|
■オープニング本文 ●とある村にて 何処にでもあるような至って平凡で普通な村、特産品無し。総人口78人。特徴と言えば村の真ん中に街道が走っているので旅人の休憩所としてしばしば利用される事があるぐらい。 特に事件と言う事件も起きず、大きな事件と言えば、野菜泥棒が関の山。そんな平和でのどかな村である事件が起きた。 「今日も平和じゃの」 そんな事を思いながら静かにお茶を啜り、のんびりと人生の遊休を過ごす村長。いつものように華麗に村を横切る旅人や商人を眺めていると、森の方が騒がしい事に気がつく。それは、人生の中で一度も聞いたことも体験した事も無いような音である。 「はて、森の方が騒がしいのぅ‥‥」 お茶を置き、家の外に出てみれば、同じように森の方を村人全員で眺めている状態に遭遇する。 のんびりとした歩調で村人の前に立ち、何が起きたと聞いてみれば全員首を傾げるのみ。 「ふむ‥‥では、見に行ってみるかぁ‥‥」 とは言え、未知に対しての恐怖するのは当然と言えば当然である。 その点は丁度良く宿屋に泊まっていた商隊の護衛を借りる事にし森の中に進んでいく。 森の中はいつも、うさぎやら鹿やらが村に来て、野菜を齧って行く程いるのだが何故か見当たらず、少しひっそりとした雰囲気が現れている。 一応護衛もその雰囲気は感じ取っているのか武器を構え、慎重に進んでいる。 ‥‥どれくらい歩いただろうか、少しため息が付くほど歩いた所で急に森が開け、それなりの広さの空き地に出くわす。 「おかしいのぅ‥‥こんな場所なかったのじゃが‥‥」 ひょこひょこと歩いている割には元気な村長が辺りを見回しながら首を傾げ、空き地の真ん中にへと進んでいく。そして最奥であろう場所に村長と護衛が到達したとき、この物語が始まる。 ●場所は変わって開拓者ギルド。 少しして、とある商隊からある一通の手紙が届けられる。その内容はとても簡潔で魅力的な物が含まれていた。 「いきなりの手紙を失礼します。最近村の近くである問題が起きてしまいました」 と、まずは書かれていた。ギルド員はそのまま文章を読み続け、その興味の惹かれる単語を見つけた。 開拓者、旅人等の世界を見て回っている、もしくは危険な事に首を突っ込みたがる人にはこれ以上と無いほどに魅力的かつ興味をそそらざるを得ない単語‥‥ 「最近村の近くの森に突然として『洞窟』が現れたのです、特に実害は今のところないのですが、いつ何が起きるか分からないので調査してもらいたいのです。」 手紙を読んでいたギルド嬢のユメもその魅力と興味をそそられる人物であったのは言わずとも。意気揚々と依頼書の作成に取り掛かる。 ‥‥しかし、その傍らユメは開拓者と自分の境遇を密かに恨み始めていた。その洞窟と言う甘美な響きと数々の宝物の事を考えてみると、自分でいけない事がどれ程悔しいか。 「‥‥素直に開拓者やってりゃよかった‥‥」 ‥‥きっと依頼書の後半が汚いのはそのせいだろう。 |
■参加者一覧
ルーシア・ホジスン(ia0796)
13歳・女・サ
ロウザ(ia1065)
16歳・女・サ
ペケ(ia5365)
18歳・女・シ
桐崎 伽紗丸(ia6105)
14歳・男・シ
朱麓(ia8390)
23歳・女・泰
オラース・カノーヴァ(ib0141)
29歳・男・魔
ロック・J・グリフィス(ib0293)
25歳・男・騎
ユーフォリア・ウォルグ(ib1396)
16歳・女・騎 |
■リプレイ本文 ●洞窟前にて 「どーくつ、あた!」 そう叫ぶと元気よく走り、ちょこんと入り口の前に座ると中の様子を覗きながら匂いを嗅ぎ始めるロウザ(ia1065)。 それを後ろに同じく元気よく洞窟を覗くペケ(ia5365) 「中はどんな感じなんでしょうかねぇ?」 少しワクワクしているのか、ロウザと一緒に鼻をすんすんと鳴らしている。 桐崎 伽紗丸(ia6105)も洞窟を楽しみにしているのか、道具を確認しながら鼻歌を鳴らしている。 「洞窟探険、楽しみだ!」 