不思議洞穴弐【第一階】
マスター名:如月 春
シナリオ形態: シリーズ
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/09/22 01:27



■オープニング本文

●不思議洞穴から東に数キロ
 少し寂れた雰囲気の温泉のある村。
 爺さんと婆さんばかりではあるが、通の間じゃ有名な温泉があると言われている。
 規模としてはそれなり、不思議洞穴のあった村とさほど変わらないといったところだろうか。

「今日も温泉に浸かりにいくかのう‥‥」
 
 一人の老人がのんびりと山の麓にある温泉に向かってひょこひょこと歩いていく。
 足腰がめっきり弱くなったがここで温泉に浸かりながらゆったりしていると回復してきた。
 今ではこのように一人で歩いて温泉にいけるほどだ。
 よくよくみれば開拓者や旅人もチラホラと見られる。
 休暇がてら、または療養に、そのようなのが多い。
 
 そして今日も温泉にゆったりと浸かりながら一杯。
 「はぁぁぁ」といいそうなほどに気持ちのよい。
 そうしてぼんやりと過ごしていると山の麓、いつもの森がぽっかりと開いてるのに気が付く。
 はて、新しい温泉でもわいたのだろうか?と思いつつタオル一枚でそちらの方へといく。
 盛り上がった地表と言うよりは坂の途中にぽっかりと穴があいてそこを中心に森がなくなっている。
 不思議に思い中に進もうとするが、ふと話を思い出す。
 
 最近少し西側にある村で不思議な洞窟が突然発生したという噂。
 なにやら開拓者やら旅人やら一攫千金を狙って賑わい繁盛したらしい。
 ・・・・とは言え、とても最近の話ではあるのだが。

「ふむぅ、開拓者にでも頼むかのう・・・・」

 よぼよぼと歩いて丁度休みであった開拓者に頼み込む。
 そして噂を知ってか「ひゃっはー!一番のりだー!」と言いながら奥へといった開拓者は数時間後にぼろぼろになって戻ってきたのだった。


●開拓者ギルドにて
 夢がカキ氷をしゃくっしゃくと頬張りながらいつもの様に受付に座っていると、一通の手紙が届く。
 一応これでもギルド嬢、ばりばりと封筒を破ると中身を見始める。
 内容は新しく出来た洞窟のお話。勿論それに食い付くわけで。
 手紙をどんどんと読みすすめていく。
 内容は洞窟の発生した事、どういう洞窟であるかと言うのが大雑把にかかれている。
 「確か温泉のあるところだったなぁ」という認識でその場所を知っている為、道も容易く分かる。
 早速と言わんばかりに依頼書と休暇届を取り出して、書いていく。
 のを目撃されました。

「また休みですか・・・・?仕事はちゃんとしてから行ってくださいよ?」

「日帰りだからねぇ、だいじょーぶよ」

 さらさらと依頼書を作ると、掲示板にそれをいつもの様にぴっちり角を合わせて張り出す。

 ――新しい洞窟調査の人員募集 とかかれた紙を。


■参加者一覧
鈴代 雅輝(ia0300
20歳・男・陰
貉(ia0585
15歳・男・陰
玲璃(ia1114
17歳・男・吟
ペケ(ia5365
18歳・女・シ
朱麓(ia8390
23歳・女・泰
フレイア(ib0257
28歳・女・魔
ルーディ・ガーランド(ib0966
20歳・男・魔
御影 銀藍(ib3683
17歳・男・シ


