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■オープニング本文 ●ギルドにて いつものようにおやかた様が夢と一緒にお茶をすすりながら話を進めている。 「今日は何の用かしら?」 とりあえず撫で撫で、ほんわかしているおやかた様がぽやーっと話す。 「おぉー‥‥相変わらずうまいのう‥‥ん、また開拓者の腕試しをしようとおもってのう」 「ふーん‥‥次はどうするの?本気?手加減?」 それを言われて少し考え始める。顎に手を当ててどうしようかなぁ、と。 とりあえずこの間のように傷がついた鈴をころんとおいて。 「これを使うのは決定してるんだが、どうするかのう‥‥」 「相手に選ばせてあげれば?」 「ぽん」と手を叩いてからそれがいいのうとご満悦にしている。 「そういうわけで、私がどこまでやるか開拓者に選んでもらおうかのう」 「いいのか?」 「この間、みっちりおばさんに玖流滝の修行させられたからのう‥‥」 俯いて震え始めるおやかた様、どうやらかなりしごかれたのか怪しく笑い始める。 ちょっと怖いので夢も引き気味。「うふふふふ‥‥」とずっと笑い続けるおやかた様。 「おーい、大丈夫か、ちんちくりんー」 ぺっちぺっちと頭をたたいてやると正気に戻る。 「おっと‥‥そういうわけだから依頼書のほう出来るかねー?」 「まっかせなさーい」 筆を取るとさらさらと依頼書にいつもの感じに書き始めていく。 あっという間に一枚書き上げて掲示板の方にぺたりとくっつける。 おやかた様に挑戦する開拓者募集、と。 「またざっくりとした説明じゃのう‥‥」 「いいじゃない、ほんとなんだし」 煙管をぷかっと吹かしてからまた撫でなおす。 足をぱたぱたさせながら撫でられているおやかた様。 おやかた様となるかお館様となるかは開拓者次第。 |
■参加者一覧
風間・総一郎(ia0031)
25歳・男・志
鞍馬 雪斗(ia5470)
21歳・男・巫
村雨 紫狼(ia9073)
27歳・男・サ
利穏(ia9760)
14歳・男・陰
八重坂 なつめ(ib3895)
18歳・女・サ
白銀狐(ib4196)
14歳・女・シ
ミル・エクレール(ib6630)
13歳・女・砂
サラファ・トゥール(ib6650)
17歳・女・ジ
羽紫 稚空(ib6914)
18歳・男・志
羽紫 アラタ(ib7297)
17歳・男・陰 |
■リプレイ本文 ●お屋敷にて 開拓者十人、おやかた様の屋敷の縁側にて横並びになっている。そして集めた張本人であるおやかた様は暑さにやられているのか縁側でくってりとしている。 「このお嬢とまた手合わせか、前回は鳩尾に一発貰ったからな」 煙管を吹かしながら、目の前にいるおやかた様を見つめて風間・総一郎(ia0031)がぽつりとつぶやく。案外根に持っているようだ。 「力試しというか、なんというか‥‥底や天井が分からない相手とするのは初めてだな‥‥」 タロットをかき混ぜながら鞍馬 雪斗(ia5470)がぐったりしているおやかた様を見つめてじっくりと準備を始める。 「俺的にはガチ対決しなくてもさー、俺と海にいこうぜおやかたたーん!」 そんな事を言っている村雨 紫狼(ia9073)、後ろに控えている爺がかなりの眼光で睨みつける。正直おたかた様は完全無視しているが。 「かの名士と、手合わせの機会を賜り恐縮に思います。どうか宜しくお願い致します」 おやかた様に近づいてぺこりと一礼しているのは利穏(ia9760)、先ほどからかわいらしい女の子にしか見えないのに、と小さくつぶやいている。誰でもみればそう見える。 「おやかた様はまた一段と強くなられたんですね」 にっこりと笑顔を浮かべながらおやかた様に近づいていく八重坂 なつめ(ib3895)。もうだいぶ慣れたのか楽しそうに撫で撫でと。 「おやかた様―、今日は完熟桃なのですよ」 ぐったりしているおやかた様に抱き着くと尻尾がぺたんぺたんと嬉しそうに振り始める白銀狐(ib4196)。