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■オープニング本文 この人が満面の笑みでギルドに入ってきた時点で、碌な用事で無い事が分ってしまった。 「で、今日はどんな面白い依頼を持って来たのですか?」 「む、ちょっと反応が変わってきましたね。良い傾向ですねー」 嫌味のつもりだったのだが、ちっとも通じていない。 年末に差し掛かった開拓者ギルドの受付。 標は常以上の笑顔で現れた蔓を、そんな方法で迎撃してみた。そして、踏んだ場数の違いを痛感する。 「二つあるのですけど‥‥とりあえず最優先はこれですかね。 ひょっとしたら似たような依頼が来ているかも知れませんが、緑茂の里に温泉があるのはご存知ですか?」 「はあ‥‥それくらいは知っていますけど」 「あちらの温泉宿、合戦の慰安でかなりお客様が増えているそうなのです。それ自体は喜ばしい事なのですが‥‥」 確かにそれだけなら依頼になど来ないだろう。その状況で考えられる問題と言えば。 「従業員が避難して居ないとか、合戦の影響で建物が壊れてしまったとか‥‥」 「標さん、先打ちをあまりやると、会話の展開と言うものが無くなってしまいますよ」 珍しく不満そうに蔓。頬を膨らませるな。 「先打ちしないと、どんどん変な話に持って行くでしょう貴方。友達との雑談じゃないんですから、無理に展開させる必要は無いでしょうに」 「何気に酷い扱いですねー――まあ、それはともかく。依頼内容は、貴方が言われた事に近いです」 やはり普通の感性では読み切れなかったか。続いた蔓の言葉は、やはり斜め上に走り始めていた。 「いえね、既に廃業なさっている宿でして」 「‥‥廃業した宿で何をしろと?」 意味が分らない。客も従業員も居ない宿に対して何をするつもりなのだろう。この女、温泉事業にでも手を出すつもりか? 「だから先打ちは程々にした方が宜しいと言ったでしょう? とある酔狂な方が居まして、その人がどうしてもと言うので建物だけお貸し頂いて宿泊という事になったのですよ」 「酔狂すぎます、何で普通の宿に泊まらないんですかその人。 ‥‥まあ、良いです。それで、期間と仕事の詳細は?」 傍迷惑な人物だと思いつつ、先を促す標。後から思えば、ここで気付いても良さそうなものだった。 「二日間。その人が来るのは二日目の夜です。 暫く放置されていますから掃除や布団などの洗濯等。それから食材の調達及び調理、そのお客への対応、可能であれば芸なども一つ。温泉に関しては、まだ潰していないそうなので気にしなくても良いですよ」 ――当たり前だ。温泉を掘り直せと言われても困る。しかし調理の辺りなど、素人にやらせても良いのだろうか? 「その泊まる人が構わないと言っていますからね。寧ろ、普段とは違うものを楽しみにしているそうで」 「本当に変わった人ですね‥‥極端な話、依頼を受けた方が自由にやって構わないという事ですか?」 「ええ。変に型に嵌ったものよりも、多少羽目を外すくらいの方が気に入るかと」 ――? 「あのー、一応お尋ねしますけど‥‥その泊まる人っていうのはどちらの方です? 何か、似たような思考回路の人を知っている気がするのですが‥‥」 「さて、ではもう一つの依頼に行きましょうか」 この女、無視しやがった。 |
■参加者一覧
伊崎 紫音(ia1138)
13歳・男・サ
嵩山 薫(ia1747)
33歳・女・泰
ジョン・D(ia5360)
53歳・男・弓
ロックオン・スナイパー(ia5405)
27歳・男・弓
鷹澤 紅菜(ia6314)
17歳・女・弓
青禊(ia7656)
17歳・男・志
亘 夕凪(ia8154)
