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■オープニング本文 空戦という概念は、かなり以前より天儀には存在していた。 だが、アヤカシですら空を舞うのが珍しくなくなってきている昨今では、新たな空戦のスタイルが模索されている。 グライダーや小型飛行船といった龍以外を用いた空戦スタイルも、それらに対応してのものであろう。 かつてそうであったように、龍のみが空を支配している時代はとうに終わりを告げているのだ。 それでも、高速機動と旋回性能、成長による能力の底上げといった要素から、やはり空戦の主役の座はいまだ龍であると信じられている。 優れた龍とその乗り手は、天儀の空において、やはり最強の存在たりえるのだ。 三騎目の龍が墜落していく。 くそうと隊長は敵への集中攻撃を指示する。 あの紫の奴が指揮官であろう。アレを倒さなければこの見事な陣形は崩せないと見ての事だ。 しかし紫はどうやって空を飛んでいるのかすらまるでわからぬ理屈で宙に浮き、あちらこちらと動き回るせいか捉える事が出来た者すらほとんどいない。 逆に火の弾の下級アヤカシに、龍を一騎づつ叩き落されてしまう。 こちらの弓術師は辛うじて紫に命中をさせているようだが、たった一人では焼け石に何とやらだ。 そして遂にその弓術師も討ち取られる段になり、隊長は撤退を決意する。 それすら、難しい状況に陥ってはいるのだが。 「ふざけんな! 十騎の龍が食われただと!? 空戦に慣れてるあいつらがどうやったら負けられるんだよ!」 命からがら帰還した兵は、治療を受けながら報告を続ける。 「し、信じられねぇっすよ‥‥あいつら、みんな矢だか弾丸だかを遠くからがんがん撃って来やがんだ‥‥こっちだって突っ込んで斬りかかりましたぜ。ですがみんな剣で斬るのと変わらねえ速さでばかすか撃って来やがって‥‥」 あれは矢雨、いやさ弾幕とでも形容するしかないと兵は項垂れる。 特にアヤカシ達を指揮する紫色のアヤカシ、まるで旋風のように素早く飛び回り、クナイのような刃物を無数に飛ばしてくるコイツに十騎の内の半数を討ち取られたという。 空戦では、基本的に地上でも強い兵が敵の龍に接近し、剣や槍を突き刺し攻撃するといった手段をとってきていた。 ところが今回の敵は、射撃メイン、というよりほぼ全てが射撃攻撃しかしてこないという。 長射程の射撃武器により、そもそも接近するまでに少なからぬ損害を被り、そして近づいたからといってその射撃武器が活きないという事は無い。 ここは地上ではなく、常時高速で移動し続ける空の上なのだから。 紫アヤカシの指揮故か、近接で張り付かれていない敵は、20メートル程度の距離をとってから射撃により攻撃するらしい。 こちらも射撃、もしくは術で対抗するならば特に問題は無いが、近接攻撃を仕掛けるのならば龍で移動しながら攻撃といったプロセスが必要となる。 もちろん龍に乗っての射撃は弓を用いるならば、それに特化した技術を持たぬ者では命中精度の低下を招く。 様々な不利な要因が重なったせいでの、今回の負け戦なのである。 現状手持ちの戦力は、今回倒された兵士達とほぼ同種の技術を持つ者達。これでは結果は一緒だ。 仕方がないと指揮官はこの手の特異な状況に対応しうる専門家に対応を依頼する。 そう、開拓者達の出番なのである。 |
■参加者一覧
風雅 哲心(ia0135)
22歳・男・魔
相川・勝一(ia0675)
12歳・男・サ
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
酒々井 統真(ia0893)
19歳・男・泰
