|
■オープニング本文 今日も物騒な空の下。 二人の乙女がギルドで叫ぶ。 「もふらさまがっ! かわいそうな姿にっ!!」 「いやだからミツコ、落ち着け」 「そうだ。何だか知らないがいきなり飛び込んで人の首を絞めるな‥‥苦しい」 ギルドに飛び込むや泣きながら受付を捕まえるミツコ。ハツコが止めねば、受付が昇天していたかもしれない。 「とにかく! 見てよ! この可哀想なもふらさまを!!」 今一つ、理解し得ない受付を放っておき、ミツコは話を進める。 そして、ギルドに連れてこられたもふらは‥‥。 「‥‥別に普通のもふらだが?」 「愛がなーーい!!」 ――パッコーーーン!! ミツコの懐から取り出した木下駄が受付の脳天を直撃。何か『厠用』とか書いてあるが、そこら辺は気にするな。 「よく見てよ、この毛の短さ! こんな、こんなちんちくりんのもふらさまなんてありえないしー」 「その前に、ミツコ‥‥暴力はやめよう」 痛みで突っ伏す受付を慰めるハツコが宥めるも、憤るミツコの鼻息は荒い。 「お、お前ら。ふざけるならつまみ出すぞ」 「ふごふごふごー!」 「ごめん。今きちんと説明する。アヤカシが絡んでるから割とまずい気もするし」 青筋立てる受付も、アヤカシと聞けば放っておけない。 力付くでミツコを押さえてる事も考慮して、ハツコの話を聞きにかかる。 「実は、昨日たまたま遊びに行った町でね。町中のもふらが丸刈りにされる事件が起きていたの」 町といっても、大きな町ではない。これといった目ぼしい産業も無い、極普通の田舎だ。村と言ってもいいぐらいの。 なので、労働力としてのもふらの数は結構いる。それが一夜の内に大半が毛を刈られてしまうのだという。 「犯人は分かってるの。というか、人じゃないけど。現場を見た人がいて、カマイタチがもふらさまを襲ってたんだって」 入りこむカマイタチは三体。 各自で街中を飛び回っては見つけたもふらを丸刈りにして回るのだという。 「もふらを襲う段階でもふら小屋壊したりはするけれど、それ以外の被害は今の所はなし。むしろ、もふらさまの毛を刈ってくれてありがたがられてたりするの。もふらさまだって命はあるわけだし、毛だって‥‥ねぇ」 同意を求めるようにハツコがもふらさまを見る。 ごろんごろん、と適当に寝ていたもふらさまが、身を震わせたかと思うと、あっという間に、見慣れたふかふかのもふらさまの姿に毛が生えた。 「昨日刈られたところで大体一日で生え揃っちゃうし。町でもそんなに困ってる風は無かったんだけど、ミツコが」 「もふらさまたちがいいように弄ばれて無体な姿にされてるんだよ! 酷いよ! 絶対懲らしめてやらないと!!」 「と、叫ぶので、とりあえず証拠として一体借り受けてこっちに来たの」 猿轡を外すや、大音響で訴えるミツコ。 真剣な表情で訴えを聞いた後、即座にまた猿轡を噛ます。 「まぁ、毛がもふもふしてなくても、お肉がもちもちしてるし、私は短くても別にいいんだけど。そういう事で町もどうしていいか困ってるみたいだったから、連絡の使いパシリを頼まれた訳。じゃ、後はよろしく」 「みーちゃんはやだー。もふらさまはもふもふがいいのー」 ふかふかのもふらさまにすがり付いて泣くミツコを宥め、ハツコはギルドを後にする。 ● そして、ギルドでは依頼が出される。 「思惑がよく分からないが、アヤカシが人を襲わぬ道理がない。どこぞで変な芸を覚えたのか、人を油断させる小芝居か、物色ついでの悪戯か」 その全てを兼ねているのかも知れない。 聞いた所でカマイタチは喋れないだろうし、そこら辺は考えるだけ無駄だろう。 「いずれにせよ、今被害が無いなら好都合だ。奴らが本格的に人を襲う前に、こいつらを始末しろ」 三体だけとはいえ、カマイタチはそれなりの力を持ったアヤカシ。駆け出し開拓者では少々厳しくなるかもしれない。 それでも放っておけば、いずれ近い内に、もふらの毛ではなく人の首が落ちる事になるだろう。 |
