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■オープニング本文 ※このシナリオは初夢シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。 ※このシナリオは、シナリオリクエストにより承っております。 正月。 マーチン家では新年の集まりが催されていた。 エリカの嫁き遅れを案じていた親族たちは、かねてより聞いていた彼女の二世誕生を祝い、赤ん坊のカモミールをかまい倒している。 「いやあ、なんにしてもよかったよかった。もしかしたらこのまま永久に独り身なのかと心配しておったのよ」 「エリカは長いこと捕まえちゃあ逃げられを繰り返しておったもんのー」 「男の趣味が悪うてー」 「しかり、選ぶのはカスばかりじゃった」 「確かに見る目のなさはひどいもんでちたな。だけどようやくそこそこマシなのをゲットしたでち。子供にだけはご主人たまの頭と性格が遺伝しないことを心より願うだけでちな」 「そこは気になるところですよねえ。この子、髪や目の色なんかはエリカさんそのままですし。ぜひ頭の中身は僕似であって欲しいものですが」 「…おじさんおばさん、今すぐ全員帰って欲しいんだけど。後スーちゃん、ロータス、何便乗してんのよ出ていって」 「いだだだだ頬が伸びるでち虐待でち虐待でちー!」 「ちょっと、僕あなたの旦那様ですよ! 何で追い出されるんです!」 お呼ばれしていた面々はその騒ぎを聞き流し、お座敷でめいめいカルタ遊びに興じたりすごろくをしたり、正月のテレビ特番を見たり、また外で羽根突きをしたり。 「きたねーアリス! 今のはそっちの負けっす! 墨塗られるっす!」 「アガサがわざと羽、屋根に上げたんやないか! 明らかにペナルティ行動や! 塗られるのはそっちの方やわ!」 やたら庭を駆け回るマーチン家の番犬コリー、レオポールに至るまで、とにもかくにも正月を満喫している。 そこにいきなり異変が起きた。 晴れていたはずの空がにわかに暗くなり、雨も降らぬのに雷が鳴り始める。 それが止んだと思いきや、今度は地面が揺れ始めた。 「な、何。地震?」 はいはいしていた息子のカモミールを抱き寄せたエリカは、縁側に出る。 異様な音が響いてきた。 ウォンウォンウォンウオォン…。 町のあちこちの地面を割り、見たこともない化け物が現れる。 三脚のような足に乗った、三角の頭。ぬるりとした金属製の光沢。 赤く点滅している目から光線が出た。 それを受けた町の一角が、瞬時に吹き飛ぶ。 ズゥンンン。 悪意しか感じられない所業だ。 奴らは一体何者。 皆がそう思ったところで、閉めた襖の隙間から白ワンピースの女が出てきた。 まごうかたなきアヤカシ隙間女。 「…皆さん…冥土の国への一里塚が今年も来ましたね…めでたくもありめでたくもなし…おめでとうございます…」 「あれー、隙間たんどうしたでちか。よその世界へ引っ越したのではなかったでちか?」 「…ちょっと里帰り…バグア星人による…次元を超えた乗っ取り作戦が…天儀を対象に…行われると小耳に挟んだから…お知らせに来たのだけど…向こうが到着する方が早かったわね…やはり高速を…使うべきだったわ…」 縁側からエリカが戻ってきた。 「バグア星人って、あのタコみたいな奴のこと?」 「…そうよ…あれは乗り物で…本体じゃないけどね…天儀の管理者である護大が…職場放棄したと…どこかで聞き付け…今なら取るの簡単なんじゃないかと…押し寄せてきた次第…お前のものは俺のもの…俺のものも俺のもの…」 「絵に描いたようなジャイアニズムでちなー。で、スーちゃんたちどうすればいいのでちょう。あの未知との遭遇、すっごく強そうなんでちが」 当然の懸念を示すスーちゃん。 突如庭先から威勢のいい声がした。 