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■オープニング本文 昔々、今の老人達がまだ若かった頃。ある年、その村は深刻な日照りに悩まされた。 「きっと神様がお怒りなんだ」 ある村人がそう言って、神に少ない食料を供えた。皆も神に頼るしかないと半ば諦めていたが、ただでさえ不足していた食料を捧げることに反対した者も少なからずいた。しかしその一週間後、その村を豪雨が襲った。土地は一気に潤い、供え物をした青年は讃えられた。 その話は今でもその村に根付いていた――毎年生け贄を一人ずつ、ある一本の木に捧げるという風習として。蔦が絡まり、苔むしたその大木は、太古の昔からそこに存在する『神様』だった。生け贄は子供の中から籤で選ばれることになっていた。子供を選ぶのは、縄を切って逃げる程の抵抗力がないからだ。 今年の生け贄に選ばれたのは、侑梨という少女だった。両親は泣き崩れたが、村の平和の為なら仕方がない。泣き寝入りするしかなかった。 しかし、彼女の兄は違う考えだった。 ――生け贄の制度なんて間違ってる。神様が生け贄なんて求めるわけがない。 兄の阿高は、書き置きを残して村を飛び出した。三日三晩歩き続けて、彼はようやく開拓者ギルドに辿り着いた。薄汚れてへとへとに疲れきっていた彼は、建物に入るなりその場に倒れ込んだ。 次に阿高が覚ましたのは、翌日の夕刻だった。自分がどこにいるのかわからなくなり、辺りを見回す。状況が読み込めた途端に飛び起きた彼を、一人の女性が制止した。 「まだ起きちゃいけないよ」 矢鳶、と名乗るその女性は、開拓者の一人だった。彼女は温かいお茶を差し出すと、阿高に目線を合わせた。 「こんなぼろぼろになってまで、ここまで歩いてきたのには何か理由があるんでしょう」 促されて、阿高は話し出した。村の洪水のこと、神の木のこと、そして生け贄のこと。 「僕は、神様ってお祈りをしたら誰でも助けてくれるんだと思うんだ。生け贄なんて絶対におかしいよ」 語気を強める少年に、矢鳶は頷いて見せた。 「わかった。私が代わりに依頼を出しておくから、今は安心して休みなさい」 阿高はその言葉に安心したのか、急に眠気に襲われた。少年が眠ったのを確認して、矢鳶は受付係のもとへ向かったのだった。 |
■参加者一覧
北条氏祗(ia0573)
27歳・男・志
八嶋 双伍(ia2195)
23歳・男・陰
瀬崎 静乃(ia4468)
15歳・女・陰
由他郎(ia5334)
21歳・男・弓
リューリャ・ドラッケン(ia8037)
22歳・男・騎
神堂 麗奈(ia9211)
23歳・女・志
木下 由花(ia9509)
15歳・女・巫
守紗 刄久郎(ia9521)
25歳・男・サ |
■リプレイ本文 出立の数刻前、瀬崎 静乃(ia4468)は開拓者ギルドから出ようとしていた。隣には阿高と矢鳶の姿。 「‥‥情報ありがとう。妹さんのことは安心して。僕達が、解決してみせるから」 静乃の言葉に、阿高は笑顔で頷いた。横で矢鳶が微笑む。 「明日、阿高を連れて村に参ります。その時にお会いしましょう」 「はい。――では、失礼します」 静乃は一礼して、開拓者ギルドを後にした。歩きながら、聞いたことを頭の中で反芻する。 (「神木は村の広場にあって‥‥見回りはなし‥‥」) 彼女は幼い阿高の姿を思い浮かべた。心配していたが、元気になったようで何よりだ。