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■オープニング本文 戦勝に沸く緑茂の里の只中で、他人に打ち明けられない悩みを抱える男が通りを歩いていた。 その顔は青ざめ、口からはぶつぶつと独り言。 大方はそんな男には気付かず、酒盃を片手に大騒ぎ。逆に数少ない目端の利く者は、それゆえに厄介事から静かに目を逸らすのみ。 「何かお困りのご様子ですね」 そんな声を掛けられた男は、自分の口から言葉が漏れていたことに気付き、慌てて両手で口を押さえる。それから恐る恐る振り向いた先には、紫のローブを纏い顔を白い布で覆った、何やら怪しげな占い師らしき人物。 「驚かせてしまいましたか? あまりに思い詰めているようなので、事情は分かりませんが声を掛けさせていただきました」 思ったよりも親しみを覚えるその声と仕草に、一瞬開きそうになる口を、男は再度塞ぐ。 そんな男の仕草にも、慌てず騒がず、占い師は穏やかな声で先を続ける。 「秘密厳守は占い師の大原則です。こちらの身元が気になるのでしたら、確認していただいても結構ですよ」 占い師が懐から出した、開拓者であることを示す鑑札を見ると、ようやく男は口から手を下ろし、項垂れてからぽつりぽつりと事情を話し出した。 「‥‥なるほど。確かに大事といえば大事ですね」 話を聞いた占い師は、手元で歌留多のような札を切りながら呟く。 「一緒に運ばれていた荷物は戦時物資と言って間違いではありませんが‥‥ 少々銘刀揃いというのは気になるところですか」 言葉少なに、肯定の意を告げる男。 「では、こういうのはどうでしょう?」 占い師が告げたのは、開拓者ギルドへの依頼。ただしその内容を『アヤカシや賊の手に渡っては困る物資の回収』とする、というもの。 表情が既に難色を示している男に、占い師は軽やかに自分の意見を述べる。 「このまま放っておけば荷が誰かの手に渡るのは必至。最悪市井から噂となって流れてしまうでしょう。それを避けるために早急に・確実にとなれば、ここは志体持ちの開拓者を頼るのは賢明な判断だと思われます」 思案を始める男に、何気ないように言葉を接ぐ占い師。 「それに、開拓者ギルドを通せば身元のはっきりした人物に依頼することが出来ます。何かあった時に、速やかに担当者と連絡を取ることも可能ですし」 私も聞いてしまいましたし、そんな事態はそうそう起きないとは思いますけどね、とにっこり笑って駄目押しをする占い師。 男はその言に安心すると、早速仮の開拓者ギルド詰め所に向って駆け出していった。 |
■参加者一覧
高遠・竣嶽(ia0295)
26歳・女・志
斑鳩(ia1002)
19歳・女・巫
千王寺 焔(ia1839)
17歳・男・志
星風 珠光(ia2391)
17歳・女・陰
水月(ia2566)
10歳・女・吟
鬼限(ia3382)
70歳・男・泰
橋澄 朱鷺子(ia6844)
23歳・女・弓
辺理(ia8345)
19歳・女・弓 |
