開拓者誘拐計画発動中
マスター名:からた狐
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 易しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/08/11 19:26



■オープニング本文

 昼も夜も暑い夏。
 二人の乙女が凶悪犯罪に手を染める。

「はーちゃん。みーちゃんは、犯罪者になろうと思うの」
「奇遇ね、ミツコ。手伝うわ」
 洒落っ気もなく、真剣そのものの表情で二人向き合うと、固く意思を通じ合わせる。

 そして、ギルド前にでかい笊とそれを支える縄付き棒。その下にはもふらさまが設置された。


「‥‥何の真似だ? あれは」
 邪魔だといわんばかりの表情でギルドの係員が、設置したミツコとハツコに問い詰める。
 実際邪魔なのだ。ギルドに用がある業者や依頼人や開拓者たちなど、すべからく奇異の目で通り過ぎていく。
「我慢してよぉー。開拓者を捕まえる罠なんだから」
「雀じゃねぇし、あれでどうやって」
 口を尖らせるミツコに、係員は頭を抱える。
「簡単よ。まず、もふらさまが熱でやられたふりをする!」
 ハツコが指差した先、笊の下でもふらがごろごろと寝転ぶ。ちなみに、笊が影と風通しを作っている。むしろ快適そうだ。
「心配した開拓者が駆け寄って手当てをしようとする。熱いんだから、氷や冷風が出せる開拓者なら使おうとするわよね。それを確認したら、この紐を引く」
 支えていた棒が倒れ、ぱこっと軽い音を立てて笊がもふらさまごと蓋をする。
「するとー、もふらさまが開拓者をもっふもふにしてくれるからー。和んだ所を拉致誘拐してアジトにごー」
 笊がごとごと揺れている。今は単なる説明で誰もいないはず。単に遊んでいるのだろう。
「何でそんな事をする必要があるんだ?」
 もう突っ込む気力も失せたとばかりに、机に突っ伏す係員。  
「暑いんだもん。カキ氷食べたくない?」
「もふらさまの水浴び場もぬるいから、冷たくしてくれると嬉しいの♪」
 どんと卓に置かれるカキ氷器。そして、皮で作られた浮き袋。
「ちなみにアジトでは蜜に果物、小豆に牛乳、砂糖と一通り揃えてあるわ」
「ちなみのちなみに。水浴び場は人間が泳いでも平気だよー。何なら貸し水着も用意するから」
 あっさりのんびり答える二人に、係員の怒りが爆発する。
「氷が欲しいなら、普通に誘えばいいだろうがーーっ!!」
「この暑いのに、真面目に物考えられるはず無いでしょう!!!」
「きゃー、はーちゃんかっこいー☆」
 怒鳴りつける係員に、負けじと怒鳴り返すハツコ。無意味に煽るミツコ。

 かくて、氷を作る開拓者が狙われる。捕まるか、一緒になって騒ぐかは、夏の暑さに聞いてくれッ!


■参加者一覧
朝比奈 空(ia0086
21歳・女・魔
剣桜花(ia1851
18歳・女・泰
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
水月(ia2566
10歳・女・吟
雲母(ia6295
20歳・女・陰
鯨臥 霧絵(ia9609
17歳・女・巫
ザザ・デュブルデュー(ib0034
26歳・女・騎
マーリカ・メリ(ib3099
23歳・女・魔


