夢の為の夢
マスター名:如月 春
シナリオ形態: ショート
EX :相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/07/13 07:56



■オープニング本文

●ギルドにて
「で、なんか目新しい物でも拾ってきたん?」

 煙管を吹かしながら天井を見ながらついでに机に脚を乗せたままぼうっとしている夢。
 目の前にいるのはいつも贔屓している商人。‥‥の割にはやけに胡散臭い。
 実際の所、夢の昔の馴染み。主に洞窟関係で。

「ちょっとした遺跡が北の方にありましてね、面白い物を見つけましたよ」

 足を下して肘をつきながら「いいわねぇ、あんたは自由で」とか言いながら出されたものを眺めてみる。
 なんてことはない宝珠が二つ。ころんと机に転がる。

「何よ、面白くないわね、これ‥‥屑宝珠じゃないの?」

「ギルド嬢をしていて勘が鈍りましたかね?面白い特性があったから持ってきたに決まってるじゃないですか」

 そういって宝珠を置いて上から軽く叩いてみる。そうすると押した方向の前方へところころと転がっていく。
 
「ふむ?衝撃を力に変えてるといった感じかね‥‥力の加減が関係して‥‥」

「面白いでしょう?まぁ、武器とか道具に使う分には無意味なのですがね」

 と、言いながら何個か同じような宝珠をじゃらっと取り出す。
 
「ま、魚でいう所の雑魚なのが問題なのが‥‥」

 それなりの数があるらしい、まぁ、使いどころが難しすぎるといったところか。
 夢も一つ持ち上げて合掌するように手で挟んで力を入れてみる、そうすると天井に向かって軽く飛び上がる。
 
「まぁ、珍しい物なんで持ってきただけなんですけどね」

「んー‥‥これ、貰っても大丈夫か?」

「まぁ、構いませんよ、こういう宝珠もあるってことで」

 そういうと数個の宝珠を袋に詰めてから夢に渡す。
 何か思いついたのだろうか 楽しそうにそれを仕舞っておく。

●数日して
 受付の半分ほどを何やらいろいろと積み重なっている所に夢が居眠りしている。
 ‥‥ちなみに彼女の家はどこか不明だ、ギルドの屋根裏とか受付の机の辺りが家らしいが。

「‥‥相変わらずですな、姉さんは」

 苦笑いしながらこの間来た商人がその受付の物を眺めて一息。
 何かし始めたら相変わらず没頭するんだな、と。

「あぁ、うん‥‥この間の屑宝珠でちょっとね」

 ふぁっとあくびをしてからごそごそと何かを取り出して机に置いてみる。
 この間の宝珠を足袋に括り付けただけっぽいものだが、中々しっかり固定されている。

「こいつの特性、片方から力を加えても何にもならないんだけど、両側から挟むように力を加えると挟んだ上側に飛んでいくのよ」

 そういいながら足袋を上から押してみると足袋ごと前に進んでいく。

「ただあまり過度に力をいれると宝珠が割れるって問題点があったわね‥‥で、そういうのを試すうちに残ったのがこれで、そこに山積みにしてるのが試作品と割れた宝珠」

 山積みになった足袋やら宝珠、よくよくみれば使えないぐらいにぼろぼろになっている。

「面白いわよー、滑るように動けるのよ、こいつ」

 煙管を揺らして宝珠付きの足袋を履いて静かに立ち上がる。

「で、これをこうする」

 歩くように一度足を上げて下す。と、同時に前方へとそれなりの速度で進んでいく。

「流石に攻撃したりとかしたら割れて終わりだけどね‥‥そういうわけで片づけよろしくね」

 そういいながら扉を開けて飛び出ていく。
 取り残された商人がぽかーんと口をあけてそれを眺めている所に。

「あぁ、また仕事さぼって遊びにいってぇ!」

 上司がそれを見ていたのかむすっとしながら依頼書を取り出してべたんと掲示板に。
 何やら懐かしいその字面には「ギルド嬢の捕獲」とかかれている。


■参加者一覧
梢・飛鈴(ia0034
21歳・女・泰
葛城 深墨(ia0422
21歳・男・陰
雲母(ia6295
20歳・女・陰
鶯実(ia6377
17歳・男・シ
瀧鷲 漸(ia8176
25歳・女・サ
村雨 紫狼(ia9073
27歳・男・サ
ジークリンデ(ib0258
20歳・女・魔
叢雲 怜(ib5488
10歳・男・砲


