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■オープニング本文 「ミギナはどうしましたか」 レンズの丸い眼鏡の押し上げながら、諏訪流頭領である諏訪顕実が部下に問う。 「捕らえております。これ以上情報は出せないものと」 アヤカシに操られている人間は、思考力が鈍るらしく複雑な思考ができないらしい。 ただ、操り主のアヤカシが不利になるような言葉や行動は取らないようになっているのか、なかなか証言を得ることが出来ないでいた。 しかし、諏訪は情報を操ることにかけては右に出るものはいないと自負する一族で五車の術のような話術は、諏訪の最も得意とする部門である。 顕実の腹心が誘導尋問をかけたところ、ミギナはあっさりとアヤカシの関与を認めざるを得ない言葉を漏らした。 「まだ、自害しようとしますか」 「是」 未だに操られたままのミギナは、今も操り主を守るために己の口を封じようとしている。 顕実は少し考えて、嘆息した。 「これ以上情報は得られないでしょう。解術の法は効かないようですし、少々手荒でも構いません正気に戻せるか試してみなさい」 指示をだした後、顕実は相変わらず書物や巻物で散乱した自室の文机に向かう。 文をしたためるのは、前回と同じく三通。 二通は、シノビの使う暗号文字で慕容王と北條頭領へ向けた、今回手に入れた情報を詳しく書き込む。 その上で、再び開拓者を使い楼港で情報収集をするという宣言。 もう一通は、依頼を受ける開拓者に向けたものを、公用文字で。 同じように丁寧に畳んで、伝令の部下に渡す。 手にした料紙は、落書きか書き損じかのように乱雑な記号と文字が不規則に書き散らされている。 誰が見ても、ゴミと断じるだろうそれは顕実に取っては最重要書類だ。 仕組みを正しく理解している諏訪者にしか読み取れない規則性を持って、重要な情報が書き込まれている。 それに目を落として、朱墨を染み込ませた小筆でとある記号を囲う。 「伊介の腹心だった者が一人、楼港入りしている。‥‥名はジュウベエ」 続いて、対角にある書き損じのような文字を囲う。 「同僚から、少々様子がおかしいと言う情報も」 三つ、四つとバラバラに書かれた文字や記号を朱墨で囲っていく。 「密売人との取り引き‥‥、10名ほどの手勢に指図‥‥。毎日宿を出てどこかに行っている‥‥」 朱墨で囲った文字とは別に、下線を引いた文字がある。 書かれた場所にバラバラの場所だが、顕実は書類を手にして真っ先にそこに下線を書き込んでいた。 どうやら、その文字が書類の規則性を判断する為の印ようだ。 朱墨の囲いは増える度に不思議と規則的な紋様を表しているように見えてくる。 ジュウベエは、現在犬神代表の側にも現犬神頭領の元にも姿が見せず、逗留している宿で何かを企てていると書かれているようだ。 恐らくジュウベエは狐妖姫に操られているのだろうと顕実は判断した。 「何を狙っているのか‥‥。調べてもらいましょう」 楼港の端に位置する「浄瑠璃」という小さな宿を貸し切って、ジュウベエは己の手下10名余りを連れて逗留している。 奴らが何を狙い、どんなことを成そうとしているのかを知りたい。 あわよくば、彼らの企みを打ち砕いてもらうのも良いだろう。 「さてさて。どこまで頑張ってくれますか」 どこか楽しげな独り言が部屋にポツリと響いた。 |
■参加者一覧
高遠・竣嶽(ia0295)
26歳・女・志
貉(ia0585)
15歳・男・陰
志藤 久遠(ia0597)
26歳・女・志
霧崎 灯華(ia1054)
