|
■オープニング本文 上空に吹く風はまだいくらか冷たい。しかし一方でより近くから降り注ぐ陽光は暖かく、その寒暖の差はこの時期の醍醐味のひとつであると言えるかもしれない。 「深緋(こきあけ)、気は済んだのかしら?」 少女が手綱を揺らしながら問いかければ、彼女を背に乗せて翼に風をはらむ赤い龍は、さも嬉しそうに喉を鳴らす。尻尾も、舵取りの役目を果たしてさえいなければパタパタと音を立てるほど振り回されていただろう。 しょうのない子ね、と少女は肩をすくめた。この頃彼女は相棒であるこの龍をなかなか構ってやれずにいたのだが、もともと体を動かさないと欲求不満になる上に自らの認めた者の言うことしか聞かないやんちゃ坊主。先日とうとう飼育担当の手を振り払い、少女の部屋の窓の外まで迎えに来たのだった。 とはいっても、それを好機と見逃さない少女もまたかなりのおてんばで。 「そろそろ戻られますか、香香背様」 ひとりと一頭の水入らずというわけにはいかず、お目付け役がぴったりとくっついてきていた。 「もう少しかしらね。落ち着きはしたけれど、まだ運動が足りていないみたい。またすぐ出かけられるとは限らないし、動きたいだけ動かせてあげたほうがよさそうよ」 「‥‥それは深緋の希望ですか。それとも香香背様のご希望ですかな」 お目付け役という名の彼女の右腕は楠木玄氏という名だ。いかつい顔は少女の傍らに立つには似合わない。が、少女を狙う者がいたとして、その者の勢いを削ぐことはできるだろう。 幼い子供なら漏れなく泣き出すであろう彼の顔を見やって、少女・香香背は不適に笑う。 「もちろん深緋の希望よ」 そう言うが早いか、龍の腹を蹴った。龍は主の意を汲み取り、すぐさま羽ばたき風を味方につけ、空を駆けていく。 楠木は特に肩をすくめるわけでもなく、己の乗る龍を撫でた。 「今日はお前に乗ってきて正解だったようだな。さあ、我らが主君の後を追ってくれ」 彼が本日乗ってきたのは、こんなこともあろうかと駿龍、それもより速く飛べるものを選んできたのだ。彼もまた龍を促し、守るべき少女の後を追う。 ◆◆◆ しばらく経てば、二人と二頭は丘の上に立っていた。わがままもお小言もなく、黙って立っていた。 彼らの視界は翠色と桃色のコントラストで埋め尽くされ、風の音と花の香で心を静かに震わせていた。 芝生の地面に桜の木が立ち並ぶ丘。やや遅咲きなのか、今がまさに満開であるように思われた。 「すごい‥‥」 「まったくです。これは見事ですな」 時を忘れて眺めていると、あ、と香香背が何かを思いついたらしく、手を打った。 「ねえ、ここでお花見はできないかしら」 さも良い案だと言いたそうなその表情に、楠木はほんのわずか眉根を寄せる。 「お一人でですか?」 「それじゃつまらないわ。そうね‥‥開拓者を呼びましょうか。きっと楽しいわ」 「‥‥」 「何よ、警備がどうとかそういうことなら、あなたも同席すればいいでしょう」 もはや香香背にこの案を諦めるという選択肢はなかった。楠木のほうが彼女に合わせればいいのだと考えていた。 ――まあ、いつものことであるのだが。 「ふむ、ではこうしましょう。ただ花を愛でるだけではなく、茶会にするのです」 「茶会?」 「開拓者には茶請けとなるものを持参してもらい、私と香香背様は茶を準備する。そうすることで親睦を図るのです。飲食を共にすれば互いの仲も深まりましょう」 開拓者との結びつきが強まって悪いことはない。昨今はどこも慌しく、アヤカシを含めた問題ごとに対処していくためには――これが理由のひとつ。 もうひとつは、隙あらば脱走・変装して街へ繰り出す香香背が、つまりは外とのつながりを求めているのだということ。彼女の精神的成長のためにも、新たな出会いは必要だ。 「あたしとあなたとでお茶、ねえ」 「ご不明な点は何なりと。僭越ながらお教えしましょう」 てっきりハナから却下されると予想していた香香背。好意的な楠木の態度に面食らうも、茶会が彼の趣味であることを思い出し、提案を受け入れることにした。 |