「ダンジョン探索、ダンジョン探索〜♪」 こちらも同じく、楽しそうに洞窟を眺めているユーフォリア・ウォルグ(ib1396)王様を目指している身としてやはり伝説の剣とかそれっぽいものを期待しているようだ。 「金銀財宝とか、伝説の名刀とか、はたまたこの世を滅ぼせるようなすごいものが眠っているのかな?」 ルーシア・ホジスン(ia0796)が欲に塗れた想像をしながらじーっと洞窟を眺める。 「そう都合よく置いてあるものかね」 朱麓(ia8390)が煙管を吹かしながら、そんな妄想へツッコミを入れる。 そういわれて「あーあー、聞こえません」と耳を塞ぎ、ルーシアは自分の道具の確認を始める。 そんな事を言ってる時、オーラス・カノーヴァ(ib0141)が洞窟の入り口で壁に傷をつけて、瘴気の確認をしているが、特に何も無く当てが外れたな、と呟きながら戻ってくる。 「外れ、アヤカシではないと言う事か」 ふぅ、ため息一つ付き自分の道具を確認するべく、他の開拓者達に合流する。 その反対側にはロック・J・グリフィス(ib0293)が丁度見送りにきていた村長に尋ねる。 「空き地と洞窟が見つかる前に、何か地震の揺れなどを感じたということは無かったか?少々面妖だと思ってな」 「はぁ‥‥何かが盛り上がるような音しかしておらんがなぁ‥‥あまり気にしすぎるとワシみたいに禿てしまうぞ」 ぺしぺしと自分の頭を叩きながら、冗談めいた事を呟く村長。何気に黒い。 「それならいいんだが」 特に問題はないと思ったのか、それだけ聞くとロックも合流し、一同洞窟の前に並ぶ。 はたから見ても開拓者と分かるのは異色なせいだろう。 「では、頑張ってくだされ、他の旅人やらも何人か勝手に潜っているようじゃから仲良くしてくだされよ」 ほっほと言いながらさらっと言った事に一同「はぁ!?」と声を揃える。 街道沿いなので噂を聞きつけたり、興味本位で潜っているらしい。 こちらはノータッチなので報酬はないし、全て自己責任、所有してるわけでもないので潜ろうと思えば潜れるのであった。 「じゃあ、さっさと行かないとまずいさね」 朱麓が荷物を担ぎ、早速と言わんばかりに洞窟の中に入っていく。 「しゅろく さき いく ずるい!」 ロウザも四足歩行で後に続いていく。 そんな元気な光景を見つめれば、やはり我先にと走り、洞窟探険の開始となる。 「頑張れよ〜」 村長がのんびりと手を振りながら見送る。 ●洞窟内部 内部に入り、取りあえず松明を付け始める。 天然であるはずなのに、きっちりと整えられた通路が目に飛び込んでくる。 一定間隔で詰まれた、レンガ、上下左右均等な大きさの通路に一同は目を丸くする。 「おぉ、すげー!」 桐崎が壁をぺたぺたと触りながら、松明で足元や壁を照らす。 やはり、人工物と言っても良いほどにきちっと整っている。 「におい しない?」 クンクンと匂いを調べるが、ロウザも「うーん?」と首を傾げる。 「そんな馬鹿な‥‥取りあえず出現した理由は瘴気なのだろうか」 ロックが顎に手をあてながら通路の奥を見やり、白薔薇で壁を突き、調べる。 突くたびにボロボロと崩れていくだけで、他の人工物と変わらない。 「取りあえず奥に進むぞ、それが目的だ」 オーラスが地図を作りながら、みなの背を押すように言葉を掛ける、そんなこんなで、洞窟の奥へと脚を進めるのであった。 ●第一階層 カツカツと音を立てながら進行していく開拓者達。 今のところ通路が続くだけで、特に何も無くしっかりと進んでいるのだろうか、と言う錯覚に陥る程歩いている気になり始めた所で、目の前に軽く開けるような光景がちらつく、 「む、止まってください」 ペケが手で後ろを制すると、ひょこっと開けた場所を覗く。 ざっと見て横縦の広さを確認、宝、アヤカシの有無を確認、一つ一つ丁寧に仕事をこなす。流石に暗い為か、入り口付近しか見られないので罠の有無を確認。 ふぅ、と一仕事終え、静かに「大丈夫」というのを伝えると、慎重に部屋へと入っていく。 「くんくん なにか いる!」 ロウザが部屋に入ると同時に声を上げる。 