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■オープニング本文 ●戦の気配 北面の若き王芹内禅之正は、北面北東部よりの報告を受け、眉間に皺を寄せた。 「魔の森が活発化しているとはまことか」 「は、砦より、ただちに偵察の兵を出して欲しいと報告が参っております」 「ふむ……」 唸る芹内王。顔にまで出た生真面目な性格は、時に不機嫌とも映りかねぬが、部下は己が主のそうした性をよく心得ていた。芹内王は、これを重大な問題であると捉えたのだと。 「対策を講じねばならぬようだな。ただちに重臣たちを集めよ」 彼は口を真一文字に結び、すっくと立ち上がる。 「開拓者ギルドには精鋭の開拓者を集めてもらうよう手配致せ。アヤカシどもの様子をよく確かめねばならぬ」 ●羽猿 蠢く魔の森。跋扈するアヤカシ。 交戦する前にはまず情報が必要。どれだけ、有益な情報を持って帰れるかが今後の戦いの鍵ともなる。 しかし、不測の事態はいつでも起こりえる。 「あー、くそっ。面目ない。荷物をアヤカシに盗られちまった」 偵察隊に出た開拓者たち。だが、その中の一人だけが先んじて帰ってきた。 魔の森を偵察といっても、ずけずけ乗り込んではいけない。まずは距離を取り、離れて様子を見ていたのだが、そこを羽猿に襲撃された。 翼の生えた猿のようなこのアヤカシは、隙を見せると武器を奪い取るという手癖の悪さを持っていた。 「まだ距離があると思って油断していたんだ。あっという間に武器を取られて、こちらは劣勢。何とか迎撃の態勢を整えた時には荷物まで盗られてる始末だ」 がっくりと開拓者は肩を落とす。 せめて持ち逃げされないよう、今は拠点を占拠した羽猿を開拓者たちが囲み、睨み合っている状態だという。 しかし、武器も荷物も無く。おまけに羽猿の数は二十を越えた。何体かは倒せはしたが、実は逃がさぬようにするのがやっとだった。練力も気力もほとんど尽き、虚勢でまだやれると騙しているが、正直それも長くは持たない。 最早戦う力は無いと見抜かれれば、羽猿たちは即座に行動するに違いない。 それが逃亡だけならまだいい。しかし、余力もないとすら見抜かれたなら、開拓者たちの命が危うい。 そして、奪われた荷物も問題だ。 武器はそのまま羽猿が使うか、持ち逃げされるか、遠くへ捨てられるかだが……、実しやかに伝えられる話もある。 すなわち。 「羽猿の黒幕は万商店で、かの店に並ぶ武器は奴らが盗ってきたものだという。とすると、俺の刀も何週間か後には店頭に並べられるのかも知れ無い。それを待って買い取れば、無事に済むかも知れないが、店頭に並ぶ保障も無ければ自分の武器にまた金を払うのも御免だ。大体、どっかの王様がとっとと買い取って鍛治屋でくず鉄にでもされた日にゃ、泣くに泣けんぞ。うらぁあああ!」 「いや、それは単なる都市伝説だ。幾ら何でもアヤカシとつるんでるような店を開拓者に紹介せん」 眉唾の話に苦悶する開拓者に、ギルドの係員はきっぱりと否定する。 「とはいえ、武器も荷物もとなると、アヤカシの手に渡ってしまっては後々厄介になる。どうせ、羽猿は戻るとしても魔の森。後で纏めて始末するものと考えていいが、荷物は取り返しておきたい」 たかが偵察隊数名の荷物。微々たるものではあるが、開拓者の武器や荷物は珍しい品も多い。失っていいものでない。 勿論、いまだ睨み合っている残された偵察隊も無事に救い出さねばならない。 |
■参加者一覧
柊沢 霞澄(ia0067)