■リプレイ本文 ●寒空 昨日から降り続いていた雨は今朝方止んでいたが、相変わらず空は曇ったままだった。 日差しも無く辺りは寒々しいが、見上げた先には露にぬれた森の木々が一際紅く、その色付きを見る者に誇るかのよう。 「警戒を疎かにするつもりは無いが。‥‥こうも景色豊かだとついつい見とれてしまうな」 柄に手を置いたまま、千王寺 焔(ia1839)は誰にとも無く呟く。微かに緩んだ表情に、隣に寄り添う星風 珠光(ia2391)は一層身を寄せて甘えるように呟く。 「‥‥紅葉きれいだねぇ、焔君」 曲りくねる小道から一行が訪れるまでの束の間、久々に二人きりの甘い時間を過ごす。 一行が合流したのは、森に入って小道を一時間ほど進んだところ。脇に小さな祠が立っている。 「これが依頼主に確認した目印だと、思うんだけどねぇ?」 珠光が問えば、地図を開いていた斑鳩(ia1002)も間違いないでしょうと答える。 「距離的にも一致しています。打ち合わせた通り、ここで態勢を整えていきましょう」 皆に声を掛けると、自身も地図を畳み始める。 「その木陰が良いのではないでしょうか。また雨が降り出さないとも限りませんし」 荷車を引いていた高遠・竣嶽(ia0295)に辺理(ia8345)が声を掛ける。こくこくと水月(ia2566)が頷いて同意するのを見ると、思わず顔を綻ばせて頷く。 「そうしよう。‥‥鬼限殿、少し後ろを押さえていてもらえますか?」 心得た、と既に幾つか荷が載る車を後ろから押す鬼限(ia3382)。 「それにしても余程気が動転していたんでしょうね」 途中拾った、残念ながら本命ではないらしい長持を見つめながら、少し恨めしげに呟く橋澄 朱鷺子(ia6844)。 「護衛も少ない一行だったという話じゃ、無理もなかろうて」 崩れそうになる荷を押さえながらも、鬼限が答える。 「アヤカシは脅威であるのが道理。そして対抗できる我らが何とかするのが筋というもの」 無言で頷く焔は、皆の表情に自分と同じ覚悟が浮かんでいるのを見て身を引き締める。 「それでは行こうか」 言葉こそ短いが、そこに篭められた決意に皆一層の気合を入れる。 ●発見 「焔君。完全武装の鬼が四体、長持に群がっているみたいだねぇ。この先三十メートルってところ」 珠光と視覚を同調させた式が、曲りくねる小道の先にアヤカシを捉える。本命かどうかまでははっきりしないが、長持から棒状の何かを掴み取っているように見える。 そこまで聞いた焔は即断する。 「珠光、奴らを荷物から引き離す。後ろに合図を」 二刀を構え、気を集中し始める焔。珠光の式である炎を纏う小鳥が後方に向うのを確認すると、珠光から聞いた情報を頼りに小道を駆け抜ける。 (「鎧鬼!」) 合戦で散々見慣れたアヤカシが、こちらに気付いた様子はない。珠光が離れず付いてきている事だけ確認すると、そのまま渾身の一撃をこちらに背を向けるアヤカシに浴びせる。 「引くぞ、珠光」 「分かってる、焔君!」 手応えは十分だが、思った通り致命傷には遠い。アヤカシたちがこちらに敵意を見せることを確認すると、珠光の後ろに付きながら、一行との合流を目指す。 「珠光さんの式です‥‥ え?」 いきなり死角から現れた炎の小鳥は、『至急集合』の合図と共に弾ける。同時に、道の先からは獣の如き怒りの咆哮。 一拍遅れた結夏を除き、駆け出す一行。 「水月さん、数は?」 「よっつ!」 斑鳩の問いに、水月は声と一緒に親指のみを折った手を突き出す。 「次を曲がった先に‥‥ っ、森の中にも居ます!」 速度を落として支援の準備を始めようとしたところで、他にも蠢く瘴気の塊に気付いて声を上げる。 「先程の咆哮が呼んだか?!」 足を止めかけた竣嶽が、囲まれかけている焔を見てそのまま駆け抜ける。 「鬼限殿!」 「任されもうした!」 