それを起点に全員が振り向くと同時にアヤカシが襲い掛かり前面に出ていたロックが衝撃によりうめき声を漏らす。 すぐさま、松明をアヤカシのほうに向けると、ぷるぷるとしたゲル状の塊が無数に足元を埋め尽くしている。何とも形容しがたい相手に困惑する一同。 「取りあえず、潰すよ!」 「なんというか、ジルベリアにもこういうのが居たような」 朱麓が武器を構え、早速といわんばかりにアヤカシに対峙。 ユーフォリアも盾を構え、仲間の前で攻撃を耐えながら、記憶を探り始める。 青いのやら赤いのやら冠を被ったのやらいるのは覚えているが名前が出てこないらしい。 「うらぁ!」 「がるるる!」 桐崎、ロウザが近くにいたアヤカシを斬りたり、殴ったり蹴ったりするが、真っ二つになったかと思うと分裂し、多少大きさが小さくなっただけで、倍計算で増えていく。 前衛は分裂するというのが分かると、一同は防戦に回り、通路へと後退していく。 「後ろに下がりましょう、攻撃力はそれほどでもないし!」 ルーシアが叫ぶと同時に後ろに下がり、通路に戻るとアヤカシは付いてこずに、部屋をうろうろし始める。 「雑魚なだけ面倒だな、あいつらは」 やられたところをさすりながらロックが明りの先を眺める。 「下がれ、一気に片付ける」 そんな中でオーラスが詠唱を開始し、ブリザーストームを放つべく前に出る。 勿論部屋に入った瞬間に無数の攻撃を貰い、多少なりと負傷するが、ブリザーストームが発動し、アヤカシがどんどんと凍り付いていく。 それを起点に、一気に通路から飛び出し、アヤカシを粉砕していく。 たまに分裂もしたが、どうやら一定数分裂するとそれ以上増えなくなり、飛び散る。 そうして数分すると、全て片付き、半透明のゲル状の物が足元に広がる。 「見ていて気持ちの良い物じゃ・・・あれ?」 ユーフォリアが剣先でつんつんと残骸を突いていると、ころんと一つ光るものが出てくる。どれどれと言いながら、それを摘み上げると、幾ばくかの小銭を見つける 「お、おぉ!?」 ふむぅ、といいながら朱麓も残骸を少々ばらしてみると、同じように小銭がころころと出てくる。 どうやら先に来ていた開拓者、旅人の持ち物だったのだろう。 それを体内に取り込んでいたようだ。 「む たから?」 ロウザが気が付いたのか、奥のほうへとそろそろと近づいていく。 こぢんまりとした宝箱がうっすらと見え、もう数歩と言うところで、ぴんと背筋を伸ばし、何かを感じる、野生の勘という奴だろう。 「ここ なにか あやしい!」 「うー」と唸りながら宝箱の前で立ち往生。 「任せてください!」 後ろの方からてとてととペケが走り、罠の解除をするべくやってくる。 その隣でオーラスも、お手並み拝見といいながら付いてくる。 と、ロウザの横にペケが着いたと思った瞬間に、お約束といえばお約束で褌がゆるみ、そのまま滑り込んでいく。 一同あたふたと近づいていき安否を確認すると同時にペケの右手辺りが「ズズズ」と言う沈み込む音を発する。 「これは、まずいんじゃないかな」 音がしっかりと聞こえてしまったルーシアが軽く絶望した感じに「あぁ‥‥」と呟く。 それと同時にペケの頭上から何かの刃物が落ちる。 後ろから見ていた一同は誰しもが「終わった」と思っているとペケが涙声でうめいているのに気が付く。 「あっぶねぇ‥‥もうちょっとで転がっていたぞ、これ」 「大丈夫?」 桐崎が落ちてきた物を調べると、西洋の処刑道具ギロチンを思わせる刃物が突き刺さっている。 涙目になっているペケを立ち上がらせて、褌を締めなおしている朱麓。傍目から見ればかなり恥かしい。 「死ぬかと思いましたぁ‥‥」 自分の首と頭をぺたぺたと触りながら、無事を確認する。運がいいのか悪いのか、それは微妙な線だ。 「取りあえず、罠はこれだけっぽいか‥‥さてと」 その隙にあたりの罠を確認したルーシアが宝箱に手を掛ける。 ギギギという音を発しながら開かれると‥‥ 「はずれ?」 空箱であった。よくよく見ると一度鍵穴が弄られた形跡があるのに気が付く。 どうやら先にきていた旅人にやられたようだ。 