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■オープニング本文 神楽の都の、とある家の食卓にて。 「もーいらないっ。ごちそーさまぁ」 がちゃん、と大きな音を立てて、その少女は箸を置いた。 「ぼくもいーらない。ごちそーさまぁ」 真似をしたように、少年ががちゃりと箸を置いた。それを見かねた母親らしき女性が眉を顰めた。 「こら、悠栄、雅玖!まだこんなに残ってるでしょう!」 「もういらないんだもん。それに、おやさいなんてきらーい」 「ぼくもおやさい、きらーい」 ねー、と言って顔を見合わせた子供達は、仲良く外へ飛び出していく。 (「最近、あの子達ったら野菜ばっかり残して‥‥」) 母親は思わず、特大級のため息をついた。彼らが去った食卓には、皿に盛られた野菜炒めが殆ど手もつけられないまま、寂しげにふたつ並んでいた。 家の周りをぐるぐる歩きながら、先ほどの少女と少年はその日の遊びを相談する。 彼らはひとつ違いの仲良し姉弟で、いつも二人一緒。姉の悠栄はおませさんで、弟の雅玖はいつも姉の真似をしたがった。 「今日はなにしてあそぼっか?」 「んーとね、まりつきがいいなー!」 「じゃあまりつきしよう!」 悠栄は、家の横の小さな物置小屋を開け、かわいらしい鞠をもって出てきた。雅玖がそれに駆け寄り、きらきらとした目で鞠を受け取る。小さくまりつきうたを歌いながら、少年が鞠をつき始めた、その時。 急に空が暗くなって、どん、どん、という地響きが、ふたりの子供を揺らした。通りの向こうから、きいひひという奇声が聞こえる。 姉弟は互いに体を寄せ合い、ぶるぶると震えて家の前にしゃがみ込んだ。少年の手を離れた小さな鞠は地面を転がっていく。 「おねーちゃん‥‥」 不安げに見上げた弟を、姉も不安げな瞳で見つめ返した。 地響きはどんどん大きくなり、やがて彼らの目に飛び込んできたのは。 「おっきいにんじん‥‥!」 「たまねぎもいる‥‥!」 どしんどしんとやってきて彼らの家の庭に座り込んだのは、巨大な野菜だったのだ。 にんじん、たまねぎ、かぼちゃ、なす――巨大な四つの野菜が並ぶ様は、まるで庭から巨大な野菜が生えたかのような、異様な光景だった。 ――それらが普通の野菜と違うのは、その大きさだけではない。 皮に小さな切れ目が二つと、大きな切れ目が一つ。それらが、目と口のようにぱくぱくしていたのだ。すべての野菜が、にたりと笑ったような表情をしている。 おそるおそる見上げた悠栄は、にんじんと目が合ってしまった。 くわっ、と口のような大きな切れ目を開き、にんじんは奇妙な声をあげた。 「ヤサイクエ」 |
■参加者一覧
風雅 哲心(ia0135)
22歳・男・魔
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
アーニャ・ベルマン(ia5465)
22歳・女・弓
ノルティア(ib0983)
10歳・女・騎
リン・ローウェル(ib2964)
12歳・男・陰
藤丸(ib3128)
10歳・男・シ
長谷部 円秀 (ib4529)
24歳・男・泰
山奈 康平(ib6047)
25歳・男・巫 |