「心配ご無用だワン!」 …先程まで意味もなくはしゃぎ回っていたレオポールが半人化し服を着ている。 その姿、まさに狼男ならぬ犬男。 「実は今まで隠していたけど、俺は多数の世界を股にかける時空管理官なんだぜワン。この世界の危機を救うため来たエージェントだワンワン!」 彼が自信満々に口上を述べた直後、近くで爆発が起きる。 「キャンキャンキャン!」 レオポールは脅え、犬小屋に鼻から突っ込んだ。 嫁犬のメリーが心配し鼻を鳴らしているが、そこから頭を出そうとしない。 それとは逆で、破壊衝動にうずうずきている飼い主エリカ。 「ちょっと、結局どうしたらいいわけ、あれ。剣で切れるなら今すぐなますにしに行きたいんだけど」 隙間女は手を叩く。 どこからともなくミニ隙間女が、スイッチボタンのついた箱を持って現れた。 『ハイ』 「…ありがとう…では…ぽちっとな…」 隙間女はそれを押す。 間とおかず鋭い風切り音が響いて来た。 激しい地響きとともに多数の大型アーマー群が地に降り立つ。 「…使用方法は…そこのエージェントから聞いて…では…アデュー…私お茶の会があるからこれで…」 言うだけ言って消える隙間女。 かくして人類は侵略者と戦うことになった。 人型決戦兵器、そして使えそうにないエージェントと一緒に。 |
■参加者一覧 / マルカ・アルフォレスタ(ib4596) / ユウキ=アルセイフ(ib6332) / 雁久良 霧依(ib9706) / サエ サフラワーユ(ib9923) / サライ・バトゥール(ic1447) / 鏖殺大公テラドゥカス(ic1476) |
■リプレイ本文 予期せずして始まった宇宙戦争。 町を荒らし回るトライポッドを前に、鏖殺大公テラドゥカス(ic1476)はいつもの豪傑笑い。 「ふはははは! わしの力を思い知らせてくれるわ!」 羽妖精ビリティスは彼の頭に仁王立ち。 「バグア共め、遂に現れやがったな!」 彼女は真っすぐ延ばした右手を腰の下から頭の上へ持ち上げポーズを決める。 「行くぜテラドゥカス!」 「おお!」 テラドゥカスの胸が突如パッカーンと割れ、光の玉が飛び出した。 宝珠とは異なる輝きがビリティスの手のひらに吸い込まれ、一体化する。 「テラドゥカス、封印解除!」 テラドゥカスが巨大化する。トライポッドと同様、いや、それ以上に。 ビリティスも巨大化する――人間サイズへ。 服が千切れ螺旋を描いて飛ぶが裸体は光に包まれシルエットしか見えない。 「何すか、さっきから流れてくるこの景気のいい音楽」 「変身シーンのBGMやろ、多分」 解説役を引き受けるアガサとアリス。 たっぷり1分かけメタモルフォーズを終えたビリティスは、薄手パイロットスーツに身を包んだ少女になっていた。 「…ビリティス・カニンガムだ」 あらぬ方向へドヤ顔を向けた彼女は、犬小屋に突っ込んでいるレオポールの尻を蹴飛ばす。 「キャイン! 今蹴ったのは誰だワンワン!」 やっと顔を出したレオポールは、ビリティスの姿を見て尻尾を振る。 「おー、ビリィじゃねえか! 久しぶりだなワンワン」 「おう、レオポール久しぶりだな! 実はあたしも奴等の襲来を予期して潜伏してたんだぜ♪」 「本当かワンワン! やったあ、これで俺戦わなくてすむー…」 「なわけねーだろ。お前もあたしと一緒で前線に出んだよ。エージェントなんだから当然だろ」 「ヤダヤダヤダーもうバグア星人と戦うのヤダー怖いもんー」 滝のような涙を流すコリーは、再度ビリティスから蹴られる。 ところで事態に動じていない人間はまだいた。ユウキ=アルセイフ(ib6332)もその1人。 「ナイ○フォーゲルなんて、久し振りに動かすよ。S−02リ○○ティーはあるかな……。思い入れのある機体だから、また乗ってみたいね。メインエン○ンはG光線ター○ジェットエ○ジン。