奴らはやる気だ!
マスター名:からた狐
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/12/07 19:19



■オープニング本文

 今日も物騒な天儀の世の中。
 二人ともふらにも危機が迫る。


「おっ芋〜。お芋ー。美味しいお芋〜♪」
「ミツコ、遊んでないで。さっさと落ち葉集めなよ」
「はいな、はーちゃん。集めてるよー」
 彩られた紅葉は美しいが、はらはら落ちる落ち葉は困り者。また、紅葉に限らず、秋は落葉の季節だ。
 もふらたちが遊んで散らかす前に、牧場内に入り込んだ落ち葉を掃除する。
 掃除した葉一箇所に集めると、小山のように纏めて積む。そこに、荷車を曳いたもふらたちが集まってきた。 
「もふもふ。お芋持ってきたもふー」
 荷台には大量の芋。秋のお楽しみだ。
「じゃ、火付けるよー」
 濡れた紙で芋を包むと、落ち葉に入れて火を付ける。
 冷えてきた風が牧場を吹きぬける。焚火にあたって暖をとりながら、立ち込める煙に芋が焼けるいい匂いが混じるのを、二人ともふらたちはわくわくしながら待っていたが。
 突如、目の前の焚火が陥没した!
「うわっ!」
「きゃっ!!」
「もふっ!?」
 一瞬火の粉が舞い上がり、三種三様、身を引いて驚く。
「えー? どうして? 何か穴でもあったのかなー? はーちゃん、掘った?」
「何でよ。とにかく、危ないから一旦火を消すよ」
 穴に落ちた瞬間は勢い良かった火も、土がかかってすぐにちょろちょろと下火になる。しかし、念の為きちんと水かけて昇華すると、陥没の原因を調べに穴を火掻き棒で穿り出す。
「あれ? 芋が無いんだけど?」
 ごそごそと落ち葉の中を探るも、芋の感覚が無い。中の落ち葉を掻きだし、丹念に調べるがやはりどこにも無い。
「もふらさま食べた?」
 真面目に尋ねるミツコに、もふらたちも真剣に首を横に振る。
「んな訳ないでしょ。灰になるような火力でも無し。土に埋もれたとか?」
 見守ってるだけのもふらたちがオイタした訳でないのは分かっている。妙にふかふかした土を、ハツコは改めて調べ出すが。
「ん?」
 その穴から、土がもこもこと盛り上がり、彼方へと伸びていく。明らかに何かがいる。じっと見守っていると、やがてそれが地上に顔を出した。
 もぐらだ。ただし、通常よりもかなり大きい。一尺を越える程ある。アヤカシでも無さそうなのでケモノだろう。
 ごつい掌で土を掻き分け、何かを探るように周囲に頭を巡らし。その口にはほかほかの芋をくわえている!
「もふー! もふたちのお芋ー!!」
 もふらの声に驚いたか。ケモノモグラは慌てて頭を引っ込める。その後をもふらたちは追いかける!! 
 が、通常のもぐらより大きいと言っても、もふらたちよりは小さい。穴に飛び込もうにももふらたちは入れず、全員固まって頭を打ち付けるのが関の山。
「もふ! もふたちのお芋を取り戻すもふー!!」
 盗られたお芋の恨みで、毛を膨らませてやる気を見せるもふらたちだが。
「「それは無理だと思うなー」」
 ミツコとハツコの声が唱和した。喰われてお芋はすでに無いに違いない。


「ま、そういうわけで。モグラ退治に付き合ってちょうだいな」
 かくて、開拓者ギルドにミツコとハツコが訪れる。
「もふらたちが(一応)戦う気になってるなら、任せたらどうだ? そうできるようにがんばったんだろう?」
 ゆるいもふらさまが、自衛できるようにがんばったのがさて夏の頃。昨今では他のもふらさまも習得できるように纏められ、ようやく世間のもふらもがんばりだしたのかどうなのかは巷を見るしかない。
 だが、依頼者二名は肩を竦める。
「もぐらだからねー。掘る穴が一尺ほどあるけど、うちにいる子は小さいのでも三尺あるもん」
「入らんな、それは。出てきた所を襲えば?」
「気配に敏感なのか、人のそばには出ないのよ。もちろんもふらさまたちのそばもね。離れた所で顔出してるの見つけても、どかどかもふらさまたちが走り込めば潜られちゃう」
 土の中の生き物は非常に厄介だ。ただのもぐらでも駆除に苦慮する。
「お芋の恨みはさておいても。牧場穴ぼこにされたら、踏み抜いたもふらさまたちがいらない怪我するかもしれないもんね。出来たら早い所退治して欲しいのー。それと、用意したお芋沢山残ってるからついでに消化してって」
「‥‥新しいの焼けばいいのでは?」
「うーん。もふらさまやる気でモグラに夢中になったもんだからー、なっかなか食べてくんないのー。そういう意味でも早い所モグラ何とかして欲しいのー」
「もふっ! 絶対やっつけるもふ!!」
 毛を膨らませて、やる気満々のもふらたちだが‥‥さて、どこまで役に立つのか。
 ケモノ一匹相手。とはいえ、相手は地中の生き物。相棒の手も借りていいので、何とか
 そして、芋を食べて欲しいらしい。


