茜は無粋な雨に睨みを入れる。
「雨の日の流し素麺か‥‥。それはそれで新地開拓になるやろか?」
「好んでやるのは物好きだけよ」
 悩む燐瀬 葉(ia7653)に、ハツコは諦め気味に肩を竦める。
 雷が鳴りそうなのに、暢気に外にいるなど出来ない。アヤカシ退治などであれば仕方ないと腹を括れるが、流し素麺で感電はいただけない。
「一応、雷避けに少し離れた木にロットブレードを刺し立てて置きました。行かないと思いますが、あちらの高い木の傍には寄らないで下さい」
 一ノ瀬 彩(ib1213)が、離れた場所にある木を指差す。
「でもー、それって優先的にそこにばしゃばしゃ雷落ちるって奴だよね?」
 離れているといっても、視覚的には目と鼻の先。
 想像したのか、ミツコが不安そうに顔を歪める。
「‥‥だ、大丈夫です。その分、こっちが安全になるはずです。ちゃんとテストもしましたから」
 同じく想像し、彩も体を強張らせる。
 それを振り払うように、ブローディア・F・H(ib0334)を見るのだが、
「そうですね。でも、アークブラストでは大丈夫でしたが、何が起こるか分からないのが自然現象ですから」
 豊かな胸を揺らしながら、告げられた言葉に、二人揃って顔を引き攣らせていた。
「確かに生憎の空模様ですが‥‥。楽しい流し素麺になるといいですね」
 そんな二人を宥めるように。劉 星晶(ib3478)は穏やかに笑う。