玲璃(ia1114)
17歳・男・吟
輝夜(ia1150)
15歳・女・サ
紅咬 幽矢(ia9197)
21歳・男・弓
夏 麗華(ia9430)
27歳・女・泰 |
■リプレイ本文 輝夜(ia1150)は駿龍の輝龍夜桜に乗り、操るでなく輝龍夜桜の飛びたいよう好きにさせる。 そも思うがままに飛び回るのを好む輝龍夜桜は、心地よさそうに大空へとその身を躍らせる。 雲の上まで突き抜けたかと思いきや、今度は地表すれすれを滑空し、湖の上を飛沫を上げて飛び回る。 水面に七色の橋がかかるのを目を細めて眺めていた輝夜は、上空で仲間達が苦笑しているのを見て、このぐらいにしておくかと申し訳無さそうに手綱を引く。 これから、輝夜はアヤカシとの決戦に赴かねばならないのだから。 目標空域にたどり着くなり、明らかに自然なモノとは異なる輝きがふわりと浮かび上がってくる。 紅咬幽矢(ia9197)は駿龍、麗の手綱を強く握る。 早速火の弾をばかすかと撃ち込んでくるアレが、標的の一つ自爆霊だろう。 「アヤカシにも飛び道具使いがいるとは‥‥わかっているじゃないか。惜しみない賞賛を贈ってやりたいところだけれど、こちらとしてはアヤカシ如きに飛び道具で劣る訳にはいかないね。人間の叡智‥‥見せてやろうじゃあないか」 麗にジグザクの回避軌道を取らせつつ弓を構える。 揺れる龍の上でも弓を扱う術に関しては、ぎりぎりで学んできているのだ。 まずは一射。炎の塊のようなアヤカシであるが、矢が当たればしっかり痛いらしく、空を舞う挙動に乱れがみられる。 横に並ぶ夏麗華(ia9430)も、駿龍の飛嵐に乗ったまま巨大な重機械弓「重突」を構えている。 これは基部に宝珠が装填されており、大鎧すら軽々と貫く破壊力を発揮する武器であり、矢というよりは最早大砲と呼ぶ方がより適切かもしれない。 揺れる龍の上で狙いが定まりにくいのもあったが、どうにかこうにかぶち当てる事に成功。 木の幹ですら貫きそうな一撃であったが、自爆霊はまだまだ健在で反撃の火球を打ち出してくる。 「思ったより、しぶといですね」 飛嵐を旋回させつつ回避軌道を取る麗華。この重武装は再装填に時間がかかるのが難点である。 幽矢は即射にて手数を増やし、無遠慮にばかすか打ち込んでくる火の弾に対抗する。 精度がまるで違うせいか、命中数にもその分差が出るが、それでもこの数は鬱陶しい事この上無い。 それでも、まずは注意を二騎に引きつける事に成功した。 次の一手が、彼らの本命なのである。 横一列に陣を組んでいた自爆霊達に、後方より二組四騎の近接攻撃隊が襲い掛かる。 近接を狙う敵には距離を取るのがアヤカシ達の戦術だ。 散開しつつ包囲を試みるも、狙い定めた敵を囲むように動く開拓者達から逃れきる事は出来ず。 しかし輝夜もまた思うようにいかず歯噛みする。 地上戦と違って大きく距離が開いて、すぐさま縮むような戦闘が行われる空中戦においては、咆哮で敵を集めようにも効果範囲に一度に多数の敵が入っていてくれる事が稀なのだ。 ならばとすれ違いざまに自爆霊に長槍を突き刺す。 龍の速度があるため、突き出す槍も角度を考えねばたやすく持っていかれてしまうだろう。 針の穴を通すような作業であるのだが、操りなれている武具なれば、空においてもまた同様に取り扱えよう。 結構な損傷を与えた敵に、コンビを組んでいる酒々井統真(ia0893)が襲い掛かる。 空波掌により無理に近づかずに遠距離よりこれを狙う。そろそろ来るかと身構えていたのだが、まだ自爆霊が特攻する様子は見られない。 「どの道、試してみねえ事にはわかんねえか」 駿龍鎗真に突貫を命じる。 心得たもので、鎗真は高速で逃げにかかる自爆霊が、ちょうど統真の眼前に位置するよう追い込む。 