あーんと完熟桃をおやかた様の口に運ぶとはもはもと食べ始める。そんなおやかた様を眺めて微笑み、ぺたぺたと尻尾が振られる。 「さてと、開拓者になってからどこまで腕が上がったか、腕試し、だね」 ぐっぐと膝を曲げて屈伸しつつミル・エクレール(ib6630)が準備運動をしながらおやかた様へと挨拶。ぱたぱたと手首を振って、あいさつを返すおやかた様。 「おやかた様は相変わらずですね」 小さく微笑みながらサラファ・トゥール(ib6650)がおやかた様を撫でる。お土産の陰殻西瓜は爺に渡して手合わせ後に食べるために冷やしてもらっている。 「さて、今回は修業としての参加だからな!しっかり動いて鍛えねーとな!」 「やってみないとわからないけどな」 羽紫 稚空(ib6914)と羽紫 アラタ(ib7297)がそんな事を言っている。兄弟だろうが双子だろうが本気のおやかた様にどれだけ太刀打ち出来るかはさっぱりだが。 そんな風に各々やりたいことやら言いたいことを言い終えるとのそのそとおやかた様が起き上がる。どうにも暑くてやる気のない感じ、というか完全に暑さにやられているのだが。ともかく重い足取りで屋敷の裏へと。 「んーむぅ‥‥暑いのは苦手じゃ‥‥」 「まぁまぁ‥‥」 爺がぱたぱたと団扇で仰ぎながらついていく。 ●お館様 開拓者十人とおやかた様、それに爺が屋敷の裏側、いつも使っている平原へとやってくる。流石に刃のついた刀やら剣は危ないということで爺が模造刀やらを用意している。今回は人数も多いので念のためとの事。 「ふむ‥‥世界の正位置‥‥最高の札だが‥‥どうなるか楽しみだ」 かき混ぜていたタロットを一枚引いて、ぺらりとめくる。結果に気分をよくしながら戦闘準備を進めていく。 「さって‥‥今日は本気で、だったのう」 ぐるりと肩と首を回してから一呼吸し、かなり深く深呼吸、そして開拓者を見つめると同時にいつも以上に紅く鋭い目つきに。思わずそこにいた開拓者達が喉を鳴らして一瞬たじろぐ。 「‥‥可愛い弟子だが‥‥手加減はしないぞ」 開拓者の前に立ち、半身を向けて腰の刀に手を当てた状態で姿勢を低くする。完全に本気だ。ひとまずその雰囲気にのまれないようにしてから、利穏がまた一礼。試合とは言え礼儀を持って接する。いつになく真面目に。 「さて、この間の借りを返させてもらうぞ」 風間が腰に差さっている刀に手をかけて接近し始めるのと同時に全員が動き始める。 前回やられたのをいまだに根に持っている風間が戦法を変えて接近していく。大ぶりの攻撃をやめてお館様の速度に合わせた極力動かない小さな動きで小振りに刀を振るっていく。びゅんびゅんと風の斬れる心地よい音が響く。 「相変わらず、すばしっこくって、ちっこい奴だ‥‥!」 半身の状態でギリギリのところで刀を避けているところ、胸や腕に軽く触られた感じを覚える。「ちっ」と軽く舌打ちしてからフェイントを織り交ぜて、一旦距離を置く。 「おっと、勘が良くなったか?」 そういいながら風間の後方から飛んできた手裏剣を避けるお館様。じっくりと白銀狐が攻防を眺めて回避の癖や動き攻撃を眺めてみるが、出来は三割と言ったところだろう。ある程度予測したところへと手裏剣を投げつつ、攻勢に出た瞬間のお館様の手をつぶしていく。伊達にお館様の一番弟子ではない、観察しているのもあるが今までの経験から足を止めることに成功している。そんな白銀狐をちらりと見て、満足げに笑うお館様。 「噂に聞いた通り‥‥とにかく‥‥やるしかないか」 静かにウィンドカッターの詠唱を始め、手裏剣と刀の攻撃を避けている所へと撃ち放つ。 不意打ち気味の一撃に身を捻りながら回避するも、頬にピシっと赤い筋が一線入る。それを拭いながら回避に専念しているお館様。その隙を狙って風間が一気に踏み込んで、居合からのフェイントを織り交ぜ銀杏、そのまま柄頭でお館様の鳩尾に一撃、上体が後ろに倒れかけ。 「これであの時の一撃の借りは返し‥‥たっ!?」 倒れると同時に顎下から蹴り上げられ、膝を付く。脳を直接揺らされたせいか足に力が入らない。