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■オープニング本文 1月某日。 場所は天儀のあらゆるところ。 主人公は天儀のあらゆる人。 起きたのは、それぞれにとって忘れ難いこと。特別なこと。 例えばこんなふうなこと。 ● 今日ロータスがスィーラ城から呼び出しを受けた。で、戻ってきた。 一体なんだったのかと聞いたら、役を押し付けられそうなんだって。 趣味であれこれ未解決事件をほじくり返して推理ごっこしてるなら、正式に公安関係の部署で手伝いでもしたらどうだ。どうせ仕事してないから暇なんだろ。と言われたって。 辞退しようとしたんだけど、断りきれなくて、結局週に3日出仕させられることになったそう。 あいつが仕事するっていうのも変な感じだけど、まあ、家でゴロゴロしてるよりはいいわよね。 ついでに溜め込んだ新聞だの雑誌だのも職場に持って行ってもらいたいんだけど。 (女騎士/エリカ・マーチン) ● やりたくもない職を押し付けられて戻ってきたことを説明したら、エリカさんが『雪でも降るんじゃないの』と言ってきた。そりゃ降るでしょうよ冬なんだから。 あー、憂鬱だ。推理なんてのは趣味でしてるから面白いのに。仕事になったら面倒臭くてしょうがないと思うんだよなあ。 週に3日とか過労死したらどうしよう。1日にしてもらえばよかった。カモミールの世話で忙しいんですとでも言い張って。 それより何より僕がいない間、僕の部屋のものエリカさんから捨てられそうだ。彼女、チラシと資料の見分けがつかないし。 スーちゃんに気をつけてくれるよう、よく言っておこう。 (エリカの夫/ロータス・ブルク・マーチン) ● ロータスたまが仕事を見つけたでち。 大丈夫でちかね。明日ベラリエース大陸落ちるんじゃないでちょうかね。 まあそれは冗談として、これでロータスたまの『相続対策のためマーチンからもブルクからも独立した新しい家を作る』というかねてよりの企みもとい目論みが現実化することに365歩の1歩ほど近づいたでちかな。 とにかくロータスたまのごみためおっと資料室はスーちゃんが守るでち。賄賂として最高級もふらクッキーを要求するでちでちでち。 (マーチン家のもふら/スーちゃんことスポッティ) ● やべえ。今日からテストだったこと忘れてたっす。全然勉強してないっす…。 このままだとアキママに激おこされるっすマジやべえっす。 (聖マリアンヌ女学院口だけ番長/アガサ) ● やばい。今日からテストやっちゅうこと忘れとった。全然勉強してへん…。 このままやとトマシーナ先生から雷くらう超ピンチや。 (ジェレゾ城北学園口だけ番長/アリス) ● 頭痛いわ。昨日仲間とアラック飲み競争したのがようなかってんな。あー、響く、がんがん響く。 でも起きて着替えて飛空船つこて講演会行ったで。行かずにおれるかちゅうねん。講演してくれなんて頼まれるの、これが初めてなんやから。 天儀人工説、移動説の正しさが実地に証明されて何よりやな。 会場に着いたら、ボスコイことボーちゃんが来てた。ジルベリアからわざわざおおきに言うたら、もう若くないんだから無理するなとか言われた。余計なお世話や。あんたかて若うないやないの。 まあええわ、これ終わったら一緒に飲みにいこや、ボーちゃん。そない嫌そな顔せんと。 (アル=カマル女博物学者/ファティマ) ● ギガギガギガ。ガギガギゴ。ギギギ。グゲガゴ、ゴガガグガ。ガ。 (ジルベリア工房勤め土偶/ガー介) ● キョウ、チョットオオキクナッタ。2ミリクライ。 ウレシイ。 (ジルベリア某所/アヤカシ隙間女2nd) |