ひょいっと鎗真が首を落とすの合図に、鐙にかけた足を踏ん張り、地上とは少々勝手の違う空中での拳を見舞う。 会心の当たりだ。空でもやれるもんだと口笛を吹く統真の後ろで、へろへろと自爆霊は自爆すら許されず墜落していった。 輝夜、統真組と同じく突入した相川勝一(ia0675)は、虎の面を被りなおして気合を入れる。 敵は流石に空中戦に慣れているらしく、こちらの包囲せんとする動きを牽制し、更に大きく外に陣形を開いてくる。 射撃が主である連中は、やはりこちらより立ち回りで若干の有利があるようだ。 ひっきりなしに打ち込まれてくる弾幕は、流石に全弾をかわすのは難しく、時折じゅっという嫌な音と共に皮膚を焦がす。 だが、近接攻撃を狙う勝一は、これを突き抜けなければならない。 炎龍の豪炎が自爆霊の上を取り、落下しながらクロウにて引き裂きにかかる。 表皮を抉られた自爆霊に、今度は勝一の長巻が振り下ろされる。 手ごたえあり、そう確信した勝一であったが、素早くすり抜ける豪炎に追いすがる自爆霊の姿を見て、自分が少しだけやりすぎた事を悟る。 「まずっ! 自爆‥‥」 長巻を掲げて衝撃を受け止めるも、危うく龍より振り落とされる所であった。 豪炎も失速しそうになるが大きく羽ばたいてこれを堪える。 一息ついた所に、風雅哲心(ia0135)の甲龍、極光牙が寄ってくる。 「大丈夫か!?」 声をかけてきた哲心の真後ろに張り付こうとしていた自爆霊は、後方より飛んで来た矢に貫かれ、落下していった。 「ええ、すみません、不覚を取りましたが、まだまだいけます」 「そうか。とにかく振り切ってしまえば自爆狙いのアヤカシは射撃組が何とかしてくれる。まだ本番じゃないんだ、気を抜かずいこうぜ」 そう、まだ例の紫アヤカシが姿を表していない。 奴が出てからが本当の勝負であろうと、皆が確信していた。 射撃組に混じって術を放っていた葛切カズラ(ia0725)は、戦闘中でも失われぬ艶やかな所作で口元に手を遣る。 指揮官である紫アヤカシが姿を現さぬのは一体どういう理由であろうか。 十体の自爆霊は、正直負けるとは思わないがかなり厄介な敵でもある。 間が悪すぎたせいで一発は自爆をもらってしまっているが、それでも今の体勢ならばほとんど自爆特攻をもらわずに切り抜けきれるはず。 炎の弾幕だけならば、前衛四人が突貫策を取った段階でほぼ解決している。 何故ならこちらには巫女の玲璃(ia1114)がおり、多少の無理押しは利くのだから。 そこまで考えて、カズラは急激に龍の手綱を引き絞る。 目標の位置確認、自爆を受けた勝一の元に向かおうとしている所だ。 「下よ! かわしなさい!」 玲璃は勝一に気をとられていたせいか、反応が遅れる。 そんな彼女と騎龍夏香に、真下より無数のクナイのような弾が襲い掛かってきた。 空中戦のせいで、普段の地上とは違い、治癒術を施すのにある程度接近する必要がある部分をつかれた。 紫アヤカシはこちらの要の一つを見極め、真っ先に落としにかかってきたのだ。 短い悲鳴と共に、落下してく玲璃と夏香。 更なる追撃を目論む紫アヤカシに、させじと術を唱えるカズラ。 「打て、砕け、狩猟の王が魔弾の如く! 霊魂砲発射!」 カズラの持つ非常に個性的な形状の式が、まっすぐ一直線に紫アヤカシへと襲い掛かる。 玲璃は頬をかすめる冷たい風に目を覚ます。 はたと気づいた瞬間、背筋が凍った。 そう、空戦中に気を失ってしまっていたのだから。 鐙を寄せ、手綱を引き絞って夏香に羽ばたくよう命ずる。 ゆっくりと回転しながらきりもみに落下していた夏香もまた、その命令で目覚めたのか強引に羽ばたいて回転を止める。 