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■オープニング本文 ●とある鉱山にて ここ、不思議洞穴一、二、三からほど遠くない所の鉄鉱山。 規模はそれなりに、掘れる良質な鉄を加工し刀やら鍋やら針やらと鉄関係の物はなんでもござれ。 良質な鉄が取れるとそれなりに有名なこの所。いつものように鉱夫がつるはしと明りを持ってひたすら鉄を掘りまくる。それはもう、怒涛の勢いで。カツン!カツン!と独特な音を発しながらどんどんと掘り進んでいく。本当に手で掘り進んでるのかと疑問に思うほどだ。 「ほいせ、よいせ‥‥!」 がんがんと山を削り、坑道を蟻の巣のように掘り進めていく。 これも天儀の為、村の為、額に汗を流しながら鉄鉱石を掘り労働に勤しむ。 あぁ‥‥なんという勤労生活、力仕事の後の風呂と飯は格別だ。とか言いながらとかどうとうとか。 いつものように何事もなく、良質な鉄鉱石を求めてつるはしを振るっていると‥‥。 唐突に「ボゴッ」と空洞に穴をあけたような音と共に壁が崩れ、ぽっかりと穴ができる。 たまにこういう空洞部分にぶつかることはさして珍しい事ではないのだが。 今回に限っては特に珍しい事だった。 やけに深く、奥から嫌な気配をひしひしと感じる。 そして唐突に聞こえてくる何かの鳴き声。 しばしその穴を覗いてから、何かを感じて声を上げる。 「退避ー!退避だー!」 すぐさま声が届き警報用の鐘が鳴り響く。 平和な鉱山に起きたこの事件、すぐさま開拓者ギルドに連絡が飛んでいく。 ●開拓者ギルドにて いつものように受付の机に足を乗せて煙管を吹かしながらぼうっとしている夢がいる。五月も終わり、しっとりとじめじめしているせいでか微妙に元気がなさげだ。そんな夢の机に深夜真世が珈琲を一つことんと置いてにこにこ。とりあえずそれを一啜りしてから。 「‥‥苦い‥‥もっと甘いのがいい‥‥」 「はう、入れなおしてきます〜」 律儀に全部飲み干して一息ついてから文句を言う、それに素直に従うまよまよ。微妙に可愛いなぁと、呟いて奥に行く真世を眺めている。 そんな中、少し慌てて一人の鉱夫がやってくる。 「ここ、開拓者ギルドであっているよな!」 「んむー‥‥ご用件はなんでしょうか」 一応机から脚を下して話を聞き始める。 「あぁ、えっと、そうだ!向こうの鉄鉱山でいつものように鉄鉱石を掘っていたんだが、そのなんていうか、穴が開いたんだよ!」 「空洞ができるのは珍しくもないと思うのだがなぁ‥‥」 「いや、そうじゃなくて、何かの洞窟を掘り当てたっぽいんだよ!」 それを聞くと同時にがたっと椅子を掛けなおしてかなり本気の目つきになって話を聞き始める。 「それで、どういうものかね?」 「中には行ってないが、まだ逃げ遅れた人がいるんだ‥‥とにかく急いで開拓者を集めてほしいんだよ!」 「‥‥よし、いいだろう、ついでにその洞窟も調査せてもらうがいいかね?」 「穴塞いで救助してくれりゃ問題ねえぜ?」 そういうことで依頼成立。 すらすらと依頼書を書いている所に、牛乳や砂糖を入れた珈琲を持ってきた真世が覗き込み。 「いいなぁ、洞窟‥‥私も行ってみたいですっ」 お盆を振りながら夢の肩を持ってゆさゆさ。 駄々っ子状態でゆさられているが今は洞窟の事で頭がいっぱいなので無反応。 依頼書を書き終えて墨を乾燥させている間に甘い珈琲を啜る。 「‥‥甘い‥‥もっと苦いのにしなさい」 「はう!入れなおしてきます〜!」 きっちりと全部飲み干してるのは言うまでもない。ぱたぱたと揺さぶるのをやめるとまた珈琲を入れに行く。その後ろ姿を見て「やっぱり面白いわね、あの子」と呟いてにやついていたとかどうとか |
■参加者一覧
天津疾也(ia0019)
20歳・男・志
柊沢 霞澄(ia0067)
17歳・女・巫
雲母(ia6295)
20歳・女・陰
