希儀 ゴーレム撃退
マスター名:からた狐
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2014/03/03 19:18



■オープニング本文

 希儀の開拓も一年が過ぎた。
 大きな気候変動や異変もなく、どうやら希儀が移住に足る儀であるのは間違いないようだ。
 大アヤカシも消え、目立つアヤカシたちの活動も確認されていない。
 だが、アヤカシ被害が完全に消え去ったわけでも無い。


 希儀には先住の民の遺跡がそこかしこで見つかる。
 有益な場所もあれば、特に何も無い場所もある。
 そして、中には害悪を封じ込めた遺跡も存在する。

 森の中に埋もれていた遺跡。どうやら先住民が消えた時にはすでに放置されていたらしく、巨大な樹がすでに遺跡の大半を飲み込み押し潰していた。
 大理石を削ったらしい装飾も、風雨にさらされぼろぼろになっていた。
 得る物は無く。調査に訪れた調査団たちも、簡単に報告書を書いただけですぐに帰ろうとした。
 そこで、地面が揺れた。
 地震かと思ったが、そうでは無い。
 奇妙な揺れと共に、樹は倒れ、遺跡は完全に潰され崩れた。
 瓦礫と化した場所には完全に用は無くなった。それを惜しむ気持ちも無い。
 それ所でもなくなった。
 揺れが収まり、瓦礫と化した遺跡の中から、その瓦礫を押しのけ、姿を見せた物があった。
「ゴーレム!!」
 誰かが悲鳴を上げた。
 岩山のようなごつごつとした体躯。人の形を取った物々しい姿は、見上げるほどに大きい。
 その周囲でも、瓦礫の砂が不自然に渦巻き、盛り上がり、人型を取る。
 おそらくは遺跡に埋められていたのだろう。それが、長く放置されて封印も老朽化し、そこに調査に来た人間の気配を察知して動き出したのか。
 それでもすぐには状況を把握できないのか。現れたゴーレムたちはしばし固まっていた。だが、顔に埋まった宝石が不気味な光を帯びると、おもむろに活動を始めた。
 砂埃をあげながら、ゆっくりと体を動かし、獲物を見出す。
 すなわち人間たちを。
 勿論、人間たちもぼけっとしていたわけでは無い。
 腰の抜けた仲間を引き摺りながら馬に乗せ、一も二も無く逃げ去っていた。

 その場はからくも逃げおおせた。が、ゴーレムたちはそのまま。恐らくは人の気配を感知して、移動するに違いない。
 かくて、開拓者ギルドに依頼が出される。
 復活したカスルゴーレムとサンドゴーレムを、人里にたどり着く前に撃退せよと。


■参加者一覧
神町・桜(ia0020
10歳・女・巫
梢・飛鈴(ia0034
21歳・女・泰
水鏡 絵梨乃(ia0191
20歳・女・泰
鴇ノ宮 風葉(ia0799
18歳・女・魔
サーシャ(ia9980
16歳・女・騎
ルンルン・パムポップン(ib0234
17歳・女・シ
来須(ib8912
14歳・男・弓
スチール(ic0202
16歳・女・騎