■リプレイ本文

 暑い夏の日。
 賑わう開拓者ギルド前に、妙な物が設置されていた。
 大きな笊。それを支える棒には紐がついてどこかに伸びている。その影で、もふらが寝転がって涼んでいる。
 普通に往来に有る物ではなく、また普通に設置する物でもない。
「こういう事をしそうな心当たりはあるが‥‥」
 それが幸せか災難かは、置いとくとして。
 苦笑しつつ、ザザ・デュブルデュー(ib0034)が紐に沿って歩いてみると、思った通りの二人がいた。
「やはりお二人か。今度は何を企んでいるのかな?」
「悪い事はしてないよー」
「し、静かに」
 ミツコとハツコを抱え込んで、頭をぐりぐりと。
 ミツコが自覚の無い笑みを見せる一方で、ハツコは真剣そのもので笊の罠を見届けている。
 何となく、釣られてザザも並ぶ。
「あの、もし‥‥。何をされてるのでしょう?」
 たまたま通りかかった水月(ia2566)が、そっと後ろから話しかける。
「カキ氷と水浴びの為よ。協力してくれたら分け前上げるわ」
「カキ氷‥‥」
 こうも話しかけられては集中できない。
 仕方無しに、ハツコが軽く説明する。
 それで大体判断ついたか。ザザは吹き出し、水月は目を輝かせてじっと横につく。
 さて、ギルド前の笊部分では。もふらがまだ寝転んでいる。
「あ、何やってんだ?」
「今は寝てるもふ」
 あからさまな仕掛けが気になったのか。ルオウ(ia2445)はもふらに問いかけている。
 一緒にいた猫又・雪は、様子を怪しんでちょっと離れた所から見ている。賢い。
「暑さでへばったのでしょうね。可哀想です。私も火で炙られているようで、自分にフローズかけたいくらいですよ」
 言ってるマーリカ・メリ(ib3099)の方が暑さに参っている。
「そっか‥‥。もふらさまも大変だね」
「せめて、涼が取れるよう、笊を冷やしてあげますか」
 鯨臥 霧絵(ia9609)も同情し、マーリカが親切心で動く。
 防火用の水を借りて笊に撒くと、それにフローズ。対象が薄い事もあって、それなりの氷を作る。
 それを屋根としてまた立てかける。通る風が一段と涼しくなって、もふらも涼しそう。
 が、それが災いの元でもあった。
「よっし! 目標発見。これより捕獲に入る。紐引けーっ!!」
「アイサー☆」
 ハツコが紐を水月に渡すと、無責任な声をミツコが掛け声を上げる。
 躊躇いなく、水月が紐を引く。当然、つっかえ棒は倒れ、笊が三人の上に覆いかぶさる。
「今度は乗っかるもふー♪」
「な、何なんですか??」
「笊、痛っ! 冷たっ!」
「暴れないでよ、笊が引っ掛かって!」
 狭い笊の中で、三人+もふらがばたばたと暴れている。
 凍らした分だけ、強度も上がったのか。笊は幸い壊れる事も無い。
「今よ! ほら、そっちの手押さえて」
「‥‥りょーかい」
「だから、その。‥‥何故?」
 三人が混乱している間が勝負。飛び出すと、もふらと笊で抑えて込み、動けないよう簀巻きにする。
「手持つから、足持って。そっちの二人お願いね」
「はい?」
「あ〜れ〜??」
 けれど。動きを制限したとはいえ、もがく開拓者を乙女一人で動かせる筈なく。
 ハツコは、騒ぎが気になり様子を見ていただけの朝比奈 空(ia0086)を、たまたま近くにいたという理由で、無理やりマーリカの足を持たせ、運ばせる。
 水月とザザも手際よく、霧絵を運ぶ。
 捕まえたのは三人。いるのは五人。最後の一人は一人で持ち歩かねばならない計算。だったが‥‥。
「あー。みーちゃんはーちゃん。やっほー」
 何の天が助けたか。通りすがりの剣桜花(ia1851)が、知り合い見つけてしっかと抱き付く。
「いい所に来てくれたー。早速だけど、これ、あそこの荷車に放り込んでー」
「分かりませんけど分かりました」
「これとは何だ!? これとは!!」
 ルオウの足を持たされ、桜花はミツコと荷車に運ぶ。
「よし、皆乗ったわね。忘れ物無い? では、しゅっぱーつ、全速離脱!!!」
 罠も回収。もふらを車に繋ぐと、御者席に飛び乗る。
 そして、もふら車は大勢を乗せてその場から去る。‥‥しかし、全速といっても、所詮もふらの足。
「待ってくれ、桜花! 私を置いてどこに行く!!」
「さあ?」
 という訳で、全力で追いかけてきた雲母(ia6295)が簡単に追いつく。
 問われるものの、桜花とて事情がはっきりしない。
「話は道々。面倒だから乗っちゃって」
 なので、こちらも車に乗せられる。
 かくて、御者にミツコとハツコ。二台に開拓者八名。そして、いつの間にやら飛び乗っていた猫又一体。
「‥‥なぁ、雪。何が起こっているんだ?」
「さあ? 猫の手借りずにとりあえず頑張れば?」
 事情の分からぬルオウに、雪は欠伸を一つ。すっ転がされている主の傍に寄り添って、とりあえず休む。