28歳・女・シ
趙 彩虹(ia8292)
21歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●三大家事に走る 二日間だけ宿経営を任された開拓者達。しかも閉鎖した場所を利用という妙な依頼。依頼先を間違っているのでは、と思わなくもない。 何はともあれ、到着前に迎え入れる準備を終えなければいけない。まず優先すべきは掃除洗濯である。 「畳を全部見て来ましたけど、問題無いですね。しっかり掃除すればですけど」 宿の客室は、全部で二五。見て周るとなれば大変である。それをこなしてきた伊崎 紫音(ia1138)は、中性的な微笑みで告げた。 改めて調べてもらった依頼の追加情報では、宿閉鎖三カ月前。その程度なら、畳は問題無く使える。戸締りもしっかりされていたので、必要以上の汚れも溜まっていない。 「人数は分っているのだから、その分の布団一式を布団部屋から出して。洗い場は近くにあるとして、後は水。干す場所は充分、肝心の物干しは――あんな所に」 まず、恐らくは一番の重労働になるであろう布団の洗濯である。これは家庭を持っている嵩山 薫(ia1747)が主導。 「温泉使っちゃ駄目なのかい? 洗い場だけで場所が足りるとも思えないけど」 「経営中ならともかく‥‥三カ月も放置されていた後だと掃除と湯の入れ替えも必要だし。ああそうだわ、洗い場もね」 亘 夕凪(ia8154)の疑問に、薫も手間が掛るものだと溜息。 そして、何気に頑張っているロックオン・スナイパー(ia5405)。見れば、彼の体格はかなり良い方。その体格を生かし、次々に布団を運び出していく。 「ボクは温泉の掃除から。その後に部屋をやりますね」 「お願い。この量だと、一日仕事になりそうだし。でも、無理はしないでね」 紫音は薫の娘よりも年上なのだが、彼の姿はその娘よりも幼く見える。ロックオンの頑張りを見て奮起している姿を微笑ましく思うが、釘も刺しておいた。 「では、僕も付き合いましょう。布団よりはマシとは言え、一人で掃除するのは大変でしょうし」 青禊(ia7656)が紫音に続き手を上げる。布団もそうだが、今夜は彼らだけでここに泊まるのだ。部屋が汚いままというのも勘弁願いたい。此方にも人数を振っておいた方が良いだろう。 「お庭はー? 何か雑草だらけなんだけど。それとも中を中心にやった方が良い?」 三カ月も放置すれば雑草は見事に伸びる。ただ、一夜しか泊まらないのであればそこは無理にやらなくても良いだろう。強いて言うなら、玄関周りと温泉への道か。薫の指示で鷹澤 紅菜(ia6314)は跳ねるような足取りで向かう。 「そーいや、私は戻ったら戻ったで掃除が待ってるんだよねぇ‥‥」 「あら、お掃除は苦手なの?」 「いや、ちょいと転がり込んだ先がね‥‥」 夕凪と薫は歳が近い分、一番話し易い。立ち位置や性格などはかなり違うが、そこは三十を超えればお互い合わせる事は出来る。 そんなこんなの掃除洗濯班。 一方の厨房。 「旅館だけあって設備は良い――包丁は研ぐとして。掃除をして、食器と器具を洗った後に献立を考えるとしましょう」 「そうですね。ああ、釜に火を入れる為の薪も必要でした。薪場が何処かにあるとは思うのですが」 「この時期ですし、乾燥した枝は比較的見付け易いでしょう。最悪の場合は市場で」 此方は、ジョン・D(ia5360)と趙 彩虹(ia8292)が分担作業。料理に腕を振るうまでは比較的やる事がはっきりしているので割と順調。 「私は専門的な料理を習得しているわけではないので、何なりと。全力で補助致します」 中年期後半に入っているジョンであるが、その姿勢は良く白に染まる髪も手入れが行き届いている。