しかし――あんなに幼い子供でも過ちに気づいているのに、どうして大人が間違えるのだろう。しかも犠牲となるのは無垢な子供。 (「許せない‥‥」) 静乃は静かな怒りを感じて、片眼鏡を押し上げた。 ● 「――生け贄、ですか。自分達の力ではもうどうにもならない時、神にすがりたいと思う気持ちは理解できますが‥‥」 村に向かって雪道を歩きながら、八嶋 双伍(ia2195)は眉を寄せた。横で竜哉(ia8037)が苦笑する。 「これは少しやりすぎだな‥‥」 「いつから、子供を生け贄にするようになったんでしょうね。私には、子供を犠牲にしてまで、村を救いたい気持ちはわかりません」 木下 由花(ia9509)は固い表情で呟いた。 「俺にもわからん」 激しい憤りを見せる守紗 刄久郎(ia9521)が同意した。隣にいた由他郎(ia5334)はため息をついた。 「余所者に『間違いだ』と言われても‥‥納得は難しいだろうな」 「私達が討伐して見せることが、生け贄の慣習が無くなることに繋がればいいが」 神堂 麗奈(ia9211)も小さく息をはいた。 「どうなるかは村の皆さん次第‥‥僕らはその手助けをするくらいですね」 双伍の言葉を最後に、一行は黙り込んだ。雪を踏みしめる音だけが、静かに響いていた。 ● 村に着いた一行は、村の異様な雰囲気に気づいた。先頭を歩いていた北条氏祗(ia0573)は眉をひそめた。 「何だ‥‥?」 どん、どん、と腹に響くような音が聞こえてくる。 「太鼓の音‥‥?」 静乃は囁いた。その音は途切れることがない。 「嫌な予感がしますね‥‥」 由花が呟く。八人は音の方向へと急いだ。 その音は、やはり太鼓だった。広場の一画で、男が一定の間隔で太鼓を叩いていた。そして少し離れたところには一人の少女が立っている。 「もしかして‥‥あの子供、侑梨‥‥か?」 麗奈の呟きに、静乃ははっとした。目の辺りや髪質が、どこか阿高に似ている気がする。 「そうかもしれない‥‥!」 その時、付近の小屋から出てきた男が、少女の細い腕を掴んだ。少女は涙を堪えるように唇を噛み締めている。男は腕を引いて、広場の端に生えた巨木の方へ連れて行こうとした。 「大変‥‥あれ、神木だ‥‥!」 静乃のその声に氏祗が敏感に反応し、飛び出していく。他の面子も慌てて後を追った。 「待たれよ!」 突如響いた氏祗の声に、村人は驚いて振り向いた。少女の手を引いていた男は、灰色の髪と皺がたたまれ染みの浮いた顔の老人だった。目には明らかに非難と疑念が渦巻いている。それに怯むことなく、双伍が老人を見据えて静かに言った。 「あなたがこの村の長ですね」 「そうじゃが。お主らは誰じゃ」 太鼓が止んだ静寂の中で、嗄れた老人の声はいやに響いた。 「私達は開拓者ギルドから派遣された者です」 由花が発した開拓者、という単語に、村長はぴくりと反応した。 「‥‥開拓者がここに何をしに来た」 そのしゃがれた声には不信感がありありと浮かんでいる。 「お訊きしたい。――どうして、生け贄など捧げるのか」 麗奈の言葉に、村長の目が見開かれた。 「別に自然の恵みに対する感謝の念を捨てろとは言わないさ」 竜哉が続ける。 「ただ、この慣習‥‥昔話がもとで始まったんだよな。あの話では、確か青年は食物を神に捧げていたはず。それが何故、人を捧げるようになったのか」 村長は少女から手を離し、きっとこちらを睨んだ。 「食物であることが重要なのではない。その頃は、食料はほんに貴重なものじゃった‥‥しかし今は、この村も豊かになった。