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■オープニング本文 とある戦場。泰拳士がアヤカシたちの前に躍り出た。 両手を広げて喝を入れて。さながらそれは荒ぶる鷹のように!! 「はっはっは、行くぞ――とぅ!!」 怯んだ敵を相手に、敢然と泰拳士は戦いに赴く。その姿は、まさしく子供たちが憧れる正義の味方の如く――! ● とある神楽の都の酒場にて。開拓者や相棒たちが陽気に飲んで騒ぐ。 始めは卓ごとに騒いでいた面々も、酒の勢いが優れば初対面も上下関係もどこぞに消えて、皆で話に花が咲く。 やがて、とある開拓者から戦闘の話となり、そこでふと誰かが感想を漏らす。 「目立つよなー、『荒鷹陣』」 泰拳士の活躍を聞いた開拓者が、うらやましそうに告げていた。 「まぁ、そういうスキルだし」 「違う違う。あれは威嚇の構えですぞ。注目させたいならサムライの咆哮じゃないですかね?」 指摘するも、言いだしっぺの当人は首を振る。 「そういう意味じゃなくて。あの恰好したら『こいつ泰拳士だな』って分かるだろ。なんかそういう見ただけでこいつこういう職だなと分かる恰好いいポーズって他に出来ないかなと思ってな。叫ぶだけじゃ浪漫が無いだろ?」 「サムライの『成敗!』とか?」 「あれは人妖も使えただろ」 「羽妖精も使えるんだからね。――ほら!」 近くを飛んでいた羽妖精が聞きとがめて、すらりと剣を抜くや近くの観葉植物を斬って納刀。 おお、と周囲から拍手が起こる。得意満面で賛辞を受ける羽妖精に、もふらが対抗意識を燃やして起き上がる。 「もふ! もふらにも『勝ちポーズ!』があるもふ。御主人のすごさを思い知るもふ!!」 「はいはい。えらいえらい。でも、やめてね」 余計な事をされる前に、飼い主はもふらの口にお菓子を放り込み、黙らせる。 「人妖たちが使えるというのを差っ引いても。あれってサムライっぽいかなぁ」 「戦い直後にも、派手に見せようっていうのはサムライっぽくないか?」 「……お前。サムライをどう見てるんだ」 剣呑に顔を突き合わせる同士に、周囲がまぁまぁとなだめに入る。 「格好いいポーズねぇ……。武器を持って構えるのが一番妥当じゃないか?」 「しかし、それはその他の職種でも同じじゃないか? ある意味、職というより小道具の格好よさというか……。サムライと志士は刀という点じゃ被る。騎士も似るか。砂迅騎と砲術士も銃で同じになりそうだな」 「しかしのしかし。分かりやすいという点では一番じゃろ。少なくとも弓術士は弓引く姿が様になり、吟遊詩人は楽器を奏でる姿だな。魔術師の杖もじゃろ」 「巫女はどうなんだ? 武器って印象もないだろ」 「術を使うには必要だけど、確かに武器って感じじゃないなぁ。癒すイメージだし……こう、とか?」 手近な人に向けて、両手をかざす。念を送って癒すイメージなのだろう。確かにそんな印象も分からなくはないが……。 「地味……だな」 ぼそっと誰かが率直に呟いた。無言で何人かが頷いたのを見て、居合わせた巫女が声を高くする。 「後方支援を馬鹿にすんな! 地味でも意味があるのよ!」 「それは分かってる! 分かってるが、今はあくまで恰好いいポーズってのを考えているだけだってばさ」 酒の席だと自分に言い聞かせてなお、鼻息荒く、巫女は溜飲下げるように酒を飲み干す。 「アーアー。そういえば。シノビはどうなんだ」 あまり引っ張らない方がいいなと、話題を変える。周囲も同じ意見らしく、すぐに乗ってきた。 「シノビは忍んでるのが一番だろ。見えないってことでいいじゃん」 「ははは。そりゃそうだ」 どっ、と笑いが起こる。