朱麓(ia8390)
23歳・女・泰
ルエラ・ファールバルト(ia9645)
20歳・女・志
オラース・カノーヴァ(ib0141)
29歳・男・魔
フレイア(ib0257)
28歳・女・魔
ジークリンデ(ib0258)
20歳・女・魔 |
■リプレイ本文 ●四つ目の洞窟 都からそれほど遠くもなく、第一、第二、第三とある一定距離を保ったところにある鉄鉱山、開拓者八人揃って洞窟攻略もとい救助の準備をしていく。 「鉱山掘ってたら謎の洞窟につながる穴が開いたって話かいな、なにやらお宝の匂いが漂ってきそうやなぁ‥‥と、よだれが」 天津疾也(ia0019)がそんな事をいいながら涎を拭いて、準備を進めている。とはいえ、残念ながら「鉄」鉱山な上に今までの洞窟から考えると実りがいいとはお世辞にも言えないのだが。夢を持つことは悪い事ではない。 「坑道に開いた穴からアヤカシ‥‥奥も気になりますがまずは救助が先です‥‥迅速に油断せずに対応しましょう‥‥」 日陰で涼みながら柊沢 霞澄(ia0067)がそう言っている。とにかくまずは目の前の問題を解決することには進展も何もしない。どちらかというと坑道の埃っぽい所に長時間潜る方が逆に不安になりそうだが。 「んー‥‥また新しい洞窟か、いい、とてもいい。こういう所は好きだしな」 雲母(ia6295)が煙管を吹かしながら口端を上げながら楽しそうにしている。最近何かと強くなりすぎて退屈になっているらしい。そんなわけでどこか楽しそうに装填をしている。その様子は逆に怖い。 「さってと、四つ目かね‥‥今回から喫煙は禁止っと‥‥今のあたしにとっちゃこれが声明を分けるといっても過言じゃないしねぇ」 朱麓(ia8390)が大切そうに煙管を懐に仕舞ってぽんぽんと確かめる。と同時にいつものようにいつもの人物の為に彫刻刀を持ってきているのを確認しておく。なんだかんだで今まですべての洞窟を練り歩いてきた洞窟馬鹿二人目ではない。 「まずは救助者を優先しなければいけませんね」 ルエラ・ファールバルト(ia9645)が盾を用意して壁役の準備を始める。後ろに楽しそうに装填している雲母がいるので攻撃力的には十分すぎるので今回は防衛に回るとのこと。 「さっさと救助するか」 オラース・カノーヴァ(ib0141) 「さて、これで四つ目‥‥遺跡というよりはアヤカシの住処の洞窟といった感じですわね‥‥と、それはさておきまずは救助ですわ」 何だかんだで朱麓並みに洞窟関与しているフレイア(ib0257)、彼女は一つ目だけ言ってはいないもののそれ以降はすべて踏破している数少ない猛者だ。今回は事前に夢から坑道の地図を貰っておき事前にどの辺に穴が開いているか、ついでに救助者がいそうな所へと印をつけておく。相変わらずのマッピング技術。 「外界から隔てられた地下に洞窟を展開しているアヤカシとは不思議ですね」 ジークリンデ(ib0258)がそんな事を言いながら考察し始める。何度か前には宝珠が転がっていたり、アヤカシごとだったりと何かしらの要因はありそうだが、それはさておいて、まずは救助を優先だ。 そんなこんなでまずは救助にへと進んでいく開拓者たち。 ●救助と殲滅と 全員がまとめて穴に向かって進んでいく、その後三班に分かれて行動し、救助者と壁の一時的な封鎖に奔走することになる。 まずは天津とジークリンデ、異色な組み合わせだが二人が坑道の中へと進んで救助者を探し始める。とりあえず少人数の利を生かして外周回りで進んでいく。道中何度か心眼「集」を使いながらもどんどんと。 「なんぞ、大したものはあらへんな」 光に照らされて光っている壁の石をごつごつ取り出してみるも、ただの鉄鉱石。少し前の洞窟のように砂金が散らばったりはまったくもってしていない。なので少々不満気味。 「まぁ、そういわずに」 マシャエライトの火球をふよふよと漂わせながら苦笑いを浮かべてそんな事を言っている。