掛けられた声の意図を察した鬼限は、水月の指す方向から迎撃場所を選ぶと、遅れてくる弓術士と結夏に指示を送る。 それを横目に、速やかに息を整え舞の準備を始める斑鳩。 「森の中、右がよっつ、左奥にも、ひとつです!」 水月は息を切らせながらも弓を構え、結界に反応する気配を逃さず伝える。 (「狙えるか?!」) 朱鷺子はどちらの向きにも射線が通る場所に陣取ると、矢を番えて心を静める。 結夏が付く頃には、辺理も弓を構え終わっている。 「迎撃開始、ですね」 斑鳩がその言葉と共に神楽を舞い始める。その舞が前衛に確かな力を与え始めた。 ●反撃 一行との合流が目的の焔に対して、形振り構わず突撃するアヤカシ。 俄然勢いはアヤカシ側にあり、追いつくどころか行く先に回りこみそうなのだが。 「焔君、もう良いよ!」 視界が開けて一行の迎撃準備が目に入ったところで、珠光は手に人形を構え直してアヤカシ共に向き直る。 焔はそれに合わせて急制動を掛け、アヤカシの群れに半ば突っ込む。 「千王寺さん!」 四体の鎧鬼が武器を振り上げるその一角へ、竣嶽は慌てて切り込む。得意の抜刀術は手前のアヤカシの右腕を切り飛ばし、返す刀がその背を袈裟に切り下ろす。流石にそのアヤカシは体勢を崩して膝を突き、その視線を焔から離す。だがまだ三体が群がって‥‥ そんな気を揉む竣嶽の視界の隅に、場違いなほど鮮やかな紅い光が零れて舞う。そしてそれを追うかのように現れる、強大な黒い影。珠光の詠唱に気付いたときには大鎌が二度三度と振られ、真空の刃を作り出していた。 「黒き炎を纏いし我が大鎌よ」 乱戦にそぐわない落ち着いた響きは冷たく、だが導く結果は黒い灼熱。 「敵の魂を喰らい尽くしなさい‥‥」 放たれた真空はアヤカシに斬撃を与えるが、その傷ごと焼き尽くすかのように黒炎が広がり、終にはアヤカシを飲み込む。 その黒炎が紅葉を木から散らせ地面から巻き上げる中、黒衣の焔が紅い燐光纏う刃をアヤカシに続け様に叩き込む。 (「何という連携!」) 思わず舌を巻く竣嶽だが、まだ鋭さが残るアヤカシの剣戟を受け流しつつ、自らもその信念を叩きつける。 「この場からは大人しく消えてもらおうか。恨みがないとは言わないが、全ては世の安息のため!」 竣嶽の剣筋に迷いは欠片も無い。瞬く間に鎧鬼は数を減らし、姿を瘴気と変えていった。 ●苦戦 森から現れた鬼四体は、一行を見付けると担いでいた長持を投げ捨て、刀を構えて襲い掛かってきた。読み取りにくいが、その顔には獲物にありつけたという喜悦が確かに浮かんでいる。 素早く戦力を見極める鬼限。焔たちが引き連れてきた鎧鬼と比べて、明らかに武装は粗末。身の丈こそ変わらないが圧力もさほどではない。 (「わし一人ではちと厳しいが、押し切られるほどではないかのぅ?」) 素早く先頭の一体に身を寄せると、出所を見誤らせる蛇の如き拳を叩き込む。敵を引き付ける意味で少々手堅く放たれた左右の連撃は、過たず目標を捉えて踏みとどまらせる。しかし、それを見ても他の鬼は立ち止まらない。明らかにはずれを引いた先頭の鬼を嘲笑い、そのまま後衛に踊りこむ気配。 「この外道共!」 間髪入れず弓術士二人の矢が放たれる。朱鷺子の連射で一体が崩れ落ち、辺理の強射が一体を派手に吹き飛ばすが、その勢いは衰えず。無傷な鬼は怯えるどころか、逆に独り占めが出来る好機とその顔を更に醜く歪ませる。 その僅かな隙を突き、後衛と鬼の間に無理矢理割り込ませる鬼限。