17歳・女・巫
羅喉丸(ia0347)
22歳・男・泰
和奏(ia8807)
17歳・男・志
ザザ・デュブルデュー(ib0034)
26歳・女・騎
リーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)
14歳・女・陰 |
■リプレイ本文 北面にて動き出した魔の森。 その偵察に赴いた一隊だったが、その矢先にアヤカシ・羽猿に荷物を奪われる失態を犯す。 「羽猿……万商店の手先か。鍛治屋の王様といい、酷い噂があったものだ」 どうしてこうなったかと、甲龍の頑鉄に跨りながら羅喉丸(ia0347)は半ば呆れる。 有名税という奴だろうか。下手に顔が知れると、妙な話をつけられる。 「万屋の真偽はさておき……。装備を取られるというのは、仕事を果たす状況においても時に致命的な結果になる場合もあります……」 今回相棒の同行が許され、開拓者たちは空路を急ぐ。 柊沢 霞澄(ia0067)は相乗りをさせてもらい、風を切る。長い髪がたなびくのも構わず、管狐の入った宝珠を握り締めた。 「面目ない。魔の森から離れていると油断していた」 「いいえ。それでも包囲して逃げられないようにしていた偵察隊の方々の頑張りに報いる為にも、荷物を取り返しましょう……」 すまなそうにしているのは、話をつけに戻った偵察隊の一員だ。道案内として同行はしているが、疲労が酷く戦闘は難しい。現場に残り、羽猿と見合っている他の偵察隊はそれ以上だろう。 悔やむその顔に向けて、霞澄は安心するように首を横に振る。丸裸同然にされながらも、精一杯してくれているのだ。後は、自分たちがその頑張りに報いるだけ。 「見えた! あそこだ!!」 偵察員が声を上げ、山の中を指し示す。 空を行く相棒と開拓者たちは隠れようが無い。その姿を羽猿も捕らえたのだろう。異形の姿が木々の隙間から騒ぐのが見えた。 「地理の確認。魔の森と羽猿さん、偵察隊の位置を把握。……手癖の悪いアヤカシさんなので持物には気をつけないと」 「面倒な奴ではあるね。余計な荷物は基本的に持たないが……」 鷲獅鳥の漣李の背から周囲を見渡し、どこかとぼけて和奏(ia8807)が告げると、ザザ・デュブルデュー(ib0034)も甲龍・イフィジェニィに乗ったまま荷物を確認する。 「さあ、ハインケル、狩りの時間よ。一匹残らず……いいわね? 残った奴で遊んでいいから、最初は遊びを入れずにね」 鷲獅鳥・ハインケルに向けて、リーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)は低く語りかける。 迫る開拓者。迎え撃つ羽猿。その両者の姿は間近にまで迫っていた。 ● 新手の姿に羽猿たちは警戒していた。 どう動くべきか。敵の戦力も分からぬ内に騒いでは、返り討ちに合う。その程度の知恵は持ち合わせている。 必然、分析しようと動けずにいた羽猿たちに向け、先んじて駆け込んだのは鷲獅鳥の二体。特にハインケルは前肢の爪を鋭く、今にも襲いかからんばかりに黒い翼をはためかせる。 しかし、それよりも早く仕掛けたのは、その背のリーゼロッテだった。気力も上げて集中すると、上空から羽猿の群れに向けてブリザーストームをお見舞いする!! 「キキッ!!」 アゾットから繰り出される広範囲の吹雪に、羽猿たちの体に霜がつく。 羽猿たちが奇声を上げて散った。じっとしていては纏めて殺られるだけ。 その動いた先に、和奏は漣李を回らせる。 