■参加者一覧 / マルカ・アルフォレスタ(ib4596) / リンスガルト・ギーベリ(ib5184) / リィムナ・ピサレット(ib5201) / ファムニス・ピサレット(ib5896) / ユウキ=アルセイフ(ib6332) / 宮坂義乃(ib9942) / 八壁 伏路(ic0499) / 七塚 はふり(ic0500) |
■リプレイ本文 ● ――リィムナ・ピサレット(ib5201)の日記―― 今日、所要で神楽の都に出掛けたら、久々にお兄ちゃんを見掛けた。何年振りだろと懐かしんでいると、相棒のエイルが「一体どなたですか」と聞いてきた。 で、詳細を教えてあげたんだ。 まず、本当の兄妹って訳じゃないよってところから初めて、こう説明してあげた。 ――――――――――ココカラ あの人はあたしが開拓者になりたてでお金がない頃、とっても世話になった恩人なんだ。 あれは開拓者として駆け出しのころ…あたしの懐は常に寒かった…某高級魔法具ショップのショーウィンドーに並んでいるちょっとゼロが多めの装備品が欲しくて欲しくて、でも買えなくて、とはいっても離れられなくて、ガラスに顔を押し付けて眺めてた。 そしたら、あのお兄ちゃんが現れて、宝石あげるから言う事聞いてくれる?って。 あたしはもちろんOKしたよ。だってどうしても装備品が欲しかったから。 今にして思えば返事するとき声が震えてたかなー。多分緊張したんだろねー♪ それからお兄ちゃんの家についていって…お兄ちゃんたら、線が細くて気弱で優しかったけどド変態でねー。部屋に入ったら『縛っていい?』って言ってきて、その後色々されちゃった。 でも、ちゃんと宝石はくれたんだ♪ だからあたしああこの人は信用出来る人だって思って、あの人が神楽から転居する迄、毎月会って援助してもらってた♪ じゃなかったら、何の後ろ盾もない子供が、どうして毎月宝石細工や翡翠を売って資金に出来たのか、って話♪ うん、宝石とかー、その他高価なものとかー、すっごく気前がいいんだ、お兄ちゃん。なんかねえ、商家の若旦那なんだって。だからお金持ちなんだね。 一番すごい贈り物は、金剛石の首飾りだったかなあ。 あの時は深夜の公園で首輪をつけて、わんこの真似したんだったなあ。そうするときのお兄ちゃん、すごく生き生きした顔してた♪ とにかくいっぱい仕込まれたよ♪ 今のあたしがあるのはお兄ちゃんの援助のお蔭だし。感謝はしてる♪ ――――――――――ココマデ 一通り聞いたエイルは「ちょっと失礼します」と言ってどこかに消えた。 ほどなく警邏の人が団体でやってきて、お兄ちゃんを捕まえて、たちまち連行して行った。 なんだったんだろうね。 まあ、とにかくお兄ちゃん、元気そうでよかった♪ ――その相棒、人妖エイルアードの日記―― 今日、僕は神楽の都で変態性愛犯罪者を見つけました。ので、即刻通報しました。 変態性愛犯罪者は捕まり連行されて行きました。 お手柄だったねと番所の人が褒めてくれました。 これで世の中が少しでも浄化され平和になればいい…そう強く思います。 ● ――ファムニス・ピサレット(ib5896)の日記―― 相棒駿龍のぴゅん太が、庭で吠えています。 今日姉さんは、神楽の都に行っています。何かお土産を買ってくると言っていましたが、姉さんのことだから、きっと忘れて帰ることでしょう。 いつ何があるか分からないからという理由で姉さんが、替えのおむつを3つも4つも持って出掛けて行ったことを私は知っています。 いつも堂々としている姉さんがうらやましい、とこんなときよく思うのです。 私も、実はすごくおしっこが近いから…。 依頼中は緊張してるのか、そういう事は滅多にないのだけれど、普段は急に厠に行きたくなる事がよくある。 