酒場の隅から手裏剣振り上げている開拓者がいるが、周囲に気付かれることなく、同席の人たちに取り押さえられていた。 「ふふん。派手で独自のポーズがいいという訳だぁな。ならば、このジライヤには『蝦蟇見得』があるぞよ。こうかっと目を見開いてな」 面白そうな話題だと、ある開拓者が相棒を召喚する。話を聞いたジライヤは、自慢げに得意の見得を切ろうとするが。 「ジライヤの存在自体が地味だろ」 「おんどりゃああ。言うてはならん事を!!」 失言した開拓者にジライヤが絡み、慌てて召喚主が戻す。 騒ぎで叩き出されるかと危惧した者もいたが。酒場の主人ものんびりと杯を拭いてこの成り行きを楽しんでいるかのよう。 「わんわん!」 「忍犬は地味じゃないよ。役に立っているよ。……でも、忍犬らしいポーズって確かにどんなのかしら」 「それをいえば、グライダーやアーマーの決めポーズって何だ?」 「こうヒラリとかっこよく飛び乗ってみるとか、出撃の際に『アーマー発進』とか叫んでみるとか」 「グライダーはともかく、アーマー内で叫んでもぼっちじゃね?」 「そもそも竜はどうなる」 「炎龍は火吹けば恰好いいだろ」 「それじゃあ、鬼火玉や提灯南瓜はどうするにょ」 「うぐぐぐっぐ」 ああだこうだと言い合って。 酒とつまみを流し込みながら、何だか突発的な難題に開拓者たちは頭を寄せ合っていた。 ● そして、夜も明けきらぬ頃。 開拓者ギルドに赤ら顔の依頼者たちが乗り込んでくる。 「おぉい、皆の衆。ちょいと自分のクラスをアピールできる格好いいポーズをとってくれや。相棒もだー」 「それと、水くれー。冷たい奴」 ものすごい酒臭い集団に、ギルドの係員が呆れ顔で、桶の水をぶっかけている。 ともあれ、一応依頼らしい。やや酔いも醒めた所でさらに詳細を聞く。酒場の与太話から始まり、夜通し議論してたのには呆れたが、暇つぶしにはなるかもしれない。 「近くの広場を押さえてやった。相棒も連れて行っていいから、適当に格好つけてこい」 妙に協力的なのは、ギルドとしては、酒臭いのを追い出したいらしい。 ひとまずこの酔っ払いあがりの依頼人たちを引きずり、開拓者たちはギルドを出た。 |
■参加者一覧 / リィムナ・ピサレット(ib5201) / フランヴェル・ギーベリ(ib5897) |
■リプレイ本文 依頼を引き受けたのか、ギルドから押し付けられたのか。 足取りおぼつかない酔っ払いの依頼者たちを、引きずるようにしてギルドの係員が用意した広場まで移動する。 まだ朝早き。何も無いただだだっ広いだけの場所は暴れるにも十分。それ故に鍛錬に勤しむ者たちの姿もちらほらとは見かけたが、時間的に多くも無い。 彼らの邪魔にならない一角を選び、依頼者たちは腰を下ろした。 「う〜い、それじゃ始めようかい〜」 呂律も回らないだらしない恰好で、依頼者たちは依頼を行おうとはやし立てる。 ここに来るまでも、自力で歩きつつあっちにふらふら、こっちでぶつかり。全く迷惑ばかり。 酔いが完全に醒めてない依頼者たちには、さすがに参る。 依頼に付き合うとは決めたが、このままでは依頼達成できても意味がない。下手すると途中で寝てしまって見てないとか文句を言われそうだ。 「仕方ないなぁ」 近所の人に桶ごと水を貰うと、リィムナ・ピサレット(ib5201)はまだふらふらしていた依頼者たちへとぶっかけた。 「つ、つべた!」 頭から水を被って、依頼者たちが飛び回る。 「それは……あまりにも酷いのではないでしょうか……」 ずぶぬれになった依頼者たちを前に、上級人妖エイルアードは立ちすくむ。 「だってこうでもしないと、もう全然話が進まないじゃない。