■参加者一覧
吉田伊也(ia2045)
24歳・女・巫
菊池 志郎(ia5584)
23歳・男・シ
ザザ・デュブルデュー(ib0034)
26歳・女・騎
アグネス・ユーリ(ib0058)
23歳・女・吟
エルディン・バウアー(ib0066)
28歳・男・魔
ラムセス(ib0417)
10歳・男・吟
花三札・猪乃介(ib2291)
15歳・男・騎
花三札・野鹿(ib2292)
23歳・女・志 |
■リプレイ本文 もふもふの下には、もちもちが埋まっている。 「嫌いじゃないのになー。ミツコの好みには合わないようで」 「そうですよ。もふもふしてないと楽しめないじゃないですか」 アグネス・ユーリ(ib0058)はふさふさとした毛の下にある、ぷにぷになお肉を確かめる。程よい弾力でいい感じ。 依頼人した二人はといえば、ミツコが御機嫌斜めで五月蝿い為、とっととギルドから連れ出された。 いないミツコの代弁か、エルディン・バウアー(ib0066)が大きく頷く。 悲しみを癒すように、自身のもふらにもふもふと。 「私はもふらさまより猫派ですが、‥‥病気などで毛を刈られた猫は見た目にも可哀想ですものね。依頼人の気持ちも分かります」 動物好きとして、吉田伊也(ia2045)も心が痛む。 当のもふらたちはといえば、分かっているのか分かってないのかよく分からない顔でただもふられている。 「しかし、もふらを丸刈りにするだけでそれ以上の被害は出ていない? 珍しい事もあるものだ」 「そもそもも丸刈りにしてどうするんでしょ〜? 丸刈りはまだちょっと寒いデス〜」 ザザ・デュブルデュー(ib0034)と、ラムセス(ib0417)が揃って首を傾げる。 アヤカシの本性は人を襲う事。もふらを襲っても意味は無く、ましてや毛を刈るだけというのは理解できない。 「どうせならもっと有益な物を切ればいいのに‥‥例えば猪乃介の服とか」 「‥‥端切れって売れるかなぁ」 妙に熱い視線を注ぐ花三札・野鹿(ib2292)に、とりあえず花三札・猪乃介(ib2291)は経済面で考える。 野鹿が猪乃介を構いたがるのは愛ゆえだが、カマイタチがもふらに愛着を持っているとは思えない。 単なる愉快犯、という事になるのだろうか。 真相は直接問い質さねば分からないが、あいにく、会話が出来る相手ではない。 「何を思っての行動かは分かりませんが、アヤカシなのは確か。いつ人を襲うか分かりません。火種は小さい内に消して置きましょう」 注意を促し、篝火の手配をしながら、菊池 志郎(ia5584)の表情は冴えない。 なにやら複雑な面持ちで自分の荷物を見つめている。 「さぁって。しっかり働いて、今夜はお肉が食べたいなぁ」 猪乃介は気合を入れると、その手を野鹿が捕まえる。 「もふら様の毛を刈るとは許せん。早く何とかせねばな、うむ。それには敵の情報や襲撃された現場、時間など知る事はたんとある! さあ、参るぞ猪乃介」 「ちょちょっ、鹿姉ぇそんなに引っ張るなよ」 何となく楽しげな足取りで情報収集に出かける野鹿に、出遅れた猪乃介がやや引き摺られ気味で付いて行く。 その後姿を、苦笑しながら見送った他の開拓者たちも、各々討伐の下準備に取り掛かっていった。 ● 調べて回ると、もふらの被害はあちこちで出ていた。 移動の法則は無いようだが、やはり狙いやすいもふらが被害にあっているのが分かる。 