■リプレイ本文

●夢さがし
 開拓者八人、開拓者ギルドにある山積みにされていた足袋やら宝珠を片づけている上司に話を聞き始める。
「とりあえず、この辺の地図を借りておきますかね」
 そんな事を言いながら地図を受け取る葛城 深墨(ia0422)、それをぱっと開いて軽く落胆。どうみても都全体の地図、行動範囲広すぎじゃないかと呟いたとかどうとか。
「夢の行動範囲、あとは過去の事例から夢のいそうな場所はわかるか?」
「一日あるのを考えれば‥‥天儀全部ですかね」
 面倒くさいこの上ないなと瀧鷲 漸(ia8176)がそれを聞いて溜息一つ。なんでそんなに行動範囲が広いんだと。
「なんとも、難しい依頼ですね」
 同じようにジークリンデ(ib0258)が夢の行動範囲を聞きながら溜息、正直一般人には理解できない程の行動範囲かつ自由人なのは周知の事実、受付にいない夢の行動範囲はよくわからない。
「はて‥‥ちょっと昔に似たような事があったような無かったような、どうも既視感を感じるゼ」
 顎に手を置いて梢・飛鈴(ia0034)が唸りながら記憶をさかのぼり始める。あまりにも昔のせいで思い出せないのだが、どうにも手が出なかったようなそんな気がする。とりあえず放っておいても帰ってこない可能性が高いので暇つぶしがてら相手することにする。
「相変わらず楽しい事をしているじゃないか、私の物にしたいが‥‥ま、玩具みたいなものだろう」
 煙管を吹かしながら雲母(ia6295)が楽しそうに弓と矢を準備している。彼女にとっては足袋も玩具、なおかつ強い相手なのでいつもよりもかなり上機嫌だ。
「かわいらしい女性を追いかけるのは嫌いではないのですがねぇ、出来ればもう少し雰囲気のある場所がよかったですが」
 此方も煙管を吹かしている鶯実(ia6377)がそんな事を言っている。が、現実はそうまで甘くない。今回の相手は浪漫の「ろ」の字もない現実主義者だが。
「どさくさに紛れて夢たんや他の女の子のやわらかい部分とかを‥‥うひゃひゃ」
 一人だけそんな感じに村雨 紫狼(ia9073)が言っている。とはいえ残念ながら夢に手を出せばぼろくそに言い返されて、開拓者達に手を出せば原型がなくなるほどにやれるのは目に見えている。
「おー、夢と鬼ごっこ〜♪あの足袋俺も使ってみたいのだ」
 ぶち壊れた宝珠やら足袋を「おー?」と言いながら弄って遊んでいる叢雲 怜(ib5488)、いいなぁといいながら割れた宝珠を組み合わせてみたりする。流石に壊れているので反応が鈍いが。
ともかく開拓者たち、自由な夢を捕まえるために早速と言わんばかりに都へと繰り出していく。