■リプレイ本文 庭にででん、といった風格で居座る四つの野菜を見上げ、開拓者達はそれぞれ複雑な思いを抱えていた。 「おおお‥‥!でっけぇ〜!これとてもじゃねぇけど食い切れねえよな〜」 つーかこれ食えんのかな、などと真剣に考えてしまうルオウ(ia2445)。家の中から不安げに覗く悠栄と雅玖を見つけると、彼はにかっと笑ってみせた。 「まってな!今すぐ助けてやっからな!」 「ヤサイ、クエ‥‥ね。お野菜の‥‥味方、なら。むしろ、食うな。いうのが‥‥普通、だよね」 ノルティア(ib0983)はぷーと頬を膨らませる。このアヤカシのちょっとずれたところに不満を抱いているようだ。 一方、藤丸(ib3128)は巨大野菜を見上げながら、晩ご飯のことを思案していた。 「‥‥これがふつーの野菜なら、今晩のおかずにするのになぁ」 よし、帰りに市場で野菜を買って帰ろう、と彼は満足げに頷く。 その隣で落ち込む男が一人。 「ギルド職員に良い依頼があると勧められて来たが‥‥これは何だ?『僕の事』を知っての所業か?」 リン・ローウェル(ib2964)は眉を顰めてぶつぶつ呟いている。そんなリンの背後から笑いを含んだ声が聞こえてきた。 「何だ、野菜嫌いなのか?」 リンが振り返ると、そこには少し可笑しそうな笑みをたたえた山奈 康平(ib6047)の姿があった。リンは慌てて叫ぶように言った。 「ちっ、違う!僕は玉葱嫌いなんかじゃない!ただあの匂いが『苦手』なだけだ!」 「あら、お野菜ちゃんと食べないと大きくなれませんよ〜?」 次いでアーニャ・ベルマン(ia5465)にからかうようにぽん、と頭を叩かれ、いつもは冷静沈着なリンも思わず顔を赤くし、子供らしい表情を見せる。 一方、風雅 哲心(ia0135)は一際大きなかぼちゃを見上げた。かぼちゃは四つの中で最も大きく、かなり場所をとっているように見える。こいつから倒すのが妥当だろう。 「さて‥‥いっちょやるとするか」 哲心の呟きに、長谷部 円秀(ib4529)も静かに頷いた。 「野菜嫌いを促すようなアヤカシは‥‥切り捨てますかね」 ● ちょうどすっぽり四つの野菜が入った庭は、まさに足の踏み場もない状態だ。家の周辺を見回しつつ、哲心は小さくため息をついた。 「ここでの攻撃は難しいが‥‥ここは細い通りが入り組んでいて、外に出すのはかなり厳しそうだな」 「仕方ない。やはりここで倒すしかないか」 康平が頭を掻く。その言葉に頷くと、ノルティアは駆け出した。梯子を使い、家の屋根にするすると登る。 場所が狭いのを考慮すれば、やはり地上から全員の一斉攻撃は厳しい。そう彼女は判断したのだ。 「お家、あるし。うるさいのは。申し訳ない‥‥けど」 そう独りごち、片膝をつき体を安定させ、ノルティアは両手で静かに銃を構えた。その腰で、刀が鋭く光る。 その間にも、アーニャは叫んでいた。野菜に向かって、大声で。 「私も野菜嫌いですよ〜だ!」 彼女の狙い通り、野菜達はそろって、のそり、とその顔らしきものを開拓者一行に向けた。しめた、とばかりにアーニャはさらに声高に叫ぶ。 「特にかぼちゃが大嫌い!!」 ぴくり、と揺れたかぼちゃは、ゆっくりと口を開いた。 「ヤサイ、クエ‥‥!」 奇妙な声と同時に、大きな弾が一団に向かって飛んでくる。危ういところでかわしながら、藤丸がその物体を目で追った。地面に落ちて瘴気となり消えたそれは‥‥ 「かぼちゃの、種?」 そう、それは巨大なかぼちゃの種。――すごい速さかつ巨大すぎて一瞬判別できないが。 「『食え』だぁ〜?へっ!煮込まれても炒められてもねえクセに生意気言ってんじゃねぇよっ!!」 ルオウは咆哮と共にそう叫ぶ。かぼちゃを引きつけようとする彼の顔はすごく楽しそうだ。 彼の言動にさらに腹をたてたかぼちゃは、凄まじい勢いで種をばらまく。四方八方に飛ぶ種――円秀は、家に向かっていく一粒を叩き切った。 かぼちゃは、皮が堅い。