「どうやら、はずれだな」 多少がっかりとしたロックも宝箱を覗きながら呟く。 「まだ、奥があるかもしれんが‥‥取りあえずこの小銭を埋めにいくか」 オーラスがじゃらじゃらと袋に入れた小銭を見せながら提案し、引き返すことにする。案外邪魔くさいようだ。 取りあえず部屋の確保をしつつ桐崎、オーラスが一度外に出ると、小銭を埋める。 気が付く目ざといのがいないかぎりはばれないだろうと、整地し、最初の部屋へと戻る。 部屋に戻ると、さらに奥へ通路が顔を出す。一同はそれを見ると、さらにさらにと歩みを進めていく。相変わらずの通路を進み、曲がり角を進み、次なる部屋へとたどり着く。 ここも同じように先ほどのゲル状の塊がうろついていた。 「稼ぎ場発見ッ!」 ルーシアが眼を輝かせながら叫ぶと皆が臨戦態勢になる。 次はロウザが前に出て、回転斬りを放つ。 コマの様に回転し何度も何度も分裂するが、先ほどと同じように一定数になるとそのまま砕け散っていく。 「め まわった! ふらふら!」 あっさりと回転に飲まれたのか、それ程苦戦せずに小銭が溜まる。 案外、というわけではないが、落ち着いて対処をすれば一階層目は難なく進めた、はずだったのだが。 問題は往復するという点であった。 一度に出てくる小銭の量を考えると、一度、二度戦闘すると、結構な量になってしまう。 そのたびに入り口まで戻り、また奥に行く‥‥勿論、アヤカシが部屋にずっといるのばかりではなく、通路にも現れた。 「ちょっと、予想外だったかも」 桐崎がアヤカシを蹴り倒しながら、ははは、と言い頭を掻く。 とは言え、消耗しながらも奥へと進んでいくと、階段を見つける。 「二階層目、ですかね?」 ロックが階段を眺めながら洞窟の様子を書き記す。 「結構消耗してますし、小銭でも稼ぎますか」 ペケが先ほど倒したアヤカシから小銭を拾いながら提案する。 確かに数は多いが強くない、しかし何度もぶつかれば消耗するといえば消耗する。 「宝箱も一階層目は小銭ばかりでしたしね」 此方は此方でペケがあけてくれた宝箱の中身を物色しているユーフォリア。 前に出る為か攻撃を貰い、そのつど包帯を巻いていた為に、半ミイラ女になっている。 「ここらで、引き上げよう、それが最善だと」 オーラスが休憩をやめると、地図受け取り広げる。 一同は地図を眺め、最短ルートを選択し、引き返すことにした。 ●外に出れば 各々、ボロボロになりながらもやっとと言う感じに外に出てくる。 何とか次の階段は見つけたものの、往復をするという選択肢のせいで、往復をしたところの罠の解除率は高かったが全体的には踏破率は芳しくなかった。 「ほっほ、どうでしたかな?」 村長が開拓者一同を出迎える。どうやらのんびりと此処で待っていたようだ。 「結構でかい、予想外すぎるよ」 朱麓がため息を付きながら、地面にへたりこむ。 皆も皆、疲れた様子で地面に座ると、水を飲んだり、大の字になって寝転がる。 どれくらいいたのだろうか、空を見上げれば、もう夕陽になっている。 そんな中、オーラスが村長に言う。 「次にここの調査をするのはいつだ?今後もあそこは人を出したほうがいいぞ‥‥だが俺はお宅の依頼を待っているわけにもいかん」 「‥‥別に無理に来いとワシは言っとらん。それに張り出せば他の開拓者が来る‥‥違うかのう?」 村長はかなり不機嫌な様子で答える。 あまりにも失礼な態度であったのか、それだけ言うとその場を村長は去っていく。 「それでは、お宝をごかいちょうといきましょう!」 ユーフォリアがてとてとと埋めた場所に行き、覗いてみると‥‥。 どうみても桐崎、ロウザ、ロックが声を揃えて「減った」と言う。 「おぉ、そこのお宝ですが、どこぞの女性が掘り返していましたな」 のんびりとした、口調で村長がその後ろで呟く。 どうして止めないのか、と聞くと「自己責任ですよ」と笑っている。 「ま、それほど減ってないから、次に期待しようかね」 減っているとはいえ、それなりに山になった小銭やお宝を眺めた一同は二階層目への想いを強くするのであった。 |