とはいえ、一撃与えた手ごたえは確実にあった。現にかるくむせているお館様が目の前にいる。 「好機‥‥!」 八重坂がいつもの槍「黒十字」を構え、一気に接近、その後ろをミルが追従し攻撃に回っていく。射線を確保しつつある程度固まらないように。 「そこっ!」 素早く装填、そこから射撃体勢に移行してお館様の肩口を狙って攻撃。それと同時にお館様の足元へと連続で突きを放っていく。 「‥‥まだまだ」 飛んできた弾丸を一撃。さらにもう片手で突きの攻撃を捌きながら対抗する。刀と苦無をうまく使い、連携攻撃を抑えながら前に。 槍をうまく使い、ざっざと地面を抉り足元を緩くさせ、意識を地面にと。その後ろで銃撃をしているミルもそれを見越してある程度印象を付けるように執拗に肩を狙っていく。足元は槍の突き刺した後に弾丸を真っ二つにした残骸が溢れ始めるところで。八重坂が槍を使って足元の砂をお館様へ向けて飛ばす。流石に不意を付かれたのか軽くうろたえた所で鈴を狙って一撃。ではなく、足払いを仕掛けて確実に狙えるようにしていく。 「そこ、貰った!」 足を引っかけた、たはずなんだが手ごたえがなく軽く体制を崩す。振りぬいてお館様を見つめると、何かが霧散したのを確認。体制を崩れたところに目をつむったままのお館様が構えているのをさらに確認し「まずい」と一言。 「やらせないよ!」 横からミルが何発か撃ちこみ、さらにそれを阻止。流石に気配だけで弾丸を斬るのはできないのかすぐさま後退し距離を取る。 「まだ、終わっていません‥‥!」 利穏、サラファの二人が前に出るとお館様の鈴を狙っていく、目をこすって何とか視界を確保したお館様の目の前に鞭「フレイムビート」が飛んでくる。それを先ほどと同じように理による回避を行う。 「もう少し、でしたか」 手首の返しと腕を振りで手元に鞭を戻すと狙いを付ける。それを横目に見ながら利穏が死鼠の短刀を構えて接近、短刀の特性を生かして小さく、素早い手数の多い攻撃で鈴を狙っていく。とはいえ流石に回避に専念するお館様ではない。苦無で攻撃を捌きながらまた開いている手で利穏の腕や胸に軽く触っていく。 「くぅ‥‥!」 嫌な予感と同時に後ろに下がる。それを追撃する形でお館様から放たれる散華の苦無。慌ててサラファが苦無を弾き飛ばして無傷だが、さらに前に出て追撃をしている。その足を止めるべくびゅんびゅんと鞭を振るって進行方向を塞ぐ。が、流石に止まらないのか理と自身の体の小ささを生かして合間をかいくぐっていく。 「相変わらず‥‥速い」 マノラティを使いお館様の体を掴むのに成功する。がっちりと体に巻きつけて動けないのを見計らって羽柴の二人が前面に。 「いくぞ!」 稚空が動けないお館様を狙い剣を振るう。二本の剣で攻めてみるが掴まれながらも上体と苦無を使い、捌いている。 「そこだ!」 打ち合いをしている所に斬撃符を投げつけ攪乱をするが、それに合うように散華での反撃。上体を逸らして片手で反撃してくるのに驚きつつ、咄嗟に防御。いくら刃を落としたとはいえ、かなり痛い。 「アラタ!」 「よそ見をするな」 サラファの方へと飛び、鞭を緩めながらさらに苦無を投擲。視線を外したところに飛んでくる苦無を何とか弾きながらアラタの方へ近づいて立ち上がらせる。 「間に合わない‥‥!」 素早く鞭を解いて防御態勢を整えたところに蹴りが入り、嗚咽を漏らしながら後ろに飛んでいく。視界が明滅し呼吸ができなくなる。 とにかく一度全員がお館様との攻防を繰り広げている間、後ろの方では村雨が大声で一般人が聞けばすぐに奉行所に連絡するような言葉や、耳を塞ぎたいような品のない事を言いまくっているのを。 「‥‥ちょっとまて」 お館様がため息を付きながら一度周りを静止させてから村雨に近づいていき。 「オーケー、かまーん!」 全力で抱きしめようとしている所に本気の腹打ち。ズドンと内臓にもろに直撃する一撃をお館様からもらうと悶絶しながら転がり始める。 「まず三つ言うことがある‥‥一つ目、品がない。二つ目、真面目にやる気がないなら帰れ。