「とすると、待ち場所を選べばこっちに有利にいけそうだね」 町中の詳細地図は無いらしい。 なので、アグネスが町の様子を伺いがてら、ついでに戸惑い気味の町人に事情を伝え、夜の外出禁止を頼む。 「♪ もふら様〜 こっちデス〜♪ ふかふか干草お布団デス〜 素敵なお日様匂いデスぅ♪」 対象が多数に散らばっていてはどこが狙われるか分からない。 被害を出さぬ為にも、一旦もふらたちを町の外、丈夫な小屋へと避難させる。 「パウロ、彼らの事はお願いしますね。いい子にしてたら、あとで美味しいオヤツを用意するから」 先頭を行くのは、エルディンのもふら。 ラムセスは、偶像の歌で干草布団の良さを歌い、もふらの心をくすぐる。 持ち主への交渉、生来がのんびり屋のもふら相手に時間をくったが、それでもどうにか場所の移動は終わらせる。 これで目につく範囲に、もふらはいなくなった。 ただ、それでは囮がいない。 「まさかこれが役に立つ日がくるとは‥‥」 微妙な眼差しで、志郎は荷物からまるごともふらを取り出す。 毛布を入れて丸みをつけてらしく見せ、もふらのぬいぐるみも添えて、作戦場所に供える。 その傍では、エルディンがまるごともふらを着、やはりもふらのぬいぐるみを持って待機。 「いい歳して、私、何やってるんでしょうね‥‥」 「の割に、楽しそうだね」 たくさんのもふらぬいぐるみに包まれるエルディン。 囮としての危険もあるのに、言葉の割には随分楽しそうだ。そんな態度に、物陰に潜んでいるザザが呆れ気味。 他の開拓者たちも物陰に隠れ、待機。 「ほら猪乃介、隠れなければいけないぞ。もっと引っ付こうじゃないか」 「わ、わぁったから、くっつくなって‥‥! あー、もう、狭ぇったら‥‥!」 「しー、静かに」 狭い空間にさらに密着してくる野鹿に、猪乃介は自分の場所を確保。 楽しげなその様子に、伊也がそっと注意を促す。 このまま何も起こらなければ、何人かが幸せを満喫できただけで済んだ。 が、それもそれで問題がある。 もしこれでかからないなら、囮を本物のもふらであるエルディンの相棒に変更として、また待ちとなるが‥‥。 夜の闇は暗く、外を歩く人も無く、どの家も寝静まっている。 呼吸する音すら響きそうで、自然、息を潜める。 そうして、どのくらい待っただろう。 月だけが刻々と動く中、不意にもふらなエルディンに向かって黒い影が走った。 「くっ!」 待ってる間に夜目にも幾分慣れた。とはいえ、闇に走るそれは思う以上に速かった。 見つけたと思った時にはもう眼前にいる。 その数、三体。 エルディンがとっさに頭を下げると、後ろのもふらぬいぐるみからさっと白い綿が散った。 もんどり打ったように、奇妙な獣が体勢を崩す。 鼬に似ているが、爪のように備えているのは大きな鎌。 戸惑うように振り返り、もふらの山を見たカマイタチに、有無を言わさず志郎が迫った。 暗視を使用し、闇の中でも不自由は無い。奔走術も行使し、状況を把握しかねているカマイタチに無銘大業物を振り下ろす。 「キャアア」 甲高い声を上げて、一体から瘴気が零れる。 前後して、篝火にアグネスと伊也が篝火をつけて回る。油を染み込ませた布も仕掛けていた為、労せず作った火種は燃え上がり、明るく夜闇を照らし出す。 それで何が起きているのか気付いたのだろう。カマイタチたちが殺気立つ。 「♪ そこにいるのはなんでしょぅ ふかふかもふもふなんでしょぅ 見慣れたもふもふ美味しいデス? そこのもふもふ柔らかデス♪ ちょっとちかくにきてくりゃれ、そっとそばまで来てくりゃれ♪」 ラムセスが偶像の歌を歌い、ぬいぐるみにカマイタチの注意を促そうとする。 もはやぬいぐるみと知られていようが、気を散らせたなら隙が生まれる。 