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■オープニング本文 こんにちは、私は開拓者のカラミティ・ジェーンよ。皆は私を奇跡のスナイパーと呼んでいるわ。それというのも…おっとそんな説明をしているゆとりはないわね。 見ての通り私たちは今動けないの。 もう1時間ばかり皆でこうしている気がするわ。静止状態って筋肉に響くのよねこれが。 原因はあれよ。あのスカンクみたいな姿をしたアヤカシよ。そう、尻を上げてこっちに向けて完全に臨戦態勢に入っているあれよ。 何故あんな代物と関わりあう羽目になったかと言うと森に生息しているアヤカシの退治を頼まれてやだもうこんな依頼受けるんじゃなかった…。 見てしまったのよね私たち。あの肛門から繰り出される最終兵器の威力を。 ピンク色の毒霧を。 先発隊数名が犠牲になってしまったわ…彼らの苦悶の形相を見て頂戴。白目剥いて泡吹いて顔は青紫色よ。あんな最期を遂げたいと誰も思わないでしょう普通。 いえ細かく痙攣してるから死んではいないと思うんだけど、お花畑を越えて川のほとりにたたずむ所までは確実に行ってると思うわけよ。 ちなみに屁を被った範囲の植物は一瞬にして枯死したわ。ほらあそこ。燃え尽きたみたいになってるでしょ。 正直この一帯に殺人的な残り香が漂っていて許されるなら今すぐ逃げたいくらいだけど、精神力で持ちこたえているの…。 恐ろしい…なんて恐ろしいの、屁! 一刻も早くあのアヤカシを退治しなければ、被害は拡大の一途を辿る。 返す返すも敵が先にこちらの存在を察知してきたのが痛いわ。 もしこのだるまさんが転んだ状態を解いて動く素振りを見せたが最後、死神の魔手は発動する…。 でも私たちは強く気高く恐れを知らぬ開拓者。何かを得るには何かを捨てなければならないことは十分承知している…犠牲のない勝利など有り得ない…そうよね皆? 誰かがあのスカンクに切り込みをかけ集中的に屁を浴びている間に、他の人間が風上に回って攻撃出切るかもしれない。屁袋は瞬時に充填出来るものでもなさそうだから2発目は避けられるかもしれないし、避けられないとしてもこの1時間溜めに溜めまくった初手の濃さと規模を凌駕することはないかもしれない。 私はそう…思うの。 分かっているんでしょう。このまま不毛な状態を維持することは不可能だということが。 だから…だから切り込みに行ってきて! 誰か行ってきて! |
■参加者一覧
喪越(ia1670)
33歳・男・陰
リンスガルト・ギーベリ(ib5184)
10歳・女・泰
雁久良 霧依(ib9706)
23歳・女・魔
多由羅(ic0271)
20歳・女・サ
ノエミ・フィオレラ(ic1463)
14歳・女・騎 |
■リプレイ本文 「ジェーン様、貴女と組むとどうしていつもこう碌な目に遭わないのですか…! うんこの次は屁ですか…、下ネタここに極まれりですね…」 多由羅(ic0271)は涙目になっていた。悲しいからではない。屁の残滓が目に染みるのだ。 「私が好き好んでアヤカシに下ネタやらせてるかのようなこと言うのはやめてよ! 私だって可能な限りこんな目に遭いたくないんだからね! 本当になんなの、うんゴリラだの屁獣だの…次は小便小僧アヤカシでも出てくるんじゃないでしょうね!」 「滅多な発言しないでください、本当にそんな代物が現れたらどうするんですか!」 血相変えてそう言った多由羅は、涙のついでに出そうになる鼻をすすり上げた。 (泣くのは後回しとして、どうしましょう…冷静になれ…冷静になれ多由羅…考えることを放棄しては敗北あるのみ…まずそもそも論としてどうやって屁と戦う。うんこは物体だから避けられもしようが、屁は気体…盾をもってしても防ぐことは不可能…真っ先に切り込んだものは必ず生け贄となる定め…) 間を置いた多由羅は目線だけをジェーンに向けて動かした。妙にさわやかな笑顔をつけて。 「ジェーン様、貴女が代表して前に出てください」 反射的な拒否が戻ってくる。 「ノーノーノー断固としてノー。謹んで辞退するから多由羅さん出て」 「え? 私? 嫌ですよ。絶対に嫌です。大体こういう場合言いだしっぺの法則が発動しなきゃおかしいじゃないですか」 「ねえよく考えて多由羅さん。頭脳労働を旨とする参謀役を戦場に赴かせるなんて愚かなことだわ。