いびきかいてる依頼者の前でポーズとったら、さすがにあたしが馬鹿みたいでしょ」 「それはそうですけど……」 リィムナは当然と主張するのを、エイルアードも納得し、金髪を揺らして頷きはする。 さすがにこの依頼者たちはあまりに酷い。口では咎めるようなことを言ってしまったが、エイルアードとてこの方法が全く間違ったとも思えない。対処としては仕方がないと思うが、それでも気の弱い彼としてはうろたえてしまう。 「大丈夫。落ち着いて」 と。相棒に声をかけた後に、リィムナは酒の匂いが残る依頼者たちに近寄る。 「目は覚めたかな。世界有数の開拓者であるこのあたしのことはもちろん知ってるよね♪ 格好いいポーズを探してるって言うなら協力してあげる。だから――しゃんとしてちょうだい!」 「お。おう」 あからさまな笑みを作ってリィムナが話しかける。依頼者たちはまだ酔いが残っているのか、状況を把握するのにも必至だ。時間がかかっているが、その分、怒ってつかみかかる気配はない。自分の非を弁える分別は戻ってきているようだ。 「さすがリィムナ。依頼者の酔いも酒の臭さの洗濯も一気に済ませられるいい方法だね」 いささか荒っぽくなった挨拶に、フランヴェル・ギーベリ(ib5897)は気にせず賛辞を送っている。嘘でも偽りでも冗談でもからかいでも無く。実に本気の言葉なのは、酔客の回らない頭でもよく分かった。 「デレデレしてんじゃないわよ」 自分が依頼者たちと同じ目にあっても、多分喜んだだろう。少女好きの彼女はリィムナにも甘い。 それが分かってるから、ついてきた相棒のリデル・ドラコニアは主を一応たしなめる。 「一旦、休憩させてくれ。風邪引きそうだ」 なんとか思考がつながって来た依頼者たち。盛大なくしゃみをすると、詫びを入れて服を着替えに行った。 ● 「改めて申し訳なかった。かくかくしかじかで、酒場でこういう話になってな。なんかこう……恰好がつくいいポーズは無いものかと」 戻って来た依頼者たちが深く頭を下げる。 ようやく依頼が出来るぐらいになり、一同ほっと一安心。 「格好いいポーズ? 興味ないわ。――そんなのに付き合おうだなんて、よっぽど今日は暇なのね。お母様だって人がいいわ。感心しちゃう」 銀の髪をかき上げ、うんざりという風にリデルは告げる。 「じゃあ、リデルはもう帰るかい? 今日はいい天気になりそうだ」 空を見上げて提案するフランヴェル。 優しい笑みを浮かべつつ、正面から覗きこんできた主に、リデルは少々驚き気味であったが。 「まぁ、見物する分にはいいんじゃない?」 すぐに気を取り直すと、ふん、とそっぽを向く。そんな気ないのなんて、見ていて分かった。 それではと、リィムナが依頼者たちの前に立つ。 「転職繰り返して各クラスを極めたあたしにとって、『クラス』という概念は無意味。――ということで、必殺の奥義を見せてあげようね♪」 芭蕉扇を確かめると、リィムナは気を引き締める。危ないから、と、念の為皆を下がらせ、十分な距離を取ったのを確認してから、開始の合図を送った。 「行くよ、アークブラスト!」 掛け声と共にリィムナの姿が増えた。彼女が編み出した奥義・無限ノ鏡像による効果だ。 生み出された分身は、彼女そっくりの式。リィムナの能力や術すらも持ち合わせている式は、戦場でも非常な優秀さを発揮する。 反面、リィムナ自身へ精神的にも肉体的にもすさまじい負荷をかける術でもある。対策無しに実行すれば、命を落としかねない危険な技。 苦痛に蝕まれる前に、リィムナはアークブラストを放ち続ける。その一方で分身が分身を生み、その分身も電撃を放ち、あるいは本体含む他の体をレ・リカルで癒す。 