■参加者一覧
紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454
18歳・女・泰
エルディン・バウアー(ib0066
28歳・男・魔
御陰 桜(ib0271
19歳・女・シ
シヴ(ib0862
27歳・女・サ
九条・颯(ib3144
17歳・女・泰
リンスガルト・ギーベリ(ib5184
10歳・女・泰
レオ・バンディケッド(ib6751
17歳・男・騎
エルレーン(ib7455
18歳・女・志


■リプレイ本文

 もふら牧場にもぐら現る。
 もふらの為に焼いた芋を奪い、いまだ牧場内に潜伏中。
「モグラが芋を食うというのも初耳だが、アヤカシならばソレもアリか」
「ううん。アヤカシじゃなくてケモノだよ〜」
 巨乳の前で腕を組み、考え込む九条・颯(ib3144)に、牧場の手伝いであるミツコがあっさり否定を入れる。
 つまり、退治しても瘴気にならず、肉を食べられる。……モグラが食べられるのかは知らないが。
「人の口にはあわなそうですが、迅鷹ならいけますかねぇ」
 エルディン・バウアー(ib0066)は純白の相棒を見る。近くの木で様子を覗っていたケルブは、エルディンと目が合うや、何故か慌ててツンと目を逸らしていた。
「ケモノモグラは『焼き』芋が好きなんだな〜。勉強になるさね〜」
「残念。生も齧られるわよ」
「ま、そういうこまけぇのは気にしない、気にしない」
 焼き芋中の遭遇。ハツコがその話をすると、それを聞いたシヴ(ib0862)は大雑把に笑う。
「つまり、焼き芋もいける、通なモグラさんなんだねぇ」
 感心するエルレーン(ib7455)だが、御陰 桜(ib0271)の表情は渋い。
「でも、楽しみにしてたものをかっさらって行くなんてヒドイ話よねぇ。そんな不心得者は懲らしめてあげなきゃね♪ 桃、探してみて」
「わん」
 相棒の忍犬に匂いが辿れないかを頼むと、早速桃(もも)♀は鼻をひくひく動かし出す。
 しばらく辺りを嗅ぎまわった後、ゆっくりと移動していき、やがて少し離れた茂みの中から呼ぶように吠え立てた。
「おー、モグラ穴発見」
 確認したミツコが感心しているのが分かったか。自慢げに桃は胸を張っている。
 そこへ、どどどどどっ、と地響きが鳴り響く。
 何事かと彼方を見れば、もふらたちが毛を膨らませてこちらへと駆け寄ってくる!!
「す、すごいぞ! あそこまでやる気になったもふらは初めて見たぜ!!」
 普段ののんびりはどこに消えたか。鼻息荒いもふらたちにレオ・バンディケッド(ib6751)は目を輝かせる。
「と、感心せずに、さっさと退避ーっ!」
 ハツコの悲鳴より早く、開拓者たちはその場から去り、相棒たちも慌てて距離を置く。
「もふーーーっ!!」
 そして、もふらたちは華麗に空に飛びあがる。
 空中でくるりと回転すると、その勢いのままに地響き立てて地面に落ちる!!
 地面が砕け、もうもうと土ぼこりが舞い上がり、一時周囲の視界を悪くした。秋の風が冷たくその遮蔽を取り払うと、
「きゅうううううっ〜」
「皆で一斉に突進してくるからそうなるんだよぉー」
 凹んだ地面にもふらたちが折り重なって目を回していた。困ったようにミツコが助け起こす。
 モグラはケモノだけあってか、通常よりもかなり大きい。当然出来る穴もそれなりの大きさ。実際桃が穴に首を突っ込むと腹ばいの状態なら十分入っていけそうだし、迅鷹たちも歩いてなら進めそうだ。が、もふらたちは無理。少なくともこの牧場のもふらたちは入っていける大きさではない。
「こんな大きなモグラが牧場の地下で穴掘りまくったら、地盤沈下起こしませんか?」
「起きたよ。モグラの通路を踏み抜いたらしく、もう少しでバランス崩して倒れる所だったさね〜」
 改めて穴の大きさを確認し、エルディンは目を丸くする。はっきりとシヴが言い切り、ある方を指差す。
 そこにあるのはシヴの駆鎧・ヴァルハラ。
 今回持っては来たが乗る事は無いだろうと、案山子代わりに立たせる途中、地面が崩れた。駆鎧だから踏み抜いてもたいした被害ではなかったが、これが人やもふらならちょっとした事故にも繋がりかねない。
「焼き芋以前の問題として、やはり放置は危ないですね」
 エルディンが足元の地盤を確かめる。歩いていて痛い思いはしたくない。地中の敵は結構厄介だ。
「もふっ! モグラ退治もふ! 頑張るもふ!」
 気配を察したか。目を覚ましたもふらたちも参戦の意思に燃え上がっている。
 ……燃えるのはいいが、先程の動きを見るとかなり不安。というより、音や気配に敏感なモグラを相手にするというのに、どたどた走り回られるのは邪魔でしかない。
「あれだけの数だと効率悪いから、説得するか! にしても、ガフレオンもあれぐらいやる気になってくれたらいいんだけどな!」
「がふ?」
 レオに見られて顔をあげた金色もふらのガフレオンだが、それ以上用は無いと分かると、また嬉しそうに伏せている。動く気はなさそうだ。
「それでは、そちらは任せよう。妾はさっさとモグラを倒して、芋を食しながらもふらたちを思う存分もふもふしたいのじゃ」
 凛とした口調で、リンスガルト・ギーベリ(ib5184)が告げる。
 何だかんだ言っても、たかがモグラ一匹なのだ。早々と片付けてお楽しみに勤しみたい。
「もふ〜! もふ龍も戦うもふ! ご主人様護るもふ!!」
「うん。まぁ……頑張ろうね☆」
 自身の新技を試したいもふ龍はやや薄い金色のもふら。こちらは元気一杯に紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)の周囲を走り回っている。
 戦力になってくれるのは嬉しい。しかし、本当に大丈夫なのか。紗耶香としても一抹の心配はある。