エミ○ンス○スター搭載で…」 サエ サフラワーユ(ib9923)は遠慮がちに尋ねる。 「あの、ちょいちょい聞き取れない単語があるのは何でですか?」 「そうだなあ…異次元コンテンツ断層による電波の不具合ってところかなあ」 「はあ…いじげんこんてんつですか…」 白衣に黒ビキニの雁久良 霧依(ib9706)もまた事情通の1人であるらしい。 「予想通りね♪ 準備しておいてよかったわ」 などとのたまいながら、イカめしい〇Vク〇ーケ〇霧依カスタム、愛称電動しびれイカに乗り込んで行く。 地響きがした。 バクア星人の攻撃か。 違った。エリカが人型決戦兵器で暴れているのだ。相手を殴るわ蹴るわ引きちぎるわでどっちが悪役か分からない。 (このままにしておくと、エリカ様によっても世界が滅びそうですわ…宇宙からの侵略者、何か超展開ですが倒すしかなさそうですわね) マルカ・アルフォレスタ(ib4596)はひとまず目の前の機体に着目した。 操縦室に席が2つある。 (…2人仕様なら、1人仕様より動かしやすいのでは?) 思ってレオポールに説明を求める。 よっぽど戦うのがいやなのか耳が寝てしまっている犬男は、情報端末を取り出し検索。 「ええと、これは最近出た新型〇Vだワン。高機能AIが動きを完全自動制御してくれる安心安全設計」 「まあ、なんて今のわたくしにおあつらえむきな…では早速アリス様に同乗をお願いしましょうか」 「あ、それじゃ駄目みたいだワン。これ、基本男女2人乗りだって書いてあるワンワン。女が前で男が後ろだってウォン」 2人乗りはいいとして、何故男女と限られているのか。 そこを深く考えなかったマルカは、機体の足元を見ているサライ(ic1447)に声をかける。 「すみませんがサライ様、ご同乗願えますか?」 サライは返事をする前に、目立たぬようペイントされた機体名のスペルを読む。 CHOUMIDARA どうだろうこの心躍らせる響き。いかにも何か起こりそうではないか。 そんな思惑を胸に黒いウサギは、マルカの申し出を快諾するのである。 「はい、僕はかまいませんよ」 レオポールはまだ端末をいじっている。 「なんか遅いなー…まだ途中までしか紹介ページが表示されないワン。電波の入りが悪いんかなーここ…」 困った犬の顔をする犬の背中を、サエがつつく。 「ええと、あのその、私に手頃そうな機体、何かないものでしょうか。完全に初心者なのですが…」 「お、ああ、そんならこれがいいワン」 といって彼が紹介してきたのは、15m級の白い女性型ロボット。 額に若葉マークがついている。 「初心者用の機体だワンワン」 サエは疑った。エージェントとやらの見識を。 (えっと、ほんとにこんなので大丈夫なのかなぁ?) ロボットは全体的に凹凸がない。フラットにしてプレーン。特に胸がとてもフラット。隣にあるのが同様に女性型で、しかもぼいんばいんなおっぱいミサイルがついているだけに、余計そう感じられる。 サエは何気に、自分自身がバカにされてるよーな気がしてしょうがない。 (かわいいといえばかわいいかもだけど強そうには見えません) しかしこれが最も動かしやすいというのだから、諦めるしかないだろう。 灰色にして無骨なユウキの機体が発進して行く。 「さあ、久々に暴れてみようか」 主兵装はミサイル○ッド、副兵装はシェル○ーンチク、WS−4機○砲、ガトリ○グ砲。フレーム「シュ○ウド」、フレーム「レイ○」、更に補助スラス○ー「陽炎」。最後に高性能サブア○システム。紛れも無いプロ使用…。 「あ、この装備、宇宙用の武装だね……」 装備内容を訂正しようかどうしようか迷ったユウキは、モニターごしに巨大化したテラドゥカスが、トライポッドを力技でなぎ倒していくのを見る。 『その程度かバグア星人! のろい、のろいぜ!』 