薄暗い山の中では白に見えるその相棒と、魔の森方面への動きを警戒し、そちらに向かおうとした羽猿には刀「鬼神丸」を容赦なく抜く。 白梅香の香りが、山に広がる。北面一刀流奥義・秋水。神速の刃に羽猿は反応できず、裂けた傷口から瘴気が流れる。 龍の中でも甲龍は頑健な分、移動は遅い。機敏な鷲獅鳥に比べれば、なおそれが際立つ。 開いた飛距離を埋めるように、羅喉丸は矢を放つ。泰拳士の彼にしてみれば、門外漢かもしれないが、今は当てる必要は無い。羽猿が逃げないよう、牽制になればいいのだ。 「助かった、のか?」 やってきた攻撃に惑ったのは羽猿ばかりではない。 羽猿と睨み合っていた偵察隊は、味方の姿に安堵してしまう。 気を抜いて倒れそうになる彼らに、走り寄った霞澄が「待った」を唱える。 「すみません。もう少し頑張ってもらえますか」 敵の数に比べ、増援の開拓者たちは少なめ。相棒の奮闘もあるとはいえ、十分ともいいがたい。持ち逃げされぬよう包囲するには、はったりでも彼らの協力が必要だった。 すでに披露困憊な偵察隊だが、事情を察するともう一仕事と体に鞭打つ。そんな彼らに和奏は用意してきた止血剤などを差し入れるが、 「あらら」 暢気に手渡す暇は無い。漣李に今度は彼らの頭上へと回りこんでもらい、道具は落として受け取ってもらおうとする。けれども、そうと察した羽猿が空中で素早く横取りしてしまう。 「ウキキキ」 してやったり、と言わんばかりに歯を向き出して笑うと、山のあらぬ方に向けて投げ捨てる。使われるよりマシだが、腹は立つ。 「なるほど。こいつらが万屋の手先ね。嘘だって判ってるけど、妙に信憑性があるわね」 リーゼロッテが苦笑する。 開拓者用の高価な武具や道具を見つけて集めるだけでも大変だ。万屋ではどこからそんな物をという掘り出し物も時には見られる。それが、こうして開拓者から奪った荷物を万屋に売り払って店頭で並べれているならば、謎も幾つか解けよう。 もっとも、そんな盗品店。ギルドの御用達になぞなる訳無い。妙な噂を立てられ、確かにいい迷惑だ。もっとも、立てているのはアヤカシの仕業……とは言えないが。 「木々が邪魔だけど、あなたなら飛べるわね? 武器持ちを優先して落とすわよ。勿論、こちらの荷物も取られないようにね!」 任せろと、ハインケルは翼を羽ばたかせる。 戦況が変わった事で、羽猿たちもまた活発に動き出す。当然、偵察隊へもその魔手を伸ばす。 偵察隊も身構えはしているが、所詮虚勢。襲われれば抗する力は最早無く、嬲り殺されるだけだ。 「行くぞ、頑鉄。奴らを逃がさないよう回り込め。御前なら出来る」 羅喉丸自身は、甲龍の頑鉄から滑り降りると偵察隊の傍へと急ぐ。 彼らを守れる位置に居座ると、ロングボウ「ウィリアム」で羽猿に向け、とにかく矢を撃ち放つ。 ただ撃ち放つだけでも、そこは開拓者。元々の資質が違う。飛び回り、跳ね回る羽猿に合わせて、見事に矢を当てていく。 「イフィジェニィも周囲を巡って牽制を頼む。必要とあれば、攻撃してもらってもいいけど」 ザザも地上に降りると、ナイトソードを抜き、ベイルを掲げる。 甲龍のイフィジェニィは鈍重そうに碧の体を揺すると、言いつけ通りに外周に意識を向ける。寝るのが好きなのんびりした性格だけに、戦意にやや不安も残るが、牽制にはなるはず。 羽猿たちには整備された武器を持つ者がいる。また、かなり大層な荷物を抱える者も。まるっきり盗賊の構えだ。 リーゼロッテは近くの集団にはブリザーストーム。遠方に逃げる相手にはホーリーアローと使い分ける。 