普通の攻撃ではなかなか倒せないだろう。 そう考えた哲心は、白梅香と雷鳴剣で自身の刀に精霊力と雷電を帯びさせた。種を飛ばした直後の、油断を見せるかぼちゃに斬りかかる。 「ここに存する悪全てを凍てつかせよ‥‥フラウ!」 その詞と共にリンが召還した小さな人魚は、かぼちゃに向かって手に持った鏡から氷柱を放つ。かぼちゃの表面は徐々に傷つき、中の鮮やかな黄色が見えてくる。 藤丸の放った苦無は、吸い込まれるようにかぼちゃの堅い皮に刺さり、抉る。ノルティアは屋根の上から、皆が届かないような頭部に向かって銃を撃った。遠距離から矢を放つのはアーニャ。朧月を使う彼女の矢はぼんやりとぶれ、傷だらけのかぼちゃを惑わせる。 一斉攻撃を受け、頑丈だったかぼちゃの皮もぼろぼろ、既に中の黄色は大方地面に飛び散っていた。 康平の優美な神楽舞・攻に背中を押され、哲心は最後の一撃を食らわせた。 「こんな事されたら余計嫌いになるだろうが。閃光煌く星竜の牙、その身に刻め!」 秋水と白梅香を重ね合わせた彼の奥義『星竜光牙斬』は、かぼちゃを二つに叩き割った。 最後に散った黄色があまりに鮮やかで、屋根の上から眺めていたノルティアは不覚にも美しい、などと思ってしまった。 「野菜に襲われるなんて夢にまで見そうです〜」 最初の関門を突破した安堵からか、アーニャはふわりと笑った。 ● 次に彼らが向かうは、たまねぎ。 康平と円秀は顔を見合わせた。 「たまねぎ、ってことはやっぱ‥‥あれか?」 「催涙攻撃‥‥でしょうか」 その言葉を知ってか知らずか、たまねぎの口角が少し上がっているように見える。 「さて、たまねぎさんも私がお料理してさしあげますよ〜」 言いながら、アーニャは眼鏡と布で目、鼻、口を覆う。隣で、藤丸も同様のことをしている。 「行くぜぇ!」 ルオウは相手がたまねぎだろうと関係なしに、咆哮を上げながら突っ込んでいく。急な攻撃に対応しきれないたまねぎは刀を避けられず、白い体がじゃくり、と切れた。 その瞬間、ぶしゅうっと音を立てて放出される、透明の液体。 「うわっ!」 ルオウは何とか身を翻すが、当然全てを避けられるわけではない。反射で顔を覆う。目には入らなかったものの、服に染み付いたところから刺激物質が漂い、粘膜を刺激する。 「くぅ、たまねぎ沁みるんだよ!」 文句とも悪口ともとれるような叫びをあげながら、藤丸はルオウの一撃にもだえるたまねぎに斬りかった。ルオウの与えた傷をさらに深くするよう、抉っていく。哲心の刀が、たまねぎの白を破る。アーニャの矢が、それらを助長するようにたまねぎを幾度も射抜いた。 康平は汁の刺激がなるべく散らないよう、柄杓で辺りに水を掛けながら舞い続ける。 「水、かけてもやっぱ目にくるよなぁ」 水で少しは抑えられても、やはりここまで巨大なたまねぎだ。出てくる汁の量は尋常ではない。 「‥‥!円秀さん、後ろ!」 叫びながら、ノルティアは銃でなすを撃った。円秀が振り返ると、かなり近いところまでなすのへたが伸びていた。突然の銃弾に驚いたなすは、触手のように伸ばしていたへたを元に戻す。 「ありがとうございます、ノルティアさん!」 「他の足止め、ボク、するから‥‥敵、倒して」 たまに飛んでくるたまねぎ汁を避けつつ、ノルティアはわずかに微笑んだ。円秀は頷いて、再びたまねぎに刃を向けた。白梅香で汁を瘴気ごと払う。 「子供の野菜嫌いを直したいならば、まずその気色悪い顔をどうにしかしたらどうだ?」 (本人は否定しているが)たまねぎ大嫌いな様子のリンは、目を掻き顔を引きつらせつつも嘲笑を浮かべながら挑発する。 