18歳・女・陰
氷(ia1083)
29歳・男・陰
斉藤晃(ia3071)
40歳・男・サ
流星 六三四(ia5521)
24歳・男・シ
ブラッディ・D(ia6200)
20歳・女・泰
詐欺マン(ia6851)
23歳・男・シ
かえで(ia7493)
16歳・女・シ |
■リプレイ本文 ●ジュウベエを尾行せよ 諏訪頭領より依頼を受けた一行は、それぞれ綿密な作戦を立てジュウベエの尾行を敢行する。 遊女とその付き人に扮装する者、妊婦や絵描き、旅人を装う者など様々な工夫を凝らして密命を受けた一行は楼港に散らばった。 そして、午前9時。 楼港の端に位置する小さな旅籠【浄瑠璃】からジュウベエ姿を見せたのだった。 まずジュウベエの後をつけ始めたのは、高遠・竣嶽(ia0295)と氷(ia1083)のコンビである。 「今日は良い陽気だなぁ。‥‥眠いぜ」 歩きながらウトウトするという器用な真似をする氷に、あちこちの土産物屋に目を向けながら竣嶽が控えめにツッコミを入れる。 「まだ午前中ですよ。眠りが足りなかったんじゃないです?」 ふらりと危うく前方から来た町人にぶつかりそうになった氷の手を引っ張って、そこの茶店で茶でも飲むかと問う。 「んー、昨夜はお楽しみ‥‥って訳でもなかったんだが」 「もう良いです、皆まで言うな。ちょっとそこの小物屋を見て良いですか? って、こら柱に寄りかかって寝ないでください!」 「ぐー‥‥」 思わず周囲の通行人から笑いが漏れるほどの掛け合いに、竣嶽が出だしから疲れた顔になるが幸いジュウベエに怪しまれる事なく、ちょっとした見世物のようになったおかげで後続組が動きやすくなったようだ。 だが、流石に長時間同じ道、同じ方向を行くのは無理があるので四半刻を少し過ぎた頃合を見計らい、交代の合図を送ることとなった。 「あ、待って下さい。靴紐が」 氷を呼び止めて道の端に寄り竣嶽が靴紐を結び直す間に、ジュウベエが先の角を曲がってしまう。 しかし、その時には既に次の組と当たる遊女の扮装をしたブラッディ・D(ia6200)とその付き人を演じる志藤 久遠(ia0597)が、後を追っている。 「んー、褌と靴の紐はしっかり結べ」 氷の言葉にどう返そうか悩む竣嶽の視界の隅を、小さな虎猫がちょこまかとかけて行った。 「あ、ねえねえ。久遠、あそこのお店をご覧よ、良い鏡があるよ」 市女笠の垂衣をヒョイとかき分けてはしゃいで見せるDに、心配そうな表情で久遠が追いかける。 「姐さま、余りはしゃがれては危のうございます」 視線の巡らせ方、歩き方の一つ一つに艶を含ませたDの護衛に気を遣いながら危険の無いように取り計らう久遠と、奔放な振りで先を歩いていたジュウベエを追い抜き指し示した土産物屋を覗き込む。 「ふふふ、やっぱり楼港は良いね。良い商売が出来そうだよ」 機嫌よく笑んでDは怪しまれないよう、こちらを伺う男たちに秋波を送る。 「もう、姐さまにはかないません」 「気を悪くした? 怒らないで、久遠」 小首を傾げて甘えてくるDに、嘆息して久遠はそっと笑う。 「あそこのお饅頭を買ってくださったら、許して差し上げます」 二人がじゃれあう間に、ジュウベエは再び彼女らを追い越し目立たない小さな店に入っていった。 その店は遊女が入るにそぐわない場所で、流石に二人は怪しまれないよう素通りした。 「あら可愛い、仔猫がいる」 腹に詰め物をし、妊婦の扮装をしたかえで(ia7493)が、茶屋の軒先の長椅子に座って休憩していると、視線の先を小さな虎猫が毛づくろいをしていた。 