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■オープニング本文 ●開拓者ギルドにて 世界は魔王によって支配されました。 それはもうあっという間に。 ただ、誰も魔王を見たことがありません。 場所は知らない者がいないというぐらいに分かりきっているのに。 ・・・・自称勇者や自称英雄が片っ端からいなくなっていくのは当たり前。 なぜなら生還者がいないのだから。 「まぁ、普通に考えたらそうだよなぁ・・・・」 ボロボロになったギルドの中で夢が呟く。 今じゃやられにやられて開拓者の数もめっきり減った物だ。 とは言え、それでも対抗するように開拓者も強くなっている。 環境と言うのは恐ろしい物で、それに順応するように周りも変化していく。 開拓者なんて今じゃ超人とも言えるぐらいに動き回れるし強くなっている。 だが、それでも今のところ生還者はいない。 「・・・・ただ単に一人で突っ込むから返り討ちにあうんじゃないのかなぁ」 よくよく考えれば勇者を名乗ったり英雄を名乗ったりするのは大概一人で突っ込んでいる。 それに気が付いた夢は引き出しから大分使われなくなった依頼書を取り出し書き込んでいく。 ●依頼内容 六人ぐらいで魔王をフルボッコにしたい連中募集 「平和になれば問題なしって事だな!」 よくよく考えてみれば栄誉やら何やらを気にしなければぐしゃっと一発潰せばいいだけ。 取りあえず平和にすることが第一、何故今まで気が付かなかったのか不思議なぐらいだ。 後ろにいた開拓者達も「あぁ、そうすれば良かったんだ!」と声を上げている。 ・・・・支配された天儀は案外平和です ※このシナリオはミッドナイトサマーシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません |
■参加者一覧
朝比奈 空(ia0086)
21歳・女・魔
小伝良 虎太郎(ia0375)
18歳・男・泰
鬼灯 仄(ia1257)
35歳・男・サ
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
赤マント(ia3521)
14歳・女・泰
ブローディア・F・H(ib0334)
26歳・女・魔
盾男(ib1622)
23歳・男・サ |
■リプレイ本文 ●魔王城にて 六人のギルドから集められた勇者が最後の扉の前で横一列に並ぶ。 数日前に夢から出された魔王討伐依頼。腕っ節のよい者が選考され、ここにやってきた。 一体どんなのがここにいるのだろうか、そう思いながら扉をくぐる。 「さて、どんな奴が‥‥って、あれ?」 ルオウ(ia2445)が勢いよく扉を開けて、魔王の玉座と思われるところを見つめると誰もいない。これはおかしい。まさか自称勇者や英雄が先にここにきて戦闘を行った、という形跡もない。 「なんだ、もぬけの殻ってやつか」 鬼灯 仄(ia1257)が煙管をだるそうに咥えながら辺りを見回す。いっそのこと魔王の死体でもあればとっととのっとってやろうとか思いながら見ているが、それらしい死体や痕跡はやはりない。心の中で軽く舌うちをしているのは秘密だ。 「誰もいないとは、おかしいですね」 盾男(ib1622)も構えていたガードを下ろして玉座の前に歩いていく。やはり何もない。ふむ、と言いながら顎に手を当てて少々思案し始める。 「どこかで待ち伏せとか」 大きな胸と妖艶な格好で魅了しないものはいないだろうという格好で中に入るブローディア・F・H(ib0334)が体をくねらせながら調べ始める。正直男性人にとっては一番の魔王かもしれない。 「悪い事したらお仕置きされないといけない、逃げるとは汚いさすが魔王きたない!」 むすっと小伝良 虎太郎(ia0375)がうーうーと唸りながら玉座をぶらぶらし始める。 具体的に何が悪い事をしているのかは全くもってしらないが、取りあえず支配してるぐらいだからとってもあくどい事をしているのだろうと。 「まぁ‥‥支配されたといっても具体的にどう変わったのか良く判らないのですが‥‥」 朝比奈 空(ia0086)が、んーと考えながら同じように調べ始める。取りあえずここまでくるのに罠や敵もいなく、軽く肩透かしを食らったのだが、それほど魔王が強いのだろうと頭の中で予想できる範囲で戦況を思い浮かべる。 「そうだねぇ、何でいないんだろうね?」 七人目の勇者、赤マント(ia3521)がぽつりと呟く。勇者達の後ろを平然と歩きながら。 「ちょっと待て、七人目はいないはずだ!」 鬼灯がはっと気がつき後ろに振り向く。じっとりと汗がにじみ「やばいかも」と苦笑いを浮かべる。そしてその声を聴いた瞬間に空、ブローディアが振り向き、赤マントを視認、詠唱、射撃体勢、発射。精霊砲とファイアーボールが混ざり合いながら飛んでいく。この間コンマ4秒。轟音と爆炎をあげながら丁度後ろにあった扉を丸ごと破壊するが、赤マントの姿はない。 「・・・・まだですね」 盾男がぽつりと呟き、玉座の方へ顔を向けると、余裕の表情を浮かべた赤マントが好物のおはぎを食べながら、勇者を見下す。 「ふふん、今回は六人できたんだ、楽しめるといいんだけど」 口にあんこをつけながらも魔王は魔王、滲み出る赤黒いオーラはひしひしと感じる。しかし、それでも攻撃をしにいくのがいる。 「観念しな、魔王!光の差さない夜はない!