一言で言えば『中年紳士』。理想的な歳の取り方をしていると言えるだろう。その彼に言われ、彩虹は多少残念そうな顔に。 「実は私、泰国料理が主でして。今の段階だとそれ以外は中々厳しいというか」 「成程‥‥ですが、作れないというわけではないのでしょう? ならば、足りない辺りは相互補助という事で。私もジルベリアの料理が主ですしね」 出す料理の内容を指定されているわけではないのだが、種に富んでいた方が喜ばれるだろう。 「有難いです。賄いの方で試してみて皆の反応を見ましょう。青禊様はかなり期待していると言っていましたし」 「ロックオン様が山で何か取ってくると仰られていましたが、其方は?」 「確実性が無いのが気になりますね‥‥明日の夜はともかく、賄いの計算には入れない事にしておきますか」 山菜や茸はともかく、獲物の方は確実性に欠ける。時期的に冬籠りの準備をしている獣が多いのでそこも心配ではあるが――開拓者である以上、そこは気にしなくてもいいだろう。 「さっきの服で掃除しないのか。あれ使用人の服なんだろ?」 洗い場で丸洗いされ、水分で重量が増した布団を運んでいたロックオンは、雑草取りを終えて戻ってきた紅菜に声を掛ける。 「あれはお客様用、汚しちゃったら駄目だもの」 ロックオンが言う服とは、紅菜が自作して持ち込んだメイド服。唯一ジョンの出身地ではそう珍しい服ではないのだが、此方ではまだ珍しい部類。しかも猫耳尻尾が付属となれば更に珍妙。 「そんなもんか。んで、後どうすんだ? 洗濯か掃除の二択しかねえけど」 「掃除の方が面白そうだからそっちにするよ。じゃねー」 確かに洗濯よりは掃除の方が面白い何かに突き当たる可能性は高いだろう。但し、当人人以外はどうなるかと言えば―― 「押入れの片隅でGとNが餓死してるー!!」 「ちょ、直ぐに捨てて下さい!! 見物しないで!!」 「こっちの入れ物とか菓子箱かなー‥‥って、入ってるけど干からびてるー!!」 「いや、放置されていたわけですし。捨てましょうってば」 「あれ、壺の下に何か‥‥わ、女の人の裸の絵?」 「あー、春画ですねー。以前の従業員の物?」 「何見てるん‥‥って、捨てて下さい! こっち持って来ないで下さい!!」 ――客観的には楽しそうであるが、青禊と紫音にとっては中々に大変だろう。 「‥‥ま、いっか。重いな洗った布団ってのは! 歌わなきゃやってられねぇ!!」 全て干さなければ、山へは出掛けられない。重い布団を持ち直したロックオンは、往復作業に戻る。もふら云々という怪しげな歌が流れ出すが、彼が内心『もふらって何か美味そうだな』とか思っているのは秘密。家畜扱いで可愛げのない見た目であるが、アレでも一応神聖なナマモノであるので注意だ。 「何か騒いでるわね。他の洗い物を取りに行くついでに注意してこようかしら」 既に薫にばれていました。 二桁に登る布団一式を丸洗いするのは、家庭でもやらなかった事。流石に腕が疲れてきているが、これが終われば後は普通の洗濯だけ。若者を諌めるくらいの時間はあるだろう。 「大きな作業は今日の内に終わりそうだねぇ。布団、日暮れまでに乾くのかい?」 「微妙。夕方に乾き具合を見てからだけど、夜中まで干していると湿気を吸ってしまうから、どちらにせよ一度取り込むわ」 手伝っていた夕凪も流石に疲れ始めている。そんな中で顔を出す、厨房組。 「厨房の清掃は終わりましたので、これから市場に参りますが――何か入用なものは?」 「差し当たってはないわね。ところで、二人だけで人数は足りるの?」 「ご飯を期待してた子でも連れてけばどうだい? 掃除は代わるよ」 配達を頼むという手も無くもないが、そこまでの経費が無い辺り依頼人も妙に間が抜けている。