食糧に困ることはない――神が求めておられるのは、『犠牲』じゃ」 「『犠牲』――?」 「‥‥この村にとっての『犠牲』は村人の命を捧げることだ、と」 由他郎の呟きに、老翁は小さく頷いた。 「平穏には、犠牲が付き物なのじゃ」 「‥‥神木がアヤカシであっても、か?」 氏祗が呟く。村長は瞠目した。 「アヤカシなんだよ、あの木は」 麗奈が言った。 「‥‥信じられるものか。あれは我らが神だ」 氏祗は小さく首を振った。説得は無理そうだ。 「‥‥じゃあ、俺が生け贄になろうか?」 竜哉の提案に、村長はさらに目を丸くした。 「‥‥余所者に任せてなどおれん。どうせ土壇場で逃げ出すのであろう。お主らは開拓者、わしら一般人では太刀打ちできぬ」 「逃げやしないさ。武器も既に預けてある」 竜哉は顎で示す。その先には静乃が、竜哉の斧を見せて立っていた。 「信用できないなら、見張ってもいい――というか、あなたには見る義務があるだろう?」 竜哉の笑みを村長は推し量るように見つめていたが、やがてゆっくり頷いた。 「‥‥よかろう」 その刹那、氏祗は嫌な予感がして周囲を見回した。太鼓の音が止んだことで、何かあったのかと心配した村人が大勢、既に周りに集まり始めていた。中には鍬や鋤、あるいは包丁まで持っている者もいた。見慣れぬ一行をみとめ、村人はひそひそと話をしていた。 「竜哉が人質になるんだ。侑梨はいいだろ」 由他郎は侑梨に、親の元へ行くように言った。頷いて、侑梨が駆け出す。状況の読めないまま、見守っていた両親は娘を抱き留めた。 「行きましょう。――瀬崎さん、神堂さん、あとはお願いします」 双伍の言葉に、二人は静かに頷いた。静乃と麗奈以外の六人は、村長と共に神木へ向かった。 ● 神木は、堂々とした様子でそびえ立っていた。 「不思議なのですが‥‥村長さん、普段生け贄を捧げるとき、どうやって蔦の攻撃をかいくぐっているんです?」 村長はそう問う双伍を不機嫌そうに一瞥し、自分の腕を掴む刄久郎の手を見た。そしていかにも仕方ない、といった様子で答えた。 「‥‥この木は神じゃからの。邪念を持った人間が近づくと身を守るために防衛をするが、人質と一緒の時は攻撃してこないのじゃ」 竜哉が薄笑いを浮かべる。 「へえ‥‥じゃあ、俺が生け贄として行けば大丈夫かもしれないな」 いよいよ神木に近づいてきたところで、氏祗があるものを発見した。 「‥‥この線‥‥この先立ち入るべからず、ってことか?」 七人のすぐ目の前の地面に、太く線が描かれていた。 「この先に行くと、神ノ木様のお怒りに触れるのじゃ」 ほう、と刄久郎が笑った。 「蔦はここまで伸びるわけか。結構な長さじゃねえか」 「じゃ、俺行ってくるよ」 竜哉がひらりと手を振って、神ノ木の方へ歩いていく。線を越えても、蔦は伸びてこない。 「生け贄には攻撃しないって、本当なんですね」 由花が呟く。その間にも竜哉はどんどん近づいていく。そして―― (「‥‥見えた!」) 竜哉の目に、神木の口と思しきものが見えた。古い樹皮の皺に紛れて裂けているその穴は、子供や小柄な大人ならそのまま飲み込めそうな程大きい。 (「このまま近づけば‥‥村長にもこの口が見えるはず‥‥」) 竜哉は慎重に近づいていった。 「見てください‥‥あの大きな口‥‥!」 由花が目を丸くして叫んだ。 「あれを見ろ。本当にあの醜いものが神か?」 氏祗が低く呟く。村長は唸り、目を逸らした。 「神だって‥‥口くらいあるはずじゃ」 刄久郎はついに堪忍袋の緒が切れて、荒縄を取り出すと村長を縛り上げた。 