志体持ちなのに、何故こんなに堪え性がない膀胱なのかと口惜しい思いに駆られることも一度や二度や三度ではなかった…今日は厠に行く途中に服が何かに引っかかって、よく見たら壁から出ている釘で、それがなかなかスカートから取れなくて、間に合わなくておもらした…しかも街で買い物の最中に…買い物先が佃煮屋で、お客はおじいさんおばあさんばっかりで、大丈夫かいって気遣ってくれたからまだマシだったとはいうものの、すごく恥ずかしかった。 可能ならあの時の記憶を自他含めて熱光線で消し去りたい…。 今度のことだけじゃない、会話の途中とか、なかなかおしっこの事言い出せなくて、もらしてしまう事もよくある。 で、でもリィムナ姉さんと違っておねしょはあまりしない! た、たまにはしても頻繁にはないから、まだ大丈夫、私! 後は胸のおっきな女の人に抱き付いた時とか、嬉しくて興奮するともれてしまったりして、お姉ちゃんに嬉ションだってからかわれるけどおねしょじゃないから大丈夫! そういえば昨日ジェーンさんを見た。路上でレンタル航空のパンフレットを配ってた。おっぱいに飛び込むついでに、1枚もらってきた。『ドラゴンも恋するアーバン渓谷の遊覧飛行』だって。 ……ああ巨乳に抱き付きたい! いつも何度でも! 想像 したら たまらな でちゃいました 穿き替(以下数文字は滲んで読めない。後は空白) ● ――リンスガルト・ギーベリ(ib5184)の日記―― 尻が痛い。 昨日妾は修業より戻り、久々に神楽の我が館にて眠った。恐らく緊張がほぐれたのであろう。翌日、寒いなと思って起きたれば、シーツの上に天儀地図が。 リィムナ程ではないが、妾もごく希にベッドを濡らす事がある。 皇帝にも筆の誤りという奴じゃとしみじみ思い致しておったらば、我がメイドがノックもなしに扉を開け乱入。たっぷりと尻を叩かれた。 尻が千切れ飛びそうな位痛かったのじゃ本気で泣けたのじゃ。正直今もちゃんと尻が全部ついておるかどうか確信が持てぬ有り様じゃ…座るのが辛い…毎度の仕置きとはいえきっついのう…(涙)。 しかしこの痛み不思議と不愉快ではない。思えば妾がかつて、屋敷で暴君として振舞っていた時、我が目を覚まさせてくれたのも、かのメイドの尻叩き。 着任して我が行状を見るなり膝の上に抱えあげ、悪口雑言を並べる妾を説教しながらひたすら打ち据えたのじゃ。泣いて謝るまで。 翌日、尻は軽く2倍に膨れておった。 母上に訴えると、メイドの手はこの母の手と思えというお言葉…当時はいたく理不尽に思えたものじゃが、徐々に物事が分かるようになるにつれ、感謝するようになった。 あのままでは妾は、箸にも棒にもかからぬ人間と成り果てていたじゃろうでな。 そう考えてみると、なにやら…仕置きが恋しくなってきたのう。 こういう気持ち、変かのぅ。 いやいや変なことなどないはずじゃ。前にリィムナに話したら、その気持ちすっごくよく分かると言っておったものな。 明日の朝も、わざと粗相してみるかの…どの道この屋敷には数日滞在する予定じゃよってに。 ――その相棒、人妖カチューシャの日記―― 快晴。 朝からスパンスパン景気のいい音が聞こえてくる。 これ、昨日も聞いた覚えがあるなあと思ってお姉ちゃまの部屋へ行ってみると、案の定昨日と同じようにメイドさんからお尻を叩かれていたわ。 2日続けておねしょなんて、珍しい。 お姉ちゃまのお尻は昨日の分と合わせてお猿のようにまっかっか。顔は涙と鼻水でべしょべしょ。 『なんですお嬢様、いい年をして情けない!』 『ぐすっ…ぐすっ…ごえんなさい…もう粗相はしないのじゃ…しないのじゃったらしないのじゃあああ』 と言う声が聞こえるの。 