そのまま大きく真横に翼を広げ、少しづつ角度を上げ、急降下から斜めに軌道を逸らしていく。 「夏香、頑張ってくださいっ」 祈るような玲璃の声が届いたのか、地表から粉塵が巻き上がる程の距離まで迫りながら、どうにかこうにか墜落だけは免れた。 上ではカズラがほっとしたように手を振っている。 玲璃もまた神楽舞を用いて援護を行い、遂に現れた紫アヤカシとの決戦に挑む。 紫アヤカシが出現しただけで、戦況がまたがらっと変化してしまう。 とにもかくにも、放つクナイもどきが避けられない。受けるのも至難な程の鋭さで確実にこちらの損害を増やしていく。 かといって集中攻撃を仕掛けるには、まだ自爆霊がそこそこ残っており時期尚早。 しかもこちらに隙あらば回復役の玲璃を狙い打って来るのだ。 意を決した輝夜は、単騎にてこの紫アヤカシを抑えにかかる。 この動きを、紫アヤカシは待ち構えていた。 独特の動きで命令を下すと、残った全ての自爆霊が輝夜目掛けて火の弾を放って来たのだ。 「輝夜さん!?」 ギリギリで玲璃の神楽舞「防」が飛ぶ。後は祈るのみだ。 同時に紫アヤカシからも残像しか見えぬ程鋭いクナイが飛んでくる。 一度にそれらが命中したため、輝夜の全身が炎に包まれたと錯覚する程の炎弾と、重装甲の輝夜をしてよろめかざるを得ない程強烈なクナイ。 そう、紫アヤカシは最も強固な相手をこそ集中して倒すべしと、狙いすましていたのだ。 皆が驚き、援護に駆け寄ろうとする中、危機の後には好機ありと考える輝夜は、手に持った槍を音高く横に一閃する。 私は無事だと、まだまだ動けると皆に誇示するように全力で痩せ我慢をみせる。 この勇気に応えぬでは開拓者の名折れよと、皆が一斉に攻撃を開始した。 哲心の刀が自爆霊を深く斬り裂けば、勝一の長巻が縦一文字に両断する。 カズラの術が自爆霊の半ばを抉り取れば、統真の豪腕が炎の塊を火の粉にまで粉々に砕く。 麗華の重機械弓が自爆霊に大きな風穴を開ければ、幽矢が今にも自爆せんとするアヤカシを射抜く。 そして即座に重ねられる玲璃による輝夜への神風恩寵。 集中打を無理に放ったせいで位置の悪くなった自爆霊達を、開拓者は一瞬の内に全滅させていた。 残るは一体。しかしそれが遠い。 最前衛で踏ん張り続けていた輝夜が、たまらず一時後退を余儀なくされる。 麗華はまともに射ては当てられぬとフェイントに炎魂縛武を織り交ぜ数少ない攻撃回数を有効利用すべく工夫する。 それですら、三度に一度はかわされるのだから始末におえない。 勝一の斬撃を、ひらりひらりとかわす紫アヤカシ。 「斬れないにしても追い込めば‥‥!って、ええい!射撃がうっとうしい!」 後僅かという間合いまで迫った所で放たれるクナイのせいで、思うように近寄れないのだ。 空戦の動きを熟知したアヤカシである。 そんな中確実に損傷を積み重ねられるカズラは、紫アヤカシ用に最後までとっておいた蛇神用練力に手をつける。 既に撃ってある分で、効果がそれなりにある事は確認している。 しかしカズラもまた紫アヤカシからの射撃攻撃を受けており、陰陽師にしてはそこそこ耐えられるカズラだからこそ平気な顔をしていられるが、他の者であれば墜落しかねない傷を負っているのだ。 それでもなお、彼女は気丈に声を張り上げる。 「秩序にして悪なる独蛇よ、我が意に従いその威を揮え!」 そして後退した輝夜に代わり、一番前に出てその注意をひきつける位置を飛ぶのは統真である。 「鎗真、お前の力を信じての「無茶」だ、応えてくれよ?」 攻防一体の構え、最早別の技といっても過言ではない程に磨き上げた特技、八極門にて紫アヤカシのクナイを受けにかかる。 まともに数本が、防ごうと掲げた腕に突き刺さる。