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■オープニング本文 ずんっ 数を数えなくなってどれぐらいたったろう。 ずんっ、ずんっ、ずんっ 鉄製の扉の外から聞こえてくる音。 ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ 最初の内は何時破れるかと怖くて仕方が無かったけど、今ではもうそんな心配もしてない。 ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ、ずんっ とうさまが外を見てくるって言って出て行ってから、何日、何週間、何ヶ月、何年、経ったんだろう。 日の光もさしこまない暗がりの中、わたしはずっとこうしている。 ごはんを食べないと、人は死んじゃうんだって聞いた事がある。 水は、あった。ぴしゃんと水滴が落ちてくるのが岩に溜まっているのを掬って飲めばいい。 でもそれ以外何も無い。 以前のわたしだったらきっと泣いてたと思う。 たすけてって、ここから出してって、でも、今のわたしにそんなつもりはない。 なにもかんがえられない。ただ、ずっと鳴ってる、鳴り続けている、決して消える事のない音が、わたしのなかにしみこんでくるだけ。 涙も悲鳴も、怖さすら、この音が全部もっていっちゃった。 だからわたしはぬけがらで、もうなにも無いけど、水だけ飲んでいきている。わたしは、いま、ここで、いきて、いる。 母親の泣き声に誰も耳を貸そうとはしなかった。 不憫だとは思う。だが、アヤカシが現れて丸二日が経っている。 村に残っているのであれば、とうに食い殺されているだろう。 あんな小さな子が逃げ切れる程、アヤカシは甘い相手ではない。 村人に数人の被害を出したアヤカシの襲撃は、それでも村としてみれば被害は少ない方であったと言えよう。 自警団で四人、それ以外では二人のみの犠牲で済んだのだから。 偶々、その被害者が夫と娘であった女からすれば、まるでそんな気にもならぬという事であろうが。 いずれ村に戻るには、今も村を徘徊するアヤカシを何とかしなければならない。 村長は開拓者ギルドを頼る決断を下す。 背後で女は叫び続ける。 「夫とは何度も話し合っていました! もしもの時は地下の蔵に避難しようと! 鉄製の扉に守られたあそこならばアヤカシにも破れません! 夫は聡明な人です! きっと、きっとあの子を守って‥‥」 |
■参加者一覧
朧楼月 天忌(ia0291)
23歳・男・サ
酒々井 統真(ia0893)
19歳・男・泰
秋桜(ia2482)
17歳・女・シ
赤マント(ia3521)
14歳・女・泰
タクト・ローランド(ia5373)
20歳・男・シ
輝血(ia5431)
18歳・女・シ
宗久(ia8011)
32歳・男・弓
茜ヶ原 ほとり(ia9204)
19歳・女・弓 |
■リプレイ本文 開拓者一行は村に侵入すると、真っ先に母親から聞き出した蔵を目指す。 仮に生存者が居るとしたら、そこしかありえないという話であったのだ。 村が占拠されてから随分経つ。 村人達は例の母親を除き皆諦めていたが、ここに集った開拓者どもは、心底諦めていなかったのだ。 そんな開拓者達の行く道に、立ちふさがるように、取り囲むように、地を這い、壁を這い、鱗をもった爬虫類が現れる。 タクト・ローランド(ia5373)は刀を抜く。 「ちっ、蛇‥‥いや、トカゲか。