 用意されていた小屋は少々手狭。とはいえ、この雨の中、文句も言えない。
 さらに降りが酷くなる前に、急いで設営にかかる。
「折角水が降ってくれてるのだから、この雨を利用できないかしら」
「あ、お手伝いします」
 男性陣が各々小屋の周辺や中で作業をしているのを見て、彩は屋根に登るブローディアの後を追う。
 持ち主からは、屋根を壊すのは駄目だが上に何か乗せたりするぐらいはいいと告げられている。
 ブローディアは小屋の周囲に屋根を作り、水を一箇所に集めようと作る。
「大丈夫ですか?」
「何とかね。髪も濡れるし、服も湿気るし。本当嫌な雨ね」
 ブローディアは髪を掻き揚げると、胸にたまった水を拭う。
 滑りやすい現場で、ブローディア指示の元に彩も木や竹を担ぎ上げて機敏に動く。
「お願いした天幕はありますか? 小屋から張り出す形にすれば広く使えるかと思います」
「ここに貰ってきてるわ。組み立て手伝って頂戴」
 星晶の申し出に、ハツコが天幕を出してくる。
「吹き込まんように、これも使てくれて構わへんで」
 葉が手持ちの外套を差し出すと、自分は料理の支度にかかる。
 万傘や竹槍も使って、雨が吹き込まぬように工夫。更に風に飛ばされぬよう、星晶はしっかり荒縄で固定する。
 茜と理流は小屋の中で、竹を割り、組み合わせて素麺を流す台を作っている。
「節は、綺麗にとった方が、いい‥‥ですよね? 縁も、お怪我が無いよう、削っておかないと‥‥」
 理流は節などでひっかかりが出来ないよう、さらに丁寧にシーマンズナイフで削り上げる。
 そうして整えられた竹を、ラムセスは嬉々として構築していく。
「流しそうめんははじめてデス。もふらさまも一緒デスから、すごく楽しみデス。ね、らいよん丸さん」
 ラムセスは自身のもふらに語りかける。
 その体格に合わせ、彼らも食べやすいように竹の高さを調節。
 流れるそうめんが取りやすいよう、傾斜はなるべく緩くする。
「支える台もあった方がいいみたいですね」
「そうデスね。もふらさまたちが食べやすい高さに食器が置けるようにした方がいいデス」
 三脚を作る理流に、ラムセスはもふらたちを呼んでどの高さがいいのかを調整する。
「じゃあ、結局もふらさま犬食いするの?」
 その様子を見ていたハツコが尋ねる。手を出すと、もふらはぽんと右前脚を置く。
 指はあるし、知恵もあるが、だからと言って箸使いが出来るほど器用でもなさそう。
「大丈夫もふ。いい物を作ってもらったもふ♪」
 もふらたちは気分上々、竹細工の棒を持ってくる。
「小さい刺又とか刺しにくい簪とか?」
「フォークです。ジルベリアの食器」
 首を傾げるミツコに、シャンテが笑う。
「流し台の余り素材で作ってみた。普通のフォークも探せただろうが、金属とかだと素麺の風味が台無しになると思ったから‥‥。うろ覚えだったが、シャンテさんがいて助かった」
「折角なので、それぞれもふらさまたちの色に合わせた飾りも付けてみました」
 礼を告げる茜に、シャンテが笑う。
 茜が鉈を手に細工した竹片を、シャンテが整えて仕上げる。自分の食器に、もふらたちは満足していた。
「落とさないように、前足に括りつけるデス」
 ラムセスがもふらに持たせて、余り布で支える。
「これで、後は水を流すだけですか?」
 流し素麺の台に、彩が外からの水路を繋げる。
「うわー、やばいやばい。ちょっと誰か手ぇ貸して」
 隅に設けられた簡易厨房で、葉がわたわたと悲鳴を上げる。
「あー、お鍋吹いてるー」
 人数分+もふらさまたちの素麺。薬味も用意しだすと、量は半端ない。手が回らなくなるのも仕方ないか。
「えーと水注せばいいんだっけ?」
「コシが無くなるから、火を弱める方がいいと聞いたもふ」
「えー? 水入れた方が麺が締まるってみーちゃんは聞いてたけどー?」
「えーから、手伝うんやったらはよしてぇ。どこまでのんびりやねん。伸びるがな」
 暇そうにしていたもふらたちとミツコがのこのこと竈の傍によるが、そこでそのまま対策会議。
「屋根は大体出来ましたし、こっちの手伝いに入りましょうか」
「ありがとう。そっちの出汁を見てくれへんか?」
「はい。‥‥もふらさま、これのお味付けいかがですか?」
 彩が入ると、もふらに味の調整を見てもらう。
 その間にも、葉は葱刻んだり茗荷切ったり卵溶いたりと手際よく動く。
「ところで皆さんやもふらさまたちのお願いは何ですか?」
 手に巻いた包帯が不衛生かもと、料理は遠慮した理流。その間に、皆の願いを聞いて回っていく。
「何で、そんな事聞くの?」
「‥‥だって、七夕ですよ? 短冊に願い事は基本‥‥。依頼でも、そんな事を‥‥仰っていましたよね?」
 立てかけた笹に、理流は短冊や飾りをぶら下げていく。
「僕は、お母さんが元気でいてくれますように、お父さんがおなかを気にしませんように、デス」
 ラムセスも、書き方を教わりながら、短冊を仕上げていく。
 その様子を見ていた依頼人二人ともふらたち。
『おおっ!』
 一斉にぽんと手を打つ。どうやらもうすっかり忘れていたようだ。


「じゃあ、水流すわよ」
 ブローディアの声が外から届く。
 明り取り用の窓から樋が入り、小屋内の素麺流し台に繋がる。しばらくすると、そこにちょろちょろと水が流れてきた。
 取りそこなった素麺が流れ去ってしまわないよう途中で笊をつけ、水はそのまま外に排水するよう取り付ける。
「ご苦労さん。風邪引かんようによう体拭いてな」
 雨風はさらに激しさを増しており、おかげで流水が上手くいったのは幸か不幸か。
 戻ってきたブローディアに葉が手ぬぐいを渡す。
「わーい、完成だー」
「食べるもふー。くろもふらが元気になるもふー」
 ミツコともふらたちが揃って喜ぶと、さっそく椀を手に台の傍に待機。
「あの。素麺流す役をやっていいですか?」
「私も‥‥。もふらさんたちが楽しんでいる姿が見られれば、それだけでいいので」
 星晶と理流がそれぞれに手を上げる。
 話し合いは少しだけ。交互に流せばいいじゃんという事で落ち着いた。
「では、いきまーす」
 心持ち多めに理流が流すと、すぐに流域で一騒動起こる。
「一番もーらい」
「ずるいもふー。それはリーダーが貰うもふ」
「違うもふ。可愛いもふらがもらうもふっ」
「じゃあ、決めてる間に食べちゃうもふ」
 口々に言い合いながらも箸やフォークは動いて、素麺を奪い合う。 
「‥‥こっちに回ってよかったです」
 その様に、理流がぽそっと呟く。
「沢山作ってあるんやし、落ち着いて食べぇな」
「えー、でもぉ」
 呆れる葉に、ミツコが口を尖らせた時だった。