まだまだ敵にも遭遇せずに、それなりと言ったところだろうか。 もらった地図を眺めながら声を上げつつ救助者を探していく。声が反響するとともにアヤカシの唸り声もまた聞こえてくる。もちろんのことだが、地図上では通路があっても何かと崩れている場合がある。その旨を地図に罰印を書いて、さらに奥へと。しばらく歩いて、少し開けた所で 「お客様のようで」 背中合わせで向かってくる小型のアヤカシを迎撃し始める。天津が殲刀「秋水清光」を抜き放ちまず一発雷鳴剣を‥‥放てない。 「あー‥‥使いすぎたわ‥‥」 全快もしてない状態で心眼を何度も使っていれば当たり前なのだが。とりあえず目の前にやってきたのを一撃。技能に頼らずとも腕は確かだ、あっさりと仕留めて瘴気と化していく。 「お金ばかりに目が行きすぎですよ」 近づいてきたアヤカシをまとめてブリザーストームで吹き飛ばす、と共に松明の光があっという間に消えていく。閉鎖空間で放てば影響が出るのもしょうがないが、一気に視界は狭まっていく。とにかくアヤカシを蹴散らしながら横の道へと入っていきしばらくしてからがれきの向こう側で人の声が聞こえる。 「おい、人がいるのか?早く助けてくれ、瓦礫に足が取られて動けないんだ」 どうやら救助者の一人のようだ。ジークリンデが分かりましたと一言、ララド=メ・デリタで瓦礫を消滅させて、一人目を救助したところで地上に向かっていく。 こちらは柊沢と朱麓にフレイア、壁を埋めるのを優先していく組み合わせだ。 「さて、と‥‥とりあえずはこれで数は増えませんわ」 パンパンと手を払いながらアイアンウォールの多重構造で穴を塞ぎ終る。とはいえ、一日しか持たないので本当に応急処置なのだが、それは仕方がない。 「逃げてきた人から‥‥話を聞いてみましたが‥‥」 正直なところ、情報的にはかなり古い物なのでそれがあっているかどうかはわからない。というか確実に移動しているだろう。とりあえず別れる前に全員にかご結界をかけておいたのである程度は大丈夫だろうといっている。 「ふーむー‥‥一応一階は山を削ってだから自然と言えば自然だし、自然じゃないと言えば自然じゃない感じさね‥‥」 こつこつと壁を削って小瓶に入れておく。なんてことはない鉄鉱山だがこれも調査の一環と言いながら楽しそうに採取をしている。 「相変わらずですね‥‥まぁ、私もですが」 そんな事を言いながら地図に崩れた道の部分に罰印、溜息をつきながらもそのまま進行していく。 「んっ‥‥前方にアヤカシの反応です‥‥」 瘴索結界による探知で奇襲防止、ついでに早期発見と不意打ちは殆ど無い。 「しかし、浅い階層だけあって子物ばかりだねぇ」 「まぁ、そういわずに」 二方向からの同時攻撃、一方はさくっとアイアンウォールで進行を塞いだのちに。 「まぁ、お呼びじゃないけど来たくれたんだし、あたしの歌、聞いていけぇぇぇ!」 そういいながら夜の子守唄を歌い始める。流石に巫女と魔術師の二人には聞かないが低級にアヤカシには効果は抜群だ。あっさりと沈黙している所をさくさくと止めを刺していく。なんとも単純作業だ。 「ま、流石にこれぐらいじゃぬるいさねぇ」 ふふんと言いながら彫刻刀をしゅたっと仕舞う。 「あっ‥‥救助者の方です‥‥」 指さした方向、袋小路に少しぼろぼろになった炭鉱夫二人。すぐさま近寄り閃癒を施して治療を行う。 「他の方はどちらにいったかわかりませんか?」 「ばらばらに逃げたからわからんな、すまん」 いえいえと丁寧にお辞儀をしてから三人と二人も地上を目指して脱出を始める。 勿論その道中もアヤカシは何度かまとまってやってくる。基本は朱麓が彫刻刀で、その援護にフレイアが、という流れで進んでいく。多少の傷はすぐに癒してくれるので多少無理もできる点は強みだ。 