「すごい、すごいぞおお! なんて子だ!」 最終的に計五体のリィムナがそこにいた。彼女たちによる派手な雷の乱舞に、依頼者たちは興奮して手を叩き、足を踏み鳴らす。彼ら自身も一応開拓者。なので、その凄さはさらに伝わっている。 たまたま居合わせた人たちも、その派手さに足を止めて、何事かと興味津々に見入り、いつの間にやら観客も増えた。 時間としては長くは無い。だが、人々の心に印象付けるには十分だった。 「ふふふん。どんなもんよ♪」 式たちが消え、後は本体一人が残される。 レ・リカルで癒し続けたとはいえ、術の余韻は多少残る。肩で息をしながら、それでも頬を紅潮させ、笑ってリィムナが胸を張っている。 「今はアークブラストを撃ったけど、これが隠逸華や散華ならさらに手数を増やせるよ。回復も鏡像に頼らず仲間に頼めるなら、その分の行動に空きも出る。夜を使って時間停止中に動けば、さらに攻撃回数も増し増しになるよ♪」 説明がてら呼吸を整える。話し終える頃には、すっかり平常の呼吸に戻っていた。 そんなリィムナに、フランヴェルが感動して惜しみない賛辞を送る。 「素晴らしいよ、子猫ちゃん。きみの強さも美しさもいかんなく発揮されている」 しっかりとリィムナの手を力強く握りしめると、そのままぎゅっと抱きしめる。過度な行動に、リデルはまたかと言いたげに生暖かい目を向け、エイルアードは止めた方がいいのかそのままでもいいか、と落ち着きなく動き回る。 だが、その心配は無用で。しっかり堪能できたらしいフランヴェルはリィムナを開放すると礼を取る。 「さて、素晴らしい物を見せてくれたお礼に、次は私の考えたポーズを見てもらおうかな。きみに比べるとまだまだかもしれないけれどね」 リィムナに笑いかけると、フランヴェルは彼女に向けて準備を始める。 「おーい。頼んだのはこっちだけどなー」 いつの間にか外野に置かれて、どうしたのものかと依頼者たちが声をかける。これはこれでいい、と咎める声もあったようだが、一応依頼者としての立場もある。 依頼者そっちのけになっていた、と、フランヴェルは素直に頭を下げた。 「失礼。つい花に目がいきがちなのは春のせいかな」 悪びれる様子も無く。改めてフランヴェルは依頼者にも見えるよう準備を開始。 依頼者たちもそれ以上咎める事でも無く、フランヴェルに注目する。 用意されたのは藁人形。向かい合う形で設置すると、フランヴェルは一旦距離を置く。 殲刀「秋水清光」を手に構えると、さすがに眼光を鋭くし、態度も引き締める。 「いざ行かん。サムライの最大の特徴、それは! ――単体で空を翔る剣技を持つ点だ!!」 叫ぶや、フランヴェルの体から練力がほとばしる。 「秘技・雷霆重力落とし!」 天歌流星斬を利用し、まずは上空に一気に加速。さながら地上から伸び上がる流星のように練力の尾が長くたなびく。 その速さ。生じた衝撃波だけでも地上では地面がめくれ上がる。藁人形程度では本来ならその衝撃波でも十分。それを力強い飛翔と落下の威力すらも利用して、渾身の斬撃を斜めに斬り入れる。 「おおおおっ!」 そして、刀を突き入れたまま、斜め上方に振り上げる! 「天昇・Vの字斬りっ!」 再び天歌流星斬で飛び上がる。藁人形が一瞬にして襤褸となって、見事な切り口を人目にさらした。アヤカシ相手でも、これに耐えられるのはよほどの実力者でしかない。 飛散する藁を背に、フランヴェルは危なげなく着地。何事も無かったように刀を納めた。 「フッ、どうだい♪」 乱れた髪を撫でつけながら、フランヴェルは問いかける。 ふと、リデルは主の瞳が自分に向いていると気付いた。