その茶屋の斜向かいはジュウベエが入っていった店がある。 長い間一つところに留まるには向かないD達から、後を引き継いだかえでは妊婦らしくのんびり座って腹を撫でる。 妊婦ならば長い間休憩していても、怪しまれないという読みは的中してジュウベエが店を出て来るまで、お茶と団子をゆっくり楽しんだ。 「ふう、さて。そろそろ行かないと日が暮れちゃう。おじさん、お勘定ね」 前方を行くジュウベエに近づきすぎないように、時折立ち止まって腰や腹をさすりながらゆっくり進む。 だが、やはり尾行にも限界があり妊婦が立ち入るには向かない人通りの多い区域に差し掛かったとき、絵描きの少女に呼び止められた。 「ねえ、楼港に来た記念に絵姿でもどう?」 絵の売り込みを装ってかえでに声をかけたのは、絵描きに身をやつした霧崎 灯華(ia1054)だった。 「まあ、絵姿? 面白そうだけど、お腹の子が生まれてからお願いしたいなあ」 控えめな断り文句に、残念そうにしながら灯華は「その時は絶対よ」と告げて、次の客を探すためにキョロキョロと周囲を見回して歩き始めた。 客を物色する素振りで、難なく尾行を交代した灯華は短いやりとりの間でジュウベエの行った先を見失ったが、焦らず手にした地図に目を落とした。 先程ジュウベエが歩いていた通りは、一本道で回り道で十分追いつける。 そう判断して、目に入った適当な客に声をかけた。 「ねえ、そこのお兄さんたち。絵姿買わない?」 声をかけられた二人連れの男は、灯華を振り返って首を傾げる。 「ほう、絵姿か。たぬぽん、一枚どや?」 興味深そうに返事をしたのは、酒瓶を片手に街中をフラフラしている斉藤晃(ia3071)だった。 「たぬぽんじゃねえよ。面白そうだから一枚貰うか」 目立たぬようにいつものたぬきのような仮面を外した貉(ia0585)は、律儀に晃にツッコミ返して灯華に向き直る。 「ありがとう。お兄さん達いい男」 小銭を受け取り絵姿を渡す時、貉が「ついでにこれお守り」と可愛らしい小袋を灯華に渡した。 毎度、と声をかけて灯華は次なる客を見つけるために通りを見ながら歩き出す。 晃と貉も、絵姿を二人でのぞき込みながら、やいのやいの掛け合いながら脇道に入っていった。 少し時間を遡る。 他の者がジュウベエの後をつける間、晃と貉は周囲にジュウベエの手下がいるかどうか警戒しながら、手に入れた地図を頼りにあちこちに聞き込みをして回った。 酒場や裏路地を周り武器商店に聞き込んだ結果、ジュウベエが最近密売人から物騒な物を大量に買い込んでいるとの情報を手にした。 焙烙玉より大きく数十倍の破壊力があるという品物をジュウベエは密売人から仕入れては何処かへ運んでいるとのことだ。 「ふぅむ。こりゃ、ちぃとまずいの」 「つなぎ役に情報渡すか」 それ以上調べるには、周囲の警戒が厳しくなってきたため晃と貉は聞き込みを切り上げ大通りに出たところで、つなぎ役である灯華と行き当たったのだった。 そこで己の情報とジュウベエが入るであろう道の情報を交換して、貉達が尾行役を引き継いだ。 灯華の示した通りに回り込んだ晃は、読み通りジュウベエが歩いてくるのを発見した。 尾行していることを気取られ無いよう、それを素知らぬふりでやり過ごして酒を呷りながら目についた酒店に貉を伴って向かう。 「お、たぬぽん。猫じゃ猫」 「たぬぽん言うな。そりゃどこにでも猫はいるさ、酔っぱらい」 小さな虎猫を見て、がっはっはと笑う晃にツッコミを入れながら「飲みすぎだ、少し控えろ」と酒屋に入ろうとするのを止める。 「いーや、酒は必要じゃろう」 「わかったわかった。