「もうちょっと手ごたえがほしいと思うのは私も洞窟馬鹿だからかねぇ」 そんな事を言っていたとかどうとか。 そして最後に雲母とルエラとオラース。ルエラが前に出ようとするのだがその前に雲母が進んでアヤカシを片っ端から蹴散らしている。なのでルエラが松明を持って明りを確保しつつ、オラースが地図を見て、雲母が道を切り開く、そんな感じになっている。 「向こう側に少し大きめの反応が一つ‥‥救助者でしょうか」 心眼「集」を使いながら索敵と探索、言われた方向へとさらに進んでいく。 「しかし、流石に鉄鉱山だと大したものはないな、ついでに言えば一階だが厳密に言えば一階でもない‥‥少し退屈だな」 バンと大きな音と閃光が続けて放たれている。なかなか救助者のところへといけないようだ。どのあたりかというのがおおざっぱなので結果的に迂回路を探したり道を開拓しないといけない部分で中々手こずっている。 「しょうがないか」 溜息一つ付きながら聖なる矢を一発、雲母が撃ち漏らしたアヤカシに突き刺さり瘴気と化していく。 「と、ここですね」 ルエラがこつこつと壁をたたいた向こう側に反応があるという。壁を強めに叩いてみると向こう側から声と叩き返した音が。 「迂回路はなさそうだな‥‥少し離れていろ!」 聞こえるように大声を上げてから岩に向かって一撃、着弾と同時に炸裂して瓦礫が取り除かれ、土煙の中を救助者が一人出てくる。 「ごほっ、ごほっ!やけに、荒々しいな、おい!」 出てきたのは一人。少し衰弱はしているがまだまだ元気そうではある。とりあえずルエラが節分豆を与えて少しだけ回復をさせてから脱出路の話をしていく。 一応人数分の地図は受け取っていたので、一枚渡して今まで殲滅してきたところと塞がっている道を教えると、そのまますたこらと脱出を始めていく。 「さて、もう一人‥‥の前に敵ですか」 奇襲気味に攻撃してきたアヤカシへベイル「翼竜鱗」を防盾術を使い防ぐ、そして防いでいる所を素早く銃弾とホーリーアローが飛び交い、瘴気化される。 「やはり、もう少し手ごたえがあったほうが‥‥と、もう一人だ」 ちょうど瓦礫の所にいた救助者を見つけて状況を確認する。 「足がやられているな」 「私が背負っていきますので一度戻りましょう、他の方も救助されているかもしれません」 ルエラが二人目の救助者を背負いながら松明で辺りを照らし、先ほどと同じように雲母が戦闘に、中にルエラ、最後尾にオラースの形で地上を目指していく。 ●全て片付いて そんなわけで何とか救助し終えて、開拓者たちが地上へと戻ってくる。久しぶりの日の光が心地よい、一人は日差しにやられてふらふらとしているが。 「さて‥‥私は用事があるからな」 雲母はすぐに道具を整えると洞窟の中へ入っていく。どうやら一人で内部と殲滅をしに行くようだ。やることはやったので誰も止めないのは当たり前だ。‥‥しばらくしてやけに火薬が炸裂する音が響き渡るのは別の話だが。 「おー、お疲れさん」 休憩している開拓者の所へと夢がのんびりと歩いてやってくる。背負い袋を提げてかなりの準備をしている。何やら久しぶりに長期で潜る気でいるようだ。 「これ、どうぞ」 フレイアがいつものように地図を提出、宿題のようになっているがそこは気にしない。それを受け取り上から下までじっくりと眺めると煙管が揺れる。しっかり描いているのを評価しているようだ。 「衣装はメイド服と執事服。こんなところじゃ料理もできないし、憂さ晴らしで作っただけだけど」 朱麓がそんな事をいいながら夢に近づいていき、ぽんと二つ彫像を渡す。いつの間に作ったんだと言わざるを得ないしゅろっくま像。 「それはギルドの私の机に置いておきなさい、今渡されても困るわぁ」 嬉しそうにそんなことをいってからさっさと洞窟の方へと歩いていく。そんな夢の後ろ姿を見つめて開拓者一同溜息一つ。 ‥‥その後の惨事については知らず、のんびりとその日が終わるのだった。 |