■参加者一覧
朝比奈 空(ia0086)
21歳・女・魔
倉城 紬(ia5229)
20歳・女・巫
チョココ(ia7499)
20歳・女・巫
ケロリーナ(ib2037)
15歳・女・巫
ミリート・ティナーファ(ib3308)
15歳・女・砲
泡雪(ib6239)
15歳・女・シ |
■リプレイ本文 ●期待膨らんで 龍の背から降りるが早いか、ぶわりとひときわ大きな風が吹いた。広がるように舞う花弁による出迎えは、これから始まる茶会への期待を否が応でも膨らませた。 「ようこそ、待ってたわ!」 石鏡王がひとり、香香背が、両手を大きく振って歓迎する。その仕草に感じる子供らしさは、既に整えられた茶会の場――赤い毛氈と人数分の茶器が整然と並ぶ様とはどう見てもアンバランス。しかしそれだけ香香背もこの茶会を楽しみにしていたのだと、朝比奈 空(ia0086)は気づいた。 「今日は楽しい茶会になりそうですね」 ふっと口元を緩める彼女に、泡雪(ib6239)とミリート・ティナーファ(ib3308)も同意する。 「私、実は茶会というものが初めてなのです。わくわくしてしまって、さくやはなかなか寝付けませんでした」 「あはっ、私もだよー。こういうところでのお茶会なんて初めてだから、結構わくわく!」 「けろりーなもですのっ」 胸を熱くする獣人たちにケロリーナ(ib2037)も加わった、わくわく感は更なる高まりを見せる。 「桜の花に、お菓子に、香香背ちゃんに、楠木おじさまも、もちろんおねえさまたちにも、けろりーなきゅんきゅんでわくわくですの〜♪」 「はい、では皆さんご一緒に」 高まりすぎて収拾がつかなくなる前に、倉城 紬(ia5229)が軽く手を叩いて皆の気をひいた。 一同は香香背と楠木のほうへ向き直り、 「本日はお招きいただき、ありがとうございます」 お呼ばれの例を告げて、茶会始まりの合図となった。 ●お披露目タイム 「全員、席に着いたわね。それじゃあお願いしていたお茶請けを順番に出してもらおうかしら」 主人役である香香背が一同の顔色をひとりずつ確認していく。いや、本当に探りを入れたかったのはお茶請けの内容だったのかもしれないが。 最初に手を上げたのは、茶会とは少し路線の異なるメイド服を着た泡雪だった。なにより自分自身が楽しむために参加したのだから、そんな瑣末なことは気にしてなどいられない。 「それでは僭越ながら私から」 淡雪の準備したお茶請けは正統派の菓子だった。今も時折舞っている桜の花弁をまさに写し取ったような、上品なもの。 「食紅で色をつけた練り切りで餡を包み、桜の花びらの形にしました。この茶会のために急きょ練習したものなので、形が少々いびつになってしまって‥‥それに職人ならば色にグラデーションをつけたりするのでしょうが、そこまでは無理でした。ですが味に問題はありません」 「急ぎの手習いでこれほどまでとは。香香背様ではこうはいかないでしょうな」 「‥‥悪かったわね」 沸かした湯でまずは茶器を温めている楠木の隣で、香香背が苦笑いする。対して淡雪にはメイドらしく料理への自負心があるようだが、賞賛への礼を述べつつも彼女が目を奪われるのは楠木の手の動きと茶器だった。 「桜にちなんだお菓子‥‥ということで、私も」 それまでやや後方に座っていたチョココ(ia7499)が、輪の中心へ包みを押し出した。