 焼き芋刺した大槍「ドラグーン」を掲げて、シヴが咆哮を上げる。
 もふらたちを集合させようとしてだが、敵意の無いもふらたちには効果は無いようで。しかも、今は芋よりモグラ退治、のようだ。
「あれま〜。珍しいねぇ」
 それだけ芋を取られたのが頭に来てるのか。シヴは肩を竦めるが、彼らを放っては置けない。
「やる気になってるのは褒める! だけど、ここは俺たち開拓者に任せてくれ!」
「がふ達はのんびりお昼寝するがふ〜」
 情熱的にもふらを諭すレオの隣で、ガフレオンがごろごろと寝転がる。
「もふ! モグラはもふらに喧嘩を売ったもふ! 誰が捕まえるか、競うもふ!」
 もふらたちはあくまでやる気。ただ、若干飽きが出てきたのか、微妙に主旨が変わってきているような?
「おおお、お願いなの……。し、しばらくじっとして欲しいの。もふら様たちのもこもこの手じゃあ、穴の中のモグラさんを見つけられないの!」
 それでも、こんなもふらたちにうろちょろされては困る。エルレーンが腰も低く頼み込む。
 広い牧場、探せば他にもモグラ穴が見つかった。今、他の開拓者たちは手分けしてモグラを待ち構えている。
 そんなモグラの開けた穴の一つをエルレーンは指すと、炎龍のラルがじっと覗き込む。勿論入れる体格ではない。空なら勇猛なこの龍も、敵が地面の下とあっては手も出させない。手持ち無沙汰に今度はもふらたちを見つめるのみ。
「しばらくじっとしててくれないと、モグラさん出てこないよ? それに……さ、最後までおとなしくしててくれたら、私がお芋をおいしーものに変えてあげるから! 焼き芋とかとはちょっと違うおいしーものだよ?! おすすめだよ?!」
「もふっ!?」
 もふらの瞳がきらりと輝く。やはり、食欲には多少なりとも突き動かされる様子。
「よし、ならば俺もこれを出そう!」
「そ、それは!!」
 察したレオが懐からでかい芋を取り出す!
「これこそ一年に数本しか取れない幻の芋、金獅子芋だ! これを食わせてやるから大人しくしてくれ!!」
 オーラドライブで気合いを入れて(でもどの程度効果があったかは不明)、レオはもふらたちに説得を続ける。
 そんなレオに、ガフレオンは尊敬の眼差しを向けている。もふらたちは、芋に食欲の目を向けている。
 シヴが、ドラグーンに刺した芋と取り替えてみる。対比するとさらに大きさの違いがよく分かる。
「どうだ、嘘をついてるように見えるか!?」
 じっと見つめてくるもふらたちを、レオは真剣に真正面から見詰め返す。
 大嘘である。幻の芋ではなく、単なる大きな芋でしかない。大きい分、食べると大味かも知れない。
 だが、素直なもふらたちは深くは追求せず、やがてふっと笑って目を外す。
「分かったもふ。ここは大人しく引き下がるもふ。だから、そのお芋をいただくもふ」
「腹が減っては戦はできないもふ」
「食後の休憩も必要もふー」
「よぉし、じゃあ向こうに焼き芋を用意しているさね。食べたい奴は、ついてきな」
 やはり飽きてきたようで。適度に走り出すシヴの後について、もふらたちも走り出す。もふらのやる気は長く続かない。
 とはいえ、またいつ気を変えてモグラ退治に飛び出すか。開拓者たちが追いかける姿を見て飛び込む可能性は十分にある。
(あうぅ、早くモグラさんを倒してよぉ……!)
 ひとまず手作りクッキーでもふらの気を引きながら、エルレーンは他の開拓者たちに期待を寄せる。