人手は多い方が良いだろう。夕凪の提案に頷き、二人は青禊を呼ぶ為に洗い場から出て行った。 結局、日が暮れる頃には基本的な作業を終える事が出来た。試作を兼ねた賄いも、当初は舌に慣れない味ではあったが慣れてしまえば十分に美味。山からの恵みも用意され、明日への準備は概ね整ったと言えよう。 ●混沌 「陽が暮れて随分経つけど、来やしないねぇ」 温泉場に自作の竹燭台を置いてきた夕凪は、既に全員が思っている共通意見を挙げた。 既に深夜。来ないのである、依頼人一行。 アヤカシの討伐に向かった後という話で、何かあった場合どうなるのか、という懸念が浮き彫りになっていた。 厨房の二人は更に困る。夕飯時に合わせて下拵えを済ませているのである。当然、味も落ちてしまうだろう。 「何も無ければいいのですが‥‥」 何故か巫女装束の紫音は心配顔。衣装と表情のせいで少女にしか見えない。 その時、宿の入口を開ける音が響く。続いて大人数が入ってくる音――どうやら来た模様。 「何で我が子のお世話を仕事先でもしなければならないのかしらね?」 「し、知らなかったですしっ――って言うか怪我人居るから、寝る場所確保っ」 「温泉入らせてもらって良いですか。多少はマシになるかと‥‥」 「お嬢さん、骨折れまくってんのに無理に喋んなって!」 女将風に出迎えた薫の前に現れたのは計九人。依頼書通りだが、赤子の頃から知っている顔が居たり、肝心の依頼人が抱きかかえられているという予想外の光景。 「随分良い子揃えてんなあ、野郎は要らんが。おし、俺が寝床は用意してきてやるぜ」 九人中、七人が女性。平均的に見ても若いし見目も良い。此方の女性陣も悪くは無いが、多い程良いと張り切るロックオン。 「戦いの後でしたらお腹は空いているでしょうけど‥‥」 「残念ですが、下手にお腹を活動させると拙そうです。色々やって頂いたでしょうに、申し訳有りません」 外で念の為の警戒に当たっていた青禊が戻ってきて尋ねるが、蔓は苦笑いしつつかなり残念そう。 「謝るより先に治療は? 固定とか」 「ありったけ癒しを掛けました‥‥後は自然に。固定は済んでいます」 慌てて出てきた紫音の問い掛けに、実際力を使い切ったのか疲労感の滲む清楚な女性が答える。 「お帰りなさいませお嬢様‥‥って、何か凄い事になってる?!」 「非常に勿体無い‥‥可愛い女の子が二人も居るのにこの始末とは‥‥」 紅菜、そして恐らく紫音の事を指しているのだろう。何やら悔しさを増幅させている蔓。 「怪しげに手を伸ばさない! とりあえず、後で一緒にお風呂入りますから今は寝てて下さい」 同行者に色々言われつつ、連行されていく蔓。変人も怪我には勝てないらしい。 「皆様には、今夜限りですが私どもの料理を存分に味わって頂ければと存じます」 ジョンの挨拶で始まった、夜食と言って良い時間帯の夕食。迎えられる側からは拍手と歓声。癒し手の女性のみ、蔓に付くと言ったのでここには居ない。 「さて、二人で頑張った成果はどうでしょうね‥‥」 厨房から顔を出す彩虹。自信はあっても相手の口に合わなければ意味が無い。調理者としては緊張の一瞬だが―― 「誠意の籠る料理は魂が宿り、食するものに通ず――無用な心配でしたな」 「それはつまり、どんなにアレな料理でも誠意を込めて作れば問題無いという事ですねっ」 ――違う、根本的に違う。戻ってきて出した料理が好評なのを告げたジョンは、紳士として妙な突っ込みは控えておいた。 出された料理は泰国風の炒め物煮物が中心となる。そこにジルベリア風パイ包みと此方の白米及び味噌汁――白米と味噌汁は、相性の悪いものが基本的に無いという、非常に有難いものであった。 