香香背がそれを開いてみれば、桜餅が姿を現した。それもつぶつぶ食感が魅力の道明寺だ。 「これはまた手間のかかるものを――チョココさんもお茶会を楽しみにしていたんですね♪」 「はい‥‥今年はまだ花見に行ってなかったし、桜が散ってしまう前に見ておかないとって思って‥‥」 「ええ、私も。神楽の都でも桜の催しがあったのですが、また桜が見れるとは思いませんでした」 紬や他の皆が上を向いて桜を堪能する、その間に、チョココは道具袋から首を出していた酒瓶を袋の奥底へ押し込んだ。一応持ってきてはみたが呑めそうな雰囲気ではない。 「どうかした?」 「どうもしません」 香香背に問われても涼しい顔でそう返した。 「それにしても、赤梅酢が見つかってよかった‥‥やっぱり見栄えがぜんぜん違う」 桜色あっての桜餅。花見にふさわしい一品である。 「では、次は私の番」 紬の取り出したるは、なんと三段重。おせちでも入っているのかと想像させるほどの堂々とした佇まいに、一同の喉がごくりと鳴る。しかし蓋を開ければそこには緑の野が広がっていた。 「邪気を払う禊ぎの植物である蓬を用いた、蓬団子です。今年の春に手摘みをした蓬をたっぷりと使用しました」 巫女の国である石鏡での花見にそぐうツヤツヤとした団子の下には、ひとつに一枚、薄い紙が敷いてある。紙ごと持って食べれば手が汚れることはないという親切安心設計である。 そして蓬団子といえば欠かせないきな粉。これはなんと三段目に入れられていた。一段目と二段目には蓬団子本体、三段目にはきな粉と分けて入れることで、きな粉が湿り気を帯びてしまうことを避け、きな粉の量を個人の好みで加減することができるようにしている。 「粘り気が強いので少々固いかもしれませんが、どうぞ召し上がってください。お茶や皆さんのお菓子の邪魔にならないよう、餡の甘さと蓬の味の強さを調節した、自信作です」 時間と手間をかけて作ってきたのだろう。紬の蓬団子には彼女が言う以上に、自信で輝いているように思えた。 そんな紬をあたたかく見守る空。紬に対してだけではない、この茶会を楽しむ皆を保護者のように――いや、楠木だけは彼女と同じ側に立っているが。楠木は黙々と茶の準備を進めている。空は自分の手土産を披露することにした。 「私が持参したのは、チョコ餅です。以前に受けた依頼で試作した物ですが‥‥折角なので材料を集めて自分で作ってみました」 「ちょこもち‥‥って何かしら?」 自分の前に配られたそれを控えめにつつく香香背。その頭をひと撫でする空。香香背は驚いたようだったが、空もなぜかつい撫でてしまった様子で、数秒だけ動きを止めた後、互いに少し微笑んだ。 「クリームや蜜と一緒に溶かしたチョコレートを求肥の皮で包んだ菓子ですね」 「へえ、そんなお菓子があるのね。チョコレート自体が食べるのはじめてよ私。街で売ってるのを見かけたことはあるんだけど、他にも色々と買いたいものがあるあたしにはうかつに手を出せない値段だったのよね。お小遣いをもう少し上げてくれたら買えるのだけど」 香香背の視線が楠木に向けられる。が、楠木はやはり黙々と手を動かすのみ。いつもこんな感じなのかしらと泡雪は目を細めた。 「チョコレートの味見を兼ねて、このチョコ餅を堪能してください。‥‥といっても、流石に家で作るのは初めてだったので、上手く出来ているかが問題ですが‥‥」 家以外の場所で作れるのなら、最も使い慣れているであろう家の台所で作れないはずがないのではないだろうか。当然、このチョコ餅も素晴らしい出来であることだろう。 ところがこれに渋い顔をしたのはミリートだ。