●遊び半分本気半分
 夢を探して開拓者が都へと繰り出していく、とにかく自由な夢。とりあえず都からは出ていないという情報を手に入れただけでも十分な収穫だ。ひとまず待ち伏せ班と追いかける班にとりあえず別れて襲撃の地点を決めてから追いかける班が都を探し回り始めるのだが。
「奴のことだからその辺でも飛び回っているじゃなかろーカ?」
 適当に指さしてみると家屋の屋根を走り回っている人物が一人。束ねている髪の毛を下しているのかやけに長髪で腰に刀、両脇の辺りに短刀が二本、ついでに宝珠付きの足袋を履いているのが一人。
「本当に飛び回っていますね、あの方‥‥で、あっていますか?」
「そりゃそーだろーナ」
「うひょぉ、髪の毛下している姿もいい!」
 一人目的間違えているだろ、とか突っ込まれそうだが二人は完全に無視している。とにかく追い回して待ち伏せの地点まで追い込むことにしていく。
「じゃァ、さっさと捕まえるかネ」
 屋根に飛び乗ってから夢の方へと走り始める。それに続いて鶯実も屋根を走り始める。一人残された村雨は必死に地上を走る。少しだけ走ってある程度追いついたところで夢が気が付いて後ろに滑りながらこちらを向いてくる。
「んー‥‥上司が私の捕獲依頼でも出したかしらねぇ」
 煙管を吹かしながら横目でちらちらと後ろを見つつ殆ど併走する形で話していく。
「おもちゃで遊ぶのは子供アルぜー?無駄なていこーはやめて縄につけーイ」
 とりあえず投げ縄一つ投げてみる。流石に真正面からじゃそう、やすやすとはつかまってくれないようだ。
「しかし、結構な美女ですねぇ」
 梢の反対側へ回り込もうとしながらそんな事を言っている。夢自身はすでにその辺の間隔は無いのではいはいと言いながら聞き流しているが。
「なんだよ!俺にもみせろYO!」
 下の方で必死に追いついているのが屋根をよじ登り始める。なんとも危なっかしいが。
「んー‥‥私を捕まえる割に少ないわねぇ‥‥」
 煙管を吹かしながら後ろ向きに飛ぶと次の屋根に着地、かなり使い慣れているようになっている。
「あぁ、待ち伏せがいるのね、いいわよぉ、丁度耐久の試験もしてみたかったし‥‥あっち?」
 指をさして待ち伏せの地点をさしてみる。うんうんと梢が普通に頷いている。
「大ざっぱですねぇ‥‥」
 そんな事を言いながら追いかけているのだが、後ろでは。
「やべええ、超美人じゃーん!」
 と、無駄に調子が上がっている。
「さてと、そろそろやることもなくなったし、付き合ってもらおうかしらね」
 待ち伏せの地点へと煙管を吹かしてにんまり笑いながら走り始める。
 
 
「どうやら来たようですね」
 人魂を使って周囲を探索していたため、接近してきた夢を探知。重い腰を上げて伸びをしながら準備し始める。
「相変わらずだな、あいつも‥‥あぁ、楽しそうだ」
 矢を器用にくるくると回しながら雲母が煙管を仕舞っている。どうやら今回は本気で狙いに行くつもりの様だ。
「さて、こっちも準備をしないとな」
 斧槍「ヴィルヘルム」の刃の部分を隠して殺傷能力をなくしておく。流石に思い切りぶった切るのは問題だろうといいながら。まぁ、そのでかい物で殴られてもそれなりに痛いんじゃないかと言ったのは秘密。
「屋根の上じゃ抜け道も関係ないですわね‥‥」
 地上にいるのを想定していたせいか殆ど無用になってしまったアイアンウォール。とはいえ詠唱時間がかかるので今の移動速度だと殆ど意味はないのだが。
「いいないいな、あの足袋いいな」
 わくわくと遠目に夢を眺めながらじーっと足袋を見つめる。本当に欲しいのか人差し指を口元にあてていいなーと呟き続ける。
 