じゃあ、この先にある酒屋にしよう。良い酒があると評判だとよ」 貉の言葉に、それは是非そっちにしようと喜び勇んで晃は件の酒屋に向かって歩き出す。 「随分端にある店やな」 「だから穴場なんだろ」 通りの外れにある店についてそれぞれの見解を言い合う二人に目をやったジュウベエは、彼らがこちらを全く注視していないのを確認して、通りから森へと入っていった。 それまで、誰とも接触しないように周囲にジュウベエの手下がいるかどうかをさり気なく警戒しながら、二重尾行をしていた流星 六三四(ia5521)が足を停めた。 「森の中か、これは俺たちが行くしかねえぜ」 その言葉に旅人の扮装で、六三四と連携して気配を探っていた詐欺マン(ia6851)も扇をパタリと閉じて頷いた。 「そうじゃの。他の者も、後からついてこれるであろ。まろたちの出番でおじゃるな」 声に出さぬよう、唇の動きだけでやり取りした二人の風変わりなシノビは、周囲にジュウベエの手下らしき気配が無いことを確認して抜足と早駆けを使い森の中へと入っていく。 その後を追うように、小さな虎猫もまた森に駆け込んだのだった。 ●気取られた尾行 「ぐー‥‥」 「ちょ、本気寝はやめて下さい!」 ジュウベエの尾行を後続に引き継いだ後、一定の距離を保ちながらも人魂を使ってジュウベエの尾行を続けていた氷が、隙をついて再びマジ寝モードに入りかけるのを、竣嶽が頭をはたいてツッコミを入れる。 小さな虎猫の姿に変化させた符を駆使し続ける為、傍目からは寝ながら歩いている様な状態担っていたのを、竣嶽が手を引いて歩いていたのだ。 そしてジュウベエが森へ入ったことを氷が竣嶽に告げた。 ジュウベエが森に入ったからか、街中にチラホラと姿を見せていた手下と思しき気配も無くなったため、かえで、灯華、D、久遠、晃、貉も森の入口に集まった。 「ここまでくれば、一般人巻き込むことはないだろうけど。手下の気配も森に集中してるみたいだよ」 「六三四殿と詐欺マン殿が危ないですね。急ぎましょう」 Dと久遠の言葉に、集まった全員が頷き変装を解いて森へと駆け込んだ。 晃と貉が集めた情報によれば、ジュウベエは現在焙烙玉よりも破壊力のある物騒な品を手にしている。 下手に動いて先行した六三四と詐欺マンに危険が及ぶかも知れないと言う気持ちから、一行の足は自然と早くなった。 一方、抜足と早駆けを使ってジュウベエの尾行を続ける六三四は、周囲に集まり始めた手下の気配に冷や汗を浮かべていた。 詐欺マンも抜足で足音を立てず歩きながら、己たちに向けられる敵意を肌で感じていた。 「まずいでおじゃるな」 「もう、見つかっちまってるよなぁ」 隠密行動のエキスパートとは言え、相手も同じシノビである。 むしろ今まで尾行に気づかれなかったのが、すごいと言うべきだろう。 六三四と詐欺マンが今出来ることは、己の位置を気取られ無いように仲間が駆けつけて来るまでの間、敵の襲撃を防ぐことだけだった。 既に、ジュウベエにも尾行を気取られた。 つけられていると気づいた瞬間、木の陰に身を潜め警戒もあらわに誰何してきた。 ジュウベエだけでなく彼の手下達も揃って、二人はぐるりと包囲される。 「いい加減、観念しろ。二人で何が出来る」 まさに絶体絶命。 「多勢に無勢でおじゃるな、いよいよ追い詰められたでおじゃる」 さすがの詐欺マンもの表情にも焦燥が浮かんだとき、怒涛の様な勢いで待ち望んだ仲間が追いついてきた。 ●ジュウベエを捕縛せよ 「手加減はせん! 逝ねえぇぇ!」 