――ドーーーーン、バリバリバリ‥‥!!

「うきゃあああー!!」
 地面を揺らす轟音。一瞬の閃光が全てを白く染め、木々を切り裂く甲高い音が響く!
「落ちた落ちた落ちたーーーっ!!」
「落ちたね」
 騒ぐミツコを、ハツコが無理やり黙らせる。
 外を見れば、ロットブレードを刺したという木から煙が上がっている。
 上空を仰げば、厚い雲に雷光が走り、その都度嫌な音が周囲に響く。
「大丈夫もふか?」
 真っ青な顔でしゃがみ込んだ彩に、もももふらが声をかける。
「‥‥だ、大丈夫です。何ともありません。御心配なく‥‥。っっ!!!!」
 立ち上がり、器と箸を持ち直す彩だが、その直後にまた雷鳴。
 気丈に振舞うものの、握っている箸の先が細かく震えているのは押さえられない様子。
「外からの水に沿って、通電してくるって事は無いの?」
「そんな事を今言われてもねぇ」
 しげしげと首を傾げるハツコに、どうしようもないとブローディアは肩を竦める。
「悩んでいても仕方が無い! ここはやるべき事をさっさとやろう!!」
「そうもふ! 食べて飲んでお腹一杯にして寝るもふ!!」
 恐怖からか、逆に高揚した面持ちで告げるミツコに、もふらは気にせず素麺を要求する。
「では、篝火も負けじと灯しましょう」
 くすくすと胸を揺らすと、ブローディアはファイアーボールで松明に火を灯す。
「こちらも流しますね」
「おう、もふ!」
 星晶が再び素麺を流し始めると、もふらたちは競ってフォークを操る。
「食べさせる必要は無さそうだな」
 器用に食事をするもふらたちに、茜は安心する。
「それをのんびり見ていると、食べ損なう危険はあるけどね」
 それもそうだと、他の開拓者たちも竹に沿って並んで負けじと箸を伸ばす。
「あ、あ、あ‥‥。いっちゃいました。箸使いは難しいですね」
 もふらたちにはフォークを与えたものの、自身は流儀に合わせて箸に挑戦するシャンテ。
 とはいえ上手くいかないようで、取る素麺よりも流れていく素麺の方が多い。それでも、それすら楽しんで器に入れた美味しそうに素麺を啜る。
「冷えてきたら、温かい素麺にするのもいいデスよね」
 ラムセスは、もふらさまたちの足拭き用に、フィンガーボールを置いて回る。
「大丈夫もふ。情熱を燃やすもふ!」
 雨の涼しさもどこへやら。もふらたちは満足そうに素麺を貪っていく。
「♪ そらのあかるいおほしさま したでともるねがいのひ ‥‥」
 ラムセスは歌と曲を披露して場を盛り上げると、もふらたちが合わせて踊り出す。

 素麺は順調に減っていき、皆の賑わいで雷騒ぎも音を潜める。
 その熱気か、隙間風か。願いの短冊が飾られた笹もまた楽しげに揺れる。
「今度は、晴れた時にしてみたい、ですね」
 シャンテが残念そうに笑う。
 そんな中。揺れる笹の葉に、星晶はそっと自分の短冊を結わえる。
「皆の願いが、叶いますように」
 ささやかな願いを天に託すと、また皆の輪の中に戻る。

 いつの間にか、雷鳴も遠くに響くのみ。
 雨も、いずれは止むだろう。