思ったよりデカイなこいつら」 茜ヶ原ほとり(ia9204)もまた弓を構え、即座に攻撃を開始する。 「予定通り、こちらはお任せを」 大慌てで朧楼月天忌(ia0291)が割って入る。今の位置取りだとほとりが直接攻撃の対象になりかねない。 「馬鹿、出すぎだほとり!」 秋桜(ia2482)は早速一体をひきつけながら、天忌の動きににっこりと微笑む。 「では蔵の方をよろしくお願いします」 蔵対応蛇アヤカシ班の四人は後を任せて先へと急ぐ。 ほとりは、前に立ちトカゲアヤカシへの壁となってくれた天忌に一言。 「うん、優しい」 そっぽを向いたままの天忌は、耳が真っ赤になっていた。 「べ、別にそんなんじゃねえよ」 「そうなのですか?」 「そうなんだよっ!」 タクトは、頼む、戦闘中なんだからにやにやさせんじゃねーよこいつらと内心で文句を言い、秋桜はもう言葉通りそのまんまに受け取って、はぁそうなのですかと呟いている。 表面上はこんな感じで危機感無い事この上無いが、四人共動きは真剣そのものである。 人の体躯程のトカゲ三体は、そう容易い相手ではなかったのだから。 蔵へと急ぐ輝血(ia5431)は、遠くから聞こえる音に最初に気がついた。 「これは?」 進行方向でもある蔵の方から聞こえてくる。 すぐに赤マント(ia3521)も気づき、輝血と走りながら顔を見合わせる。 「急ごう、何か嫌な予感がする」 近づくにつれ大きくなる音、極めて正確に一定の拍子で鳴らされるずんっ、ずんっ、という音。 とある屋敷の中にある大きな白い蔵。この中から聞こえてくる。 迷わず飛び込む酒々井統真(ia0893)は、蔵の中央で、ずしんずしんと尻尾を振り下ろす巨大な蛇の姿を見つけたのだ。 かなり大きい蔵であるが、流石に四人で動き回るには狭すぎる。 「宗久頼む」 「はいはい」 あまり真剣みを感じさせない飄々とした顔で宗久(ia8011)は、蔵の外から中に鎮座する蛇アヤカシ目掛けて矢を放つ。 恐るべきはその匠の技か。 本来射角がギリギリで厳しいにも関わらず、矢に練力をまとわせ精妙に操り、見事蛇アヤカシの胴に突き立てる。 びくんと跳ねる蛇アヤカシに、出てこぬのなら何度でも繰り返すぞと再度弓を構える。 蛇の巨体が跳ねた。 全長十五尺(約五メートル)の大蛇が宙に飛び上がるのだ、流石に圧巻の迫力があろう。 しかし皆誘い出すつもりで待ち構えていたので、虚を突かれはしたものの、大きく後ろに下がり外へと引きずり出す事には成功する。 視線が通ったのは僅かな間。だが統真は蔵の床にあった鉄の扉を見逃さなかった。 『‥‥あれを開けようとしていた? なら、もしかしたら‥‥』 地を這うようにごそごそと動くトカゲは、見た目以上に素早く、力強い体当たりをタクトにぶちかます。 低い位置から抉るように腹を突き上げられたタクトは、苦悶の表情を見せるも、歯を食いしばって漏れ出しそうな悲鳴を堪える。 秋桜はタクトの援護に回ろうとするが、眼前のトカゲアヤカシが邪魔で思うように動けない。 「タクト様! 今そちらに‥‥」 「来るな! こっちは何とかするから秋桜は目の前の奴さっさと仕留めろ!」 叫ぶタクトの周囲に、さらさらと木の葉が舞い落ちる。 唐突にかつ不自然に現れた木の葉は、流れ、乱れ、舞い上がり、タクトの姿をその奥に隠す。 小さい目の側に木の葉がまとわりつくトカゲアヤカシは、煩わしげに首を振りながら突進するも、狙いを定められず体当たりは空を切る。 