羽猿には杖を握った者もいたが、打撃武器としての使い方しかしていない。所詮は鬼の類。術より肉体に頼る。 ハインケルは主に移動に専念。背に乗せたリーゼロッテの動きに合わせて飛翔し、戦いやすい位置へと陣取る。 気性の荒さのままに殺気立っているが、突出した行動は取らない。 「漣李は回避を主にお願いしますね」 大人しく背に跨る和奏を振り落とさぬよう、どこか生真面目に漣李は飛び回る。その背から落ちそうで落ちずに乗っかりながら、和奏も刀を振り回す。 こちらはリーゼロッテほど射程は持たない。なので、羽猿に近付く必要がある。 狙って、上空から杖を振り折してくる羽猿を、すかさず和奏は篭手払い。手元を打った刃で縮こまった羽猿に、リーゼロッテから聖なる矢が飛んだ。 敵の数が多く、手癖も悪い。気は抜けない。羽を持つ羽猿だが、むしろ地上近く木々を渡って攻撃する方が得意ときている。 「ん?」 背拳で張り巡らせていた気に、羅喉丸は気配を捕らえた。とっさに動くと、立っていた位置に羽猿がさっと通り過ぎる。 大荷物を持ち込んだ羅喉丸はそれだけで目立つし、大事そうに抱えていれば小悪党にはとても魅力的な宝物に見える。 実際、羽猿たちにとって格好の獲物なのだろう。躱されてちっと舌を鳴らしていたが、他の羽猿と囲み出し、ぎらつく目で荷物を見つめている。 実の所、荷物の中身は、奪われても痛くも痒くもないどうでもいい物ばかり。だが、そちらにあえて注目させる事で、本当に盗られては困る品への目晦ましとしている。 見かけ通りの頭しかない羽猿は、疑いもしない。何かいい物があると、一斉に襲ってきた。 その浅はかさは笑うしかない。 「判断を誤ったな、接近戦こそが死地だ」 あっさり羅喉丸は弓を背負うと、拳を固め、構える。それこそが本来の戦い方だ。自身の気の流れを制御すると、見事な瞬発力で羽猿たちの攻撃を躱していく。 羽猿が、唸りを上げて奪った刀を振り下ろす。だが、その刃も羅喉丸には届かない。振り下ろし、無防備になった背中に骨法起承拳を叩き込む。 「ギャア!!」 羽猿が反り返った。吐いた血反吐が瘴気に戻っていく。 弾みで取り落とした武器は、すぐに他の羽猿が拾い上げてしまったが、次の攻撃には躊躇している。 その躊躇っている羽猿に、素早くザザは間合いを詰める。 自身のオーラを集中。戦闘力を高めると、さらにソードクラッシュで斬りつける。 さっくりと割れた羽猿。トドメを刺し、刀を奪い返すと、偵察隊に返そうとそちらに投げる。 だが、届く途中で横から出てきた羽猿がかっさらう。 「まったく、面倒な」 きちんと手渡しせねば、届けさせてもらえぬらしい。だが、そんなのんびりとしたやり取りをしている暇は無い。 「一体ずつ、確実に減らして行くか」 だが、荷物の少ないザザには魅力も少ないか、無理に近寄ろうとはしてこない。 やっぱり面倒だ、とザザは羽猿を追う。 ひらりひらりと翼広げて身軽に木々を渡り、影に隠れ、死角から飛び出す羽猿たち。 手にするは、見事な剣。それもまた偵察隊から奪ったものだ。鍛冶場で鍛えたか、鋭利な刃物が光を放つ。 しかしその前に、一直線に飛んだ電光が、羽猿を捉えて焼き付ける。 「ヴァルさん、お願いします……。なるべく私から離れず、隠れている相手を追撃して下さい……」 管狐のヴァルコイネンを召喚。自在に動く相棒に、霞澄は静かにそう指示する。 狐の早耳の効果は一瞬。落ち着いた風格の狐はその一瞬に耳を動かすと、怪しい気配に目を向ける。 飛び回る開拓者とアヤカシの区別すらつかないが、奇襲は避けられる。