その視界を遮ってその注意を自分に向けることは出来たが、代償は大きい。 「ぐぬっ!」 捌ききれぬ連撃が鬼限の体を走り、血飛沫を上げる。 「この程度を捌けぬとは‥‥ 修行の種が尽きぬことを喜ぶべきかのぅ?」 叩く軽口に呻きが混じる。 鎧鬼を蹴散らし瘴気へと帰した焔と竣嶽。後衛の危機に身を翻そうとする矢先、珠光の叫び声が被さる。 「気をつけて、まだ居る!」 身構えた先の、木立が吹き飛ぶ。そして放たれる威圧的な咆哮。仲間を呼び集める意味など含まぬ、純粋な破壊衝動。 「鉄甲鬼か‥‥ 相手にとって不足は無い」 二刀を構えなおし、再度気魄を漲らせ始める焔。反対に竣嶽は鞘に刀を収め、静かに剣気を研ぎ澄ませていく。 「ここが正念場というやつだねぇ」 心許ない練力の心配など欠片も見せず、珠光は不敵な笑みを浮かべる。こちらを見下ろす鉄甲鬼に、三人はそれぞれ怯まぬ視線を向ける。 ●辛勝 ごっそりと奪い取られた生気を、己を包む風が瞬く間に回復させる。 慌てて弓から扇に持ち替えた水月が、癒しの風を鬼限に送る。 「かたじけない、水月殿!」 こくこくと真摯な表情で頷く様を背中越しに感じながら、鬼限は鬼と対峙する。しかしその動きに切れは無く、更に鬼の反撃をことごとく受けてしまう。 声にならない叫びを上げ、必死に癒しの風を送る水月。 対する斑鳩は、その状況を把握しながらも舞い続ける。皆への信頼が焦りを溶かし、その祈りが皆に力を与える。 (「私の祈り、皆の願い。精霊よ、その加護を此処に顕したまえ!」) 無骨な拳に宿る、無垢なる力。鬼限はその力を、渾身の力を篭めて目の前の鬼の向こう側へ『徹す』。 衝撃のあまりの無さに顔を緩ませる鬼は、直後に顔を歪める間も無く崩れ落ちる。 それを見届けた鬼限は、思わずというように腰を落としかける。 「日々此れ総て修業とは言え‥‥ 応えるのぉ」 慌てて近寄ろうとする水月の動きを手を突き出すことで留め、まだ続く戦闘に注意を促す。まだ鬼は残っている上、向こうは大物が控えている。 「辺理さん、こっちは任せて!」 即射を切り払われて衝撃を隠せない辺理に朱鷺子がすかさず声を掛ける。狙い済ました一撃こそ、膠着した状況を打破するに相応しい。 「わ、分かりました!」 残りの鬼へ即射を見舞いながら体をずらす朱鷺子。辺理は場所を入れ替わり、矢を番え弓を引き絞る。狙うは先程初めて見た鬼より、遥かに大きな体躯。緊張で震えそうになる腕を、必死に宥めて機会を待つ。 「手強い‥‥」 短く呟く竣嶽の額に汗がにじむ。粗末な武器を力任せに振るう鉄甲鬼は、武具の扱いに長けた自分達には相性の良い相手だったはず。しかし目の前の敵は、長大な斬馬刀を刀として見事に扱ってみせる。洗練されたとは言い難いが、受けた一撃の威力と間合いは十分に脅威だった。 だが、ここで遅れを取る訳には行かない。 「大丈夫、ちゃんとこっちの攻撃は効いてるよ!」 あと一息だよと、珠光が笑顔で応える。焔とは視線だけで交わす言葉に、少々羨ましいものを感じてみるが、焔が気魄を振り絞るのを感じると、己も刃に力を篭める。 「大丈夫、援護を信じて!」 珠光の言葉が発せられると同時に、焔が刃から残像を残して駆け抜ける。連撃が斬馬刀ごと鉄甲鬼の右腕を砕く。だがそれを見越したかのように、残る腕で焔を掴みに掛かろうとする刹那。 「そこです!」 今度は竣嶽の斬撃が、鉄甲鬼の腕を切り裂く。だが瘴気を飛び散らせながらも鉄甲鬼の動きは加速する。 