ビリティスの高笑いと共に鉄拳が炸裂。三角頭を凹ませる。 三脚をひと掴みにし、ぶんぶんぶんと振り回し、他のトライポッドに叩きつけて行く。 『くたばれバグアども! おいレオポール、お前もさっさとこっちに来い!』 『キャインキャインキャイン』 伏せの姿勢を崩さないでいたレオポールの犬ロボットは、テラドゥカスに尻尾を引っ張られ連行されていく。 『さ、私も出撃よ♪ イカだけにたっぷりイカせてあげるわ♪』 霧依の電動しびれイカが触手から電撃を出した。 『テンタクルブラスト!』 トライポッドが各関節から火花を上げたところで、急速冷凍ガス攻撃。 『テンタクルブリザード!』 三脚攻撃機はたちまち凍りつき、結晶となって崩れ落ちる。 『やっぱりイカちゃん最高よ♪』 モニターをじっと眺めていたユウキは、ふと疑問に思う。 (霧依さんが技を出す度、巨乳が揺れるカットインが入るのはなんでだろう…) 不自然さに引っ掛かりはしたが、いったんそれは棚に上げておくとする。自分の方にも敵が向かってきたので。 機〇砲を対象に向け、引き金を引く。 被弾したトライポッドは内部爆発を起こし崩れ落ちる。 サエは焦った。 (わわっ! 戦闘が始まっちゃった? みんなすごいっ!) 自分も早く加わらなくてはと、操縦席にあった電源スイッチをオンにする。 モニターに外が映し出された。続いて人工音声。 『このたびは訓練機わかば1号をお買い上げいただきありがとうございました』 「あ、いえ、買ったわけではないと思うのですが…」 控えめな突っ込みは無視された。 『それでは早速運転を始めてみましょう。準備はいいですか?』 「あ、あのっ! なんだかわかりませんけどが、がんばりますっ! で、どうしたら…」 『わかば1号を動かすのは超簡単。子供やお年寄りにも優しい安全設計。座席前のレバーを操作するだけ』 確かに座席前に突き出たレバーがある。 サエは恐る恐るそれに手をかけ前に倒す。 ロボットが歩きだした。後ろに傾ければバック、右に傾ければ右、左に傾ければ左。 「わあ、これなら私でも安心ですぅ」 大いに安堵したサエを衝撃が襲う。 後方から近づいてきたトライポッドが、いきなり蹴りを入れてきたのだ。 「ふきゃあああ! な、何…」 体勢も整え直せないうち、今度は光線攻撃が。 吹っ飛ばされ落下するわかば1号。 「ふぬぬ、も、もう許せません! やっつけてやります…う?」 わかば1号を立ち上がらせたサエは、操縦席にレバー以外何もないことに初めて気づいた。 「…あれ? あ、あのすいません。ミサイルボタンはどこですか?」 『申し訳ございません。当機体にミサイルはついておりません』 「……ぜ、ぜんぜんダメ? 武器とかないの? 腕も飛ばないし、光線もでないし…」 『それらのオプション機能は後付けが可能です。別途料金が必要となります。ご連絡いただければ最寄りのサービスステーションから社員を派遣致します。取り付けは迅速丁寧。電話番号はフリーダイヤル0120…』 商魂たくましい台詞は新たな攻撃で途切れた。 再び吹き飛ばされるわかば1号。 「もう、ゼッタイムリですぅ〜っ!」 これはやられメカなのではないだろうかという疑いが、自由落下するサエの心に浮かんで消える。 「ああっ、サエ様が危ないですわ! 助けに行きませんと!」 救助しに行こうとしたマルカだが、よく見れば操縦席にはなにもない。レバーどころか電源スイッチさえもない。 サライの席にも、もちろん何もついてない。 「これは…どうしたものでしょう?」 困惑するマルカは、いきなり後方から胸を鷲掴まれた。 頭が真っ白になった直後、人を殺す威力を持った鉄肘を繰り出す。 「何をなさいますの!」 まともに胸へ食らったサライはかなりきつそうに咳き込んだが、そこはそれ開拓者。持ちこたえる。