 固まって行動しても、どこにモグラが出るかは分からない。
 さして強くも無い相手。個人でも十分渡り合えると、牧場に散ってそれぞれでモグラを探す。
 といっても、土の下相手に闇雲に探せもしない。なので、やるのは概ね待ち構える戦法。

 結果、牧場のあちこちから焼き芋の香ばしい匂いが漂っている。

 釣竿を用意。穴に糸を下げてモグラを待つエルディン。餌はもちろん焼き芋である。
「心を落ち着けて無心になり、時が来るのを待つ。これもまた修行です」
 気配や音に敏感なモグラケモノに気取られぬよう、心静かにエルディンは釣り糸を垂れる。
 上空では迅鷹のケルブや颯のブライ、リンスガルトの鷲獅鳥のILが待機している。
 冬が間近い昨今。冷たい風が吹きぬけ、いささか寒さが身に堪える。そろそろ防寒も必要か。
「もふ、なかなか来ないもふね」
 そんな寒さにもめげず、もふ龍は紗耶香と一緒にモグラ穴の傍で待機していたが。
「そうですね。あ、万一の為にもふ龍ちゃんは牧場のもふらさまを護って下さい」
「分かったもふ!」
 新たな使命を言い渡されて、もふ龍はすんなり牧場もふらと合流しにいく。
 元気はいいが、術を試したくてそわそわしたり気を漲らせたり。モグラの感度がいかほどかは分からないが、元気に押されて逃げられそう。
 ごめんなさい、と心で詫びつつ、紗耶香はもふ龍に下がってもらう。
 もっとも、こちらで逃げられても、他の開拓者の穴に顔を出してくれるならそれでも良しだが。位置を把握し、瞬脚でいつでも駆けつけられるようには構えておく。
 モグラは来ないが、もふらは来る。エルレーンたちが押さえ込んでいるが、油断すると、モグラ求めて餌の芋を食べそうになったり。そんなもふらたちをエルディンがアムルリープで眠らせたりしながら、ただひたすら待ち続ける。
「せっかくの焼き芋も、冷めてしまうな」
 颯は勿体無さそうに撒いた芋を見る。
 穴の傍で焼いた甘藷やじゃが芋。ほくほくの内に、半分に割られてバターを塗られ、その半分は穴の中に、猛半分はその周辺に撒菱と共に置かれている。
 完成した罠に気取られぬよう、颯は離れた場所から監視するが、肝心の敵がやってこない。
 そのほくほくの湯気も静まり、美味しそうだった外見も半減している。新しく餌を作り直すか。けれど、それで動くとまた警戒される可能性はある。
 どうしたものかと悩む。けれども、ふと気付く。風に乗って香っていた芋の匂いが何となく減っていることに。
 ということは。
「どうしたの?」
 桜は泰鍋に落ち葉を山盛りにして芋を焼いていた。桃はその隣でじっと待機していたが、緊張したように耳だけをぴくりと動かした。
 リンスガルトはやはり剥いた焼き芋を地面に散らばらせている。ただし、その一つ一つは荒縄で結び付けられ、その端は彼女自身が握っている。要は釣り。
 じっと待つ縄の先一つ。突然、かすかな音を立てて陥没。そして、穴の中へと引き込まれる。
「行くのじゃ!」
 リンスガルトが手を上げるや、ILが急降下。出来たばかりの穴に前肢の鉤爪を深く突っ込む。すぐに翼をはためかせて空に飛び上げれば、その足にはしっかりと大きなモグラが握られている。
 突然地上……どころか空へと引き上げられて、その大きな手をばたばたと動かしもがいく大モグラ。爪は案外鋭く、手を焼いたか、弾みでモグラはぽろりと鷲獅鳥の足から零れ落ちた。
 そこにブライが飛び込む。スカイダイブで攻撃を加えると、そのまま地面に押し付ける。だが、対格差もあり、さらに手を焼いている。その間にモグラは地面に潜ろうと一生懸命穴を掘る。
 と、その体に蔦が巻きついていく。エルディンのアイヴィーバインドだ。動きが鈍った所に、ケルブや桃も押しかけ、押さえられる。
「上手くイッたわねぇ。じゃあ、ちょっと可哀想な気もするけど」
 捕まえたモグラに向けて、桜はサクラ形手裏剣を放つ。鋭く回転が加わった手裏剣は、狙い違わず、胴体を打ち抜く。それだけでもうモグラは瀕死の吐息を漏らす。
「ふむ。それではじゃな」
 長柄槌「ブロークンバロウ」を構えるとリンスガルトは素振りの練習。
 ILが嘴で撮み上げ、高く放り上げると、タイミングを合わせてフルスイングでかっ飛ばす。
「見て、はーちゃん。お星様」
「これで牧場も平和になるでしょ」
 依頼者二名。暢気にお茶を啜るその隣、もふらたちはやけにきりっとした顔で敬礼していた。