 ついた所はもふら牧場。広大な敷地に、もふらが多数放されているが、酷暑でだるそうにしている。
「いきなり笊を被せられた時は何かしらと思ったけど。こういう事ならお手伝いするのよー」
 道すがら事情を聞き、霧絵を始め概ね怒りもせずに納得する。さすが開拓者、懐が広い。
「事情は分かったけどさ。俺、氷なんか作れねぇぜ? 捕まえるなら巫女とかにしねぇと。ドジだねぇ〜」
 ルオウが軽く笑う。が、それにましてハツコが笑みを見せる。
「あーら、大丈夫よ。こちらにお役立ちの方々がいらっしゃってますから。という訳で、役にたたない方はお帰り下さっても結構ですわ」
 マーリカは魔術師だがフローズが使えるのは確認済み。その他、巻き込まれた霧絵始め、桜花、空、水月と巫女が揃ったのも、さすがもふらの思し召しか。
「俺が役立たずだってか? そんな事ねぇよ! 今、涼しくしてやるよー!」
 近くにあった大団扇(もふら舎の換気に使っていたらしい)を持ってくると、
「おーりゃいくぜええ!!」
 ばっさばっさと振り仰ぐ。
 さすがはサムライ。強力を使って上げた筋力から生み出される風は、凄まじいものがあったが‥‥。
「アツッ! 熱風が来る! 熱風がっ!!」
 外気をかき回すだけでは、あまり涼しくならないようで。
 やはり涼しくする氷は必要と、一旦保留になる。 