のぞき見しているのがばれたら私も無慈悲なお仕置きを受けてしまうので、早々にドアの前から抜き足差し足退散したわ。 ひとまずこれから台所に行って氷嚢を作っておくことにするの。 お姉ちゃま、終ったらお尻を冷やして差し上げますわ。きっと終わったら風船みたいになってるに違いないから。 ところでさっきファムニス・ピサレットちゃんが窓の外を通り過ぎて行ったわ。 佃煮の入った袋を抱えて涙ぐんでいた…何があったんだろう。少し心配。 ● ――マルカ・アルフォレスタ(ib4596)の日記―― 今日はお兄様が、久々に剣の稽古をつけてくれるというので、戒焔を審判とし、10回勝負いたしました。 わたくしこれでも開拓者として研鑽を積んできたという自負があったのですが…木っ端みじんに打ち砕かれましたわ。一度も勝てないという事実を突き付けられて。 さすがに落ち込むわたくしの前に膝をつき、お兄様は、真剣な顔をされました。それからこう言われました。 『私に勝てないのに、それでもまだ父上母上の仇を討つつもりか、マルカ』 わたくしは思わず、『当り前ですわ!』と大きな声を出してしまいましたわ。 お父様とお母様を殺した者のことを、わたくしは、一度たりとて忘れたことはございません。娘として、また、世の安寧を担う騎士として。 ……わたくしの言葉が、本気のものだと悟ったのでしょう。兄は溜息をついた後、一通の手紙を差し出してきました。 開いて中を確かめたわたくしは、目を疑いました。そこには、仇についての新しい情報が記されていたのです。 現在は出身地の泰国に戻り、闇社会の一員として生きている由。 忙しい中お兄様が調べていて下さったと知り、胸が一杯になりました。 思わずお兄様に、ありがとうと抱き着きました。 お兄様はそんなわたくしの頬に手を当てました。表情が先程よりなお真剣でした。 『分かった。もう止めはしない。だが、命だけは大事にしてくれ』 と、言われました。 勿論です。わたくしがお兄様を残して逝く訳ありませんわ。きっと仇を打ち破り戻って参ります。 はやる気を抑え、早速出かけようとしたら、止められました。 止めはしないと明言されたはずなのになぜ、と思えば、まだテスト期間だろうとのお言葉。 そういえばそうでした。――ああ、じれったいですわね! 本日は数学、歴史、そして古文――アリス様、死にそうなお顔をされておられました。アカンこれアカン奴やと、うわごとのように呟き続けておられました。あの様子だと、多分追試になることでしょう。 お父様、お母様、お2人の無念は必ずこのわたくしが晴らしてご覧に入れますわ…。 ● ――宮坂 玄人(ib9942)の日記―― 快晴なり。 一日相棒と、近場の草原で修行した。 帰りにマルカと会う。仇討ちに行くというので、ついでだから同行。 首尾、上々。 ――その相棒羽妖精、十束の日記―― 本日は快晴なり。近場の草原で、玄人殿と鍛錬を行う。 本当は山に行って、ケモノやアヤカシと戦いたかったが、何故か玄人殿に阻止された。あんたは一度火がつくと見境ないから、とか。 それを言うなら玄人殿自身だって…いやまあ、よそう。 俺の心に焦理があるのは確かだ。 何故なら他の相棒は、既に三次進化を果たし、新たな力に目覚めている。俺だけがまだその領域に至っていない…。 いち早く進化して、玄人殿と一戦……いや、玄人殿の力となりたい。 そんなことを悶々と思いつつ鍛練を終え、帰還する段になって、マルカ・アルフォレスタ殿と行き会った。 聞けばこれから両親の仇討ちに行くのだという。 その志やよし、というわけで、玄人殿と俺は同行するとした。 泰国のとある沼沢地域を根拠地にする賊――そこの親玉がマルカの仇であるということ。 