その上でアヤカシと分かるや、飯綱雷撃で即座に攻撃を加えていく。 羽猿に盗られぬよう、霞澄は清杖「白兎」を始めとする装備品に紐をつけて簡単に離されないようしてきたが、そもそも近寄らせまいと、ヴァルコイネンは注意深く気配を探り、霞澄とも連携を取る。 勿論、霞澄も動き出す。基本的に後方に下がり、ヴァルコイネンの召喚に集中しながら全体の行動を見守る。 「逃がしません……」 召喚中は碌に動けない召喚系だが、必要とあれば同化、あるいは召喚自体を解除して、味方には閃癒や加護結界、羽猿には精霊砲を放つ。 「逃げるモノを落とすか、無理しても道を作るほうがよいか」 空では悩みながらも、和奏は確実に漣李と共に羽猿をしとめて行く。 偵察隊たちが使えない以上、数では分が悪い。だが、個々の実力は開拓者たちの方が上。まだまだ未熟な相棒も主人との連携を図り、じわりと羽猿は撃墜され、数を減らしていく。 そうなると、物取りよりも、攻撃よりも、自身の命を拾いに逃げにかかる。 「キキキキー!!」 警告するように羽猿たちが鳴き喚く。撤退の合図のようだが、それは最早遅い。やるなら、姿を見たその時にやるべきだったのだ。 「頑鉄、羽猿を逃がすな!」 尻込みしだした羽猿たちを、むざと逃がす筈は無い。 羅喉丸に応えて、頑鉄が吼える。甲龍のスタンピード。全重量かけて移動する様はまさに小山が押し寄せるよう。周囲の木々をも吹き飛ばし、羽猿一体に迫る。 身軽な猿とて、その迫力には慌てる。木にすがりつくように攻撃を躱すと、枝を蹴って上空へと逃げる。 さらに身を軽くしようと、奪った荷物も投げ捨てる。 「おっと」 ぶつけてきた荷物からザザはベイルで守ると、その隙に攻撃を仕掛けた別の羽猿を切り払う。 イフィジェニィは周回して、羽猿たちの行動を牽制。その合間を縫って通り過ぎようとした羽猿に、すかさずハインケルは見事な加速で追いつき、先頭の一体を爪にかけて抑える。 「ダメダメ、こっちは行き止まりよ♪」 白い体の上ではリーゼロッテが笑う。 逃げる先は魔の森。一同が纏まって動いてくれたなら寧ろ好都合。先回りしたリーゼロッテは、羽猿たちの鼻先に儀礼用の短剣を突きつけた。 ● 「大丈夫ですか?」 「ああ、何とか」 偵察隊たちも含め、受けた傷は霞澄の閃癒や道具で癒す。傷を追った偵察隊もいたが、幸い命には別状無く、安静にしていればやがて練力も戻る。 けれども、羽猿をやっつけても、依頼終了ではない。 休みそこそこ、戦闘中にちらばった荷物を回収にかかる。 持ち逃げされる心配は無いが、万一にでもアヤカシの手に渡れば面倒になる。羽猿はただ闇雲に振り回す程度だったが、魔の森が動いている以上、高位のアヤカシも出てくる可能性が高い。それらの手に渡れば、武器や道具はその威力を存分に発揮してくれる。 勿論、試すのは開拓者自身の命をかけて、になる。 「これで、盗られた荷物は全部ね?」 「ああ。間違いない」 見つけた荷物を一つ一つ確かめ、紛失が無いかを点検する偵察隊たち。 長い時間をかけて拾い集め、全て回収すると、偵察隊たちは地面に座り込んだ。 傷は癒えても精神の疲労は残る。長く、武器も持たぬままアヤカシとにらみ合っていたのだ。当然と言えよう。 「よければ、酒を交わしたいと思ったが、また今度のようだな」 ザザの誘いに、すまないと偵察隊たちも笑みを作る。その顔の動きすら億劫そうで。 ひとまず収集できた魔の森の報告、そして何よりも休養すべく、偵察隊たちは開拓者たちと共に帰路についた。 |