■リプレイ本文

●新洞窟前にて
 新たに出現した洞窟と言う事で今はまだ回りに人はおらず、丁度見かけた開拓者や旅人がたむろして拠点の設営を行っているところに開拓者八人が洞窟を眺める。
「入る度に構造が変化するとか、倒れちまったら経験が全部チャラになっちまうとか、そういう不思議さでもあるのか?」
 鈴代 雅輝(ia0300)が大きく口をあけて「がっはっは」と笑いながら言っている。とは言えそんな幻想的な洞窟ではないのが現実である。目の前でずたぼろになった開拓者がのろのろと洞窟から出てくるのを目撃。軽くあれ?っと呟く。
「相変わらず危険な洞窟ですね、今回は調査優先ですが」
 玲璃(ia1114)が前回同様に手帳を開いて黙々と書き始める。流石に経験者、要点を抑えてさらさらと書いていく。
 そして此方も、洞窟の入口でこつこつと叩いたり、ぺたぺたと触りながらルーディ・ガーランド(ib0966)が同じように手帳にメモしている。ここに一番乗りで乗り込んだと言われる開拓者の方に話を伺いに言ったが、別に半裸でもモヒカンでもなくいたって普通の人が「目の前の宝に食いつかないとかありえないだろ!」と力説されただけだった。
「またもや謎の洞窟出現ですねぇ、不思議ですねぇ、冒険とお宝の匂いが‥‥クンクン‥‥硫黄臭いですねぇ‥‥」
 ペケ(ia5365)がぱたぱたと鼻の先で手を振って「くさいー」と呟いている。サムライに転職はしたがどじっこまでは転職できないようだ。
「しかし‥‥新しく出現した、というだけで十分不思議な気がしますが」
 御影 銀藍(ib3683)もぽっかりあいた洞窟の入口を眺めながらぽつりと呟く。とは言え、こんな現象が起きても何も不思議に思えないのが天儀の連中でもある。
「未知との遭遇、謎の探求は楽しそうですわね」
 フレイア(ib0257)も手帳を取り出し、しっかりと仕舞うと道具の確認をし始める。皆手帳を持参し色々書き込むつもりなのだろう。すっかり入口は開拓者で埋め尽くされている。
「(クックック、お目出度い連中め、てめーらにやる宝何ざねーよ、最後に一番いい目見るのはこの俺よ)」
 貉(ia0585)が仮面の下、ばれないように笑いながら後ろで見つめている。流石守銭奴、金が絡むとやる気も増大するものだ。
「まーた、何考えているんだい?こいつ」
 朱麓(ia8390)が貉の正面に回ると仮面に手刀を一撃。「うごご」と顔を抑えてうずくまる貉を「あはは」と笑いながら見ている。
 そんなこんなで集まった八人、各々が準備を済ませると道の洞窟へと入っていくのだった。

●洞窟内部
 ぽっかりと開いた入口から中に入っていき、ギルドから借りてきたランタンで道を照らすとかなりしっかりとした鍾乳洞。道の端には水源があり、天井や床には鍾乳石が立派にくっついている。しかしそれでも人が通れる道が最深部へと手招いているようにも見える。
「大分暑い‥‥ですね」
 玲璃がぱたぱたと服に風を送りながら取りあえずの感想を述べる。一応内部でも温泉やらガスが吹き出ているのか色々と音がする。そしてさらに敵はいるわけで‥‥湿度と温度がそのせいかかなり高くなっている。取りあえず湿度120%ってぐらいには蒸しているうえに温度もかなり高い。
「これはアヤカシより厄介だな」
 ルーディも上着を外しながら地形を眺めてメモを続ける。取りあえず人工物と自然物の間であろうか?と書き記しておく。あくまで鍾乳洞ではあるのだが人が歩ける道はある。それも意図的に作られたかのように。その事が気がかりなのか「ふむ」といいながら調べる。
「はふ、暑いですよー、下の階層とかはも〜っと暑いのかしらねぇ」
 薄着のペケも大分まいっているのか胸元を緩めてぱたぱたと。男性陣がこっそりと「眼福眼福」と言っている。
「まぁ、とっとと奥に行こうぜぇ!」
 鈴代が先陣を切って歩き始めたのと同時に開拓者一同移動を開始する。内部はかなりの高温高湿、歩いているだけでかなり体力を消耗する。
「ボロボロになるのも分かります、ね」
 かりかりと壁に白墨で印をつけながら御影も「ふぅ」とため息を付いている。息を吸い込めば熱い空気を吸い、深呼吸をしようものなら咽るほどだ。蒸し風呂か何かにずっと入り込んでいるようにも感じる。
「空気もわかりづらいですわね」
 喧嘩煙管の煙を見ながら風を調べてみるも高湿のせいでうまく煙が当たりに回らない。それに風と言うよりは熱気、煙管の火ですらうっとうしく思える程だ。かすかに動いた煙を辿ってみるもガスの噴出口、非可燃性とは言え流石に覗き見たりするのは躊躇う。取りあえずストーンウォールで穴を塞ぎ、さらに奥へと。
「ちぃ、目ぼしい物がないな‥‥」
 悟られないように仮面の下で辺りを見回し、独自のマッピングすらしている貉がぽつりと呟く。内心「宝があるんじゃねーのかよ!」と思いながらも辺りを見回し、宝の匂いをかぎ続ける。世の中金である。
「穴はあれども、宝はなしってかい?」
 朱麓が間欠泉の穴を眺めながら旋棍「竜巻」でこつこつと叩いてみる。それに反応したように蒸気を吹き上げるので驚きながらも楽しそうに遊んでいる。流石に一度経験していると慣れる物で感覚的にやばいと思ったのは避けている。
「罠という罠もないですねぇ‥‥」
 岩清水をぐびぐびと飲みながらペケが辺りを警戒しながら忍眼を使いぐるりと見回す。今のところガスと間欠泉が最大の敵であり、アヤカシの姿は確認できない。ぐいっと汗を拭い。生ぬるくなった岩清水を仕舞い、一歩踏み出すと「ずず」っと足元が軽く沈み込む。
「これは‥‥何とも嫌な感じだねぇ」
 朱麓がははっと笑うと同時に間欠泉が通路の通路の奥から順繰りと噴出してくる。
「あんなの食らったら焼けどじゃすまないぞ!」
 ルーディが慌てて身を伏せる事を促す。
「と、流石にあれはまずいですわね」
 それと同時にフレイアが通路の両脇にストーンウォールを繰り出して直撃はしないように壁を構築すると間欠泉を防ぐようにするが。端から端まで高圧高温の水鉄砲を食らうと流石に崩壊寸前までひびがはいる。
「新手の罠‥‥ですか‥‥これはメモしておかないと」
 玲璃が素早く手帳に書き込みながら治療が必要なものがいないか確認し始める。取りあえずストーンウォールのおかげで直撃はせずに無傷で罠をやり過ごすことは出来ただけ幸いである。
「流石に笑ってばかりいられねぇってか?」
 鈴代がぱんぱんと埃を払いながら罠の起動部分を調べながら通路の奥へ視線を向ける。内心面白いじゃねぇかと笑いながら、もう一度気を引き締めなおす。
「アヤカシのほうがまだましさねぇ」
 朱麓が旋棍でこんこんとストーンウォールを叩くとあっさりと崩れ去り足元にぱらぱらと粉微塵になったのをの振り落とし、隊列の前へと。
そしてその後ろで屈んで何かを見つめている貉。キラキラと光に何か反射しているのを見つけて拾い上げる。「クワッ」と眼を見開くかのごとく其れを見つめて素早く懐に入れる。
「(クックッ‥‥小さいとは言え砂金‥‥この洞窟稼げる!)」
 ぐっと握りこぶしを作り、金の匂いをビンビンにかぎつけると地面を舐める様に見つめながら一同のあとを追い始める守銭奴であった。