六三四らを包囲するシノビの一軍に気迫の篭った咆哮を上げ、晃が大斧を手に地を蹴り遠心力を利用した大技を放つ。 その威力や絶大、不意を撃たれた手下の一人は手加減なしのそれに昏倒した。 手練を自負するシノビらに、一瞬動揺が走る。 竣嶽はその隙を見逃さず走り寄る勢いのまま、珠刀を鞘走らせ手近な敵に斬りかかった。 「あんたの相手はこっちだよ!」 先陣切った二人に攻撃を仕掛けようとするシノビにDが立ちふさがり蛇拳を見舞い、かえでも短刀で切り結ぶ。 尾行の為、脇差のみを装備した久遠も動揺の広がるシノビを逃さぬよう紅葉の燐光を刀身に纏わせる。 瞬く間に手下の半数を倒した一行に、危険と判断したジュウベエと手下は飛びずさり距離を取るが、その瞬間包囲から離脱した詐欺マンの水遁が撤退を指示しようとしていたジュウベエに、灯華と氷、貉がそれぞれ放った呪縛の符が残った手下に絡みついた。 動きの鈍った瞬間を見逃さず、六三四の投げる手裏剣や前衛の攻撃が確実に手下を屠っていく。 ジュウベエは、何とか逃げ出そうとしたものの立て続けに浴びせられる水遁と呪縛符、神経に作用する毒蟲による攻撃に己の完全なる不利を悟り、手にした短刀で自害をはかる。 「させない!」 振り下ろさんとする短刀を早駆けで肉迫したかえでが弾き飛ばし、その隙に晃が当て身を食らわせて意識を奪った。 「く‥‥っ! もう、すこし‥‥なのに」 うわ言のように呟きながらズルリと崩れ落ちるジュウベエに縄を打ち猿轡を噛ませて、一行はようやく肩の力を抜いた。 「ひのふのみ‥‥うん、手下も10人倒れてるな」 氷が他に敵がいないことを確認すれば、六三四が大きく息を吐く。 「いや、心労が溜まった! 旨い飯でも食いたいね!」 忍ぶ事が好きではない彼にはかなりのストレスだったようだった。 「しかし、森に入り込んでどこに行くつもりだったのでしょうか」 途中で尾行していることが露見したため、ジュウベエ達が何を狙っていたのかを確かめられていないことに竣嶽が眉根を寄せる。 「取り敢えず、ジュウベエを捕まえたことやし。諏訪に引渡さなな」 流石に、捕縛したジュウベエを置いて調べるわけにも、担いで調べに行く訳にも行かないので後の事は諏訪に任せることとなったのだった。 ●ジュウベエの企み ジュウベエの捕縛に成功したと言う報を受けた顕実は、微かに口元を引き上げ「そうですか」と答えた。 「開拓者の力量、かなりのものですね」 顕実は素直な感想を述べる。 尾行を最後まで出来なかったことは問題にはならない、重要参考人であるジュウベエを捕縛できたことに意義があるのだ。 開拓者の働きにより捉えたジュウベエを尋問し、狐妖姫に操られている確証を得たので、慕容王の承認を得て諏訪の者が捜査することが出来た。 捜査の結果、森の奥にある洞窟をジュウベエらがアジトとして使っていた事が判明した。 そして、開拓者が入手した情報どおりの「物騒な物」が発見された。 宝珠と火薬を使った、焙烙玉よりも数十倍の破壊力を持つと言う「宝珠爆弾」が大量に詰められた箱と、龍が発着するための空港をそれで爆破する計画をしたためられた料紙。 空港を爆破し、龍の無力化を企んだのだろうと推測された。 「宝珠爆弾‥‥話には聞いていましたが、実際目にするとは」 顕実は押収したそれを見下ろし、思案に暮れる。 宝珠爆弾は北條にしか製造出来ない、いわゆる秘術である。 陰殻の外に出ることはもちろん、北條の中でも所持が制限される禁制品に分類される。 「慕容王と李遵殿に急ぎ報告を」 この度の賭仕合は、なにやら色々な思惑が複雑に絡まり合っている。 そう思わずにはいられなかった。 |