「な、何をする!」 「暴れられたら困るんでね。黙って見てな」 呟いて、刄久郎はにやりと笑う。 その瞬間、神木に飲み込まれる寸前までいって、竜哉が飛苦無を神木の喉に叩き込んだ。 ● 辺りはざわついていた。見知らぬ者達が大勢で、神様を攻撃しているのだから当たり前だ。 「ねぇ、ちょっとあんた!」 村人の一人に声をかけられ、静乃は無表情のまま振り向いた。 「あんた達、何なんだい?急に押しかけてきて‥‥あぁっ、神ノ木様が!」 神木が傷ついていく様を見て、村人は悲鳴を上げた。 「‥‥僕達は開拓者。アヤカシを退治しに来た」 ざわつきが一層激しくなる。 「アヤカシを退治、って‥‥アヤカシなんてどこに?俺達、アヤカシに襲われたことなんて‥‥」 「まだ分からないのか!」 苛立った麗奈が叫んだ。手に持った松明の火が揺れる。 「あの神木は神なんかじゃない、アヤカシなんだよ!」 刹那、辺りは静まりかえった。しかし―― 「そんなの信じられるか!」 人々は叫ぶ。そして。 「耐えられん‥‥神ノ木様をお助けするぞ‥‥!」 呟いた一人の男が、鍬を片手に神ノ木の方へ走り出した。しかし、静乃が呪縛符で動きを制する。男は急に足が動かなくなり、その場に倒れ込んだ。 「‥‥もし、ここから先へ行くなら容赦せずに術を使うよ。数ヶ月、傷が癒えるまで痛みを堪えなきゃいけなくても構わない人はどうぞ?」 静乃が淡々と言う。そして、仰々しく呪文のようなものを呟いた。――巨大な龍が姿を現す。大龍符による単なる式であると知らない村人達はその大きさと迫力に圧倒された。 「‥‥因みに。この龍は一度動き出したら、僕が命令するまで暴れるから」 渋々といった様子で、大半の者は黙り込んだ。しかし、それでも反抗的な目線は続く。 (「‥‥いつ飛び出していくか分からないな。警戒しなくては」) 麗奈は思いながら、松明の火を見つめた。 ● 竜哉に飛苦無を叩き込まれた神木は、低い唸りと共に蔦を伸ばした。 「今だ‥‥っ!」 竜哉が叫ぶ。一同は一気に、神木の領域に踏み込んだ。同時に、由花は士気を高めようと神楽舞を舞いだす。 「皆さん‥‥お願いいたします!」 扇子を翻し、優雅な舞を披露しながら由花は叫んだ。 それに応えるように、刄久郎が雄叫びを上げた。神木の蔦が、挙って彼の方へ向かう。 「やらせるかよ‥‥っ」 絡みつく蔦を両手剣で切り払った。強力で強化された筋肉が唸る。 その横から、氏祗が飛び出した。蔦が刄久郎に気を取られているうちに少しでも打撃を与えられれば。 「くらえ‥‥っ」 幹に詰め寄り、二本の刀を同時に繰り出した。幾度も重ねて叩き込むと、木が大きく削られてゆくのがわかる。手応えに仰け反りかけながらも、彼は得意の二刀流で戦い続けた。 一方の由他郎と双伍は後方から、それぞれ矢と術を放つ。由他郎の瞬速の矢、双伍の火の輪が神木の幹を打った。 「あぁっ‥‥神ノ木様が‥‥っ!」 村長が狂ったように叫ぶ。由他郎は矢を番えながら、村長に向かって言った。 「黙って見てろ。もし、あれが神ならば、開拓者風情に倒される筈が無いのだから」 双伍も伸びてくる蔦を巨大な鎌で切り裂きながら頷いた。 その時――背後から気配がした。 ● 人々は神木の様子に見入っていた。 「‥‥本当に、あれが‥‥私達の、神様‥‥?」 彼らの頭の中は、神への畏怖と目の前の光景が綯い交ぜになっていた。あれが神じゃないのなら‥‥自分達は一体、今まで何を信じてきたのだ? 