■リプレイ本文

 騒がしく鳥が舞い、獣たちが鳴き、煙のように土が立ち上る。
 森の奥から、破壊の音。それは、ゆっくりと、確実に近付いてきている。
「砂漠でもないのにデザートゴーレムが現れたのはなかなか興味深い話ですね〜」
 ニコニコ笑顔で緊張感無く、サーシャ(ia9980)は湧き上がる砂埃に目を向けている。
「迎え撃つ場所は森だな。飛び回るにはあまりよろしくない所だが、相手の知能を考えればなんとかなるだろう」
 水鏡 絵梨乃(ia0191)は相棒に呼びかける。羽根を繕っていた輝鷹の花月は、呼びかけに気付くと、鋭い眼差しだけを返してきた。
 待っていても、向こうは人の気配を察してやって来てくれたかもしれない。
 だが、街に近い場所で戦おうとは思わない。
「避難が終わっているとはいえ、棲家を壊すのは流石にのぉ」
 神町・桜(ia0020)が弱ったように街を振り返る。
 人を巻き込む心配はなくても、家が壊れたら今後の生活に困る。場所を守るに越したことは無い。それに街道に出られては、避難している次の街まで阻む物が無い。
 揃った開拓者は七名。そして、その相棒たち。
「街には絶対近づけさせないもの……それに、ゴーレムの図体だったら、私達以上に森の中では動きづらいに違いないんだからっ!」
 ルンルン・パムポップン(ib0234)は、びしっと森を指差す。手入れもされずに乱立する木々は、でかい図体のゴーレムたちには障害でしかないはず。
 ついで、アーマー「人狼」のパーシヴァルを見る。動かしているのは、スチール(ic0202)だ。
「動き辛いのはこちらも同じだが。時間稼ぎぐらいは手伝える」
 大きさはデザートゴーレムと同じくらい。向こうが動き辛いなら、駆鎧も動きはやや制限される。まだまだ操作に不慣れな所のあるスチールとしては、不安も残る。
 しかも移動するだけでも練力の問題もある。その為、万屋商店でアーマーケースが置かれていたりもするが。さて、どこまで持つか。
「まずはカスルゴーレムにかかって時間稼ぎをするヨ。何なら、とっとと倒していいよネ、……と言いたいケド。木々が邪魔というのはコチラも同じネ」
 面目なさそうに、梢・飛鈴(ia0034)は相棒を見上げる。
 並んで困った顔をしているのは駿龍の艶だったりする。本当は人妖を連れてくるつもりだったが、何か手違いあったらしい。
 戸惑う相棒に、飛鈴も申し訳ないと軽く宥める。


 地響きが強くなる。大体の居場所は分かるが、鴇ノ宮 風葉(ia0799)は宝狐禅の山門屋つねきちを召喚。狐の早耳でさらに詳細な位置を探る。
「数は六。背は街。練力には限りがある。余裕はない――いいわね、そうでなくちゃ」
『威勢がいいのう、お嬢』
 どこか楽しげに笑う風葉を、つねきちは口元を震わせ頼もしげに目を細めて見る。
 慎重に近付き、そして相手を捕らえる。
 居並ぶデザートゴーレム。飛びぬけてでかいのがカスルゴーレム。向こうもこちらに気付いたか。木々を砕く音がどんどんと迫って来ている。
やがて森の奥から、木々をなぎ倒してゴーレムたちが姿を見せる。見せると同時に、動く。
「でかいゴーレムはこちらで相手しよう。生身より死ににくいはずだ。時間を稼いでいる内に、他のを頼む」
 スチールがパーシヴァルを動かし、飛び出す。
「森の奥でかつて何があったか。興味深いですけど、まずは脅威の排除からです」
 サーシャは背負っていたアーマーケースを広げる。
 アーマー「人狼」改のアリストクラートが出現すると、機敏な動きで乗り込み、瞬く間に起動させていた。

 行く手を阻むように、まず飛び出してきたのはデザートゴーレムたちだ。カスルゴーレムの巨体はその奥にある。
 デザートゴーレムたちを逐一相手にしてから、カスルゴーレムとやりあうのは確かに骨だ。
 だが、砂で出来たその体。その頭上から飛び込んだのは、駿龍の艶だった。翼や爪を振るい、巧みにデザートゴーレムたちをかき乱す。
 デザートゴーレムたちの動きが乱された隙間を縫い、無駄な相手はせずにスチールはカスルゴーレムへと迫っていた。
 さらに、絵梨乃は花月と同化。大空の翼で飛び上がると、やはりデザートゴーレムたちは軽く乗り越え、カスルゴーレムに向かう。
 岩で出来た塔を思わせる、堅い体躯。その天辺にある顔周辺を飛びまわる。
 カスルゴーレムの知能は低い。周囲を飛ぶ虫を追い払うように、飛びまわる開拓者たちを叩き潰しに腕を振り回す。
 巨体に似合う太く頑丈な腕。それに叩かれるだけでも大怪我必須。
 やみくもに振り回していた動きに合わせて、パーシヴァルがぶち当たる。振り回される腕を掴むと、そのままよろめいた巨体をデザートゴーレムから引き離す。