手も離さない。 「だって、こうしないと機体が動かないんです!」 マルカは、サライの耳が指す天井に目をやる。 そこにはこんな張り紙。 『当機は淫らな行為で発生するリピドーをエネルギーに転化するリピドーシステム採用機です。使用後は次に使う人のために後始末をしてから降りてください』 固まるマルカ。 追い打ちをかけるサライ。 「人々を守らないと! 貴族の義務! そう義務なんですぅ!」 折り目正しい騎士道精神の持ち主であるマルカは『義務』という単語にすこぶる弱かった。 「うっ…し、しかし…」 「しかしもかかしもないですよ! 見てください宇宙人のあの暴虐ぶ…」 サライが指さした先の大型モニタには、悪魔のような人型決戦兵器に頭を食いちぎられていくトライポッドの姿が。 スーちゃんとロータスの声が聞こえる。 『まずいでち、シンクロ率上がり過ぎでちご主人たまー!』 『だから言ったじゃないですか、うちの奥さんアホの子なんだからああいうのに乗せるなって!』 サライはしばし間をおいてから、続ける。 「…早くケリをつけるべきです! このままだとエリカさんも大魔神化します!」 とか言いながら胸を揉みまくる。エネルギーゲージは急上昇。 チョウミダラーが起動した。 操縦席がこんなことになっているにもかかわらず、トライポッドの頭に回し蹴り、かかと落とし、正拳突き。超いい動き。 天井の注意書きは紛れも無く真実であると、マルカも認めざるを得ない。 第一止めたくても、戦闘中で降りるに降りられず。 「し、仕方ありませんわ」 これも義務だ義務だと己を戒めつつ、声が出そうになるのを我慢する。 するとサライが図に乗ってきた。 「まだ足りません! もっとエネルギー効率を上げるために、直揉みを要求しますっ!」 「じっ…」 さすがにNGだと言い出しかけたところで、モニタに、またぞろ天高く舞い上がるサエ機の姿。 今度はレオポール機も一緒だ。 『キャイーンンンン……』 『ばっきゃろ、何やってんだレオポール! 早く戻ってこい!』 ビリティスの叱咤のおかげでもあるまいが、レオポール機はすぐ落ちてきた。 テラドゥカスから尻尾を掴まれ振り回され武器替わりにされている。 『たあすけてえええええ…』 続けて落ちてきたサエは、トライポッドたちから集中砲火を受け、逃げ回る。 『うわあああん、基本機能だけじゃやっぱりだめですうううう』 まるで戦えていない(とはいえ、なぜか逃げ回っている間に敵のミサイル等が誤爆し、彼ら自身を巻き込んだりしているので、全く役に立っていないわけでもない)。 マルカは覚悟を決めた。 「こっ、これも敵を倒す為…」 顔を真っ赤にしつつ胸をはだける。 「これで倒せなかったら許しませんわよ!」 サライは遠慮会釈もなく、正面からむしゃぶりついた。 「ああ…マルカさんのおっぱい…♪」 緩みきった顔を谷間に挟んでぱふぱふしている。 「マルカさぁあん! 初めて会った時からずっとこうしたかったんですぅ!」 調子のいいことをほざきながら揉んで揉んで揉みまくる。 「大好きぃ! 愛してますぅ!」 恥ずかしさとは別の何かを感じ始め、マルカの血はさらに上る。 「うっ…く…」 ところで、そんな破廉恥な光景を、外部から見つめているものがいた。 「あら…楽しそうな事してるわね♪」 霧依である。 彼女はチョウミダラーのコクピットをモニターハッキングしていたのだ。内部映像を録画するために。 戦闘中に何をしているというなかれ。彼女こそはエロマスター。 「直揉みで超昂り、エネルギーMAX…体が火照ってきちゃった…早く倒して混ざりましょ♪」 巨乳が揺れる。 「テンタクルレーザー・デリタ!」 電動しびれイカの全触手が花のように開いた。 ほとばしり出るは消滅光線。射程内にあるトライポッドが軒並み蒸発する。 