俺たちは雑魚を引き受けた。彼女が一対一で戦えるように。 結果はもちろん正義が勝った。 玄人殿と俺はマルカ殿をジルベリアまで送って行った。 道中彼女は清々しい顔をしていたが、屋敷に帰って兄上殿が出迎えに出てきた途端、急に泣き出した。そのまま、ずっと泣いていた。 ● ――八壁 伏路(ic0499)の日記―― わし今日、これまで自分が間違って地名を覚えてたことを知った。ジルベリア地図を確かめたら、ヤーバン村でなくてアーバン村と書いてあった。すまんミーシカ殿。 まあそれはそれとして、今日はいよいよわしの人生の新しい門出の晴れの日。 わし、アーバン村に引っ越す。相棒甲龍のカタコも一緒だぞ。向こうに新居も見つけた。使われなくなった穀物倉を、人が住めるように、改装してもらったのだ。 正直いま住んでいる借家よりずっと広い。カタコものびのび手足を伸ばせるであろう。 とにかくそういうわけで、荷を整理しに自宅へ戻っていた所、ちょうどはふりも戻ってきた。 あやつが泰の大学に入ってからは、落ち着いて顔を合わせることも少なくなってきていたで、顔を見られてちょっとうれしかったり。掃除をする奴がおらんと不便しするし、帰っても家に誰も居ないのはやっぱり寂しいでな。 あーうん、カタコは確かにいつもいるが、別腹別勘定だ。 が、あやつ、こっちの顔を見るなり「荷物を取りに帰ったのであります」ときた。 聞けば泰国へ行くとのこと。 もしかしたら嫁にも行くかもーみたいなことも言いおった。 まあ、あやつもいつまでも子供であるまい。祝ってやろう。 御祝儀は出さない貧乏だから。その代わり、あの日のように、あやつの頭の重い物を祓ってやった。 そのとき言った言葉、我ながらいい台詞だからここに書き留めておこう。 「おぬしは七塚ほふりではなくはふりだ。七は縁起の良い数字じゃで良縁に恵まれるとよいな」 さてアーバンへ行く前にさとるの先生の資料、返しておかねば…と思ったけどどこへ埋まっているのだったか全然分からないからはふりに任せようとしたら屋根裏の人に頼んでは?と言い出してきてなんの冗談かと思ったらわしが来る前から何かがこの家に住んでいるとかで清楚そうな女だそうで似顔絵描いてもらったら洒落にならない例のアレで今天井の隅がカタっと鳴った間違いないヤツはいるここにいる視線を視線を感じるガリガリ天井板引っ掻いてる音がするひいいいいわしは引っ越す今すぐ引っ越すとっとと引っ越すこわいこわいこわい頼むついてくるな(殴り書きで終わる)。 ● ――七塚 はふり(ic0500)の日記―― 自分、泰に引っ越すのであります。 というわけで、居候先のふせさん家の一軒家に荷物を取りに行ったのであります。 ここのところ大学生としての多忙さにかまけ、ちょっと留守にしておきましたら、見事に汚宅と化していたのであります。 黄表紙が玄関先まで占拠しているであります。埃臭いであります。ついでに久方ぶりに会ったふせさん自身も埃臭いであります。言うことがいつものように図々しいであります。 「おー、久方ぶりだのうはふり。ちと荷造り手伝ってくれんか」 ふせさんも引っ越すのだそうです。ジルベリアに。新居は既に見つけてあるとのこと。 自分にはピンときました。前々からしつこく聞かされていたミーシカだかムーシカだかいうおなごのところに転がり込むのだなと。 ふせさんもいつまでも干物ではいなかったということでありましょう。 めでたいであります。先様には迷惑でありましょうが。 自分ももしかすると…近いうちお嫁入りするかもなのであります。その時は世話になったよしみで招待状くらい出しましょう。そう言ったら、金が無いので御祝儀はやれんと言ってきたであります。