●新種発見
 一同、先程の間欠泉の罠からもう一度気を引き締めて先に進んでいくと、赤いぶよぶよとした粘性のアヤカシが部屋をごろごろと転がっている。部屋と言ってもある程度開けた道、通路の五倍程は横幅があるところというだけではあるのだが。
「どうも、前とは違うアヤカシっぽいねぇ」
 朱麓と玲璃、ペケの三人は流石にどういう相手かわかっているので静かに回りに説明をし始める。
「雑魚ではありますが一撃で粉砕しないと分裂します、とは言え一定数分裂すれば倒せるので‥‥」
 玲璃が後ろで全員に伝える。一同頷いて分かったとアイコンタクト。ぶよぶよと蠢いているだけで此方には未だ気が付かない。
「今のところ曲がり角はありませんでしたよ」
 印を付け続けて此処まできた御影だからこそ言える言葉。マッピングをしていた者もそれに頷いて、戦闘は避けられないと言うのを再確認する。
「じゃあ、一気に蹴散らす、それでいいな?」
 ルーディが杖を握り締めて詠唱を始める。
「楽ですわね、纏まっていると」
 ルーディとは反対側の壁に居並ぶフレイアも詠唱をしながら標的に狙いをつける。
「んじゃ、いくかぁ」
 鈴代も符を構え、ゆったりと目標に狙いをつける。
「サムライになったので少しは戦えますよー」
 ぷるぷると胸を震わせ張り切るペケ。
 そしてその後ろ貉が笑顔(?)で追いつくと。
「おー、程ほどに援護してやるから頑張れ」
 と言い、地面をがん見しながら符を取り出す。
 そして全員が頷くと一気に飛び出して一斉攻撃。
 斬撃符同時撃ち、奔刃術、旋棍「竜巻」による風での攻撃、ブリザーストーム、止めのアークブラスト。見事と言わんばかりの連続攻撃で辺りが砂煙で塞がるが、警戒は解かずにじっくりと薄目を凝らして相手を見据える。
「きます!」
 暗視を使っていた御影が咄嗟にそういうと同時に、部屋の中心から全員が一歩下がる。砂煙が止むと、先程の数十倍に分裂した粘性アヤカシがぷるぷると震えている。
「あちゃ、このパターンかねぇ」
 足元にいたアヤカシを蹴り飛ばす朱麓、と同時に顔をゆがめる。
 蹴り足に残る感覚、衝撃のせいで熱くなったという感じではない。アヤカシ自体が熱湯の塊のようになっているのに気が付く。
「熱々の饅頭にしちゃぁ、まずそうだ!」
 鈴代が向かって来るアヤカシを斬撃符で切り刻みながら、後退する。
 火傷とは軽く見られがちではあるが、かなり厄介な怪我である。そしてこの状況、この場所で酷い火傷を負った場合、確実に後遺症が残るだろう。
「あついですー!」
 ペケがぱたぱたと走りまわり、切り刻んではいるが、かなり熱そうにしている。
「余計な消費はしたくないんだけどな」
 詠唱をしきり真正面からブリザーストームを放ち、冷却、固形化、冷凍。
「相性抜群ですね」
 御影が苦無を投げつけ、手前のアヤカシから砕き始めたと同時にその隣で二発目のアークブラストが凍りついたアヤカシのど真ん中をぶち抜いていく。
「あら、やりすぎでしょうか」
 華麗にそんな事をいいながらあたりを見回す。取りあえず目に付くアヤカシは全てもうもうと瘴気を噴出しながら消滅し始めている。
「おーおー、楽ちん楽ちん」
 貉がそんな事をいいながら地面を眺めて目的のものをちょいちょいと拾う。こういうのは子供と同じで、一度味を占めるとやめられないものだ。
「さって‥‥今回のアヤカシは何があるかね」
 朱麓が凍ったのを足でつついて何か出てこないか調べてみるが、特には無い。前回は小銭がちらほらとでてきていたが、あれは前に開拓者が何度も入っていたからだ。多少なりと残念そうにしながら、開拓者は一度休憩を挟む事にする。