並のクナイではない、その一本で人一人を容易く引きちぎる威力を秘めたクナイだ。 これを、硬質化した体表にて受け止める。 流石に全ては受けきれず深く刺さるが、それだけだ。千切れる事も、動かなくなるような事も無い。 「なら充分だっての!」 どうしても空での近接攻撃は単調になりやすい。 それを充分熟知している紫アヤカシであるが、この裏をかくべく統真は鐙を外して龍の上に立ち上がる。 アヤカシの驚く顔という稀有な物を見つつ、統真はとんと龍の背を蹴ると中空にてくるりと縦に半回転。 距離と体の位置、向きを合わせて全力でぶん殴る。 回避能力に長けたアヤカシであるが、流石にこれはかわせない。どころか急所への一撃を許してしまう。 もう二度とやらんと心に誓うようなおっそろしい浮遊感が数秒程、綺麗に拾ってくれた鎗真にしがみつく統真。 息が止まり、動きが緩慢になる紫アヤカシ。 これに向かうは志士風雅哲心だ。 甲龍、極光牙の速度でも充分に捉えられる程の隙を、統真はきっちり作り上げてくれた。 それでも尚と、空を跳ねる紫アヤカシ。 幽矢は、龍の上で静かにこの様子を見つめていた。 「紫の。アンタはボクより技術は上かもしれない。それでもこの戦いの勝利を譲る気はないね。弓術士の戦い方を披露するよ!」 狙いに狙い済ました一矢。 倒すのみが目的ではない。この一撃のみで打倒しようなどと贅沢を言うつもりはない。 だが、この一矢が、必ずや勝利に繋がるよう、考えに考え狙い定めた乾坤一擲。 哲心の必殺の一撃を、完全なまでに成功させる布石。 大きく崩れた紫アヤカシの眼前へと迫る哲心。 「取ったぜ。星竜の牙、その身に刻め!」 白い筋が空を横切る。 紫アヤカシを通り龍の後を追うように伸びるこの細い煙の筋は、哲心が肩に背負った刀より漏れ出している。 「奥義『星竜光牙斬』‥‥悪いが、お前にこの空は譲れねえな」 帰還する前に、一度地上に降りるよう玲璃から頼まれ、一行は一休みと龍を降りる。 怪我の治癒が全くもって追いつかぬ熾烈な戦いであったぶん、勝利の感慨はひとしおだ。 皆の怪我を治療していく玲璃であったが、そんな彼を他所に、輝夜は愛龍と共に今度こそ目一杯遊びまわるぞと空に舞い上がっていく。 まだ治療がーとか言う玲璃を他所にばっひゅーんとかっ飛んでいってしまったので、仕方なく今度は倒れたアヤカシの為の供養を行う。 そんな彼女を横目に見ながら、カズラは煙管をくわえて既にのんびりとお寛ぎ中である。 「真面目ねぇ」 あはは、と苦笑いしているのは幽矢だ。 「ボクは休むよ。流石に疲れた」 のんびりと両足を伸ばして幽矢もゆっくりしている。 勝一は既に面を外しており、豪炎の背をなでつつ激戦を労わる。 「豪炎には無茶させたかな。ごめんね、大丈夫‥‥? 結構大変だったね‥‥」 豪炎はこれぐらい大した事ない、そう答えているかのように勇ましくいななく。 また統真も勝一同様、龍の活躍を労っていた。 「帰ったら林檎でも用意するからよ。今日は本当によくやったな‥‥ああ、心配すんな、空に飛び出すような無茶は二度としねぇ。いやホントに、人間勢いで動くもんじゃねえな」 愛龍鎗真は、何処かため息をついているようであった。 麗華は重機械弓をバラして整備してる。 今までに無い程の連続使用である。色々と注意すべき点もあるだろう。 一つ一つ部品を確認していると、ふと、近くから寝息が聞こえてくる。 見ると、哲心が極光牙に寄りかかったまま、寝入ってしまっていた。 くすくすと忍び笑いを漏らした後、麗華は風邪をひかぬよう哲心に布をかけておいてやる。 まだ空を楽しんでいる輝夜が戻るまでは、時間がかかりそうであったから。 |