私を失えばこの戦線は即座に崩壊してしまうのよ?」 「ジェーンさんがそう言うのならきっとそうなのでしょうね、ジェーンさんの中では。でも現実として貴女の頭脳を当てにしている人間はこの場においてただの1人もいませんから、心置きなく散華してきてください。きっと伝説を作れますよ」 「いいわ、そんな空しい地上の名誉とかいらない。多由羅さんは脳まで筋肉だからきっと心臓は止まらないから行って」 「それを言うなら貴女のほうがはるかに大丈夫ですよ、そもそも脳が無いんですからダメージは受けませんお逝きなさい」 「あんたが逝け」 「いいや、お前が」 追い詰められているがゆえに始まる醜い争い。 一方雁久良 霧依(ib9706)は異臭に酔いしれている。 「なんて臭いのかしら…頭がフットーしそう♪」 マイスター級の変態なればこそ可能な反応だ。 通常はノエミ・フィオレラ(ic1463)のようにしかならない。 「おえええっ…なんて酷い臭い…」 蝶よ花よの貴族育ちである彼女は、悪臭に対する免疫が薄かった。スラム街の下水道をはるかに凌駕する嗅覚への暴力に、早くもグロッキーとなっている。 「世界にこれほど酷い臭いがあったなんてっ…おええっ…」 今回唯一の男性参加者である喪越(ia1670)はどうか。 「頑張るぜぃ! アミーゴ! 頑張るぜぃ! アミーゴ! がん――」 朦朧としてきているのか、同じ台詞を壊れたように呟き続けている始末。 (いかん! このままでは戦わずして敗北してしまうぞよ!) ジルベリアの民を牧する貴族としての義務感が、リンスガルト・ギーベリ(ib5184)の平たい胸に燃え上がった。 「やはりここは…妾が行かねばならぬか」 彼女はアカヤシを刺激しない超スローな速度で懐に手を入れ、そこからぼろ雑巾を――否、危険なほど汚れ切った女児ぱんつ『蜜蜂』を取り出す。 早速霧依が反応を示してきた。 「あら、とっても素敵なものを持っているわねリンスちゃん。どうしたの、それ」 「うむ。1週間の辺境調査から戻った我が恋人が脱いだのを借りてきたのじゃ。肌身離さず持っておる。碌に拭かない上依頼中は風呂に入らず一切穿き替えなかった為内側が実にカラフルで臭気が凄まじい…」 他の開拓者たちは一斉に引き、心持ち顔を背ける。 霧依だけが未だ興味津々だ。 「あらまあ。それはまたどうしてかしら?」 「そんなの決まっておる。淋しくなった時はこれで慰…ってどうでもいいじゃろ!」 汚ぱんつをぎゅっと握りしめるリンスガルト。 そのせいで内包されている香り玉が炸裂し周囲の空気をますます耐え難いものにしていくのだが、彼女本人が気づくことは決してないのであった。 「先陣は妾が受け持とう! 皆はその援護をしてたもれ!」 勇ましい宣言に多由羅は、我が耳を疑った。 「リ、リンスガルト! 貴女正気ですか!? あ、あの屁の中を…!」 ジェーンとノエミは全く異論を唱えなかった。 「本気なのねリンスガルトちゃん。分かったわ…屁に屈した私にはあなたを止める資格も権利もない…ただ見守るしか…でも、骨だけは拾わせて!」 「ギーベリ様はまさにジルベリア貴族の鑑! 私は永く語り継ぐ所存でございます…ギーベリ様が突貫するのに合わせて私たちは風上に走りおならを回避し、一気に集中攻撃しましょう!」 彼女らの両頬を伝う涙は、感動というより安堵の意味合いが濃いものと思われる。 事実ノエミは思っていた。 (私が行かなくてすみましたっ) だが多由羅は逡巡する。 「くっ…年端もいかぬ少女を危険に向かわせて黙って見ているのは剣士として…!」 敵の様子はと見れば、ずっと尻の穴をひくひくさせている。 ああ、あれ出そうなんじゃないの。今にも爆発しそうなんじゃないの。 「し、しかし屁にやられるなど…!」 相反する思いに心乱れているところ、急に黒い多由羅が現れ、肩を叩いてきた。 『そうだ止まれ。よく考えろ敵は屁だぞ屁だぞ。サムライが戦うべき相手じゃないだろどう考えても。うんゴリラの再現は二度と御免なんだろう?』 「ええ、その通りです!」 サムズアップしてくる相手にほほ笑みかけようとした途端、白い多由羅が現れ、黒い多由羅に斬りかかる。 一刀両断にされ崩れ落ちる黒多由羅。 『戦わなければ勝てるはずもないわ、愚か者っ!』 一連の白昼夢から覚めた多由羅は覚悟を決めた。 「わ、わかった! わかりました! 