●開拓者調査中
 調査を進めるべく休憩も済ませて奥へと進んでいく。
 アヤカシはあの一部屋を過ぎれば対処がしやすくなった。取りあえず凍らせて砕く。これが一番手っ取り早く確実ではあったが、練力の消費は激しくなっていくばかりでもあるが。
「なるほど‥‥危険だというのはこういうことですかね」
 玲璃が足元の水源を眺めて呟く。杖で引っ掻き回すと結構ねっとりとした(あくまでそう見えるだけ)感じにぐるぐるとする。油分が多いのかどうかは微妙ではあるが、かなり成分的に危険ではある。
「一応、清水にはしてみたが‥‥これは飲めないし、使えないな」
 瓶で掬ってキュアウォーターを使ってみるものの、温度は下がらない。流石に沸騰直前まで茹っているお湯を使うわけにはいかない、これじゃあ浸かるのは無理だなと、諦めてお湯を捨てる。
「植物もそうないねぇ‥‥ガスの影響かねぇ」
 朱麓が苔をがりがりと削り落として瓶に入れてしまう。基本的に日の光が必要であるためかめぼしい植物はあまり生えていない。
「鉱石も、普通の岩っぽいですね」
 苦無で壁を削ってみるものの、特に珍しいと言うわけではないが、多少なりと他の層に比べて耐久性が高めであるというところだろうか。此方も瓶に詰めてしっかりと懐に仕舞う。
 此方は此方で砂金集めに夢中なので周りを気にせずに人魂と夜光虫使いまくりで懐を暖めている。山分けなんてするわけがない。してやるものか。
「楽しそうだなぁ!」
「好奇心旺盛ですわね、皆さん」
 あーだこーだやっているのをぼんやり眺める鈴代とフレイア、此方二人はあまり興味がないのか、あたりの警戒に当たっている。
「まめですねぇ、皆さん‥‥早く終わらせて温泉でもいきたいですねぇ」
 完全に熱中症になりかけているペケがふらふらとしながら言っている。とは言えこれも仕事の内、残った岩清水をぐびっと飲んで一息。いい加減に脱出しないと体力、練力が尽きる前に暑さにやられてしまう。取りあえずある程度の調査を済ませた一同が早足に奥へと進んでいく。
 その道のりは特には無く二階層への階段がぽっかりと開いている。肩透かしを食らったような感じではあるが、奥のほうからはひんやりとした空気が溢れている。
「取りあえず、戻るとするか」
 マッピングもそれなりに、調査もそれなりに出来た。後は無事に脱出するだけ‥‥そう、全速力で。

●温泉にて
 全員汗まみれで洞窟から飛び出てくる。そろそろ紅葉の季節にもなろうとする涼しい風がひんやりと開拓者達の体を冷やす。
「はぁ‥‥はぁ‥‥」
 限界な顔をしている鈴代が近くにいた旅人に大きな声で。
「温泉はどっちだぁ!」
 と尋ねられ、ビビリながらも指を指した方向に全員全速力。
 
 ‥‥しばらくして、温泉でゆっくりとしている開拓者。
 仕事の後の一杯がこれほどうまく感じる場所はないだろう。
 男性陣は酔った勢いで女湯を覗こうとしてアークブラストやらドゴォやらで撃退されている以外はかなり平和でのんびりしてる。

「で、今回はどうだったね」
「あれ、あんた洞窟いったんじゃ‥‥?」
「ふふ、いってきたさ。思う存分な」
 チンと音を鳴らしながら乾杯する二人。
「これから、かね」
 そうぼんやりと話しながら新しい洞窟の開拓史が始まるのだった。