そこでようやく、主以外のことをすっかり忘れ、ただただ自分は主に見入っていたのだと理解した。 「み、見惚れてなんかないわよ!」 ばればれな態度を、けれど、リデルが真っ赤になって否定する。矜持か羞恥か。 だが、責める必要も無い。そんなことは分かってるよ、とばかりに、フランヴェルはいつも通りに幸せいっぱいの笑顔を向けていた。 ● 「いやあ、すごかった。全くいい物を見させてもらった」 「俺ももっと鍛錬詰まないとなぁ。魔の森消えて平和になるとか、まだ浮かれてもいられない」 「この際、他のクラスを覚えるのもいいかな」 元は酒場の雑談から始まった話。そんな戯言からは過ぎた実力を見せられ、依頼者たちは表情を引き締めて感心しあっている。 ほんの半日前まで、ぐでぐでの酔っ払いだったというのが嘘のよう。実力の程は分からないが、彼らとてアヤカシ退治に赴く開拓者なのだ。 「これで満足したでしょ。もう飲み過ぎなんかで、酒場にもギルドにも迷惑かけないように。議論ならテーブル一つあれば十分だよ♪」 「ああ、分かった。すまない」 見た目小さいリィムナに真面目に説教され、これまた真面目に頭を下げている依頼者たち。 だが、それで全てが満足行ったかと言えば、実はそうでも無いようだ。 「術はなぁ。必殺技としては素晴らしく頼もしい限りだが。決めポーズとなるとなぁ」 「分身と離れて技を使えばたんなるアークブラストで、それぞれに目が行くしなぁ」 「それを纏まってやるから格好いいんだろ?」 「それじゃ他の開拓者と組んでもいいんじゃないかななんとかとか」 「……うわぁ、そういうこと言っちゃう?」 ものすごく頑張ったのに、と口を尖らせるリィムナに、フランヴェルは「まぁまぁ、落ち着いて」と、肩に手を回す。 「サムライはやはり剣技だな。敵を撃破するのが一番決まる」 「いやいや、それぐらい志士だって、と話しただろう」 「それを技で補ったんだ。十分価値有りだろう」 こちらも何だかかんだと話し出す。 もっともフランヴェルは何を言われても気にはしてない。脳裏にあるのは、リィムナとの付き合い方ぐらいだ。 「そちらの人妖ちゃんたちはどうだろう。何か人妖っぽいポーズは取れるだろうか」 いきなり話を振られて、とんでもないとエイルアードは慌てる。 「そんな大それたことを。僕なんてまだまだですから」 上級人妖である以上、実力はあるのだろう。謙遜ではあるだろうが、性格的に本心なようにも思える。 「私の技を見ること自体、あなたたちにはまだ早すぎですわ」 リデルはそっけない目で依頼者たちを見ると、不機嫌そうに顔を背けた。こちらもやる気など全く無い、と思われたが。 依頼人の一人がぽんと手を打つ。 「今の人妖っぽいな」 ぽつり、とつぶやかれた言葉に他の依頼人たちがはっと顔を上げる。 「確かに人妖ってのは我侭なもんだしな」 「いやいや、それは個々の性格にもよるものだから一概にそうとは言い切れない」 顔を突き合わせてあれやこれやとまた議論が始まる。それを聞いたリィムナは大いに慌てた。 「ちょ、ちょっと。そんなことでよかった訳!?」 奥義に喜んでもらえたので、やったかいはあった。けれど水を差されたり意図しない所に注目されたりでは、何とも心中複雑だ。 「我侭とは何て事を!!」 一方で、リデルも聞き捨てならないと声を高くする。 「お、落ち着きましょう。まずは落ち着きましょう」 詰め寄ろうとする二人を、エイルアードは一生懸命なだめにかかる。 そんな彼女たちをフランヴェルはにこやかに眺めつつ、胸中でそっと思う。 可愛い彼女たちの為にも、酔っ払いに絡むのは要注意。酔いが醒めても、面倒くさい連中だっているのだ。 |