貴女だけを行かせはしません! 私も行きますよ!」 なんとか耐えれば一撃を食らわせられるかも。戦闘不能になったとしても放屁と同時に一撃…届かぬのであれば真空刃をもって…。 悲壮な策を巡らせる彼女に、ジェーンが励ましを送った。片目を瞑って。 「たゆりん、ガンバッ!」 「……」 軽い殺意を覚えた多由羅は、戦いが終わった後彼女を斬る余力が残ってますようにと天に祈る。 「ジェーン様…二度とあなたと同じ依頼には入りません…」 相談がまとまったと見て、霧依が締めに入った。 「リンスちゃん、そのパンツ欲しい…じゃなくて健闘を祈るわ♪ あ、そうだわ。突貫の前に皆、これを飲んでいくといいわよ。そうしたら気絶せずにすむかも知れないから」 適当な事を言い携帯していたヴォトカを懐から出す。これまたアヤカシを刺激しないよう、ゆっくりと。 「特にジェーンさんは多めにね。 酔っ払うと狙いが正確になるって聞いたし♪ 援護射撃お願いね」 「了解です」 まずはジェーン、その次にノエミ。 「気付けですか? 頂きますっ」 続いてリンスガルト。 彼女はほんの少ししか飲まなかった。酔う必要などない。汚ぱんつさえあれば。 「これを…使うときが来たか…」 満を持して顔にそれを被る。 愛がなければ出来ない行為だ。いや、愛があってもなかなか難しい行為かもしれない普通は。 「…フォオオオ! 鼻が潰れそうじゃあ! 漲ってきたぞ!」 何が? 胸に浮かぶ疑問を一切考えないようにした喪越は、回されてきたものを一口飲み込む。 (味が全く分からねえ…) 最後に多由羅に渡ってきたときには、瓶にはほとんど残っていなかった。しかし構わない。そんなものに頼ろうとは最初から思っていない。やせ我慢こそがサムライの矜持なのだから。 極限までアドレナリンを充填したリンスガルトが動いた。 「覚悟完了! 突貫する! 愛しき人よ我に加護を! これだけ臭ければ敵のガスも軽減される筈! うぉおお!」 多由羅も。 「屁が怖くてサムライがやれるかっ!」 刃きらめかせ獅子吼突進して行く少女と女。 爆発するピンクの屁。 「…ぷぎっ!」 風上まで逃げ切った仲間たちの目に映ったのは、無残に枯れ果てた木々と草。その中央で泡を噴き倒れているリンスガルトと多由羅の姿。 ジェーンは奥歯を噛み締め、呻いた。 「やっぱり…あの屁は人類には早すぎたのよ!」 酔ったおかげで彼女の誤射率は下がっている。逃げ出したスカンクの鼻先へ威嚇射撃を行い、足止めする。 スカンクは来た方向に引き返し始めた。倒れている開拓者たちを踏み付けながら。 尻尾の先がそげている。多由羅の真空刃によるものであろう。 そこで喪越が壁を出現させ、退路を塞ぐ。 ● 『…ちゃん、リンスちゃん…』 (何じゃ…この暖かな刺激臭は…) 生ぬるい湯の中を漂う心地でいたリンスガルトは、次の言葉で覚醒した。 『起きて…あたしの知ってるリンスちゃんはこの程度でへこたれたりしない筈だよ…』 ガバと起き上がると一面の花畑。 向こうに川が見える。 多由羅が川向こうに引きずって行こうとしている老婆と争っている。 「私はまだそっちには行きませんたら行きませんっ! いくら大婆様の頼みでも聞けません! 今度墓参りしますから放してえっ!」 しかし多由羅など差し当たってどうでもいい。 碌に風呂に入らず汚らしい状態の恋人が、一糸纏わぬ姿でM字開脚して傍らにいることに比べれば、非常に瑣末な問題だ。 ● 「んふっ…駄目よ、調教はまだ始まったばかりじゃないの」 霧依がアイヴィーバインドを連発し、立ち止まったアヤカシを拘束した。 通常の縛り方とは違う。かなり特殊な縛り方。もっと言えば亀甲縛りなるものよく似た縛り方。 「うん、完璧。芸術的な縛りよ♪」 ノエミが急に高笑いをし始めた。 「うひゃひゃひゃ! ぐへへへ! あああんなとこに裸の男の子が! ショタきたー! ショタ最高!」 悪臭でたださえダメージを受けていたところに大量のアルコールが加わり、彼女の脳はやべぇ感じになっていた。 最強度の腐ィルターがかかった目には、スカンクアヤカシがおどおどした感じの全裸ショタ(ケモノ系)と見えている。 「肉球裏なんてさらして誘ってやがりますね! いいでしょう! お姉さんが今からお尻を×××てあげます!」 ハァハァ息を荒げる彼女が持ち出したのは、マッサージ用(本人談)に持っていたヴァイブレードナイフ2本。 