三つ目、ぬるい事をぬかすな」 ぱちんと指を鳴らすと爺が手早く簀巻きにして引きずっていく。お館様思い切り溜息をついてから戦線に戻っていく。 「まったく‥‥」 はぁっと下を向いたところで。白銀狐がぴぃっと笛を鳴らすと同時にお館様へと狼煙銃を発射、ちゃっかり色付き眼鏡を付けて光にやられないようにしている。 「今ですの!」 撃った後にすぐさましゃがんで早駆で一気に接近。前回同様にお館様の帯びめがけて飛びつくのだが。 「ありゃ?」 すかっと空振りしてごろごろと転がっていく。流石に前回同様やられるわけにはいかないのか、気配と足音で理を使って避ける。とはいえ、目は完全にやられているようで。 「ここが好機‥‥!」 奥歯をかみしめながら姿勢を低く抑えたままお館様を倒すべく箭疾歩。手のひらを胸部抜けて一気に振りぬく。「ドン」と音が響くと同時にお館様の状態が浮き上がる。そこを追撃する形で利穏が気力を練って鈴を掠め取ろうと接近。 「もらいます!」 腰帯の所にぶら下がっている鈴に手を伸ばし、取ろうとするのを塞がれ手を払われる。チリンと鈴の音が鳴った所で小さく舌打ちをする。 「今回は勝たせてもらいます!」 お館様を睨みつけて気をぶつけ、油断させる。そこから一気に大上段から振りおろし地断撃。地面を割りながら衝撃がさらにお館様を吹っ飛ばす。 「とと‥‥相変わらず、いい連携だ‥‥!」 空中から落ちるまでに散華を撃ち。追撃しようとした所の足を止めてから着地。すぐさま体制を直そうとすることに風間が顎をさすりながら接近し。 「借りはまだ返してないからな!」 鈴紐を狙って居合。剣先に手ごたえを感じながら身を捻って鞘での一振り。攻めてに回るのを抑えてるところに。 「まだ終わってないぜ!」 「鈴はもらうぞ」 羽柴の二人が止まっているお館様の鈴をめがけて斬撃符と流し切りでさらに鈴を狙っていく。流石に双子なだけあって連携はうまいが、だからこその癖を見抜き、それを回避し続ける。後方跳躍をしながらぴょんぴょんと避けるのにイライラしている所を横からミルが鈴を狙って暗蠍刹を使う‥‥ように見せかけて飛びつく。 ずしゃーっという感じにお館様ごとごろごろ転がっていき、じたばたするお館様をしり目に、サラファがちりんと鈴を鳴らす。 「流石にドキドキしますね」 ナハトミラージュの効果で乱戦に紛れて鈴を奪いことに成功している。その鈴をぎゅっと握りしめて満足そうな顔を浮かべる。 「むぅ‥‥私もまだまだだなぁ‥‥」 ぎゅうぎゅうとミルに抱きしめられているお館様がため息のような嬉しそうな顔をして、手合わせが終わる。 ●おやかた様 お屋敷に戻ってきた開拓者達とおやかた様、簀巻きにされた村雨と爺がお出迎え。 「お疲れ様です」 おやかた様に一礼。その手には陰殻西瓜とお茶が人数分揃っている。そこに追加する形で八重坂が大福、白銀狐が持ってきた完熟桃を置いてみんなして縁側でそれを食べ始める。 「おやかた様、新人さん育てているんだよね?」 妙に気に入ったのかおやかた様を撫でながらそんな事を尋ねる。 「んー?そうじゃぞー‥‥まぁ、強くなるかは本人次第じゃがのう」 お茶を啜りながら取られた鈴を眺めてほっと満足げ。「いいなー」と言いながら撫で続ける。 「しかしまぁ、このちっこい体でどんだけ秘めているんだ?」 風間もおやかた様を撫でる。肩車してやろうかと思ったが、おやかた様を独占するのはだめらしい。 「数で勝った、感じではあるけど‥‥噂通りだね」 鞍馬もお茶を啜りながらおやかた様を眺める。世の中広いね、と。 「あの、後学のため、戦闘の評価や自分の評価をご指南いただけないでしょうか」 正座して利穏がおやかた様に一つ一つ今回の戦闘について聞いていく。ちょっと照れているのか硬苦しい、説明している間はお館様状態だが。 「おやかた様、相変わらず強いですの」 説明中、完熟桃をあーんとおやかた様に食べさせている白銀狐。とっても満足げ。 「今日も平和ですなぁ」 お館様を眺めてぽつりと爺が一息。楽しそうなおやかた様にちょっとほろりと来てたとかどうとか。 |