「♪ 響け、武勇の曲 風の如く 旋風のアヤカシより速く 神の遣い守る猛き名を 貴く、遠く、伝え称えよ」 その歌に和するように、アグネスが武勇の曲を奏でる。 目的の違う二つの曲調。邪魔し合わないよう音を取っていくのはさすがと言えよう。 「行くよ!」 ザザがフランベルジュを振るう。 闇で隠れやすいよう墨で黒くした刀身は、しかし、するりと躱したカマイタチの後を虚しく薙いだだけ。 さっと、ザザの脇をすり抜け、カマイタチが身を翻す。 「逃げるのか!」 「そうは行かせませんよ!」 エルディンが動きを止めるべく、手製のボーラを投げる。しかし、それも容易く躱されてしまう。 安堵する間も無く、カマイタチの足元から針が飛んだ。志郎の裏術・鉄血針だ。 「グゥ!!」 さすがにこれは避けきれないか。一体が姿勢を崩す。 刺さった針からは噴出す鮮血。これで万一逃げられても痕跡を追える。 構わず逃げるのかと思いきや、距離を置くとカマイタチたちはくるりと姿勢を変えた。そのまま開拓者たちに鎌を向ける。 元より人を襲うがアヤカシの性。獲物との遭遇に、カマイタチたちの躊躇は無い。 飛んだ衝撃波がザザを捉え、照らす篝火に朱が飛んだ。 「大丈夫ですか!?」 「避け損ねてかすっただけだ。けど、あいつら素早いね」 回復しようとする伊也を今はいいと抑え、ザザは流れる血を押さえる。 逃げるように開けた距離を今度は瞬く間に詰める。 「この野郎!!」 猪乃介がアーバレストを振るう。 ジルベリア製の大型機械弓、本来は射撃で使うもの。大きさも重量もあるものの、それでどの程度の痛手を与えられるかは分からない。 ましてや、軽く躱されてしまっては、計り様が無い。 とん、と嘲笑うように武器の上を跳ねたカマイタチは、宙を舞って体勢を変え、そのまま両の刃を下ろす。 「キャアア!」 月すら染めるように上がった血飛沫。悲鳴を上げたのは野鹿だった。 「よくも、猪乃介に手を出してくれたな!」 抜いた刀身に纏う炎。炎魂縛武をかけて野鹿が刀・嵐を振り下ろすも、それもするりと抜けてまた距離を置いてしまう。 「針が刺さってまだなおあの速さですか」 志郎が顔を顰める。 「その速さを生かしてこちらからなるべく離れて攻撃、あるいは一気に迫り、一撃入れるとまた逃げるつもりかよ」 伊也からの愛束花で傷が癒えると、猪乃介は小さく息を吐いて次に備えた。 「シャシャシャシャ」 歪に顔を歪めて、カマイタチたちが笑う。 「もふらは、もふもふしてこそ、もふらと言えよう。それを分からぬ輩が猪口才な」 エルディンがホーリーアローを放つ。 聖なる矢は遠くカマイタチを捕らえ、悲鳴を上げたカマイタチがその姿を欠いた。 「どうやら魔法の方が苦手みたいですね」 白霊弾で援護に回るか、伊也は迷う。回復の為に、錬力の消費は抑えたかった。 カマイタチたちが睨むと、またこちらへと向かってくる。 しかし、中の一体が急につんのめる。動きの違う一体に驚き、他も思わず動きを乱す。 見れば、カマイタチの足に鎖分銅が絡んでいる。その鎖が伸びた先は、 「わっ、絡んだ」 ラムセスがむしろ慌てた様子で端を握っている。 相手の動きからして、試しに投げた一投で捕まるとは予想外だったのだ。 硬い鎖はカマイタチでも斬るのは難い。 「シャー!!」 ならば使い手を。 牙を剥き、カマイタチが刃を振るうと、衝撃刃がラムセスを刻む。 思わず手放す鎖。再び走り出そうとしたカマイタチを、野鹿が鎖を押さえる。 「さっきはよくもやってくれたな!!!!」 異常な殺気を持って、絡んだ鎖を引いた。足を取られたカマイタチが見事に転ぶ。 「こういう機会に一気にやらないと面倒だね」 ザザは錬力を込めると、剣を強く握りしめると、強烈な一撃を振りいれる。 