 デザートゴーレムの方はといえば、カスルゴーレムに比べれば多少は知能がある。犬猫程度だが、状況判断ぐらいはしてくる。
 そして、カスルゴーレムがはがされたと悟るや、加勢しようと身をひるがえした。
 ここで群がられては意味が無い。
 その一体の横面が歪み、弾け飛ぶ。力の歪みだ。
「さて、デカブツ相手じゃがなんとかせぬとのぉ。わしの相手はあっちの小型のデカブツじゃな」
「やれやれ、何が悲しくて妾があんなガサツそうな奴の相手をしなければならぬのにゃ」
 桜が構えるのは巴型薙刀「藤家秋雅」。全長七尺三寸の大きな武器だが、それでもゴーレム相手に接近戦は厳しいし、それでやりあう気も無い。
 攻撃されたと知ったゴーレムが、加勢ではなく報復に出た。
 気を引けたと知り、桜が内心笑う。だが、浮かれてもいられない。急いで距離を置き、力の歪みを叩き込む。
「鬼さん、こちらなのです」
 ルンルンが魔刀「エペタム」を構えて奔刃術で走り回る。
 暴れまわるゴーレムたちにより、地面は凹凸が激しい。それに足も取られず巧みに走り回ると、デザートゴーレムたちの連携を阻止する。
 ちょろちょろと走り回るルンルンを、うっとうしいそうにデザートゴーレムは踏み潰そうとする。目先の獲物に捕らわれ、周囲が見えていない。
 その死角から、さらに真紅の迅鷹が飛びまわる。足元と頭上と二箇所でうろつかれれば、さすがにデザートゴーレムも何を第一に攻撃すべきか、優先順位が付けられない。
 戸惑っている内に、ルンルンは鑽針釘を核目掛けて放つ。核に当たるも、ゴーレムの動きに変化は見られない。動きを止めるまでは、鈍りもしない。厄介な相手だ。
「桜花、閃光で援護を」
「ゴーレムに目晦ましが効くかにゃー? ま、やってみるのにゃ」
 さすが仙猫。桜に言われるや、するすると森の木の上に登り、枝を伝ってゴーレムの上を動き回る。
 機を見計らい、閃光。危惧した通り、どれほど効果が出たかは分からない。
 けれど、いきなり光ればさすがにデザートゴーレムでも警戒はする。
 動きが鈍った所で、風葉がサンダーヘヴンレイを核目掛けて打ち込む。
 狙い違わず、一つ目のようなデザートゴーレムの顔が吹き飛ぶ。けれど、その一つ目がぎょろりと動くと、風葉に向かい突進してきた。
 大きな一歩で瞬く間に間合いを詰められ、砂の拳が頭上高く振り上げられる。
 叩かれる前に、真横から飛び込んできたのはサーシャのアーマー「人狼」改・アリストクラートだった。シールド「グラン」で押さえ込むと、その顔目掛けて豪剣「リベンジゴッド」 を振り下ろす。
 その一撃でさらに、核にひびが入った。けれど苦ともせずに、デザートゴーレムは鋭い爪を打ちつけてくる。
 デザートゴーレムと駆鎧が競っている間に、風葉は間合いを取りなおす。
「単独の魔法だけじゃ、まだ足りないか。だったら……!」
「やれやれ。老体をこき使いよる」
 呼び出されたつねきちが風葉に同化する。と、風葉の身につけているセイントローブなどが炎を纏うように揺らめいた。
 その状態で再びサンダーヘヴンレイを、なるべく他のゴーレムを巻き込むように放つ。
 無差別に攻撃を続けていた一体が砕けた。瘴気が空に散り、砂が崩れ落ちて風に散る。
 だが、他の個体は纏う砂を欠いた程度で、まだまだ勢いよく動き回る。本当にしぶとい!