そして、自分の頭に手を置いて、お祓いしてきたであります。 「おぬしは七塚ほふりではなくはふりだ。七は縁起の良い数字じゃで良縁に恵まれるとよいな」 完全無欠なドヤ顔でありました。 さとるの先生から借りた資料が見つからないから、探してほしいと頼まれたでありますが、とりあえず自分はもう掃除しないということを伝え、屋根裏の人へ頼んでみることを勧めたであります。 そしたら、それは一体誰のことだ、と。 …どうもご存じなかったようでありますな。彼女について。 自分てっきり知っていると思ってたでありますのに。龍を六畳間で飼う家主殿だから、同居人も変わっているんだなー、と。 ついでだから住人の似顔絵を描いてあげたら、ふせさん「後のことは任せた資料見つけて返しておいてくれ」と言い残しカタコに乗って空の彼方へ逃げて行きました。 自分はそんな義務ないと思ったから、屋根裏から這い降りてきた住人様によろしく任務をバトンタッチしたのであります。 ふせさんがどこに行ったのか聞かれたので、ちゃんと教えてあげたのでありますよ。ジルベリアの南方にあるオバン村に行くと言っていたと。 こう見えても自分、気の回る人なのです。 なんだか知らんがとにかくよしであります。 ――その相棒、人妖てまりの日記―― 今日わたしとはふりは泰国にお引っ越し。 荷物をまとめるため、八壁宅に行きました。ゴミ屋敷でした。毎度ながら、こんなところに住める家主の見識を疑います――その家主も本日、ジルベリアに引っ越していきました。 屋根裏の女性もその後を追って行きました。 誰もいなくなった家というものには、一抹の寂しさを覚えるものです。 この家へ次に住むのは、どんな人でしょうか。きれい好きな方だとよろしいですね。 その方がおびえるといけないので、天井裏にあった『お兄ちゃん観察日記』全10巻は焼却処分しておきました。うっすら瘴気をまとっている感じでしたので。 さあ、新生活に向かってGO!でございます。 ところで道中偶然、ユウキさんを見かけました。精霊門の前におられました。どこかへ旅立たれるご様子でした。 ● ――ユウキ=アルセイフ(ib6332)の日記―― ○月×日 もう居ない師匠と、お世話になった仲間達へ。 今日、僕は新しい世界へ、旅に出ます。 ……ロード君は、先に行っちゃったみたいだけど。 師匠、昨日は久しぶりに師匠の夢を見ました。 師匠は、相棒をアクセサリや小物に変える魔法を教えてくれたんですよ。僕はその魔法で嵐龍のカルマを始め、相棒達を皆装備品に変えて(もちろん了承を得てですよ)、どこかへ連れて行くのです。これで寂しくはならないと思うけど……、ずっとその姿にさせるのは辛い筈だから、時々、この世界へ戻って来たら、元の姿に戻してあげようかな。なんて思いながら。 随分風変わりでおかしな夢でしょう? 目が覚めてから僕は、少し笑ってしまいました。 思えばこれまで色々なことが、この天儀でありました。 楽しかったこと、悲しかったこと、辛かったこと、嬉しかったこと。 今となってみれば、なにもかもがいい思い出です。 これから行く先でも、そのような思い出を作れれば、と願って止みません。 さて、僕は旅立ちます。 皆さん、お元気で。 ……あぁ、そういえば、昔の名前を思い出しました。 「結城 桜乃」 これが僕の本当の名前だけど、師匠の姓はやはり捨てたくないので、向こうではこう名乗ります。 「桜乃=Y=アルセイフ」 追記。 カルマに乗って精霊門まで行く途中、わき目も振らず北へ向かって飛んで行く伏路さんの姿を見ました。 あまりにすごいスピードだったので、どこに行くのか聞きそびれてしまいました。 |