燃える炎と対照的に冷たい眼差しで、野鹿も刀を振り下ろす。 鎖を外そうと、獲物を刈ろうと、カマイタチは暴れた。 が、傷が増えるのも構わず下ろされた二刀に、その存在を失う。 他の二体はといえば、かまわず地を走る。 一体は猪乃介へと狙いを定める。 先ほど上手く行ったのだから、今度もとでも考えたのだろう。 猪乃介はその動きを見据えると、息を合わせ、一体の懐に敢えて飛び込む。勢いつけてきた分、接触も早い。 「零距離でぶっ放せば嫌でも当たるよな‥‥ッ!」 猪乃介がアーバレストの引き金を引く。 密着状態でなお、カマイタチは身をくねらし躱そうとする。 しかし、完璧とはいかずもんどりうって倒れた所を、光の矢や針で貫かれた。 「残り!」 仲間など関係ない。ただひたすらにアヤカシは獲物に執着している。 武器を構えた相手よりも狙いやすそうだからか。アグネスに迫った所を、しかし、志郎に阻まれる。 さすが場数をこなしてきただけあって、カマイタチの動きにも対応し、一撃も入れる。 それでも、移動の速さには追いつかない。 距離を開けようと走りかけたカマイタチの目の前を、伊也の白霊弾が撃った。 「さっさと片付けた方が、被害が少なそうですからね」 撃たれ、立ち止まった所に、複数の刃が次々と刺さっていった。 ● 最後の一体が瘴気に還ったのを確認して、開拓者たちはほっと胸を撫で下ろす。 受けた傷は伊也が治して回り、無事を確認すると、しばしの休息。 今度はもふらをまた町に戻さねばならない。 「とぅ!」 もふらたちが囲んでいた小屋に赴くや、ひしめくもふらの海にエルディンが飛び込む。 町までの短い道中。戦いの疲れを癒すにはもってこいだ。 「あんなにあるんだから、ちょっとぐらい譲ってくれてもいいじゃないかなぁ」 「仕方ないですよ。いろいろ使い道があるんですから」 口を尖らせる猪乃介を、伊也が宥める。 刈られた毛は現場に残されており、その飼い主が所有している。 ここしばらく、刈られては伸び、刈られては伸び、を繰り返していたのだ。集めれば結構な量になる。 ならば売り物に欲しいとねだった猪乃介だが、それは断られた。 伊也がもふらの毛の使い道を聞いて回った所、布団に服にお守りに‥‥、と、用途は結構あるらしい。 けれど、アヤカシにとって有益な使い道と言うのは結局見付からず。 一体何故カマイタチはもふらの毛を狙ったのか。謎とはなったが、まぁ、奴らにだって毛刈りしたい気分があるのかもしれない。 かくて、ギルドに戻る。事の次第を報告すれば、それで依頼終了。 各自が解散する中、顛末が気になり顔を出していた依頼者を見つける。 「もふらさまがっ、ぼろぼろになってる!! 酷いよ、可哀想だよー!!」 「いや、やったのはアヤカシであって、しかもそれはもふらさまでなく単なるぬいぐるみ‥‥」 戦闘に巻き込まれたもふらの着ぐるみぬいぐるみ。 志郎としては愛着も無く、欲しいようならとミツコに声をかけた所、いきなり泣かれた。 抱きしめて放さないミツコにこれ幸いと、気付かれないようザザはハツコを引っ張り出す。 「ミツコ殿には内緒なんだが、実はもふらさまの魅力と言うのがイマイチ良く分からないのだな」 もふら好きが多いのは理解するが、どうも感性が異なるようで。 困惑するザザに、ハツコも自分なりに考える。 「そうねぇ。もふもふしてて、無駄口ばかりの人を小馬鹿にした笑いを見せるぐーたらもので、体力はあるから便利だなぁと思ったら仕事の隙見て寝てたり遊んでたりと本当に扱いにくいよねー、って辺りが一般的な魅力じゃないかしら?」 「‥‥もふらさまって何だ?」 案外、奥深い世界のようだ。 |