「おお、やるねえ」 ユウキは遠隔の敵をミサイルで、近くの敵をガトリングで粉砕していく。 すでに地上から足が離れ、縦横無尽に飛び回っている状態だ。 そんな彼の上に、突如影が差してきた。 顔を上げれば、見よ、未確認飛行物体の群れ。飛行物体の更に向こうには、赤い月。 唇を嘗め彼は、ぐっと下腹に力を入れた。 「いいだろう。今夜限りの復活だよ、人類の敵。じゃあ、宇宙の無重力空間で、最終決戦といこうじゃないか!」 S−02リ○○ティーはブースターを最大限にふかした。 飛行物体を打ち落としながら大気圏を突破して行く。 ビリティスがそれに続いた。 「へっ、やっぱりラスボスが出てきやがったな。次は本星だ、行くぜテラドゥカス!」 テラドゥカスの体が飛行形態に組み変わる。 戦闘機となった彼は一直線に、これまた空のかなたへ――ちなみにレオポールも連れて行かれている。戦闘機の下に縄でぶら下げられて。 『おたすけぇえええええ…』 チョウミダラー内部はクライマックスに至っていた。 マルカは耳まで火照らせ唇を噛み堪えていたが色々限界だった。服は前どころか下まではだけている。それもこれも、黒ウサギの狼藉によるものだ。 「あっ…僕もうっ…出るっ…ビーム出ちゃうよおお!」 あられもない声を張り上げる彼につられてマルカも、つい声が。 「うう、あ、あっ、嫌ー!」 それを聞いたサライのリピドーは頂点に達する。 「ふぁああっ!」 チョウミダラーの指先からピンク色の超威力光線が迸る。 それに当たったトライポッドたちはめろめろに溶け消え去った。 霧依は操縦席で、残念そうに指を弾く。 「ああん、終わっちゃったのねぇ。ちょっと早いわぁサライくん」 とりあえず地上にいた敵は殲滅された。町も黒焦げだが。 「か、勝ったのでしょうか…」 吹き飛ばされ過ぎてすすだらけになったわかば1号から、同じくすすだらけになったサエが出てきた。 チョウミダラーからはマルカのみが出てくる。前をかきあわせながら。 「あれ、マルカさん、サライさんはどうしたんですか?」 「…気持ち良さそうに寝ておられますわよ…」 眉間にしわを刻む彼女は、すこぶる機嫌が悪そう。 「全く、こんな不愉快な機体だと知っていたら、わたくし乗りはしなかったものを…」 電動しびれイカから霧依が降りてきた。 「あら? それにしてはいっぱいイイ声出してたわよ♪」 彼女が開いたノート型端末には、チョウミダラー操縦席の音声つき動画。 来なくてもいいのにスーちゃんとアガサとアリスが駆けつけてくる。 「ほお、これはマルカたまお赤飯ものでちな」 「う、うおお、やっちまったすねマルカ!」 「マ、マルカ…なんや1人だけ大人の階段上ったんかいな、ずっこいわ!」 羞恥プレイにマルカの血圧は再び上昇した。 「ちょ、止めてくださいまし霧依様、いやああああ!」 「ほほほほほ、止めてほしければ私を捕まえてごらんなさーい♪」 完全に面白がる霧依をダッシュで追いかけて行くマルカ。 見送るサエ。 「いやー、いい汗かいたわ」 エリカが満足げに戻ってきた。ロータスからタオルを受け取り、顔を拭く。 ビリティスの怒号が空から響き渡ってくる。 「うおおおー! 鏖殺究極拳!」 赤い月の一角に白い点がともった。それは膨張し、目映いほどの光と轟音、衝撃波となり、バグア星人の母星を木っ端みじんに吹き飛ばす。 青空が広がり、虹が出た。 雲の峰の向こうに、テラドゥカスとビリティス、ユウキ、そしてレオポールの顔が浮かび上がる。 こうして天儀はバグア星人を見事撃退したのであった。 ● 「はっ!」 ガバと跳ね起きたサライは掛け布団をはぐった。 「…パンツ、穿き替えないと」 顔を赤らめ身をかがめ気味にベッドから降りる。 「にしても、変な夢だったなあ…」 彼はまだ知らない。 その変な夢を見た人間が後5人もいることを……。 |