「喰らえ、愛しの我が醜き分身よ…!」 リンが召還した黒衣の黒髪美女が、既にぼろぼろになったたまねぎに食らいついた。主があからさまに嫌そうな顔をするのを尻目に、いかにも美味そうにたまねぎを喰らう。あっという間に、たまねぎは跡形もなく消えた――ゆらゆらと瘴気を漂わせる、刺激物質の水溜まりを残して。 「やはり‥‥あれだな。目が痛い」 ぽそりと哲心が呟く。開拓者達の目は一様に赤く、涙でいっぱいになっていた――アーニャだけは別であったが。 ● 次はにんじん。 細長くて赤いそれは、庭でも一際存在感を放っている。 「人参にっがー!まっずー!くっせー!」 相変わらずくだらない悪口を言っては敵の気を引く藤丸。単純だが、これが結構効くらしい。にんじんは家の中の子供達のことなど忘れ、開拓者の方に向かってくる。 「ヤサイクエ!ヤサイクエ!」 甲高いその声を掻き消すように、アーニャの矢がぱっくり開いたにんじんの口に刺さり込む。 その隙に、にんじんの左の背後に回り込んだ円秀は、死角からにんじんを斬りつけた。 「野菜嫌いを助長するのは許しません」 味方の攻撃と挟み撃ちになるように幾度も攻撃を繰り返し、円秀はそう呟いた。 円秀の反対側でにんじんを斬るのは、哲心。黒い鎖分銅の形をとるリンの呪縛符は、暴れるにんじんの動きを制御した。それを利用して藤丸も狙いを定め、正確に苦無を投擲する。 長期戦でも彼らがバテないのは、康平がずっと舞い続け、傷を癒してくれているからだろう。 彼の神楽舞・攻は、皆に勇気を与え続けた。 一方のノルティアは、にんじんよりもなすの方が気がかりだ。 (「さっきから、ずっと‥‥なす。だけが、攻撃、してる‥‥」) そうなのだ。他のアヤカシは基本的に自分からは攻撃してこなかったが、なすだけはそのへたを伸ばして、隙あらば開拓者の首を刺そうとする。 その度に、ノルティアが銃撃で防いでいるからいいものの。 (「先、倒しといた方が、よかった‥‥の。かな?」) そう考えている間にも、またへたは伸びる。容赦なく銃で撃ちつつ、彼女は少しだけ首を傾げた。 そして――にんじんといえば、やはりみじん切り。 「『回転!剣舞六連!!』なます切り…みじん切りにしてやるぜぃっ!」 ルオウは二刀を抜いてぎゅるると勢いよく回転しながら、三連続の二連撃を仕掛ける。もう弱り切っていたにんじんは抵抗もできないまま、切り刻まれていった。 「美味しそう…」 アーニャが思わずそう呟いてしまうほど、にんじんは美しい細かなみじん切りになって宙を舞った。 ● 最後に残ったのは、なす。 濃紫の体は美しい光沢を帯びて、庭に居座っていた。 「さっき、へた、伸びてた‥‥皆、気、つけて」 先程のことを思い出し、ノルティアが皆に注意を促す。その瞬間。 「ヤサイ‥‥クエ!」 まだこちらが攻撃していないのに、なすは奇妙な声と共にへたを驚くべき速さで開拓者に向けてきた。危ういところでへたを切り落とし、哲心が叫ぶ。 「な‥‥っ、攻撃してくるだと!」 「初めてです、野菜が先に攻撃してくるなんて」 アーニャも驚きを隠せない。が、負けじとルオウが叫ぶ。 「んなもん関係ないさ!行くぜ!」 咆哮を上げながら、突進する。その彼に向かって、へたは再び伸びる。アーニャが矢を放ち、それを防いだ。 ルオウがその実を斬りつけると、なすはうめくような声をあげた。 「容赦せん!」 叫び、哲心が茄子に斬りかかる。その反対側で、円秀も同時に刀を抜いた。 リンの呪縛符の鎖がなすのへたに絡み付く。