これなら時間稼ぎは出来る、いや、長引けばいずれかわしきれぬだろうと秋桜は焦る。 タクトに気を取られていた秋桜の背後にトカゲアヤカシが回りこんだ。 だが、その程度で泰拳士秋桜の隙をつけるはずもない。 まるで背後に目があるかのごとく、飛び掛り噛み付いてきたトカゲを軽く体を捻るのみでかわす。 更に、捻った勢いそのままに足を振り回し、トカゲの脇腹を蹴り飛ばす。 ぎいっ、と悲鳴を上げて転がるトカゲが身を起こしたその後頭部に、更に追い討ちの飛び足刀。 しかしトカゲもさるもの、尻尾を振り回し秋桜を跳ね飛ばさんとする。 秋桜の眼光が一際輝く。 何と、秋桜は振り上げられたトカゲの尻尾、その先端に爪先で立っているではないか。 尻尾を振り上げる勢いが秋桜の足裏で完全に殺され、体重を支える力が失われる直前、再度大きく宙へと舞い上がる。 中空にて一回、二回、くるくるりと体を捻った秋桜は大地と挟み込むように、膝をトカゲの頭上に叩き落す。 今度こそ、鈍い悲鳴と共に頭部を潰され、トカゲアヤカシは完全に絶命したのだった。 一方、ほとりは前衛に天忌が構えている事で、遠慮なく矢を放ち続けている。 即射の技にて、弓とは思えぬ速さで攻撃を仕掛けると、一本、また一本と確実にトカゲアヤカシに矢が突き立っていく。 トカゲはそれを煩わしいとも思ったし、刺さった矢のせいで動く度に体に痛みを感じるのも不愉快だと思っていた。 だが、それ以上に、眼前のこの男を許せないと大口を開いて噛み付きにかかる。 左足の脛を齧り取られた天忌は、それがどうしたと両手で持った刀を力任せに振り下ろす。 見た目よりも堅い鱗を突き割り、砕けた鱗がそこらに撒き散らされる。 傷の痛みも知った事かと。 残る仲間が相手しているだろう蛇アヤカシのことを考えると、この程度で泣き言を言う気になどなれぬのだ。 「さっさとくたばりやがれテメェ!」 防御も回避も後回しの剛剣を振り下ろし、一刻も早くこの場に決着をつけてやると鼻息荒く暴れまわる。 後ろで見ているほとりは気が気ではない。こちらも早く決着をつけねばと出し惜しみ抜きで弓を射る。 天忌がトドメの一撃をトカゲにくれてやると、ほとりは息をつく間も惜しんで次なる標的を狙う。 相手はタクトが抑えているトカゲアヤカシだ。 何時までも捉えられぬ事に業を煮やしたトカゲアヤカシの足に矢が突き立つと、ぎろりとほとりを睨みつける。 代わりにこれに睨み返したのは天忌である。 これはつまり、軸線が揃わぬよう前に立ったという意味でもある。 「やっぱり、優しい」 「うっせぇ」 刀を手に駆け寄る天忌と、対するように向きを変えるトカゲアヤカシ。 「ほい、隙あり」 わざと音を立てて駆けるタクトに、首だけを向けるトカゲアヤカシ。 その口の中に吸い込まれるようにタクトは風魔手裏剣を投げ込んでいた。 「一閃、貫け!」 トカゲアヤカシのくぐもった悲鳴を、タクトは飛び上がりトカゲの口を踏みつける事で黙らせ、そのまま天忌の脇を走り抜ける。 「あとは任せる」 「おうよ!」 強く握り締めぎしぎしときしむ刀の柄。 これを低く地面をなめるように全力で解き放つと、トカゲアヤカシの口が縦に裂ける。 まだ息はある。反撃に備えて全身に気合を入れた天忌は、しかし必要は無かったかと念の為追撃の構えを取る。 白のレース飾りをふりふりとはためかせ、駆け寄って来ていた秋桜の姿が見えたから。 駆け寄りざまに秋桜が蹴り上げると、トカゲアヤカシは口から激しく何かを吹き出しながら、白い腹を見せてひっくり返り、遂に動かなくなったのだった。 