俺たち六人、夜明けを告げに来た!!」 そうびしっと声を張り上げながらルオウがこ特攻をかける。走りながら不動を発動すると、どこか東洋の龍を思わせるようなオーラを発しながら突撃する。その隣で虎太郎が援護をするように高々と飛び上がり荒鷹陣を使用する。太陽はそこにはないというのに眩しい位に後光が差し込み、高々と上げた手、そして一本足に。それは今まで見たことも無いような素晴らしいほど輝かしくかっこいい「あらぶる鷹のポーズ」だ、思わずその場にいた全員が其れに見とれるほど。 「はっ、それぐらいっ!」 赤マントも流石に見てしまったためか、一瞬動作が遅れ、ルオウの重い一撃が飛んでくる。 「必殺!ドラゴンフライー!!」 ぐっと握り締めた刀で滑る様に斬り付ける。音すらも割断するその速さは本物だ。しかし、相手は最速主義の魔王。それを上体をそらして回避。 「僕にはそんな攻撃・・・・!?」 上体を戻したところに追撃の鬼灯、信じられないほど強烈な炎魂縛弐を纏わせながら切りかかる。ごうっと炎が振り下ろされ、相手を炎もろとも切り伏せる。並みの相手なら余波だけでも致命傷だがその攻撃を寸でのところで避ける。 「いいね、いいね、でも遅いんだよね」 信じられない反射神経をもって鬼灯へカウンターの一撃。あまりの速さに線を描きながら拳が腹部へとめり込み、大きく吹き飛ばす。そして信じられない速度で吹き飛んだ鬼灯をさらにルオウ、虎太郎の下へ蹴り飛ばす。 「うお!?」 「うわぁ!!」 軽く地面を跳ねながらボールのように転がり、ルオウ、虎太郎へと激突し、そのまま巻き込んで、壁に激突‥‥する前に盾男のフォローがはいる。「ほー」という魔王、そこに先回りをしていた空が詠唱を終わり手を掲げる。 「零距離、無事で済むと思わない事です‥‥!」 避けるのに集中していたためか許してしまった接近、収束する精霊力が物々しい音を立てながら一気に解き放たれる。壁を貫き空へと登る光の柱。それは雲を貫き空の彼方へ消えていく光だったとか。光が収縮し、辺りが元に戻ると、少々ぼろぼろになった魔王。さすがに直撃はしなかったもののなんとか難を逃れたといったところだろう。 しかしそれで手を休めない。ブローディアが連続して火柱を立たせ、追撃をしていく。それを見ている盾男が。 「凄まじい、エルファイアーですね」 「ふふ、エルファイアーじゃないわ、ファイアーボールよ」 あまりの超越した力のためか、下位のスキルですら上位のスキルのようになるのはしごく当然なのだろう。 「大魔術師と呼ぶといいわ」 そんな事をいいながら追撃の手を止めない。だが、それでも魔王、常に赤い残像を残しながら縦横無尽ともいえる速度で回避を続ける。しっかりと敵を観察し癖を読み取り、火避けるのですら楽しみにする。そして回避に専念してばかりではなく、攻勢に出始める。そこにあった姿が見えず、質量すらあるのではないかと想われる残像を残しながら、ブローディアへ攻撃を放つ。 「流石山をも砕く攻撃力ですね、私でなければ防げなかったでしょうね」 にんやりと笑いながら魔王の攻撃を受け続ける盾男。とは言え、何度も食らっていれば鉄壁といえども少しずつ崩れていく。先程、開戦してからずっと攻撃を受け続けているのは盾男一人。いくら古流砕刃盾術が凄いと言えどもこれ以上は持たない。丁度迫りくる拳にあわせ、盾でカウンターを繰り出す。 「僕の攻撃を受け止めるなんて‥‥凄い!?だけど‥‥」 が、所詮は簡素に強化された木製盾。粉々に砕け散ると共に、貫かれる。 「ぐっ‥‥すいません、皆さんあとは頼みますよ」 胸に刺さった腕をがっしりと掴んで離さない。 「くそぅー!」 つかまれた手を振りほどこうと力を込めるが全く持って抜ける気がしない。それを見計らってルオウ、虎太郎が攻撃を同時に攻撃を仕掛ける。ルオウは力を振り絞り、叫びをあげながら残り全ての力を上段に構えた刀を振りかぶり。 「くらえ!勇気と努力と友情の!シャァイニングゥ‥‥インパクトォォォ!!!」 虎太郎は其れに合わせるように気力を重ね、残像を残すほど速度で一気に詰め寄り。 「破軍起承拳四倍だー!」 両脇から叩き付けるように殴りこみ、大きく吹き飛ばされ壁をつきやぶり崖下へと赤マントが落ちた。ように見えたが残像だ。勇者達の後ろに忽然と現れると、くすくすと歳相応の少女のような笑顔を見せる。 「んぐっ‥‥ふふ、僕を捉えるとは、本気でやってきたんだね‥‥流石、だなぁ」 ぽたぽたと口の端から血を流しながらにやりと。 「ま、後はゆっくり眠れ、な?」 思い切り鬼灯が飛び出すと赤マントにタックルをし、しっかりと体を抱締めるとそのまま崖下へと一緒に落下していく。 「‥‥安らかにお眠りなさい」 そういいながら空が盾男、鬼灯、魔王赤マントにそっと弔いをする。いくら悪人とは言え、天に召されるのを放っておくのは気が引ける。軽く祈りの言葉を呟く。 「中々の相手でしたね」 あまりの連射に練力が殆ど空になったブローディアが肩で息をしながらゆっくり崖下をみやる。空が少しではあるが晴れたようにも見える。 結果はどうであれ、勇者達は世界の平和を勝ち取った ●全て終わり‥‥? 犠牲は大きかったが世界に平和が戻った。 ‥‥が。 「よっこら‥‥せっと」 がけ下に転落し、死んだかと思われていた鬼灯が半壊した魔王城の玉座に座り一服。 「魔王のほうが楽しそうだしな」とむ そう呟き、空を仰ぐ。結局天儀は騒動がつきる日がないのだった。 |