耳としっぽを垂らしてしょんぼりするわんこがそこにいた。 「む〜ん、チョコがかぶっちゃったかぁ。いい変化球だと思ったんだけどなー」 かわいくラッピングされた包みからリボンを紐解けば、たくさんのお手製クッキーがこぼれんばかりだった。紅葉の形をしたクッキーの表面に、手持ちのチョコレートを溶かして塗ったもの。 「あら、十分変化球だと思うわよ。桜の茶会に紅葉のお菓子、いい具合に驚かされたわ」 一枚を手に取り、裏表ひっくり返しながら眺める香香背の言葉に、 「ふふふ〜、そう言ってもらえると嬉しいな。桜や梅がよく注目されるけど、春紅葉もいいものだよ。緋色でもあるし、蘇芳でもあるや」 「綺麗よね。さすがに今年はもう無理かもしれないけれど、来年のお楽しみができたわ。ああでも、その前に正統派の紅葉狩りをするのもいいんじゃないかしら」 これは秋にも茶会が催されるということだろうか、いや、紅葉狩りということはつまり散策ではないか。 どちらにしても、今堪能している桜と美しさを競ったならどちらが勝つのか。各自まぶたを下ろして思いをはせる。 パチッと最初に再び目を開けたのはケロリーナだった。お茶請け紹介の最後のひとり。 「けろりーなはカスタードプディングをつくってきたですの」 「ぷ‥‥え? ごめんなさい、よく聞き取れなかったわ。もう一度言ってもらえるかしら」 チョコレートに輪をかけて馴染みのない名称に、紅葉から帰ってきた香香背は身を乗り出した。眼前には黄色いぷるぷるの入った深めの湯のみが並んでいる。 「かすたーど・ぷでぃんぐ、ですよ〜。卵と牛乳を混ぜて加熱して冷やして固めたら完成ですの」 「茶碗蒸しとは違うのよね。黄色が濃いし、何よりすっごく甘いにおい」 「‥‥あの、ひとつ少なくないでしょうか?」 今にもプディングに手を出しそうな香香背、その動きを遮るようにして、チョココが疑問を投げかけた。あわててぷるぷる入り湯のみの数を数えてみると、確かにひとつ足りなかった。 茶会参加者が何人であるかは事前にわかっていたことであり、事実ケロリーナ以外が持ってきた菓子は人数分あるいはその倍数分となっている。数を間違えたのか? ――ケロリーナは自分に視線が集まっていることに気づくと、満面の笑みを浮かべた。 「香香背ちゃんの分は別にあるですの。はいっ、少しはやいけど、お誕生日おめでとですの〜♪」 「別?」 首をかしげる香香背の前に出てきたのは、ふたをされた土鍋だった。勝手に目がぱちくりするのも仕方ない。ケロリーナが土鍋を出してきた時の動きからして、かなり重そうだが――。香香背はどきどきしながら身を乗り出して、ふたをゆっくりずらしてみた。黄色いぷるぷるが見えた。覚悟を決めて、今度はふたを取った。湯飲みの中身とまったく同じだった。ただし容器のサイズが中身の量に直結、つまり何倍もの大きさのぷるぷるが詰まっていた。 土鍋プディングというのだと、ケロリーナが教えてくれた。 「ということで、土鍋プディングをぷるるん♪ と出――すわけにはいかないのが残念ですの。ケーキみたいに華やかなトッピングをして、みんなでお祝いですの☆」 「わぁっ! ありがとう、とっても嬉しいわ!!」 これまたわっせわっせと運んできたらしい果物とナイフを取り出しては切り分け、ぷるぷるの上に乗せていく。湯のみプディングにも、土鍋プディングにも。香香背はまるで祈るように両手を組みながらその様子を見守っていた。幼子のように目も輝いている。 「ふむ、しかし洋菓子に緑茶では合いませんかな」 茶の準備が終了した楠木の言うことももっともだとうなずく皆だったが、実は紅茶も用意していたケロリーナ。多くの荷物と彼女ともふらのもふらてすを乗せた龍は、いつもより重量感を覚えていたかもしれない。 ●思い思いの楽しみ方 「‥‥おいしかったぁ」 ほぅ、と茶器から唇を離せば体内に染み渡る茶の味わい。上向けば桜の舞、下向けば幾種類ものお菓子。横を向けば談笑する人たち。 持ち寄られたお菓子をすべてひと口大にしてからじっくり味わった紬は、食後に茶を堪能することで、まさに至福の時を迎えていた。 (こういうお花見、いいかも‥‥) 口がもごもごしているので茶器を楠木に突きつけることでおかわりを要求するチョココも、彼女なりに楽しんでいるようだ。 「ふふっ、お茶は気に入ってもらえたようね。楠木と一緒に茶葉を選んだかいがあったわ」 「まあ、おふたりで?」 「実際に淹れてもらって、味と香りを確認して選んだのよ。桜とお茶請けの両方によくなじむお茶‥‥なかなか難しかったんだから」 香香背はまだぺたんこっぽい胸を思い切り張って、空に笑われる。笑うといっても、そこに込められているのはあたたかいものだ。 何度も異なる茶を淹れるのはそれなりに骨の折れること。香香背のわがままも躊躇なく却下する楠木が根気よくそれに付き合ったのは、彼自身がこの茶会を楽しみにしていたという点も大きいだろう。 「楠木様。私に茶会のお作法をご指導いただけませんでしょうか? なにぶん不勉強でして、せっかくのお茶も普段どおりにいただくのみで」 「それで良いと私などは考えますが」 泡雪が作法に気を使うのは身を置いてきた環境ゆえか。しかし楠木は特に表情を変えることなく、彼女と言葉を交わす一方でチョココに茶のおかわりを提供する。 「此度の茶会は桜を愛でることが目的、作法を遵守するのはまたの機会に」 「でも、せっかくですから‥‥例えば、そうですね‥‥この器の落ち着いた色で、茶の緑がより鮮やかになっておりますねえ。‥‥とか」 「成程。では私も拙いながらお相手いたしましょう」 茶器の良し悪しがわからない泡雪の素直な感想に、楠木も口元を少しだけ緩めたかのように見えた。 「じゃあじゃあ、お返しに紅茶でジルベリアのお作法を教えてあげるといいかもしれないですの♪」 そこにひとつの提案をするケロリーナ。楠木も目が光るなどまんざらではないようなので、泡雪も承諾する。さすがに紅茶用の茶器は準備されていないため、今あるもので代用するしかないのだが、そこはどうにでもなる。 こうして楠木の目が離れた時を狙って、香香背にこっそり耳打ちしたのはミリートだった。 「うんとね、香香背ちゃんならかわるかな‥‥布刀玉くんのことなんだけど、最近、特に何も聞かないからどうしてるのかな? って心配してるんだ」 「布刀玉なら今朝もちゃんとご飯食べてたわよ。最近あんまり外に出ないのは‥‥今は内政で忙しいってところかしらね」 「う? 香香背ちゃんは今日ここにいるけど、内政やらなくていいのかな」 「今日出かけられるように前倒しで進めたのよ。すごく頑張ったんだから」 でなければ許可を出せないと楠木がうるさいから――と二人そろって楠木に視線をやれば、泡雪に紅茶を入れてもらっているところだった。 「ずるいわ楠木!!」 「はしたないですな香香背様」 叫ぶ香香背を楠木がたしなめるが、ミリートとチョココだけでなく紬までさっそく空の茶器を準備している。やれやれと息を吐く楠木。くすりと笑う空。追加の紅茶を淹れる淡雪とケロリーナ。 結局、即席のお作法教室が開かれることになってしまった。桜の舞うなかでの教室、それもまた良いものだ。茶に花弁が舞い降りて桜茶となるのも、また一興。足がしびれて立てなくなるのはご愛嬌。しびれが無くなっても、胸に刻まれた春の思い出はいつまでも楽しく優雅なひと時を思い出させてくれることだろう。 |