「黄金の蝶よ!」 そこに凛と響く、珠光の呪言。 「黄金の蝶よ‥‥我が敵の動きを鈍らせなさい」 珠光の手元から光が溢れ、蝶の形を取って鉄甲鬼に群がる。一瞬で消えた後、そこに残るのは不自然に体を強張らせ、打ち付けようとする掌が体ごと流れる。 (「好機です!」) 思った瞬間、甲高い気合と共に矢を放つ辺理。短い残心が解けると、そこには無残にも右肩を吹き飛ばされた鉄甲鬼。目が合う瞬間、様々な感情が溢れ出して思わず背筋を震わしてしまう。 (「外した? こっちに来る?!」) だが鉄甲鬼はそのままうつ伏せに崩れ落ち、静かに瘴気へと帰り始める。 信じられないものを見るかのようにその様を見続ける辺理の肩に、朱鷺子は静かに手を乗せる。びくりと体を震わせて振り返る相手に穏やかな笑みで頷いてみせると、ようやく辺理も大きな溜め息と共に肩の力を抜く。 「‥‥今頃、震えてきました」 ははは、と乾いた笑いを見せる辺理に、皆の暖かな笑い声が重なった。 ●顛末 アヤカシとの戦闘後、手早く辺りを捜索して帰途につくこととなった。消耗が激しく連戦は厳しいとの判断からだが、幸い鬼が運ぼうとしていた長持が本命だったため、任務は達成したといって良い。 ‥‥鬼が放り投げた拍子に長持の鍵は壊れ、その中身は水溜りにぶちまけられてしまったのだが。 そんな訳で、一行は行きに通り掛かった無人の茶屋に上がり込み、休憩と荷物の整理を行うこととなった。目録通りに内容物は全て揃っていたが、何といっても直ぐに手入れをするべきものがある。 「ほわー、これが清光ですか」 竣嶽が手入れするのを横から眺めつつ、辺理は感動の溜め息を漏らす。天儀最高峰の刀工の一品は、今まで見た銘刀とは比べものにならないほど美しい刀身をしている。 (「過分に美しすぎる気もするが‥‥」) 竣嶽は不審に思いながらも、拭い紙で丁寧に汚れをふき取り、次いで打ち粉を掛けていく。 他の皆は囲炉裏端で、結夏の持参した柚子の蜂蜜漬けを摘んで疲れを癒していた。柚子を漬けた蜂蜜をお湯に解いて飲むのも良いと告げると、早速珠光がお湯を沸かす準備をしている。 (「‥‥長持も、乾かしておいた方が良いよね?」) 銘刀の類は竣嶽に渡し、それ以外の小物は結夏が隣の板間で整理をしていた。長持の表は布で拭ってあるが、中に物を詰めるとなるとしっかりと乾かしておいた方が良いはず。 単に皆のくつろぎを邪魔せぬように静かに長持に近寄ると、その蓋に数枚の紙切れが張り付いているのを見つけてしまう。深く考えもせずそれを剥がすと、当然その文面が目に入った。 どうやら手紙の一部であるようだが、読む人を引き込む、中々の名文が綴られていた。だが内容は次第に情熱を増して行き、雅といえるぎりぎりの線へと肉薄して行く。思わず胸をどきどきさせて読み進め、最後の綴りを捲ろうとしたところで、肩に静かに手が置かれる。 ぴっ、と声にならない悲鳴を上げかけるが、人差し指であっさり口を封じられる。 「最後の綴り、読んでしまいました?」 穏やかな言葉が耳元で囁かれる。返事をしようにも、そっと当てられた指が口を全く開かせない。 「宛先と送り主さえ見ていないなら問題ありません。尤も、中身も知らないほうが勿論都合が良いのですけど」 そこまで告げ、相手が理解したことを確認すると指を離してもう一度問う。 「最後の綴り、読んでないですよね?」 頷くしか無いと、こくこくと首を振り続ける水月だったとか。 |