 邪魔するケモノはもういない。
 元々消費する筈だったもふら分の芋に加え、モグラ退治に用意した芋も加わり、山となった芋を全員で囲む……前に、レオがもふらに囲まれ土下座している。
「わりぃ! これはただのでかい芋なんだ!!」
「な、なんだってえええーもふっ!」
 シヴは刺していた芋を外すと、あっさりと焚火に放り込む。やがて香ばしい匂いが辺りに立ち込め、出来上がりを割ってみると……本当に普通の芋だった。
「酷いもふ。騙したもふ!」
「でも、これも美味しいガフ。芋には変わらないガフ」
「もふ? そうもふ?」
 出来た芋を美味しそうに頬張るガフレオンに、すぐに他のもふらも怒りそっちのけで芋に向かい出す。
「さて、ここからがあたしの出番ですね☆ お芋焼けましたよ〜☆ 後、もふら饅頭を持って参りましたので、皆さんどうぞ☆」
 焼かれるお芋を振舞いながら、紗耶香は手製の饅頭もじゃんじゃんと用意する。
「で、では。私も約束通り……お口に合えばいいけれど……」
 エルレーンがおっかなびっくり差し出すスイートポテトにも、もふらたちは全然気にせず集まっている。
「はい、熱いから気をつけて食べるのよ」
 注意は告げても、甘い匂いには勝てないのか。桃は鼻を近づけては、熱そうに引っ込める。
 労を労い、桜は桃と半分こ。実に仲が良い光景。
 颯もじゃが芋に肉じゃがにと、少しでも飽きずに消費できるよう調理を手伝っていたが。
「……迅鷹は芋を喰うのだろうか?」
 ふと思い立ち、小さく切った石焼芋を颯はブライに渡してみる。迅鷹は元々雑食。普通は肉好きだが、ブライは寧ろ果物を好んで食べる。黄色いお芋は気になるのか嘴で突付いて確かめていた。
「ケルブはモグラの方がいい? 見てない所でどうぞ」
 モグラがかっとばされた方向をじっと見つめるケルブに、エルディンは声をかける。が、振り返ったケルブの目が険しくなる。
 自分放っといて(?)もふらに埋もれているエルディンが気に入らない様子。微妙に羽毛が逆立っている。
「ああ、そんな嫉妬しないで」
 慰めに撫でると、じろりと睨んだ上でふんとそっぽを向いた。でも、撫でられてるまんまである。
「お腹一杯で、もふらをもふもふできて幸せなのじゃ〜。ILも遠慮せずにいっぱい食べるが良いぞ」
「もふ、負けないもふーっ!」
 もふらたちに埋もれながら、運ばれる芋料理を口にするリンスガルト。鷲獅鳥にも手ずから与えて、自身も遠慮無しに見事に食す。さすがは育ち盛りと感心しそうな食いっぷりに、もふらたちもやる気を見せている!!
「お芋って、急いで食べると喉に詰まるよねー」
「たくさんあるんだから、ほどほどにね」
 なんかごろんごろんと転がり出したもふらたちに茶を勧めながらも、依頼者たちも食事を楽しむ。

 冬も見え始めた昨今。けれど、暖かな時間は何時だって訪れる。