全身から噴出す勢いで気を立ち上らせる統真は、俺が相手だと蛇アヤカシの前に立ちはだかる。 即座に放たれる、自身の頭部を鉄槌に見立てて振り回す頭突き、いや頭撃とでもいうべきであろう。 読みきれぬ蛇アヤカシの動きに、統真は大きく跳ね飛ばされる。 だが、すぐに空中で身を翻し、両の足から綺麗に着地すると、すぐに蛇アヤカシの眼前に駆け戻る。 損傷を受けなかったわけではない。本音を言わせてもらえるのなら、蹲って泣き出したいぐらいに痛いのだが、そこは、男の子なのである。 「へっ! 全っ然効いてねえよ!」 輝血は跳ね上がった尻尾をかわしながら、蛇アヤカシの周囲を駆ける。 視界は目によるのだろうが、目の届かぬ範囲ですら尻尾を振るってくる所を見ると、やはりこのアヤカシただの雑魚ではないらしい。 気配を察する程度の事極自然に行えるのだろう。ならば踏み込みすぎは死を招く。 それでも隠し切れぬ隙を縫い、北条手裏剣にて頭部を狙う。 流石に目程の細かな狙いには当たらぬが、表皮を切り裂きざっくりと肉を抉る。 宗久は前が三人居るので、安心して後衛に専念できていた。 連環弓の術技は攻撃に精神を集中してしまうので、守りが疎かになるという欠点を持つが、今の状況ならば問題は無い。 即射と合わせて速攻とばかりに強烈な矢を射続ける。 「針鼠にしてやるよ。‥‥ハハ、そうすりゃ少しは可愛くなるんじゃないかい?」 現状可愛げの欠片も見られない蛇アヤカシに、ちょっと歪な装飾を施してやる。 赤マントは輝血同様周囲を駆け、隙を見つけては踏み込み一撃、即座に離れるといった攻撃をしながらその時を待っていた。 まるで丸太のような尻尾を真横に振るわれながら、事前の挙動で動きを読みきっていた赤マントは、距離を離される事を嫌って真上に飛んでかわす。 蛇アヤカシの凄い所は、こうして後ろや横に攻撃しながらも、前方に立つ統真を頭部にて攻撃し続けている所だ。 このまま時間をかけるのも手だ。宗久の矢を蛇アヤカシは避けられないのだし、このまま行けば細長い剣山の出来上がりとなろう。 もちろんそれまで前衛三人が持ち堪えられればの話であるし、そうは問屋が降ろさない。 「やべっ!?」 二度目の痛撃をもらった統真がたたらを踏んだ隙に、蛇アヤカシはその大きな口を限界まで開き、一口に食い尽くさんと噛み砕きに来たのだ。 転反攻を狙っていたのだが、今やったら殴れるが呑まれる。 「ぐうっ!」 全身にかかる負荷からか、思わずそんな悲鳴が漏れる。 全長十五尺の巨大蛇の顎門から逃れられぬと悟った統真は、咄嗟に両手を挙げて牙を掴み、噛み砕かれるのを防いだのだ。 足元を掬う様に拾い上げられ、通常なら真横になってそのまま呑まれる所を、下半身は膝立ちの形で何とか持ち堪えたその体移動の妙は見事であったろう。 しかし、如何に優れた開拓者、卓越した泰拳士であろうと、この強力な顎の力を単身で堪えるなど無茶にも程がある。 「統真!」 友の危機に赤マントが動く。 その名の通り赤き気を纏い、名に恥じぬ速度で蛇アヤカシへと迫る。 全身から練力を捻り出し、この一瞬に全てを放たんと体中の筋肉に命ずる。 『もっと早く』と。 統真に喰らいついている上顎を殴りぬけ、下顎を踏み台に頭部上まで飛び上がると、半回転しつつ踵を脳天へ、更に半回転した後肘で目を狙うが、流石に的が小さすぎたか瞼の上に突き刺さる。 それでも赤マントの動きは止まらない。 