「わかったか?あれは神でもなんでもない。アヤカシなんだ」 麗奈の言葉に沈黙した彼ら。先ほどの静寂とは違い、空気は重く、もの悲しい。 「ま、見てればわかる。アヤカシは倒されれば、瘴気に戻るから」 沈黙に、静乃の言葉が浮かんで消えた。 「‥‥やっぱり‥‥信じられない!」 急に立ち上がった青年が一人、神木に向かって走り出した。 (「しまった‥‥油断していた!」) 麗奈と静乃が同時に立ち上がる。慌てて静乃が術を使おうと構えるが、青年は足が速かった。 「神堂さん、ちょっと頼んだよ!」 静乃はそう言い残して青年を追っていった。 ● 双伍が気配に振り返ると、少し離れたところに青年が立っていた。村人だろうか、手に鋤を持っている。 「‥‥こっ、攻撃をやめろ!」 青年は叫びながら走ってくる。双伍は慌てず正確に呪縛符を放った。 「危ないですよ?」 青年は足を奪われ転んだ。後ろから静乃が走ってきた。 「‥‥助かったよ、八嶋さん」 「いえ。そちらは順調で?」 火の輪を飛ばしながらにこやかに双伍は言った。 「ああ、大半の人が神木を疑い始めてるよ」 こういう奴もいるけど、と静乃は先ほどの青年を引っ張った。引きずって連れて行くようだ。 「あと少しの辛抱です。頑張りましょう」 双伍の言葉に、静乃は微かに頷いた。 神木は既に倒れかけていた。幹は氏祗の連続攻撃と由他郎の矢、双伍の火で既に傷つき、蔦も刄久郎の繰り出す剣に殆どが切り払われていた。向かってくる蔦の殆ど全てを切った刄久郎は満足げに笑って、地断撃を撃った。 「こいつはオマケだ、とっときな!」 それに併せて、氏祗の二刀流、竜哉の苦無、由他郎の矢、双伍の火輪が一斉に神木を襲った。由花の舞が攻撃に拍車をかける。 傷ついた幹は腐ったかのように崩れ――神木が、大きな地響きと共に倒れた。 ● 瘴気に戻っていく神木を見ながら、縄を解かれた村長は呆然としていた。側には村人も寄ってきていた。 「こんな瘴気を持つ者が神様か?アヤカシ以外の何者でもないだろう?」 刄久郎が村長に言った。麗奈が続ける。 「これ以上生贄の儀式を続けているとああいったアヤカシがこれからも現れ続けるぞ」 「‥‥村長。俺達、間違ってたんでしょうか」 村民の一人が呟く。村長は俯いて、唸っていた。 「俺達はアヤカシに生け贄を捧げていたのか‥‥」 「じゃあ、これから先‥‥一体何を、信じれば‥‥」 不安げな村人をなだめるように、由他郎は優しく言った。 「もう生け贄は要らない。幼子を縄で繋ぐ事も、村の為と親が泣く事も無いんだ」 「…長い間の習慣をやめるのって不安になるでしょうが、小さい子供の味わった恐怖を考えて欲しいです…」 由花は悲しそうに呟いた。 一行が村を去るのと同時に、阿高が村に戻ってきた。駆け寄ってきて礼を言う彼の頭を、麗奈が撫でた。 「君がしたことは絶対に間違ってなんかない。自分の決断に、自信を持っていい」 「よく、妹を守った。それでこそ、兄貴だ」 由他郎が微笑む。刄久郎は兄に駆け寄ってきた侑梨に、もふらのぬいぐるみと甘刀「正飴」を渡し、慰めていた。侑梨は微かに笑顔を見せた。 静乃、双伍、由花、氏祗、竜哉はその様子を眺めていた。ふと村の様子に目を向けた由花は、村人達が神を失い、うなだれている様子を見て目を伏せた。 「これから、この村はどうなっていくのでしょう…」 「立ち直れるといいな。未来を担う子供達が、明るく生きられる村に」 八人の開拓者の願いは届くのか――それは、時が教えてくれるだろう。 |