 デザートゴーレムを引っ掻き回しつつ、撃破していく。そこにカスルゴーレムまで乱入されては困る。
 カスルゴーレムを引き離したまま、留めるのもまた重要な役目。
「だが、別に倒してしまっても……、なんて言ってる場合じゃないネ」
 無茶苦茶に拳を振り回すカスルゴーレムを、飛鈴は八極天陣で身体の気を整え、俊敏に回避する。
 デザートゴーレムたちが倒されようと気にする様子はなく、目先に群がる開拓者へと攻撃を繰り出している。
 本能赴くままだ。防御しようとすらしない。
 飛鈴は、繰り出された拳をかわすと、間合いを詰め、カスルゴーレムの右脚に向けて暗勁掌を叩き込む。
 そして、離脱。即座に衝撃を与えたはずの右脚が平然と振り上げられ、蹴り倒そうとしてくる。どうにか転がると、強い風が飛鈴の体を撫でた。
 危険と察して、パーシヴァルがアーマーアックス「エグゼキューショナー」を打ち込む。巨大な音が金属音を響かせると、ゴーレムの体が砕ける。だが、全体としてはまだまだ些少。逆に刃が欠けないかが心配になる。
 ゴーレムと駆鎧が組み合っている間に、飛鈴はやはり距離を置いていた。
「やっぱり顔を狙わんと駄目カ」
 体は硬い。さらに隙を与えると、その間に回復されてしまう。無尽蔵に体を治せるとは思えず、どこかで打ち止めはあるだろうが、厄介なことには変わらない。
 さらには。
 カスルゴーレムに組み付いていたパーシヴァルがその動きを止めた。機能を停止させると、中からスチールが転がり出てくる。
「あー。もう限界だ!」
 駆鎧の使用には練力の限界がある。動かせない駆鎧を障害物として、スチールはセントクロスソードを引き抜き、掲げる。
 が。
「こちらはもう無理……かくなる上は私自身が!」
 勇みこんで立ち向かうも、見上げる相手はまさに山。今、自分が降りてきたパーシヴァルをさらに振り仰ぐ。
「……かくなる上は、小さいゴーレムを私自身が!」
「そうネ。命大事二、とも言うネ」
 スチールは抜いた切っ先をデザートゴーレムに向け直す。
 その様を、飛鈴は承諾するように笑って見る。
「多少の無茶もしないと、やってられないけどね」
 動かなくなったパーシヴァル。それがなぜか理解できるはずなく、そのまま拳を振り下ろし続けるカスルゴーレム。
 その拳の動きに合わせて、絵梨乃は同化した翼を広げ、飛ぶ。
 唸る豪腕に巻き込まれたらひとたまりも無い。が、本能のままの動きは、精錬された格闘術と違い、隙も見出しやすい。
 重心がぐらついたのを見て取るや、絵梨乃は上空から急降下。核目掛けて、絶破昇竜脚で蹴り付ける。
 避ける、という考えも乏しいらしい。一撃は見事に核を撃ち、まるで龍のような轟音と閃光を辺りに撒き散らす。
 その蹴りつけた足に力を込めて、絵梨乃はカスルゴーレムから飛び退く。途端に、今まで絵梨乃が居た場所を、蚊でも叩くかのようにカスルゴーレムの手が打ち付けていた。
「……図体考えても、こっちの方が倒すのに時間かかるだろうとは思ってたけどね」
 木の枝に着地すると、気息を整える絵梨乃。ゴーレムはやはりしぶとい。
 デザートゴーレムの掃討もまだ少し時間が掛かるか。


 アリストクラートがデザートゴーレムと組み合う。
 動きを止めた所で桜が精霊砲、桜花が黒炎破を同時に核へと打ち込む。
 核が砕けると、デザートゴーレムが見る間に崩れ落ちる。
 その砂に紛れるように、向こうから新たなデザートゴーレムがアリストクラートに突っ込んできた。
 巻き込まないのを確認してからアリストクラートはゴーレムの突撃をかわす。目標を失いたたらを踏んだ敵に対して、即座に剣を振り下ろす。
 まだ稼動はする。が、それも時間の問題なのはサーシャも理解している。
 しぶといデザートゴーレムを早く始末しようと、次の相手に向き合おうとし。
 視界が曇った。ゴーレムが体を構成している砂を撒き散らし、目潰ししてきたのだ。
 思わず怯み、次の行動をどうするか迷っていると、横殴りに衝撃が来た。
「くっ! やりますね」
 次の攻撃が来る前に、盾を掲げる。重い衝撃を受け止めて一旦距離を置く。
「これで晴らせるかな。どうかな」
 風葉がトルネードキリクで風を起こす。広域に吹き荒れる風に一帯の砂も巻き込まれる。その中からデザートゴーレムたちも姿を見せる。
 晴れた視界に、ゴーレムが次の拳を振るっているのを見た。
「今です。蓬莱鷹ちゃん、スカイダイブ!」
 高らかなルンルンの声にあわせて、急上昇した真紅の迅鷹が死角から急格好。デザートゴーレムの注意が蓬莱鷹に向く。
 まとわりつく鳥にさらに振り回されたところで、ルンルンは核目掛けて走りこむ。
 さっと蓬莱鷹がゴーレムから距離を置くと、ルンルンに迫る。煌きの刃で同化すると、ルンルンのエペタムが煌く光に包まれる。
 迅鷹の軌跡を追った拳が、そのままルンルンに迫る。かわすとすかさず反撃。夜を用いて時を止めると、核に刺さる刀をさらに深く突き入れていた。
 独特の鳴き声が止まった世界に響く。再び動き出した時、ルンルンは軽い足取りでゴーレムから飛び降り、砕けた核が遅れて降って来た。
「ふふふ。私が動いた事すら気付かず、砂の固まりに戻るのです……。そして、時は動き出す」
 不敵に笑うルンルンの肩で、蓬莱鷹が誇らしげに一度だけはばたく。
 巻き上がる大量の土砂に目をくれず。残るゴーレムの始末にかかる。