 案内されたもふら用水場。ざっと奥行き八丈程、深さは三尺程か。屋根で日を遮ってはいるものの、水に触ると何かぬるい。
 ぐるっと見回し、桜花は即答。
「この大きさだと、単純に氷を入れるだけじゃ冷やせないですね」
「そなの?」
「はい。わたくし達の力を合わせても氷が足りないでしょう。‥‥抱えるくらいですかねー。こういうのを作って、布で巻いて。抱えれば、ほーらひんやり!」
 水場の水を氷霊結で固めると、手早く撒いて抱きかかえる。
 布が冷たさを緩和する上、持ちやすい。
――どどどどどどどッ!!
 そこへ地鳴りと共に、牧場中に散っていたもふらたちが走りこんでくる!
「桜花、危ない!!」
 雲母が桜花を抱きかかえて逃げると、残った氷目掛けてもふらたちが殺到。
――どばばばばばばッ!
 そのまま水に突入! 一つの氷巡って争奪戦を繰り広げている。
「わー、はーちゃん。もふらさまも戦えるよぉ」
「‥‥ごめん、ミツコ。考え改めるわ」
 涼を取る為、もふらたちは必死だ。
 だが、そんな氷もすぐ溶ける。
「分かったから。すぐに次の作るから」
 うるうると涙目で訴えるもふらたちに、霧絵は急いで水を用意する。
「皆様は、どれだけ氷、作れますか? カキ氷用、抱えて入る用はその都度作って、後を水場用に使おうと思いますが‥‥」
 この暑さでは、下手に氷を作っても、作業途中でどんどん溶けてしまう。
 効率よく行うには、まずは出来る事を把握する必要があり。
「私は練力の一割程、もしやに備えて残しておくつもりです。まさかと思いますが、怪我をされる方もいるかもしれませんから」
 じっと見つめて促す水月に、空は少し考えて答える。
「水は入れ替えておこうか。引き込み口などはどこに?」
「あそこだけど。でも、結構時間かかっちゃうよ?」
 尋ねるザザに、ミツコは教えるものの、本当にやるのと首を傾げる。
「ある程度でも、この水を替えれば、多少水温も下がるからね」
 水は、近くの川からそのまま引き込む。
 川は冷たいが、流す内に温かくなってしまっている。それでも、溜められた水よりかはマシだ。
「水を入れ替えるのであれば、氷はもう少し後ですね。折角の冷水を流して勿体無いですもの」
 流れる水を見ながら、空は考える。
「でも、引き込み口の水を冷やすぐらいは可能でしょう。あるいは、水に囲いを作ってそこを重点的に冷やしてみるとかいかがでしょう?」
 氷霊結程ではないにせよ、フローズも少々の氷は作れる。
 マーリカは、金だらいに氷と塩を入れて引き込みの所に据える。さらに、フローズで冷やすと、確かに水はそれまでよりも冷たくなっている。
 水の中も邪魔にならない所で区切り、冷たい水がそこに溜まるよう工夫してみる。
「そして、今度こそ俺の出番! 行くぞ、見ていろ!!」
 ルオウが大扇で扇ぎだすと、氷作業で涼しくなっていた現場に冷風が流れる。
 力の限りに仰いで仰いで仰ぎまくって。その姿を、溜息半分に見守る雪。
 涼しくなってきた現場で、さらにザザは幾つかの板を用意。
「それは何に使うの?」
「この板をガッチリ保持し、半分以上浸かるようにして進めば、水の流れが出来るでしょう。題して、皆で流れるプール作戦だね」
「‥‥ま、楽しそうだね」
 いろいろと思う事はあれど、面白そうなのでハツコも見守る。


 あーだこーだと言い合って。水辺に氷を浮かべてみる。
 準備が整えば、各人水着に着替え、用意は万全。
「旦那ー。似合うー?」
「可愛いよー、桜花。最高だよー」
 黒ビキニに着替えて桜花が決めれば、雲母が掛け値無しの賞賛を向ける。
 雲母の水着はワンピース型。身体の傷を隠す為だそうだが、見えた所でこの熱々ぶりでは気にせず目を逸らすのが普通だろう。
「落ちろ、バカップルども」
 そして、冷淡にハツコが蹴りつけ、水場に落とす。
 大アヤカシでも出現しそうな怨念を感じる。虎縞セパレート姿は、角と金棒持たせれば彼女自身が変化しそうだ。
「いきなり水は危険ですよ。準備体操は必要です」
「その間に、コッチがのぼせるぢゃないっ」
 持参の水着に着替えた空が窘めるも、ハツコは全く反省の色無し。
「涼しくなりたいなら、手はあるぞ。山姥包丁持った相手に追いまわされたら冷や汗かき放題だろう」
 鼻で笑うと、雲母は言葉通りに山姥包丁を取り出す。
「え、旦那。他の女の子を追いまわす気ですか?」
「桜花相手に包丁振り回せる訳無いじゃないか♪」
 水に入ってもじゃれあう二人に、ハツコが包丁握り締め、慌てて周囲が止めに入る。
「本当だ。あんまり冷たくないねー」
 氷を浮かべた水場を確かめ、もふら型水着に着替えたミツコが口を尖らせる。
 それでも、もふらは嬉しいようで。久々の涼に、水浴び場が混雑している。
「もふら様の数が多いなぁ。板はつっかえそうで危ないかな」
 ザザはシンプルな上下セパレート。
 水に入ると、幾つかもふらにつけていた水流用の板を外し、自身が手近なもふらを抱えて回る。
「もふらばかりに頼るのも何だし、少しは手伝おうか」
 代わりに雲母が板を持つと、水を動かす為に歩き出す。
「では、ルオウ殿もお願いします。熟練のサムライたる者にとってただ歩くだけでは訓練になりませんものね?」
 桜花は笑顔でルオウに板を渡す。が、大扇を手にしたままルオウは力尽きている。
「俺‥‥なんでこんな事やってるんだろうな‥‥」
 問いかけるルオウの額を、猫又の真白の尻尾が呆れ顔でぽんぽん叩く。
 その雪はちゃっかり自分用氷をせしめ、涼を楽しんでいる。