藤丸の苦無が、ノルティアの銃弾が、アーニャの矢が、紫の艶やかな体に幾重にも傷を刻み込んだ。 その様子を見て舞いながら、康平はふと考える。 (「‥‥嫌われ、残される野菜達の気持ちはわからなくもない。野菜は食べてもらって元気で過ごしてくれることを願っているんだ」) 彼自身生産者である康平は、野菜が嫌われているのを黙ってみていられなくて、ここに来た。 (「気持ちはわかる。だが、こんな風に脅したって好きになってはもらえないぞ?」) 野菜に語りかけるように、心の中で呟く。 (「俺が、俺らが、ちゃんとあの子達に野菜を食べさせて、好きにならせてやるから。だから、もう出てくるなよ?」) 願いながら、彼はただ舞い続けた。 「これで‥‥最後です」 もはやその輝きを失いくたくたになったなすに、円秀が最後の一撃を加える。 瘴気となって消えていく野菜達の残骸を見つめ、アーニャはそっと両手を合わせた。 「お野菜さん、本当は私は野菜好きなのですよ。今度生まれ変わったらちゃんと食べてあげますから」 ――だからもう一度、生まれ変わってきてくださいね。 ● 「‥‥なるほど、これはですね‥‥」 子供達の母親が作った野菜料理を食べ、アーニャは優しくアドバイスをする。 「野菜は、小さくして大好きな料理にこっそり混ぜたり、匂いを消すようにしたり。工夫したら、きっと食べられるようになります!」 「怖い‥‥かったね。もう、大丈夫だから」 子供の部屋に行って二人の頭をそっとなでるノルティア。 「お野菜は‥‥不思議、な。お味。するもんね」 こくこくと頷く子供達に、康平は言い聞かせるように諭す。 「確かに俺も子どもん時は野菜は不味かったな。だけど、涙と共に喰ったぞ。そしたらな、喰えるようになるんだ。美味いものが増えて嫌なものが減るんだ。そしていつでも楽しく遊べるんだぞ」 「でも‥‥」 顔を曇らせる悠栄に、ノルティアが小さく微笑んだ。 「皆が、作った。お料理‥‥美味しいよ?少し。食べて、みよ。ね?」 子供達が見た食卓は、これまでにないほど多くの料理が並んでいて。幼い姉弟は、目を輝かせた。 かぼちゃ団子、酢豚、にんじんのグラッセ、なすの味噌焼、かぼちゃ饅頭、ハンバーグ、パンプキンケーキ――そして、母親の野菜炒め。 それらの正体が全て野菜であると知った子供達は、少し怯えた表情を見せた。そんな彼らの頭を撫で、哲心が笑う。 「ここで食べておかないと、またあいつらが来るかもしれないぞ。大丈夫、味は保証するよ」 「よし、手本として僕が初めに食してみるか。‥‥あ、甘い。こんなに旨かったのか‥‥」 透き通るまでよく炒めたたまねぎをひょいと口に入れ、リンは感動したように頷く。それに呼応するように手をぽんと打ち、円秀が微笑む。 「そう、野菜は本当は甘いんですよ?食わず嫌いはやめましょうね」 甘い、という言葉に、幼心が疼く。弟の雅玖が、先に饅頭に手を伸ばした。作り手である藤丸はにっと笑った。 「お、どうだ?うまいか?」 こくこくと頷く雅玖。それを見て、姉の悠栄もそろりと、ケーキに手を伸ばした。口に入れた瞬間、予想外のおいしさに悠栄の目が見開かれる。それを見て、ルオウはしめたという風に笑って、子供達を撫でた。母親の野菜炒めを指して言う。 「母ちゃんが育つようにって料理してくれた野菜、残さず食ってれば奴らももう出て来れないしお前らも早く大きくなる、そっちのが良いだろ?な!」 「今度は一緒に作って皆で食べましょうね〜」 そんなアーニャの提案に、何度も嬉しそうに頷く悠栄と雅玖であった。 ――開拓者の皆さんに告ぐ。 ――ヤサイクエ! |