「怪我は無いか? 向こうも直に終わる。さすれば、後はこやつだけじゃ」
 デザートゴーレムが残り二体になったところで、桜は標的をカスルゴーレムに変える。
 巨大なカスルゴーレムは核を狙うのも一苦労。それならばと、核を直接狙わず、右足を集中的に狙い続ける。
「そろそろ、倒れろ!!」
 絵梨乃が足元に回りこむと、極神点穴を放つ。
 内部に直接衝撃を伝える技だが、やはり一撃必殺とはならない。
 踏み潰されないよう、攻撃を仕掛けたら即座に距離を置く。その逃げた相手を追って、ゴーレムはさらに踏み込んでくる。するとその隙に今度は飛鈴が暗勁掌。
 相手が単純だからか、単調な手順に陥る。が、気を抜けばカスルゴーレムに捕らわれ握りつぶされそうになる。
「回復は苦手じゃと言っておいたろうに」
 嘆息しながらも、桜は適度に神風恩寵を使う。
 やがて、何度目の攻撃か。ゴーレムが獲物追いかけ一歩踏み出すと、その足が音を立てて折れた。
 一本足では支えきれない。よろめくカスルゴーレムに巻き込まれないよう、一同は一旦大きく退いた。
 轟音に地響き。巻き込まれる森の木々がさらに倒れ、もうもうと舞い上がる砂煙で、周辺一帯が一時的に視界を閉ざされる。

 風葉は狐の早耳を使うと素早く気配で情報を探る。
 周囲の木々を薙ぎ払う。ゴーレムたちの動きは分かりやすい。
「そこだあああああ!」
 砂が晴れると同時。姿を見せたデザートゴーレム目掛けて、すかさずサンダーヘヴンレイを放つ。もちろんつねきちも合わせて焔纏使用。威力を挙げた雷は、見事に核を打ち抜く。
 押し出されるように核が宙を飛び、地に落ちるとそのまま散る。
「こちらも!」
 アリストクラートがふみこむと、剣を振るう。その一刀でゴーレムの首がもげて落ち、核も地面に転がった。
 トドメとばかりにスチールがセントクロスソードを振り下ろすと、あっけないほどもろく砕けた。
「残りはカスルゴーレムだけ。幾ら再生能力をもっているからといって、すぐに脚も生えないだろう」
「今が好機にして正念場ネ。全力でかかるヨ!」
 絵梨乃が声を上げると、飛鈴も素早くカスルゴーレムを駆け上り、低くなった核へと極神点穴を打ちつける。
 カスルゴーレムは身を起こそうとするが、やはり脚一本では身動きとれない。駄々っ子のように手足をばたつかせ、のたうちまわる。
 その動きをさらに龍や駆鎧で食い止める。
「これで終わりにゃ! 妾の黒炎破を食らうがいいにゃ!」
 桜花が毛を逆立てて息を吸うと、開いた口に黒い炎塊を集め吹き付ける。
 相棒、開拓者一丸となり、カスルゴーレムを抑えて叩きのめす。そうなると、核が打ち砕かれるまでさほどの時間もかからなかった。


 ゴーレム全てが瘴気に帰ったのを確認。傷の治療をしてから、街まで戻る。
 避難命令の解除を手続きすると、ほっとした表情で街の人たちが戻ってきていた。
 遺跡に何があったのか。推論だが、アヤカシに手を焼いた希儀の先住民があの遺跡に封じ込めていたのかもしれない。だが、見張る者がいなくなり、長い月日で野さらしにされた遺跡は封印の効力を弱め、そこに探索で人が近付いたことで、あんなアヤカシがこんな場所に出現したのかも。
「もしかして、他にもまだこんな遺跡があるのでしょうか〜〜」
 サーシャののんびり笑顔はいつもの通り……のはずが。どこか、曇って見えるのも仕方がない。
 開拓の手は進んでも、まだまだ謎が残る儀。平和に見えても、油断はできそうになかった。