『お酒は如何ですかー? 痛み止めになると思うよーっ』 『おかゆやリゾット類だけだと味気ないですしねー。一杯くらいなら‥‥』 『これからお風呂入るのにお酒は駄目ですっ』 『『えー』』 『‥‥二人揃って不満そうな声を上げないっ』 大人しくしている筈の蔓の部屋も、何やら賑やか。 『で、其方の巫女装束の子は何故に逃げてるのです?』 『蔓さんの手が怪しげだからだと思います‥‥』 『失礼な。女の子に酷い事などしませんよー』 『あー。その子、男の子だよ』 『‥‥ほう』 『ちょ、手が怖い、笑みが怖い、こっち来ないでー!!』 ――紫音にとっては災難だったとだけ。 「では、ここで一つご覧あれ、理穴秘伝『どぜうすくい』!!」 そして始まる青禊の芸というか踊り。これは男女で違うのだがここでは男踊りだけ。笊、豆絞り、腰籠などを身に付け泥鰌を掬う様そのままの姿を踊るのだ。要するに、笑ってもらう為の踊り。因みに、女性の踊りは対照的に優雅だったりする。理穴秘伝かは謎。 その笑顔の中、口に入れたものを噴き出す一名。 「‥‥出された料理を噴き出して良いなんて教えたかしら?」 「だ、だってこのお菓子凄く辛いです!!」 再教育を考える母と半泣きの娘。よくよく見れば、他二名程力尽きている。 「そういや、紅菜が厨房に頼んで菓子に何かを仕込んでいたような‥‥」 何という混沌。酒も入っているので、もはやわけが分らない。それでもまあ、戦いに疲れた身体にはこれもまた良しである。 ●覗き×2 さて、温泉。人や場所にもよるだろうが一人くらいは居る覗き。期待を裏切らず、女性の裸体をロックオンする男一人。 「んー、大中小と揃ってるなあ。鷹の目で眼福ってな」 わざわざ視力まで向上させて行う覗き。ある意味清々しい。大中小というのが何だかは、各自想像の事。 『おー、お譲さん。一緒に入るか?』 『って、男風呂覗く人が何処に居ますか?!』 『ここに居る! 良いモノ見せてもらったよ!』 ――混浴ではないが、男風呂も直ぐ隣。声を聴く限り、どう考えても覗いたのが女の子。そういえば一人『大』の子が足りなかったなあ、とロックオン。 「で、貴方はそこで何をしていらっしゃるのです?」 「‥‥芸術を追ってるんだぜ」 気を逸らした直後に掛けられる声。全裸の蔓が隠れていたロックオンをしゃがんで覗き込んでいた。 「隠そうぜ。勿体無い」 「散々見ておいて注文するのはいけませんよー」 変人ここに極まれり。てか、痴女かこの人。 結局、蔓は一緒に入っていた者達には何も言わなかった。安心したのも束の間、当然の如く告げ口されていた薫達にそれぞれの特色を生かした折檻を受けた。 ――眼福と折檻、釣り合っているのだろうか? ●店終い 翌日。朝食後、出発する一行を見送る臨時旅館従業員達。二名程、怯えていたりぼろぼろだったりするのは気にしないように。 「では、お片付けをお願い致します。ここの主も浮かばれると思いますよ」 近場で取れた植物を手土産に、去り際の蔓がそんな言葉を残していった。 「成程‥‥故人の供養を兼ねていたのかしら。それにしても、引退後は女将っていうのも悪くないかしら」 家族と相談してみようかしら、と薫。 「どうせここまで来たのなら、お礼状でも出しませんか? ギルド経由で」 青禊の提案。もう二度と使われないであろう宿の最後であればそれも良い。 後日、蔓の店に対蔓用ギルド受付さんが訪れ、その礼状を渡してきた。恐らく、他の面子にも周っているのだろう。 「痛い思いもしましたが、此方も楽しませて頂きました」 骨は未だ完全には繋がっていない。それでも、お釣りがくるほど充分に楽しませてもらった、と蔓はそれを棚へ大事そうに仕舞っていた。 |