 そんなわけで夢が待ち伏せの地点についてから一斉に開拓者が飛び出ていく。
「そーいうわけダ、観念するんだナ」
 片手で縄の両端に鞠のついた特製の微塵(ボーラ)を加速させて投擲。夢の足元をすくうように飛んでいき、直撃した、と思いきや腰の刀の鞘に当ててそれを防いでいる。なんとも器用な事をするネ、と言いながら二発目を準備。
「うーん、追いかけるのは楽しいんですが、ばればれだとどうなんでしょうね」
 とにかく夢の進路上を塞ぎながらもなんとか併走して攻撃回数を増やすことに努めている。
「依頼だしな、観念してもらわないと!」
 バサッと夢の目の前の視界を防ぐようにマントを広げてから奥歯をかみしめて、微塵を避けた夢に対して一撃、ジルべリア系の武器は斬るよりも叩き潰す武器なのでいくら布で覆ったところで破壊力は劣らないのだが、そんな事を言っていられる相手でもないので。
結構本気だ。マントごとたたっきるが、手ごたえがないのに違和感を覚え、すぐさま振り切った所を見上げる。
「まだまだ荒削りねぇ」
 くすくすと笑いながら頭上を飛び越えて後ろに着地、そこをすかさず。
「まったく、あれで本当にギルド嬢かよ、並みの開拓者以上じゃねぇか‥‥!」
 符構えて、狙いをつけてから呪縛符を放つ。10センチ程の妖精のようなものが夢に飛んでいき。
「おっと、流石に術は卑怯じゃないの」
 わざと手にぶつけて機動力を落とさずにそのまま走り始める。どっちが卑怯なんだとか言い返しとかどうとか。確かに卑怯ではある。
「夢様、新しい洞窟の情報や宝珠の情報がノミ市に出ることを知ってまして?」
「あぁ、その辺はすでに確認済み、読みが浅いわねぇ‥‥私が確認してないとでも?」
 アムルリープの詠唱開始と同時に夢が早駆での加速。一気に射程外に抜けて回避しつつ。
「んむ、その足袋使わせてほしいのだ!」
 加速して離れた所の先から飛び出るように銃口を向けて狙いをつける。自身に十字の照準が浮かび、夢の足元へ一撃。錬力と火力によって圧縮された空気で形成された弾丸が高速で飛来し、足元へと一撃。不意を付かれたのか均等を崩して、速度が落ちる。
「仕事だからな、それに貴様だと油断もできんのでね」
 一度鈍く紅い目が光ると同時にさらに足元へと瞬速の矢が放たれる。空撃砲と瞬速の矢によって均等を完全に崩して、倒れこむところに屋根の境目。
「うぉ‥‥っとぉ!」
 くるっと一回転して着地、周りが聞こえる位に「ピシ」っと嫌な音が響く。流石に酷使してきたせいか耐久的な問題が発生し始めたようだ。
 そしてそこにやっと追いついてきた村雨が、華麗に服を脱ぎ去り、褌一丁で顔にマスカレードを装着して叫びあげる。
「夢たーん!俺のおいなりさんにうぇるかーむぅぅ!」
 と、見せつけるように腰を付きだして叫びあげる、それを夢が軽く見てから一言。
「‥‥小さいわね」
 しかも鼻で笑ってからそのまま向こう側に走り去っていく。ここで男の尊厳すべてを粉みじんに吹っ飛ばされてがっくりと膝をついて涙を流す。何一つ恥じらいもない上にえぐるような一言。ついでに膝ついている後ろではお奉行様がにっこりと笑っている。

「しかし、いい加減に、やられろト」
 微塵を投げつけ、足元を狙いながら過負荷を与え始める。先ほど見た通りあっさりとよけるのは目に見えているので宝珠を壊すことに切り替える。
「あっぶな!もう、本気出しすぎじゃ、ないの!」
「そういう依頼だからな、観念してもらおうかね」
 早駆で屋根から一気に飛び上がり上からの撃ちおろし状態で足元を狙う。音もしないほどの速度で地面に突き刺さ、らずに軽くはね宝珠へと衝撃での損傷が入る。
「もったいないけど、これも仕事なのだ」
 もう一度同じように狙いを付けてから空撃砲での一撃、宝珠に一撃を与えるとおともにばりんと割れる音が響き、動かなくなる夢。
「‥‥こーさん」
 手をあげて一息。十分に遊んだようなのか足袋を脱いではぁっと溜息。とりあえず開拓者が包囲して、さらにアムルリープで眠らせた上に簀巻きの状態で開拓者ギルドに連行されていく。

●結局
「それにしてもギルド嬢って、自由というか強い人が多いというか‥‥」
 受付の隅に簀巻き状態にされて寝ている夢を眺めて溜息一つ。やることがぶっ飛びすぎるわ、強すぎるわ、でなんとも扱いづらいなと苦笑い。
「しかし、壊れたのはいただけんなぁ」
 持ってきた足袋と宝珠をごろんとおいて溜息一つ。
「まぁ、無事に夢君を捕まえられたのは良かったと思いますがね」
 煙管で一服しつつ、まったりと簀巻きになった夢を眺めて。
「とは言え、流石に壊さなくても良かった気がするが」
 ヴィルヘルムの布を外してそのまま刃を拭きながら宝珠をひとつつき。まだ一応力の変換は残っているのかころっと少し動く。
「うー‥‥遊びたかったのだ」」
 唇を尖らせて足袋を眺める。流石に止めが自分なだけあってしょんぼりしている。
 まぁ、とにかく依頼されていた夢の捕獲は成功しているので良しとの事。
 下手にこの足袋が残っていればまた脱走するかもしれないから上出来だと。

ちなみにつかまった村雨。
「それで名前は?」
「あ、はい‥‥村雨紫狼です‥‥」
 褌一丁で仮面をつけっぱなしで何とも恥ずかしい。
「で、歳は?27歳‥‥あのね、いくら開拓者だからって常識に欠けたことするのはやめてほしいんだよね、わかるよね?もういい歳してるんだから‥‥」
 ‥‥そんな事で少し本気で説教されていたとかどうとか