出力は最大。 ヴィイイイインンというあやしげな振動音。 次の瞬間その物体が屁袋の発射口に突き刺さる。2本同時に。 アヤカシはアヤカシらしく吠えた。 ギャオオオウ! ちなみにノエミの耳にも腐ィルターがかかっている。 「ぐへへへ! はしたなく喘ぎやがって! 感じてやがりますねこのショタめ!」 ● 恋人はリンスガルトにぎゅっ、と押し付けてくる。 何をかは省略するが押し付けてくる。 『…リンスちゃん、戦ってっ』 「――――無論じゃっ!!」 ● 「…どう? 私のヴァイブの味は! もっとイイ声で鳴きなさぁい! あははははっ!」 涎を垂らしているノエミは恍惚とした表情で、言葉責めを続けた。 「こんないやらしい体にされちゃって、もう元には戻れないねっ! ご主人様って言いなさい! あははははっ!」 ある意味地獄絵図が繰り広げられているところ、不死鳥リンスガルトが花畑から帰還してきた。 「おおおお! まだ終わらぬぞ!」 衝撃波が彼女の体から発散された。 白い炎のようなオーラがその身を包む。 金髪が天を突いて立ち上がった。 「我に力を!…ユニコーン・パンツァー!」 汚パンツについた蜜蜂の針は、まさに一角獣の角。 「…妾は負けんぞ! はぁああああっ!」 ノエミを突き飛ばす勢いで頭から敵の尻に突っ込み、蜜蜂の針を突き入れる――ちなみにヴァイブも刺さったままだ。 そのまま全身をたがねの様にし、猛烈なピストン運動をお見舞いした。力を使い果たし気絶するまで。 後日この挿話を聞いた皇帝はティーカップを取り落とすほど驚嘆し、ギーベリは一身これ珍なり、と評したそうな。 あぎゃぎゃぎゃぎゃああああ! アヤカシは尻が塞がった状態のため必殺の屁もかませず、苦悶するしかない。 川岸から逃げ戻ってきた多由羅が起き上がる。 「乙女の顔面に放屁をする悪行三昧…決して許しは致しません…!!」 うおおおおおと叫んで彼女はアヤカシに切りかかろうとした。 だが体から屁が抜けきっていなかったせいで、足元がふらついてくぼみに引っ掛かり、つんのめった。 弾みでかざしていた『鬼神大王』が穴に。 おぎゃあああああ! 「時は満ちた…」 霧雁は静かに呟き、指にネイルリングをはめ、腕を高く掲げた。 「私の指が光って喘ぐ! お前を侵せと輝き叫ぶ!」 リングを燦然と輝かせるのは性…もとい聖光だ。 「必殺…ゴォォォルデン! フィンガァァァァ!」 既に広がるだけ広がっていそうな場所に、情け容赦の欠片もなく指を腕ごと突っ込んだ。付け根まで埋める。 アヤカシはもう声も出ない。痙攣しているだけだ。 「んん…スカンクの中…すごくあったかいナリ…」 うっとり感想を口にした後彼女は、渾身の力で相手を持ち上げた。 「灰は灰に、塵は塵に! カミング…エンドっ!」 アヤカシは塵へと還る。結局のところそれが彼にとって一番幸せだったかもしれない。 撒き散らされていた毒臭も消えた。 蘇ってきた新鮮な森の空気を胸深く吸う喪越は、眩しげに空を見上げる。今回ほとんど出る幕がなかったのはいいことなのか悪いことなのか、と考えながら。 「いやー楽しかったわね♪」 満足げな霧依は、倒れているままのリンスガルトに近づき、彼女が穿いてるパンツを下ろす。 「やぁん白くてすべすべ♪ 柔らかい♪」 逮捕されそうな手つきでお尻をなで回した後、指にヴォッカと唐辛子粉をたっぷり塗り付け。 「えいっ♪」 突き刺した。 「あぎゃああああ!」 絶叫とともにリンスガルトは跳び起きる。尻を押さえながら。 「ぬおおお…尻…尻が…焼ける様じゃ…」 涙目の彼女をギュッと抱き締め、頭を撫でる。 「貴女のお蔭で勝てたわ、ありがとう♪」 一方多由羅はといえば、限りない疲労感に苛まれながらも、ジェーンを追い回していた。血走った目で真剣を振り回している。 「いつも肝心なとこ丸投げして恥を知れえ!」 「ちょと止めてそれアカン本当にアカン奴だからーっ!」 ノエミはというと、木陰でひっそり吐いている。酔いが切れたのだ。 残念なことに酔っている間の記憶が全然消えてないので、羞恥心にも苦しめられている。 「はしたないです…」 めそめそしているそこに、背後からそっと近づく霧依の影。 「あらら、元気出してっ♪」 慰めかけるついでにカンチョーをかます。 「ふぎゃああああああ!」 これが本日の悲鳴納め。 |