逆側の側面に抜けると落下しながら右拳を上顎へ、着地と同時に下顎を蹴りずらし、統真の体に巻きつかんとしていた舌に右回し蹴り、上顎に二段蹴りを加え、おまけとばかりに統真の後ろ襟を引っ張る。 流石に顔面をそこまで一瞬にぼっこぼこになるまで殴り蹴られれば、さしもの蛇アヤカシも全力で口を閉じてなどいられない。 力が緩んだのと、赤マントが引っ張ってくれるのを合わせて後ろに飛びのき、何とか危地を脱する統真。 それでも蛇アヤカシの正面に居る事には代わりない。 体勢を立て直して反撃を、と思ったのだが、蛇アヤカシは何故か踏み込んで来ない。 怪訝そうな顔になる統真に見えるように、宗久がちょいちょいと蛇の後ろの方を指差す。 そこでは、頭部への集中打撃で身動きが鈍っていた蛇アヤカシに、ここぞとばかりに攻勢を仕掛けた輝血が居た。 「蛇の癖は良く知ってる」 尻尾の先に深々と刀を突き刺し、そのまま地面に縫い付けて動きを封じている。 ははっ、と統真は笑い、肩をぐるんと一回転。 「中に居たんでな、大体、弱そうな所はわかったぜ」 威嚇するように大口を開ける蛇アヤカシの、何と口内に再度飛び込んだ統真は、ちょうど口内から蛇の脳の裏に当たる位置に八極の拳を突き上げトドメとするのであった。 蛇アヤカシをようやく倒した開拓者達は、トカゲを退治した面々と合流。 蔵の中にある鉄扉を開いた。 中に居た少女は、きょとんとした顔で皆を見ていた。 本当に生きていてくれた。そんな皆の気持ちを代弁するように統真が呟く。 「なんつぅか‥‥助けさせてくれて、ありがとな」 怪我もあってか、危うくその場にへたりこみそうになるのを堪え、何とか壁によりかかる程度で済ませる。 皆の後ろから覗き込むように宗久。 「それ、生きてるー?」 「宗久のオ・ジ・サ・マ」 余計な事言い出す前にとほとりに連れられ外に出る宗久。 「ハハ、凄いね。しっかりしてる。俺とは大違いだ」 「俺とは?」 返事はせずに飄々とした顔で蔵から離れていく宗久。何となくだが、踏み込めぬ雰囲気がそこにあった。 外では赤マントと輝血が側に夫が居ないかと探していたのだが、確認の為にと蛇アヤカシの腹を裂いた輝血はその中に白骨の遺体と高価な銀細工を見つける。 妻から聞いていた夫の所持品と一致したこれを握り、輝血は蔵の中でぼうとしている少女を見て呟いた。 「君のお父さんは蛇に負けなかった。それだけは忘れないで」 天忌は子供の前でしゃがみこみ、目線の高さを合わせる。 「――頑張ったな。母ちゃんがオメエを待ってンぜ」 「お、かあ、さん?」 見た目にも衰弱していると思われるので、秋桜がそっと抱き上げてやると、少女は特に抵抗もせずされるがままであった。 何やらごそごそと準備しているのはタクトだ。 どうやら簡易のおかゆを作ってやってるらしい。 秋桜はその配慮に微笑み、抱きかかえたまま、椀を側に持っていってやる。 少女はかゆを見るなり、まるで貪るように掻き込み始める。 すぐに蔵へと戻って来たほとりは、作り置き竹筒に入れておいた味噌汁を差し出す。 舌に染み入る味噌の甘みが、ようやく、少女に現実を、世界を、思い出させてくれた。 「う‥‥うぇっ‥‥うええっ‥‥うええええぇん‥‥」 秋桜は抱いたまま少女をあやす。 「‥‥僕、お母さんを呼んでくるね」 風のように走っていく赤マント。 全てが上手く行きはしないのが世の常だ。それでもと諦めない者が、こうして僅かな奇跡を手に出来るのかもしれない。 |