「涼を取れるのは水辺ばかりじゃないのよ!!」
「という訳で、カキ氷の用意できたよー」
 ハツコが手回し式かき氷削り器をドンと置くと、ミツコも井戸水で冷やしていた蜜や果物を並べ出す。
 ちなみに、カキ氷用の氷は飲料用の水を使用。
 セットしてハンドルを回すだけで、薄く削られた氷が杯に落ちる。朱藩の鍛冶屋に感謝だ。
「!」
 作業中の汗を流しがてら泳いでいた水月も目ざとく見つけ、持って来た黒蜜や西瓜も提供。
 わくわくした目で氷を待つ。
「蜜や果物はお好きにどうぞ」
 激しく頷き、早速あれやこれやと盛り込んで楽しみだす。
「つべたくて、幸せです。吹雪の中を歩き回ったみたい〜なんかぐらぐらしてきました」
 マーリカも渡された氷を至福の顔で掻き込む。
「あまり急いで食べると、頭が‥‥少し遅かったですか」
 慎重に食べていた空が、注意を促そうとするも時遅し。
 マーリカは頭を押さえ、その後ろでは水月も床に転がっている。
「大丈夫ですか? 痛いなら少し休んでも‥‥」
 心配する空に、水月は無言で頷き。そして、猛然と他の味の氷を楽しみ出す。
 ものすごく苦しんでいるが、幸せそうでもある。
「これがカキ氷か。噂には聞いていたけれど、初めてみるよ。‥‥ところで、たまたまここにコケモモや木苺のジャムがあるのだが、かけてみるかい?」
 ザザの勧めに、水月は大きく頷き、黙々と食べ続ける。‥‥何が彼女をそこまで駆り立てるのか。
 その様を見ながら、ザザも一口食べてみて。やっぱり美味さと頭痛に悩まされる。
「お・う・かー♪ あーん、させろ♪」
「はい、あーん。次は私の分ですよー♪」
 そして、夏の日差しより暑く、蜜より甘く、桜花と雲母が氷を食べあう。
「あんたらはカチ割りでも食べてなさーいッ!」
「はーちゃん、ダメだよ、氷が溶けるよ勿体無い!」
 水場用の氷を盥に入れて構えるハツコに、ミツコが止めに入る。

「氷も食って、十分休んだ。次は、人力流れるプールだ!」
 空の杯に手を合わせると、ルオウは板を持って水に飛び込む。
「行くぞ、もふらたち。全力で回すぜー」
「「「「もふー」」」」
 もふらたちを伴ってかき回すと、大きな渦が出来上がる。
「流れてる、流れてる。凄いねぇ」
 巫女服に色似た紅白ビキニで、霧絵は板に捕まりながら流されて楽しむ。
「GO! もふらさまー」
「きゃあ、危ない!」
 そこに桜花が氷を投げ込むと、先を競ってもふらが争う。
 結構な流れに、暴れる巨体。複雑に動く水はどこに運ばれるか分からないが、それもまた一興。
「楽しいですねぇ。暑さなんて気持ちで飛んでい‥‥ふううう」
 マーリカが立ちくらみで倒れる。夏場は、水中だろうと屋内だろうと体調管理は必須。
「まーちゃんが、渦に呑まれてるうううう!」
「もふらさま、人工呼吸!」
「「「「「「もふ!」」」」」」
「え、ちょっとま」
 流れるマーリカへと、指示されるままにとりあえずもふらたちは殺到してみる。

 氷に水泳に、各々遊んで食べて。
 作った氷はいつしか消えたが、涼しい思い出は変わらず残る。